プロダクトプレイスメント ユニコーンに乗って(4)

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プロダクトプレイスメント は、マーケティング用語で「コンテンツの中に広告商品を取り込み、より自然に生活者に訴求する手法」です。

スタートアップ企業にとって、資金調達は難しい問題です。売り上げが急に何倍にもなる方法は、現実的に少ないものです。そして、銀行や融資元が、希望額を融資してくれるとは限りません。

そんな第4話のネタバレです。

ユニコーンに乗って公式HP

主な登場人物

成川なるかわ佐奈さな  永野芽郁
小鳥ことり智志さとし  西島秀俊
須崎すざきこう   杉野遥亮
森本もりもと海斗かいと  坂東龍汰
栗木くりき次郎じろう  前原 滉
夏井なつい恵実めぐみ  青山テルマ
羽田はねだ早智さち  広末涼子

第4話のストーリー

マッチングアプリ

佐奈は、マッチングアプリでマッチした人と、待ち合わせしていました。その場に、功も走って向かっています。

「お待たせ。あなたが成川さん?高山です。じゃあ、行こうか」

その場に功も合流しました。

このマッチングは、恋愛系ではありません。企業と投資家をマッチングするサイトで、プロダクトを気に入ってもらえたら、投資してもらえるというものでした。

今、ドリームポニーは資金面で問題を抱えています。まず、「ドリームポニーキャンパス」の開発費が必要なのと、会社のある建物の賃料が値上げされる予定なのでした。このまま、どこからも資金援助がなく賃料が上がったら厳しい状況です。

そして、佐奈がマッチングした高山は、人材派遣サービスで財を成して、現在は投資家として活躍している人でした。会社は、株式会社GFファンド。投資可能金額は5000万円から1億円ということでした。

高山

「これが、スタディポニーキャンパスの概要です。
 このプロダクトを柱に今後、ビジネスを発展させていきたいと考えています。どうでしょうか?」

佐奈が資料を使って高山に事業内容を説明しています。

「おもしろい。気に入った。私は、ずっとこういうプロダクトを待っていたんですよ。
 成川さんが言うようにもっと誰もが自由に楽しく学べる環境があったっていいはずです」

高山の反応は、かなり好感触です。

「教育は全ての基盤ですから。質のいい教育を提供し質のいい人材が育てば、その分画期的なビジネスが生まれる。そこに投資すれば、私個人も潤うという訳です。
 ぜひ、あなたたちのような若い起業家にイノベーションを起こして欲しい。
 投資の件、前向きに検討させていただきます。
 今度、オフィスの方へも遊びに行かせて下さい」

そう言うと、第1回目の面談は、上々の出来で終わることができました。

突然の来社

リニューアルしたスタディポニー「スタディーポニーU」の新規会員も順調に伸びていました。そして、目標の20万人まで、もう少しで達成できそうです。そして、今回の高山に投資してもらえれば、家賃が上がったとしても、スタディポニーキャンパスの開発にも入れます。

そんな時、高山から連絡が入ります。オフィスへ遊びに行きたいと言っていましたが、いきなりやって来たのでした。

「職場の雰囲気を知ることは、重要な投資の材料になりますから」

迎えに行った佐奈に高山はそう言います。

しかし、社内は大混乱でした。突然の訪問で、片付けをしています。そんな時、小鳥はお茶の準備一人していました。

栗木は、サンダル履きで、穴の開いた靴下。恵実は、露出度の高い服。海斗はクッキー食べながら。

「イマドキの若者の自由な職場ですね」

高山はそう感想を言いましたが、ちょっと呆れ気味でした。ビジネス的には少々問題がある職場です。

「みんな個性を大切に働いています」

佐奈は取り繕うようにそう言います。そこに小鳥がお茶を運んできました。

小鳥は自己紹介すると、名刺を交換します。そして「お召物、素敵ですね」などと、ビジネス雑談を交わしていました。

グッジョブ

「夏にスーツは暑苦しくないですか?」

空気を読まず海斗が発言すると、小鳥が説明します。

「スーツを着ると言うのは、相手への敬意でもあるんですよ。
 時間と手間をかけて身だしなみを整えるということは、それだけ相手のことを大切に思ってるという証ですから」

