いざ航空学校へ は第8週のサブタイトルです。
幼馴染の貴司と久留美も葛藤を乗り越え、自分達の道を進んでいくことになりました。
舞は、航空学校へ入学して、パイロットになるのが新たな夢です。
そんな第8週のまとめです。
主な登場人物
岩倉舞 福原遥 航空工学を学ぶ大学生
梅津貴司 赤楚衛二 舞の幼馴染、元システムエンジニア
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護学生
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、東大生
柏木弘明 目黒蓮 同期。
矢野倫子 山崎紘菜 同期。
中澤真一 濱正悟 同期。
吉田大誠 醍醐虎汰朗 同期。
水島祐樹 佐野弘樹 同期。
八木巌 又吉直樹 古本屋デラシネ店主
梅津勝 山口智充 貴司の父。浩太の幼馴染のお好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
笠巻久之 古館寛治 ネジ工場の従業員
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
第8週のストーリー
受験勉強
舞は、パイロットになるため猛勉強中です。実際の試験を想定して、タイマーをかけて入試問題を解いてみます。しかし、思ったようにはできませんでした。
「ぜんぜんあかん。。。」
航空学校入学試験まで、あと3か月になりました。
そして、舞は大学の勉強も頑張っています。それは、航空学校へ入学する資格を得るためには、大学に2年以上在籍し、一定の単位を取得しないといけないのでした。
舞は勉強だけでなく、バイトも頑張っていました。フラフラになりながら働く舞。
「試験、来月なんやから、もうバイトせんでもええんちゃうの?」
しかし、舞は大学を中退することを了承してもらったので、少しでも自分で学費を稼ぎたいと思っていたのです。
ただ、体はついていっていないようです。テーブルにぶつかってコーヒーをぶちまけていました。
そんなこんなで、航空学校入試まであと1ヶ月になりました。
試験
一次試験の日、舞は両親に見送られ、試験会場へ向かいました。二人が、合格祈願のお守りを用意してくれています。
試験は、全国から集まったパイロット志望の学生たち500人以上が、半年かけて3回の試験に挑みます。そして、入学できるのは72名と、なかなかの難関です。
二次試験では、健康診断や心理テストなど、適性検査が行われます。
そして最後は、宮崎本校での面接試験です。
面接は、2名1組で行われます。舞と一緒になったのは、柏木でした。
「こういうのはじめてで、なんか緊張しますね」
舞は、柏木にそう問いかけますが、柏木はそっけなく返します。
「別に。君の緊張はなんの関係もない。黙っててくれないか」
面接
「得意なことは何かを教えて下さい。岩倉さんから」
面接官に聞かれ、舞は答えます。
「子供の頃から工作が好きで、自分で作ったゴム飛行機を友達と飛ばすのが大好きでした。あと、ばらもん凧を・・・」
しかし、舞が答えている途中で、面接官に止められてしまいます。
「岩倉さん、私は得意なことは何かと質問しました。好きなことではありませんよ。柏木さんはどうですか?」
次は柏木が答える番です。
「私は乗馬が得意です。この間の障害馬術の大会では、他の選手はオクサーからバーティカルのベンディングラインをエイトストライドでおこなったのです。私はセブンストライドにしました」
しかし、あまりに専門的過ぎて、面接官もついて行けません。聞き返します。
「幅のある障害物から、垂直の障害物に向かってカーブしながら走るラインです。馬とのコンタクトもいい感じで、ノーミスでクリアラントしました」
そんな柏木に驚く舞。そして、納得して感心する面接官の姿がありました。
お花畑か
「最後に、パイロットになりたい理由を教えて下さい。岩倉さんから」
