昭和歌謡大全集 村上龍(2)

本読書

昭和歌謡大全集 は1994年に発表された村上龍の小説です。

村上龍らしいと言えばらしいのですが、結構読みにくい方の分類になる小説だと思います。特に、正統派の小説が好きな人は、苦手な分類の小説かも知れません。

若い時は、村上龍を読んでるのがカッコよく見えた時代がありました。エロでグロい描写が、刺激的だった時代です。

最近の事のようですが、もう30年近く前の作品を紹介したいと思います。

昭和歌謡大全集

大全集と言うだけあって、昭和歌謡の名曲が出てきます。

登場する昭和歌謡曲は以下の通りです。

  • 恋の季節
  • 星の流れに
  • チャンチキおけさ
  • 有楽町で逢いましょう
  • 港が見える丘
  • 錆びたナイフ
  • アカシアの雨がやむとき
  • 骨まで愛して
  • いつでも夢を
  • また逢う日まで

平成以降に生まれた方には馴染みが薄い曲ばかりかも知れません。

昭和でも30年代以前の方には、馴染み深いと思います。

登場人物

若者たちは、以下の通り。

  • イシハラ
  • ノブエ
  • ヤノ
  • スギヤマ
  • カトウ
  • スギオカ

おばさん達(ミドリ会)は以下の通り。

  • ヘンミミドリ
  • イワタミドリ
  • タケウチミドリ
  • ススキミドリ
  • トミヤマミドリ
  • ヤナギモトミドリ

ストーリー

イシハラ達のパーティ

パーティは7時に始まった。特に共通点はなかったが、友達の友達などで。同じように社会性のないグループだった。

初回のパーティはノブエが提案したが、誰もパーティの準備をしてこなかった。最初はカップ酒を買ってきて、5時間かけて静かに飲むような会だった

そのパーティに変化が起きたのは4回目以降だった。4回目にスギヤマがカラオケのLDを何枚か持ってきた。誰も歌う人はいなくて、ただ伴奏に合わせてハミングするだけだった。

そこからパーティが進化していき、パーティの変化の原因はカラオケにあるというのが全員の認識だった。

事件の始まり

今回のテーマ曲「恋の季節」を歌うためにじゃんけんをして、パートを決めるのがいつもの流れです。今回勝ったのはイシハラでした。

ハイエースに荷物を積み神奈川の人気のない海岸へ移動します。そこでカラオケ大会。

ことの始まりは、イシハラが40回以上歌い、スギオカは会の興奮が冷めない状態で帰宅して、睡眠薬を飲んで寝たがすぐ起き、二日酔いのまま街へ出たことだった。

そこで見知らぬおばさんに罵られて、おばさんをナイフで殺してしまいます。

殺されたおばさんの名前はヤナギモトミドリ。最初に発見したのはヘンミミドリ。同じ「ミドリ会」のメンバーでした。

スギオカが逃げた時に落とした小さな銀色のバッチをヘンミミドリが拾いました。

ヤナギモトミドリの葬儀

ヤナギモトミドリは一人暮らしだったので、葬儀はミドリ会が行いました。

ミドリ会は、全員が孤独で離婚経験のある女性の集まりです。同じミドリという名前で、友達になってミドリ会が結成されました。

ヤナギモトミドリの葬儀が終わってミドリ会だけになって3時間以上泣いたあと、みんなで「星の流れに」を歌いました。

そして、ヘンミミドリが拾ったバッチをみんなに見せて、何のバッチか知っている人がいないか探します。トミヤマミドリがバッチを知っていました。

ビデオゲームの高得点者がもらえるバッチで、バッチをもらうと写真を撮って店に貼られるものでした。

その店に行くと、写真が貼られた高得点者は7人いました。その中に一人だけ専門学生だったスギオカがいました。

最初の復讐

ヘンミミドリとイワタミドリが、店で見た写真で専門学校からスギオカをつけます。しして、住所を突き止めます。

スギオカが犯人だと確信したミドリ会は、どうやって殺すかの会議をしました。

いつもは、てんでばらばらに話しをして人の話など聞きません。しかし、今回の会議で初めて人の話を聞くことで、他者の存在を意識した日でした。

スギオカは学校帰り女子大の寮の前で立ちションをするクセがありました。

その日も立ちションをしていて、そこに原付バイクに乗ったイワタミドリが近づきます。

「そんなところで立ちションしたらダメよ」

そう声をかけ、スギオカがこっちを向いたタイミングでモップの柄につけた包丁で喉を刺して殺しました。

犯人を捜せ

ミドリ会はタケウチミドリの家で歓喜の中にいました。

対照的にイシハラ達は、スギオカの死をニュースで知り、「チャンチキおけさ」を歌いながら泣いていました。

イシハラとノブエがスギオカが殺された場所に行って情報収集します。そして、その寮に住んでいる女子大生と知り合います。

その女子大生は、イワタミドリが原付バイクでスギオカを殺したところを見ていました。

それとは別にカトウは、ヤナギモトミドリの墓を監視していました。

スギオカが殺された後、ミドリ会がヤナギモトミドリの墓にやってきました。トミヤマミドリは「仇はとったよ」と言ったのをカトウは聞き逃しませんでした。

それで、イシハラ達はミドリ会の存在を知ることになりました。カトウはイシハラ達にそのことを告げ、復讐することになりました。

復讐の復讐

しかし、イシハラ達は復讐のための武器を持っていません。そのため、武器を調達するために全財産を現金に変え、熊谷まで行きました。噂によると「ノガミ金物店」でトカレフが買えるらしいのです。