そして、お茶を堪能する高山。

「小鳥さんのような方がいて安心しました」

そう言ってもらえました。そして、高山は帰り際に佐奈をディナーに誘います。

「成川さん、もっとお話を聞きたいので、今度金曜日の夜、二人でお食事でもどうですか?」

予定を確認し、大丈夫と答える佐奈。高山は、佐奈と一緒に送りにきた小鳥に囁きます。

「CEOが若い女性だと、何かいいですね」

そして、高山が帰ると、佐奈は小鳥に「グッジョブ」と言うのでした。しかし、佐奈がハイタッチしようとしても、小鳥は受けることができませんでした。

誤爆

「今度の金曜日、こちらでお待ちしています。レジデンスタワー青山2903」

小鳥に羽田早智から連絡が入りました。子供が壊してしまった双眼鏡の修理が終わったようです。しかし、住所が自宅な事に驚く小鳥。

「わかりました。それでは金曜夜6時にお会いしましょう。楽しみにしています。小鳥」

小鳥はそう返信しました。

それが大問題。返信したつもりが、社内のチャットに誤爆してしまっていたのです。

みんなに見られてしまいました。しかし、誰と小鳥が会うのかは、知られてはいません。

詮索

小鳥は、たまに早く帰っていました。フレックスタイム制なので、その時間内であれば、早く帰っても問題ありません。佐奈は小鳥にそう伝えます。

「小鳥さん、金曜日だけじゃなく、水曜日もデートかな?そう言えば、時々早く帰る日あるよな?」

栗木は、小鳥のプライベートが気になっていました。しかし、佐奈に「人のプライベートに首突っ込むの良くないよ」と注意されます。

そして、恵実は「小鳥ん、グッドラック」と言って、香水の小瓶を鞄に入れられました。

功の予定

佐奈は功に、金曜日の予定を聞きます。

「また高山さんと食事に行くことになったんだけど、功も来れる?」

しかし、功は会社の賃料の件で、父親と話しをするつもりでした。それを佐奈に伝えると「そっちを優先して」と言われます。

「佐奈、大丈夫?食事の時はフォークとかナイフは外側から取るんだからね」

会合をするような年齢でもありませんし、仕事上の付き合いが多い方でもありません。ディナーのエチケットについて功は心配します。しかし、佐奈だってそれぐらいはわかります。

「それぐらいはわかるよ。バカにしすぎ」

そう言って笑いあうのでした。

功と父親

金曜日、功はスーツを着て、実家にやってきました。スーツを着たのは、先日の小鳥の「相手への敬意」の言葉が響いたからでした。そして、手土産を持って、実家に帰ります。

「何しにきた!帰れ!」

功が玄関に着くと、父親が怒鳴りながらでてきました。仕方なく、功は玄関で話します。

「俺のこと許せないのはわります。でも、ドリームポニーは関係ありません。手を引いて下さい。お願いします」

そう言って頭を下げますが、父親は取り合ってくれません。

「そんな賃料払えない会社はすぐに潰れる。すぐに辞めてこい。話しはそれからだ」

そう言うと、父親は中に入ってしまいました。母親がなだめますが、今回は無理そうです。ちゃんと話を聞いてもらえず、悔しい功でした。

早智の家

「ここか・・・」

思わず声を出して小鳥がつぶやくほど、見ただけで高級とわかるタワーマンションでした。

そんな時、匂いが気になる小鳥。恵実が入れた香水の小瓶が、カバンの中でこぼれてしまっていました。しかし、もう約束の時間です。小鳥はそのまま早智の家に向かいました。

「こっちこっち」早智の息子・玲央れおが手を引いて、部屋を案内してくれます。そして、匂いにも気づかれてしまいました。

「外だとゆっくりできなくて」

早智はそう言って、自宅に招待した理由を話しました。小鳥のために、家にシェフを呼んでいました。

「前の夫がホームパーティー好きで、時々こうやって来てもらうんです」

以前シングルだと言っていた早智。別れたのか、死別したのかはわかりません。

「今日の小鳥さん、シジュウカラみたい」

小鳥のネクタイを見て、色味を鳥に例えたのでした。そんないい雰囲気の中、小鳥は食事をごちそうになるのでした。

運命共同体

「美味しい。お肉柔らか!あ、すみません」

慣れない食事で、ついテンションが上がってしまう佐奈。そんな佐奈に高山は言います。

「リラックスしていただいて大丈夫ですよ。今日はCEOの人となりを知りたいのもあってお呼びしたんです。ざっくばらんにお話していただければ」

そう言って、食事をしながら話しをします。

「ドリームポニーさんは、会社の雰囲気も良かったですし、理念もしっかりしている。
 なにより、開発予定のプロダクトがおもしろい。
 決めました。1億円の投資でどうでしょう?」