志望動機は、面接の基本です。舞は自分の思いを話します。
「私がパイロットを目指す理由は、空飛ぶ楽しさが忘れられなかったからです。私は大学で、人力飛行機のパイロットをやりました。仲間と一緒に作った飛行機で飛んだ時、一人一人の思いがこの飛行機を飛ばしてるんやって思って、とても楽しくて、体の奥底から強い気持ちがぶわーっと湧き出てきました。たくさんの人のいろんな思いを乗せて、空飛ぶパイロットになりたい。そんで、みんなに喜んでもらいたい。それが、私の夢です」
そして、柏木は簡単に理由を語りました。
「私は、多くのお客様の命を預かって、世界中の空を飛ぶパイロットの姿に憧れてきました」
そして、面接は終わりました。
枚が気を抜いた所で、柏木が話しかけます。
「あんな回答が、よく出てくるな。人力飛行機みたいなお遊びと、旅客機のパイロットは違う。プロフェッショナルな厳しい世界だ。夢だの思いだの、頭の中お花畑か」
そう言われ、舞は珍しく感情をあらわにするのでした。しかし、面と向かっては言えません。柏木は、最後に「もう君と会うことないだろう」と言って去って行きました。
合格祝い
面接からしばらくして、郵便が届きました。
結果は、見事合格です。舞は、貴司と久留美と、貴司の実家のお好み焼き屋で、合格を祝いました。
「正直、何べんも無理とちゃうかおもた。面接も焦ってしもて、変な空気なったし。たぶんギリギリの合格ちゃうかな」
舞はそう思っていました。久留美は、他の受験生が気になります。
「他の人ら、賢そうやった?」
舞は、面接で一緒だった柏木のことを思い出しました。
「うん、一緒に面接受けた人、なんや難しいことぶわーっとゆうてた」
そこに、貴司の母・雪乃がやってきました。
「イケメンやった?その人イケメン?パイロットいうのは、ハイスペック男子の集まりらしいやんか」
しかし、舞にはイケメンよりも感じが悪い印象しかありませんでした。
貴司のその後
舞は、柏木の感じが悪いエピソードを話すと、久留美も乗ってきます。
「そういう人おるよな。私も実習先の病院でな、こんなんもできへんの。看護師なんの100年かかるなぁって鼻で笑われて、やばない?」
そう愚痴るのでした。
そして、貴司に腹が立ったことがないかと聞きます。
「ないな」
貴司は、穏やかな生活をしているようです。
「この間、3週間島根に行ってたん。今は気向いたところ行って、思い浮かんだ言葉メモして、自分の中の何かがちょとずつ広がっていく感じがすんねんな」
そう話す貴司は、ちょっと前に比べて、だいぶ楽しそうでした。
そして、貴司の父・勝がお好み焼きを焼いて持ってきてくれました。
「お待たせしました。舞ちゃんの合格祝いです。梅津モダンミックスバッファローの雄たけびスペシャル!かっきーん」
そのお好み焼きには、「祝 合格」とケチャップで書かれていました。
出発前日
それから1年ほど待機していた舞は、航空学校入学のため宮崎に明日、出発します。荷造りが終わると、リビングへ行きました。
「お父ちゃんとお母ちゃんのおかげです。ホンマにありがとう」
舞はソファーに座ると、お父ちゃんとお母ちゃんに感謝の言葉を伝えました。
「けど、これからやで、自分のやりたいこと貫くっていうのは、ホンマ大変なことやってな。今まで経験したことのない壁にぶつかって、何べんもくじけそうになるかもわからへん。けどな、夢を叶えるには一歩一歩、諦めんと進んでいくしかあらへんねん」
お父ちゃんは、舞に諭すように伝えました。お母ちゃんは、舞のことが心配です。
「しんどなった時は、いつでも電話してきてええんやで」
そんな二人の思いに、舞は嬉しくなりました。
同部屋
制服を着て舞は、航空学校宮崎本校へやってきました。
校門で気合を入れる舞。その前には、あの感じの悪い柏木の姿がありました。ちゃんと合格していました。
航空学校の学生は、全員が寮生活です。そして、女子は鍵の付いた扉で仕切られた、女子寮があります。