金物店でトカレフを購入したいと言うと、理由を聞かれます。そして、正直におばさんを殺すというと、その理由を気に入ってくれて売ってくれました。

今回のミドリ会は、カラオケスナックで行われていました。会が終わり、イワタミドリが一人歩いてアパートに帰っている途中、ヤノが現れてイワタミドリをトカレフで撃ち抜きました。

ロケットランチャー

ミドリ会は4人になってしまいました。ニュースでは、通り魔的な犯行で犯人を捕まえることは絶望的と言っています。

しかし、ミドリ達はスギオカの仲間達の犯行だと確信します。スズキミドリとヘンミミドリはスギオカの殺害現場に行きます。そして、イシハラと知り合った女子大生と知り合います。

その女子大生は、イシハラと電話番号の交換をしていました。スズキミドリとヘンミミドリは、スギオカの母親の友人代表だと言って、スギオカの友人に連絡を取るために電話番号を聞き出しました。

そして、山中湖湖畔の日本旅館にやってくるミドリ会の4人。サカグチと名乗る自衛隊員がM72というロケットランチャを売ってくれました。

復讐の復讐の復讐

電話番号からイシハラの存在をしり、ノブエのアパートまでたどり着きました。しかし、ロケットランチャーは後方20メートルに障害物があるところでは使えません。ノブエのアパートを一網打尽に吹っ飛ばすことはできませんでした。

監視していたヘンミミドリは、イシハラ達がみんなでハイエースに乗って出かけることを知ります。行ったのは熱海の手前の海岸で、自分たちだけのカラオケ大会をしていることをミドリ会に報告します。

ヘンミミドリがノブエのアパートを見張っていて、他のメンバーはやってくるはずの海岸で待機していました。

そして、ついにイシハラ達全員がハイエースに乗って出かけていくのも目撃します。出かけた先は、やはりあの海岸でした。

海岸に着くとカラオケ大会の準備をします。そして、1人は車で機材の調整をしていますが、構わず4人がいるところにロケットランチャーを発射発射します。

ヤノ、スギヤマ、カトウの3人がバラバラになって死にました。

そして、生き残ったノブエはイシハラに「ナイフを持ったおばさんがやってくる」と告げ逃げようとします。

おばさんは達は目出し帽を被って襲ってきました。ノブエはナイフで顔を切られ負傷しました。

しかし、イシハラの奇行でおばさん達の殺意をなくし、イシハラとノブエは助かりました。

最後の計画

飛び散ったヤノ達の死体を見たミドリ達は、気持ち悪くて吐いてしまいます。ミドリ達は復讐はもう終わりだと思いました。

イシハラ達は警察に事情聴取を受けますが、ノブエは重症で口を切られたことで何を言っているかわかりません。イシハラは、事情聴取で何の脈略のない話をして、精神疾患があるとみなされてしまいます。

警察が捜査をしていますが、イシハラ達はミドリ会の壊滅を狙います。しかし、ミドリ達はもう集まったりしていませんでした。そのため、調布全体を吹き飛ばそうと計画しました。

街を広域に吹き飛ばすなら原子爆弾がいいとイシハラは言って、ハセヤマゲンジロウに原子爆弾の作り方を聞きに行きます。しかし、原爆はプルトニュームがなくて作れず、燃料気化爆弾の作り方を聞きました。

調布を吹き飛ばす

死んだ仲間の親に「自費出版するのでお金を50万を送って欲しい」と手紙を書きます。4人の親から、ちょっと足りない170万円を集め事ができました。

その金で倉庫を借り、そこで爆発物を作ります。

よく晴れ上がったある日、羽田にあるヘリコプタがチャーターできる会社へ行きます。イシハラ達はビデオカメラを借り、ドイツのテレビ局から依頼を受けたカメラマンとその助手ということにしていました。

チャーターしたヘリで調布駅へ行きます。上空からカメラのケースに入れた燃料気化爆弾を投下しました。爆弾は地下へ降りると、液体の混合からガスを生成し、その後燃えて爆発しました。

イシハラ達の狙い通り調布一面が吹き飛ばされました。しかし、タケウチミドリだけが運よく地下駐車場にいて助かりました。

イシハラ達は山にヘリコプターを下ろし、ヘリのパイロットと一緒に逃げました。

映画

2003年に映画化されました。

イシハラは松田龍平が演じるなど、かなりのメンバーが出演していまます。

さらに、監督は篠原哲雄(映画「犬部」など)、脚本家は大森寿美男(朝ドラ「なつぞら」など)が手掛け、豪華な作品になっています。

配信もされているようなので、見たことのない方は、ぜひご覧になって下さい。

最後に

生き残ったイシハラとノブエは、後に「半島を出よ」にも出てきます。

こちらは、よりハードな内容の小説になっていて、大好きな作品です。

「半島を出よ」もそのうち紹介したいと思っています。

ハードな内容と言えば「5分後の世界」もオススメです。

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