突然の金額提示に驚く佐奈。1億円あれば、賃料も気にせず、開発を始めることができます。

「この先、私たちは運命共同体です」

高山はそう言うと、二人で乾杯しました。

見た目

「どうですか?会社の方は?」

早智は小鳥に聞きます。最初に会った時、小鳥はドリームポニーに就職したばかりでした。

「楽しくやってます。新しく投資をして下さる方も見つかりそうで」

そいう言うと、早智も資金調達に苦労した話しをしてくれました。

「苦労しまくりですよ。私が投資家の方とお会いする時に気を付けていたことって、なんだかわかりますか?」

小鳥は、10分前行動ではなく、4分前行動がベストだと話します。しかし、もちろんそれではありません。

「正解は見た目です。服装はパンツにジャケット、髪型も今よりもずっと短いベリーショートにしていました。
 女らしさを消すためですよ。女性だから感情的だとか、冷静な判断ができないとか思う人もいて。サバサバした強い女性を演じるために。それに、たまに下心で近づいてくる人もいましたし。
 投資を餌に相手が断りづらいことをいいことに近づいて、だいたい夜に二人での食事誘ってくる人は要注意ですね」

そう聞いて、佐奈のことが心配になる小鳥でした。

心配的中

佐奈に電話する小鳥ですが、佐奈は電話に出ません。

「羽田社長、すみません。ちょっと心配なことがあって、今日はすみません」

そう言うと、玲央の「帰っちゃやだ」も丁寧に断って、帰りました。あまりに急いでいて、返してもらった双眼鏡を、置いてきてしまいました。

その頃、佐奈は高山にワインを勧められていました。酒の強い高山は、ワインを何本も空け、佐奈が酔うのを待っています。

小鳥は外に出ると功に連絡します。

「須崎さん、今どちらですか?
 成川さんと連絡が取れなくて。ラインも既読にならないし、電話もでないんです。
 高山さんとどこで食事されているか知りませんか?」

功は西麻布のレストランを小鳥に伝えます。小鳥はそれを聞いて、レストランへ向かいます。そして、功も心配になって向かうのでした。

男の力

飲み過ぎていた佐奈は、高山にもうそろそろと言って、お開きにしたいと伝えます。しかし、高山は応じません。

「そんなこと言って、成川さんはまだまだイケる口でしょ?最高だ。これからもこうして二人で飲もうね」

そんなことを言いながら、飲み続ける高山。席も佐奈の向かいから、横に移ってきて、佐奈の肩に手をかけます。

「すみません。今日は失礼します」

さすがにヤバいと感じた佐奈は、一方的に切り出します。佐奈が帰ろうとするのを手を掴んで止める高山。

「何言ってるの?本番はこれからだろう?」

高山はそう言うと、次の店に行こうと佐奈を引っ張っていきます。佐奈は抵抗しますが、酔っ払った男の人に掴まれ、振りほどけません。

酒のつまみ

「いいだろうもう1軒ぐらい。こっちは1億円出すんだだから。それぐらいサービスしろよ」

高山は下心を丸出しで、佐奈を強引にタクシーに乗せようとします。それで佐奈は、我慢の限界に達しました。自由な右手で、高山をグーで殴ろうとします。

その時、間一髪間に合ったのは小鳥でした。佐奈のこぶしを受け止めると、高山だけをタクシーに乗せました。

そこに功も合流します。恐怖に手が振るえる佐奈。その手を握る功。

「はあ、本当に危なかった。初めて人のことパンチするかと思った」

佐奈は怖かった思いを冗談にして、功に話しました。功は握った手を離すと、自分の手にパンチするように言います。佐奈は「高山、バカ」と言いながら、功の手を殴るのでした。

小鳥はその姿をちょっと離れたところから見ていました。若者の邪魔をしない、おじさんの心遣いです。それに気づいた佐奈は、小鳥を呼びます。

「小鳥さんが気づいてくれたんですよね。ありがとうございます。
 本当悔しい。ピーナッツぐらいにしか思われてなかったなんて」

佐奈は、高山にとっては「酒のつまみ」ぐらいにしか思っていませんでした。早智が言うように、投資をチラつかせ、自分の好きにするつもりだったのです。

そして、三人で帰ろうとしたとき、小鳥の靴が壊れていました。急いで走ってたために、ベロンとつま先が見えてしまったのでした。

無理強い

新しい出資の話がなくなってしまいました。そのため、ベンチャーキャピタルの白金を招いて、社内で会議を行います。

「事情は聞きました。そろそろ資金調達にだけに頼らないで、安定的に稼げるビジネスモデルを考える時期だと思いますけど?」

白金の提案を議題に、議論を交わします。ドリームポニーの主な収入源は広告収入です。しかし、ユーザーからはイチイチ広告が表示さるのは煩わしいという声もあります。広告収入を増やすのには、現状限界があると佐奈は考えていました。