舞は、自分の名前が書かれた部屋にノックして入りました。そこには、舞より先に来ていた矢野倫子が、荷ほどきをしていました。
挨拶をして、倫子を見つめる舞。その視線に気づいた倫子は「なに?」と聞きました。
「男子ばっかりだと思ってたんで、矢野さんがいてはってホッとしました」
そう言う舞に対して、倫子はさっぱりしています。
「そう?私は別に」
そんな倫子に驚きながらも、舞も荷ほどきをするのでした。舞は、ばらもん凧も持ってきていました。
グループ分け
舞が一緒に学ぶクラスは18名です。まずは宮崎で4か月、飛ぶための基礎知識を計510時間みっちり学びます。
「このクラスを担当する都築です。皆さんが空を飛ぶための知識をしっかり身に着けて、帯広のフライト課程に進めるために指導していきます。さっそくですが、授業ではチームで課題に取り組んでもらうことがあるので、6人ずつ3つのチームを作ります」
そう言われて、分けられた6人のグループで、食堂で食事を取ります。
舞のグループは、水島祐樹、矢野倫子、中澤真一、吉田大誠、柏木弘明の6人です。
その6人はなかなかクセの強い人達です。水島は軽いノリで、大阪からきた舞に「何か面白いこと言って」と要求しました。しかし、上手く返せない舞が困っていると、倫子が助け舟を出してくれます。
そして、舞がみんながどこから来たのかと聞くと、柏木が遮ります。
「コレ意味あるのか?別に慣れあう必要ないだろう」
そんな感じで、なかなか上手く行かない顔合わせになりました。
舞は授業中、質問されますが、間違えてしまいました。そこで、柏木が訂正してくれます。舞は、授業が終わると、柏木に助けてくれたお礼を言います。
「別に助けたつもりはない」
なかなか大変なグループになりそうです。
倫子の行動
夜、勉強している舞。しかし、ルームメイトの倫子は化粧をして、着替えて出かけます。
「どっか行きはるんですか?」
舞がそう訊ねると、倫子は「ちょっとね」と言って部屋を出ていきました。
その翌日、コックピットの模型を使った授業で、教官からの質問に答えられる倫子。そして、学生たちを見てメモを取る都築教官。
倫子は部屋で勉強している訳ではありませんが、ちゃんと予習していました。そして、その日も出かけていく倫子。気になった舞は、倫子の後を追いかけます。
そして、倫子が入って行ったのは、男の先輩の部屋でした。
次の日も、先輩の部屋に入っていく倫子。舞は、ついつい聞き耳をたててしまいます。そこに同じグループの吉田がやってきました。
「岩倉さん?何してるの?」
驚く舞。その時、倫子が中から出てきて、舞とぶつかりました。
「なにしてるの?」
そう聞かれた舞は、倫子が心配だったことを伝えます。
「ひょっとして、男子の部屋に遊びに行ってると思ってるわけ?」
舞は、そう思っていました。
「違うわよ。勉強しに行ってただけ。勉強できない人とやっても成績あがらないでしょ?ごめん。言い過ぎた」
倫子は事情を話します。着替えてメイクしてるのは、気合が入るからでした。
「すっぴんで部屋着だと緊張感でないでしょ?あなた、もっと要領よくやっていかないとやっていけないわよ」
そうして、舞も先輩の部屋に誘ってくれたのでした。
都築ポイント
食堂で美味しそうにカレー食べる舞。そこに倫子がやってきました。舞と倫子は、だいぶ仲良くなったようです。
そこに中澤と水島もやってきました。舞たちの近くで、食べる都築教官の姿もあります。都築は、先に食堂を後にしました。
「食事中も気が抜けないな」
そういう中澤は、評価されるのは成績だけじゃないと言うのでした。
「それが、都築ポイント。都築教官が時々メモを取ってるの、気付いたか?あのノートには、俺たちのあらゆる情報が書き込まれてるらしい。あのノートにかかれた情報は、帯広のフライト課程にも引き継がれるらしいから要注意だ」
そんな都市伝説的な話しは、学生時代によくあります。しかし、メモを取っているのは確かです。どういうメモなのでしょう?
