月の影影の海 十二国記(2)

読書



「月の影影の海」は、十二国記シリーズのスタートに位置する物語です。

時系列的には、その前に「魔性の子」がありますが、ちょっと特殊なので、説明は次回以降にしたいと思います。

「月の影影の海」以降の作品も含めアニメ化もされたので、知ってる方も多いとは思います。

十二国記の基礎知識はこちら↓

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基礎知識 十二国記(1) - 雑記所感



「月の影影の海」のあらすじ

日本から月の影(十二国記)の世界へ

主人公は、普通の女子高生 中嶋陽子。

陽子は、寝るたびに恐ろしい気配に追われ、日を追う毎にその距離が縮まっていくという怖い夢を見ていました。

そんな陽子の前に、突如「ケイキ」と名乗る異装の男が現れます。

ケイキは陽子を「主(しゅ)」と呼んで跪き、一方的に謎の契約を迫ります。

そして、突然の出来事に戸惑う陽子を異形の獣(妖魔)が襲撃します。

それを退けたケイキは、強引に陽子を月の影の世界(十二国記の世界)に連れていくのでした。

(タイトルの「月の影影の海」が表されている部分でもあります)

陽子はケイキから「決して剣と鞘を離さないように」と、碧の玉が付いた鞘に収まった剣を渡されます。

「剣を振るえない」という陽子に対して、ケイキのしもべのヒンマン(名前はジョウユウ)を憑依させます。

ジョウユウは、憑依した相手の体を使って戦ってくれる妖魔です。

陽子の意に反して、陽子に襲い掛かる妖魔を撃退していきます。

そして、妖魔の襲撃は月の影に入った後も続きます。

ケイキの「敵の攻撃から目をつぶってはいけない」という警告に反して、恐怖から陽子は目を瞑ってしまいます。

目を瞑ることでジョウユウが動けず(ジョウユウは陽子の目を頼りに戦う)、この世界の海(虚海)に落ちてしまいます。

そして、ケイキ達とはぐれて見知らぬ場所「巧州国」にたどり着きます。

巧州国(巧国)の逃避行

巧国では、陽子と同じように日本からこの世界に流された人(海客)を徹底的に差別していました。

海客は、嵐と共に現れるため、海沿いの村では疫病神扱いされていました。

そのため、海客は処刑されることになっています。

そして、陽子も役所に護送される事になりましたが、その道中でまた妖魔に襲われます。

その時、陽子は護送車の下敷きになった鞘から、剣と玉だけを切り外して、その場から逃走します。

ケイキからの説明もなく、全く事情が判らないままの陽子。

縋る気持ちで現地の人間に助けを求めますが、海客として酷い仕打ちを受けます。

そして、逃亡中の海客の不利な立場のため、遊女として利用されそうになったりします。

人目を避けて逃げるうちに、獣は夜に襲ってくることがわかってきます。

夜は襲ってくる獣と戦い、昼に寝るようにしました。

そして、陽子は幻を見るようになります。

その幻は日本のもので、自分の周りにいた人達が自分の事を悪く言っている幻(実際は事実を見せるもの)でした。

さらに、青猿が現れて、不安にする問いかけをし、陽子は人間不信に陥ることになります。

その青猿の正体は、陽子が無くした鞘に封じられていた妖魔でした。

剣と鞘が離れたため、封印が解け、現れたものでした。

楽俊との出会い

人目を避けつつ、なおも襲撃を続ける妖魔と戦い続ける陽子は、満身創痍となります。

精神的にも肉体的にも追い詰められ、行き倒れたところを半獣の楽俊に救われます。

楽俊は陽子を助け、介抱してくれます。

さらに、海客に対する保護体制が整っている雁州国(雁国)への道案内を買って出ます。

その道中に、妖魔と遭遇してそれを退ける陽子でしたが、その際に楽俊が倒れてしまいます。

海客であることが衛士(警備兵)に見つかるという恐怖から、倒れている楽俊を見捨ててしまいます。

楽俊がケガをしているのか、死んでいるのか、無事なのかも確かめられませんでした。

それを後悔する陽子でしたが、同時に「口封じに楽俊を殺す」という選択肢を選ばなかった自分に安堵するのでした。

その時、青猿が現れ「口封じにあのネズミを殺せばよかったのに」と言います。

この逃避行、楽俊との出会いで強くなった陽子は、青猿に立ち向かい切ります。

そうすると、無くしたはずの鞘(青猿が死んで妖力がなくなった)が現れました。

雁国

雁国へたどり着いた陽子を待っていたのは、なんと楽俊でした。

楽俊は先に雁国に渡り、港で働きながら情報を集め、陽子を待っていたのでした。

再び二人旅となった陽子たちは、雁国で暮らす海客「壁落人(へき・らくじん)」を訪ねました。

そこで、陽子が「胎果」であることを教えられます。

胎果は、元々十二国の人間で、生まれる前に日本に流され、日本生まれた人のことを指します。

そして、陽子と楽俊の何気ない会話でケイキのことをしもべが「台輔」と呼んでいたことを思い出します。

台輔は、麒麟の役職である「宰輔」の敬称です。

それは、ケイキとは慶東国(慶国)の麒麟の「景麒」であることの証明でした。

そして、景麒が「主」と呼ぶならば、陽子は慶国の王「景王」となります。

陽子が王だと分かり距離を置こうとする楽俊に、陽子は反発します。

実際には二人の間の距離しか離れていないのに、なぜ景王だからと距離を置こうとするのか?と。

そう言われ、楽俊は今まで通りの接し方をしようとします。

楽俊は雁国の麒麟(延台輔)宛てに、慶王保護の書状を送ります。

その手紙を見た雁国の王の延王は、自ら出向き、妖魔から襲われた陽子達を助けました。

景王として

延王は陽子と同じ、胎果であることを告げます。

そして、この(十二国記の)世界について、教えてくれます。

まず、麒麟と契約した時点で、神となった言うのです。

そして、日本に戻ればこの世界の民を見捨てることになり、この世界の天意に反すると言います。

そのため、天意に反した陽子は短期間で死に至り、王を亡くした慶国の大勢の民が苦しむことになると言うのです。

そして、それをわかった上で、日本に戻るのか、景王になるのかの選択を迫ります。

陽子は、自分は王の器ではないと迷います。

その時、景麒が陽子を守るために付けたしもべ(景麒の「使令」の妖魔)のジョウユウは、今までの葛藤を見てきたことを伝えます。

そして、「玉座を望みなさい。あなたにならできるでしょう」と告げるのでした。

陽子は迷った果てに、延王の助力を受けて慶国の王になることを決意しました。

そして、慶国に立った偽王を倒し、王となるのでした。



「月の影影の海」の感想

この「月の影影の海」 は、最初はアニメから見たのですが、面白さにハマり、本を購入して読みました。

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今では、NETFLIXなどの配信サービスでも見ることができます。

十二国記シリーズは、世界の設定がしっかりされています。

とにかく、小野不由美はすごい作家だと思いました。

地図にある国の形こそ、まさに作ったような形(作った訳ですが)をしています。

しかし、その世界のシステム、登場人物の描き方、苦悩や葛藤など、かなりリアルな描写です。

そういう世界観に魅了され、特にドはまりしてしまった作品でした。

まず、この「月の影影の海」から見るのが、いいと思います。

日本だけでなく、世界中にファンがいることも納得の内容です。

物語の濃厚さに比べ、文庫本2冊という読みやすさも、魅力的です。

読んだことのない方も、ぜひ一度読んで欲しいです。