「今更ですけど、課金制を導入したらどうですか?公告なしでアプリを使いたい人は課金してもらう」

海斗は真っ当な提案をします。ただ、それはドリームポニーの理念には反します。

「課金制を導入した後、お金のある人とない人では格差が生まれる。平等じゃなくなっちゃうよね」

しかし、開発費が必要な今、全員に対して全部無料というのは無理があると考えている人が多いようです。しかし、みんなのその反応に驚く佐奈。佐奈は、スタッフ達に理念を無理強いしてたのかと考えてしまうのでした。

そんなこと

「いろいろあった今、課金制はありだと思う。このまま開発費を得られずに何もできないよりは、確実に稼げる方法を取るべきだと思う。理想だけじゃスタポニキャンパスは作れないし、会社も存続できない。現実を見ないと」

まさか、功も課金制に賛成するとは思いませんでした。

「私は、課金制には反対です。もちろん、財政は厳しいです。このままだと、あと10カ月で資金ショートします。
 ですが、課金制を導入すれば、成川さんが言っていたように格差が生まれます。差が生まれれば、そのことで嫌な思いや悔しい思いをする人がいるんです。それは、ドリームポニーの理念に反すると思う」

小鳥だけは、課金制に反対でした。しかし、それは功もわかっています。ただ、今はそんなことを言っていられる場合でないのです。功は「そんなことはわかっています」と小鳥に言います。

しかし、その「そんなこと」に反応する佐奈。企業理念は「そんなこと」ではありません。それに、功は金持ちのボンボンで、お金に困ったことはありません。佐奈は、自分の貧乏だったことを踏まえて、お金のない人達にも「無料で」提供したいのです。

「そんなこと?功にはわからないと思う。わかるはずないよ」

佐奈は功に強く言ってしまいました。場の雰囲気が悪くなったので、今日はここまでになりました。

理想を現実に変えられるアイディア

会議の場を悪くしてしまい、落ち込む佐奈。そんな佐奈に小鳥が声をかけます。

「この3年、私だけが無料にこだわって、みんなに気を遣わせていたとしたら、情けないです」

功は会社を守るために発言しました。しかし、佐奈は会社も理念も守りたかったのです。そこで、ちょっとした差が生まれてしまったのでした。

佐奈は、自分の言っていることが現実離れした「お花畑」なのかと悩んでいます。

「無理だと思うことをアイディアで乗り越える。それは、成川さん達が今までずっとやってきたことですよね?今回もまた、理想を現実に変えられるアイディアを考えましょう。私も考えます」

小鳥はそう言うと、佐奈を気分転換に連れ出しました。

ひらめき

小鳥が連れてきたのは図書館でした。そこは、小鳥とばったり会った場所でした。そして、学校に行けなかった佐奈が勉強していたのも図書館です。

小鳥が「いいのがありました」と持ってきたのは、ビジネス雑誌でした。その雑誌を小鳥と佐奈は一緒に読みます。途中、雑誌に書いてあったラーメンを食べる4コマ漫画で、思わず二人でお腹を鳴らしてしまいました。

そして、会社に戻り、また仕事です。

残業時間に、寝てしまう佐奈。それを見つけ、ドリームポニーのパーカーを掛けてあげる小鳥。

佐奈は起きると、ドリームポニーのパーカーを着たまま帰宅しました。小鳥も自宅へ帰宅します。

家に帰った佐奈を待っていたのは妹・依里いりでした。ドリームポニーのパーカーを着ている姉に突っ込む依理。

「それ会社じゃなくても来てるの?有名なブランドなら・・・」

その言葉で閃く佐奈。

その頃、4コマ漫画の影響で、ラーメンを作って食べる小鳥。

小鳥も何か閃きました。

プロダクトプレイスメント

翌朝、出勤すると、まず佐奈は功に謝ります。

「昨日はごめん。あれはさすがに言い過ぎた。それでね、新しいアイディアを思いついたの、聞いてもらえる?」

そこに小鳥も出勤してきました。小鳥も新しいアイディアを聞いて欲しいと言うのでした。

そこで、スタッフを集め、小鳥が新しいアイディアについて説明します。

「昨夜、このビジネス雑誌の四コマ漫画を読んでいました。そして、私はラーメンが食べたくなって気づいたらラーメンを食べていました。
 つまり、この漫画に登場したラーメンが、一種の宣伝効果となっていたということです。それをスタポニキャンパスでもできないかと考えたわけです」