対立
授業では、チームに分かれてディスカッションが行われていました。
「答えは、東京からまっすぐ東へ飛ぶルートよ」
倫子はそう言いますが、柏木は反論します。
「そんな簡単な問題なはずないだろう。この図はメルカトル図法。アラスカに近づくこのルートが最短ルートだ」
しかし、倫子も黙っていません。
「最短イコール、最適とは限らないわ。私のルートは東にまっすぐ一定だから、わかりやすくて操縦しやすい」
そんなやりとりで、倫子はついつい声を荒げてしまうのでした。
「俺の経路は約8300㎞。矢野の経路は約8800㎞。時速1000㎞だと俺のは8時間20分。矢野は8時間50分だ。計測の仕方教えてあげようか?」
柏木に言われれ、倫子は「結構」と冷たく言い返します。
そんな時、メモを取っている都築教官の姿がありました。
「はい、今日はここまで。次回までにグループでの意見を纏めておいて下さいね。Aチームは揉めてたようだけど、よろしくね」
みんなの事情
談話室Dでは、舞と吉田がクリスマスの飾り付けをしています。
「矢野さん大丈夫そう?」
吉田は、同室の舞に倫子の様子を聞きます。
「柏木さんの意見を採用するのは嫌やって」
倫子も引かない様子でした。それを聞いた吉田は、二人の意見の違いについて、舞に説明しました。
「柏木さんはあくまでも最短経路を選択して、少しでも早く到達することが優秀なパイロットである。で、矢野さんは、遠回りしてでも安心安全な飛行を第一にするべき。形は違っても、二人とも高い志を持って、パイロットを目指しているだね」
しかし、次回の授業までに意見をまとめないといけません。その時、舞は思いつきました。
「なあ、パーティとかどうやろう?」
そして、舞はグループのみんなに声を掛けました。しかし、上手く行きません。
倫子に話すと、柏木がくるなら嫌だと言います。中澤は、その日は妻と息子がくると言うのです。水島は、宮崎の女の子と合コンです。
そして、柏木は全く相手にしませんでした。
柏木が来ないことを知った倫子は、行ってもいいと言い出します。しかし、この会は倫子と柏木を仲直りさせるのが目的です。意味ないやんと自分に突っ込んでいました。
パーティの食べる物は、舞が作ると張り切っていました。
水島の実家
舞がパーティで作ったのは、お好み焼きでした。
「なんでお好み焼きなんだっけ?」
倫子にそう聞かれ、舞は実家の隣がお好み焼き屋なんでと、答えます。
「クリスマスと言ったら、チキンでしょ、チキン」
そういう倫子も、舞が作ったお好み焼きを美味しそうに食べていました。
そこに水嶋がやってきます。合コンはなくなったようです。
「これ実家からの差し入れ」
水島の実家は水島ストアという、北関東にいくつも支店を出してる大手のスーパーマーケットでした。その実家から送られてきたのは、お菓子や飲物などたくさん入っていました。
その中に手紙が入っているのを水島が気づきます。
「気が済んだら帰ってこいとお父さんが言っています。母」
何も言わず、水島は手紙をしまいました。
全員参加
そんな時、都築共感がやってきました。
「いいにおいがすると思ったら、ここか」
そして、都築を招き入れ、一緒に食べることにしました。
「あと二人は?」
そう聞かれ、舞は呼びに行くことにしました。
中澤は、家族と過ごす予定でしたが、問題があって家族は来ないようです。出かけようとしたところに舞がやってきて、中澤も参加することにしました。
次は、柏木の部屋です。ノックして出てきた柏木に「みんな集まってます」と伝えます。
「俺はいいって、勝手にやってくれ」
そう言って扉を閉めようとする柏木を止めて、舞が言います。
「都築教官もきてますよ。都築ポイントに関わると思うんです。協調性のあるところ見せとかんと、何書かれるかわかりませんよ。この間、倫子さんと揉めてはったとき、都築教官何か書いてはりました」
そう言われ、柏木も仕方なく参加することにしました。
協調性
舞が柏木を連れてくると、同じグループの全員が揃いました。そこで舞は、倫子に言います。
「そういえば、この間柏木さんが、言い過ぎたゆうてはりました」
柏木はそんなこと言っていません。しかし、都築教官の前です。否定することもできません。しかたなく、柏木は話しを合わせました。
「次回までにもう一度、お互いの意見について話し合えたらと思って」
それを聞いた倫子もあわせます。
「そうね、そうしましょ」
そして、全員揃ったことで、改めて乾杯しました。
御曹司
しばらくして、都築教官は帰っていきました。みんなは、やっと気を抜くことができました。
「岩倉、もう一枚焼いてくれ」
柏木が、舞にお好み焼きを焼いてくれと言うとは想像していませんでした。
「柏木くん、かわいいところあるね」
そんな風にからかわれ、舞は嬉しそうに焼き始めました。柏木は、舞が焼くのをじっくり見ていました。
「まさか、初めてじゃないよね?」
倫子に聞かれた柏木は「うん、初めて」と答えました。面接のときも「趣味は乗馬」と言っていて、ただ者ではない感じはしていましたが、まさかお好み焼きを食べるのが初めだとは。
柏木の実家は、父がパイロット、母はCAという航空エリートです。
そんな素性を聞いて、倫子はエリートに拒否反応を示します。
「商社にいた時、そんな男をたくさん見てきただけ。ここにいる男たちだって大体そうでしょ?実家や周りに甘えて、大した苦労もしてないくせに自信だけは一人前」
そう言われて、抗議で中澤が立ち上がります。止めに入る水島。しかし、水島も倫子に「ボンボン」と言われて怒りだします。
「やめてください」
みんなが揉めだして、舞が止めに入りますが、そのせいでお好み焼きを焦がしてしまいました。
テストの結果と吉田の離脱
テストが返却されました。
「岩倉学生、75点。前回より上がったな」
そう都築教官に声をかけられ、嬉しそうな舞。しかし、同じグループの人達は、もっといい点数でした。
吉田学生、98点。柏木学生、96点。中澤学生、82点。矢野学生、88点。
「その点でよく喜べるな。この回期の平均点、一人で下げてることに変わりはない」
柏木に酷いことを言われ、凄い目で舞は柏木を睨むのでした。
その夜、舞は倫子のお風呂の誘いも断って勉強していました。その時、大きな声が聞こえてきました。
「待てよ吉田、待てって」
そう声をだしたのは、中澤でした。
「母さんに何かあったらどうするんですか?」
吉田はそう答えます。そこに、舞と倫子が駆けつけました。理由を聞くと、吉田のお母さんがパート先で倒れて、救急車で運ばれたというのです。そして、吉田は帰ると言っていたのです。
「羽田行きの最終に乗って、明日の朝、小松まで行くのが一番早い」
倫子にそう言われ、吉田は急いで帰っていきました。
「あいつん家、母子家庭で、頼れる親戚もいないんだって。教官には俺から事情話しておくわ」
中澤がそう教えてくれました。
お父ちゃんの背中を押す
舞が部屋に戻ると、携帯電話が鳴っていました。着信は「うちの工場」で、出るとお父ちゃんでした。
「舞、元気か?」
そうやって、何でもない話しをしだしますが、なんだか様子がおかしいのでした。
「お父ちゃん、何かあったん?いつものお父ちゃんらしいないなって。どないかしたん?」
そう聞くと、お父ちゃんは話し出しました。
「新しい仕事の話しあってな。初めての自動車向けの仕事やねん。けど、結構お金かけなきゃあかんねんな。どない思う?」
舞は素直に「自動車か。かっこええな」と感想を言います。