実は、佐奈もラーメンではありませんが、同じことを考えていました。

「例えば、アバターに着せる服をアパレルブランドとコラボすることで、その企業から広告費を得られないかなって。つまり、アバターの服自体が広告になるってこと。
 スタポニキャンパスの中でアバターが集まれるカフェを作る。それを実際のカフェとコラボすれば、広告収入を得られるし、スタポニキャンパス自体も、より私たちの日常に近い空間にできるんじゃないかって。どうかな?」

それは、マーケティング用語で「プロダクトプレイスメント」と言われるものです。

功はそのアイディアを聞き、「すごいいいアイディア」だと言うのでした。そして、打ち合わせで対案もなく否定してことを謝りました。

功にはわからないと思うの意味

「素敵なアイディアでした」

小鳥が一人作業しているところへ、功がやってきました。

「小鳥さんはどうしてそこまで?銀行員だったのに、正直課金制に反対したのも意外でした」

功が素直に聞くと、小鳥は教えてくれました。

「私は昔、貧しかったもので、成川さんの気持ちが少しわかるんです。
 特に子供の頃は、親の経済力次第で、いろんなことが決まってしまうじゃないですか。努力とは関係のないところで、差が生まれてしまうんです。あの頃の悔しさは、不思議と今でも覚えています」

小鳥が言ったことで「功にはわからないと思う」の意味を知る功。佐奈の苦労を身近で見てわかっていたつもりでしたが、根本的な部分はわかっていなかったのです。しかし、それは仕方のない事です。不足のない生活では、不足するということ自体が理解できないのです。

そして功は、小鳥にお酒について、アドバイスをもらいました。功自身は飲めませんが、「酒好きのめんどくさいおじさん」に手土産で持っていくためです。

息子の気持ち

功は、小鳥に選んでもらった焼酎を持って、父親の帰りを待っていました。

「こんなことして、会社辞める気になったのか?」

今度は追い返すことなく、家に入れてくれた父親。一緒に酒を飲みます。

「起業して3年経って、最近父さんの言っていたことがわかるようになってきた。
 いい大学を出ろとか、大手企業に勤めろとか、肩書ばっかり気にしてって思ってた。けれど、全部俺が苦労しないためだったんだよな。今まで、いろんなものを与えてもらって、父さんには感謝してる。
 でも、今の俺に足りないのは、苦労することだと思う。ドリームポニーでは、資金調達にも苦労してる。でもその中で、自分に足りないものに気づいたり、何十年も会社を守ってきた父さんの凄さにも気づかされた。
 だから俺は、この先自分の力で生きていくためにも、ちゃんと苦労したい。
 ビルの賃料も上げたいなら上げてもらっても構わないから。
 でも、俺は諦めないよ。誰かさんに似て頑固でさ」

飲めない酒を飲んで、功は寝てしまいました。息子が腹を割って話してくれて、父親としても嬉しかったようです。

ビジネスコンテスト再び

「功?いったい何したの?」

翌朝、功が出社すると佐奈は驚いていました。ビルの賃料の値上げの話がなくなったのです。

そして、父親と酒を飲んだという話しを佐奈に話します。

「どんなお酒も、息子に注いでもらえばプライスレスです」

小鳥はカタカナを上手に使えるようになりました。

そこに恵実が出勤してきて、驚く情報を伝えます。

「ねえ、聞いて。開発費をゲットするアイディア見つかっちゃった!
 スタートアップ企業を対象にしたビジネスコンテスト。
 優勝したら賞金も出る。1000万円」

そのコンテストには、投資家も参加するようです。もし、目に留まれば、投資してくれる可能性がありました。

ビジネスコンテストは、ドリームポニーの原点です。企業するために出場したビジネスコンテストは、賞金が100万円でした。今回はその10倍。それぐらいの額で、開発が完成できるとは思えません。しかし、今のドリームポニーには、必要なお金でした。

そして、そのコンテストで起業家の目に留まらなくとも、話題になるだけでもいいのです。そうすれば、コンテスト優勝したという話しをして、投資してくれるところを見つけることができるかも知れません。

最後に

またビジネスコンテストかという感じは否めません。ただ、どう展開するかで、話しは変わってくると思います。

そして、小鳥と早智の関係。さらに、小鳥と佐奈の関係も気になります。功と佐奈は良い雰囲気もありますが、最近は小鳥の方に惹かれているようにも思えます。

次回は、壊れてしまった小鳥の靴から、話しが展開するようです。

来週の予告

どうなるのか、楽しみです。

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