しかし、お父ちゃんが聞きたいのはそうではありません。
「どんだけ大変やっても、やりたいことやるお父ちゃん。私は、ええと思うよ」
お父ちゃんは背中を押して欲しかったのでした。
「やっぱり舞やな。電話して良かったわ。ほな、舞もがんばりや」
そう言うと電話を切りました。
ざっと3億
お父ちゃんが電話をしているのをお母ちゃんは聞いていました。電話を切ると、お父ちゃんの前に出て行きます。お母ちゃんの顔は、怒っていました。
「メイシンプレステックって会社あるやろ?そこにタケやんゆう中学の同級生がおってな。そのタケやんから自動車向けの部品、やってみいへんかって言われてんねん」
しかし、自動車部品は、今の工場の設備ではできないはずです。
「機械も人も増やさなあかんねん。ほんでな、せやから、ここで思い切ってやな。新しい工場建てたろか思ってな」
そう言われたお母ちゃんは、いくらかかるのかと聞きます。
「ざっと、3億やな」
あまりの金額にお母ちゃんは「ええええええーー」と驚いていました。
「明日銀行と話して、融資の額相談しようと思ってる」
お父ちゃんは、もう決めていたのです。そして、舞に背中を押してもらって、はっきりと決めたのでした。しかし、お母ちゃんには何も言っていませんでした。
「ゆわなゆわなと思ってたんやけど、できるメドついてからがいいかと思ってな。ここが勝負所やと思うねん。今の岩倉やったら、自動車部品でもやれる」
背中を押されて自信満々なお父ちゃんでした。
吉田が戻ってきた
それから1ヶ月が経ちました。
都築教官が、みんなにグループ課題を指示していました。
舞たちのグループは「野外航法における離陸から巡航まで」です。
グループのメンバーで分担して調べて、レポートを提出します。
そんな時も、舞は吉田のことが心配でした。
そんな時、舞が教官室から出てくる吉田を見かけました。吉田に声をかけます。
「おかえり。お母さん、どうやった?」
吉田の表情は暗いまま答えました。
「長く入院してたけど、退院してうちに帰った」
そんな暗い表情の吉田を心配して、どうしたのかと聞きます。
「1ヶ月の遅れを取り戻すのは難しいから、次の期からやり直した方がいいって都築教官に言われたんだ。うち、お金がギリギリで、辞めるしかないかな」
専門的な授業を1カ月休むと、遅れを取り戻すのは難しいようです。
吉田がつらくなる
舞は、みんなが集まっている談話室で、吉田に会ったことを伝えます。
「吉田、辞めちゃうんか。家庭の事情なら仕方ないか」
「残念無念だね」
しかし、みんなの反応は冷たいものでした。舞は納得できません。
「水島、お金貸してあげれば?」
倫子はそう言いますが、舞が言いたいのはそういうことではありません。
「吉田くんが学校やめへんでもいい方法がないか考えましょ」
しかし、みんなの反応は薄いままでした。
「いなくなる奴にかまっている暇はない」
柏木はそう言って、いつものように憎まれ口をたたきます。ただ、やっかいな課題もあり、本音ではみんなが思っていることでした。それでも、舞は「またそんな言い方」と柏木をたしなめます。
「母親のことがあったにせよ、吉田が1ヶ月授業にでられなかったのは事実なんだから」
「仮に一緒にやったとしても、ついてこられないだろう」
「最近の授業の応用だもんね」
言い方は違いますが、やっぱり柏木と思っていることは同じでした。
「無理に一緒に続けても、吉田本人がつらくなるってこと」
そう言われ、舞は受け入れるしかありませんでした。
吉田ノート
舞は、吉田の部屋に行きました。
「ホンマに辞めんの?」
そう聞く舞に吉田は「うん」と答えます。
「僕、パイロットになって、一度も飛行機に乗ったことのない母さんを海外旅行に連れていきたかったんだ」
吉田の気持ちを思うと、舞は苦しくなってしまうのでした。
「何もできへんかって、ごめん」
謝る必要はないのですが、舞はそう言うしかありません。
「岩倉さんが謝ることないよ。同じチームなのに休んで迷惑かけた。ありがとう。あ、そうだ。これ良かったら使って」
吉田が舞に渡したのは、吉田がまとめたノートでした。それは、今舞たちがやろうとしている課題も含まれています。
「いつの間に?」
舞がそう聞くと、吉田は看病の間に独学でまとめたと言うのでした。
そのノートを見た舞は、吉田の手を引っ張って、教室へと向かいました。
遅れていない証明
舞は教室に駆け込むと、同じグループのメンバーに吉田のノートを見せました。
「なにこれ、もうレポートができてるじゃない」
「俺たちの課題だけじゃなくて、BチームやCチームの課題もカバーされてる」
「なんで吉田は課題のこと知ってたんだ?」
みんなが口々に言うと、吉田は答えました。
「先輩に連絡して、過去に出た課題を聞いたんで。でも、どれがうちのチームの課題になるかわからないから。この1ヶ月、全部の課題を一人でやってたんです」
お母さんの看病しながら、独学で遅れまいと勉強していたのでした。
「吉田くんやったら、遅れた分取り戻せると思う。学校辞めることないよ」
舞はそう言いますが、話しは簡単ではありません。
「そのためには、遅れてなってことをちゃんと証明する必要がある」
倫子がそういいます。ただ、もうこのノートがその証明になるのではないでしょうか。
そして、グループのみんなで、都築教官の所へ話に行きました。
バラバラだった君たち
みんなで都築教官のところへ行って、吉田のノートを見せました。
「確かに、これは凄いですね。しかし、吉田学生が1ヶ月授業受けなかったことが消える訳ではありませんよ」
都築がそう言うのは当然です。
「吉田学生は、パイロットになりたい思いが誰よりも強くて・・・」
舞は、吉田の思いを続きに伝えます。しかし、思いだけでパイロットになれるわけではありません。
「必要な知識を身に着けていなければ、この先の訓練に進むことはできません。この1ヶ月でどれほどの学習をしたのか、君たちが一番わかってるでしょう」
都築はノートでまとめただけではダメだと言うのでした。そこで、吉田に特別テストを受けさせてもらえないかと倫子が提案します。それに中澤も同調します。そして、みんなで頭を下げました。
「わかりました。特別テストの件、会議にかけてみましょう。ただし、これをAチームのレポートとすることは認められませんよ」
それに舞が答えました。
「もちろんです。吉田学生にはテストに集中してもろて、私らは5人でレポート纏めます」
そんなみんなを見た都築教官は、驚くのでした。
「それより、あんなバラバラだった君たちが、こうもまとまるとは、そっちの方が驚きだよ。あはは」
合格
吉田は特別テストを受けられることになり、舞たちのレポートも合格しました。
そして、都築は自分のノートにメモをとります。都築ノートは、確かに一人一人細かくメモされていました。舞のページの最後に都築教官が書き込んだのは「岩倉学生はチームワークを大切にする」でした。
そして、宮崎座学過程での最終テストが行われます。舞たちはみんなで、談話室に集まって勉強しています。
その最終テストの結果は、全員合格でした。舞たちのクラス全18名は、帯広のフライト課程に進むことができました。
宮崎本校の前で、記念撮影して一旦家に帰ります。集合写真では、柏木は真顔でした。
「写真の時ぐらい、笑たらええのに」
舞にそう言われますが、あっさりと柏木は帰っていきました。
そして、舞は飛んでる飛行機を見上げ、舞が気合を入れます。
「みんなで、飛びましょ!」
しかし、反応は薄かったのです。
「はいはい、行きましょ」
倫子がそう言うとみんな、帰っていきました。
悠人からの荷物
大阪では、舞の帰りを両親が待っています。その時、悠人から荷物が届きました。中を開けようとしたとき、舞が帰ってきました。
舞はお母ちゃんのご飯を食べ、お父ちゃんと話しをしました。
「で、飛行機乗ったんか?」
しかし、宮崎では座学だけでした。
「いっぺんも乗せてもらえへんかった。でも、帯広のフライト課程ではいっぱい乗れんねんて」
そう言うと、舞は取得した許可証を見せました。「航空機操縦練習許可証」です。日付は2007年3月22日になっています。
そして、悠人から届いた荷物を思い出しました。中を開けてみると、金色のびりけんさんのような置物が入っていました。でも、顔は宇宙人のようです。
そして、舞は悠人に電話してみることにしました。
悠人の商談
悠人はスーツ姿でどこかの高層ビルにいました。お父ちゃんやお母ちゃんが電話しても電話に出ませんが、舞の電話には悠人は出ました。
「うちに飾ろうと思うたんやけど、ミスって2個買うてもうて。1個送った」
そんなこと言われても、実家にもいりません。
「質屋に売ったら、高こう売れるかもしれへんでー」
そんな値打ちのある物には見えません。そして、悠人は「今から人と会うねん」と言うと、電話を切ってしまいました。
悠人は、株の投資をしていて、その出資の打ち合わせをしています。
「1年でいくらにできるんですか?」
そう聞かれた悠人は、自信満々に答えます。
「相場は水物なのではっきりとは言えませんが、年間平均20%の利益を狙っています」
まだリーマンショック(2008年)前です。悠人への出資は、どうなるのでしょう?
フォーリンラブやん
舞は、久留美とノーサイドで会いました。撮った集合写真を見て、久留美は「楽しそうやんかー」と言うのでした。
そして、その言葉にオーナーも乗ってきます。
「舞ちゃんモテモテやったんとちゃうん?」
しかし、そんな浮いた感じはありませんでした。ただ必死に勉強していただけです。
「誰か気になる人おらんかった?」
どんどん突っ込んでくるオーナーに「おらんよ」と言いますが、オーナーはこの人だろうと指さしました。それは、柏木でした。
「それはないです。この人、嫌な感じで」
舞はそう言いますが、面接のときから一緒だと言うと、オーナーは運命だと言うのでした。
「気付いたら恋に落ちてるやつやん。フォーリンラブやん」
しかし、舞は冷静に「落ちませんて」と返していました。
そこに久留美の父がやってきました。久留美にお金を借りにきたのです。嫌々ながら、久留美は2000円渡しました。
そんな父が帰ると、久留美は舞に言いました。
「舞、結婚相手はちゃんと選ばなあかんで」
帯広
帯広の大河内に都築が電話していました。
「都築です。黒いノート、届きました?」
大河内は受け取ったと返事をします。
「今回もなかなかおもしろい子達ですよ」
都築がそう言いますが、大河内は真面目に答えます。
「パイロットにおもしろさは不要です」
そして都築が「みっちり指導してやって下さい」と言うと、大河内は怖いことを言うのでした。
「わかりました。ただし、指導するのに値する人間ならですが」
舞がパイロットになるためには、まだまだ試練を乗り越えないといけないようです。
最後に
舞の航空学校編が始まり、新しい登場人物がいっぱい出てきました。
今、話題の目黒蓮。舞あがれでは、冷たい印象のヤツです。しかし、吉田の復帰の時には、一緒に頭を下げたりしていました。根は悪い奴じゃないのかもしれません。
そして、来週からは帯広での訓練です。もうすでに厳しそうな大河内の姿がありました。
それにしても、悠人は大丈夫なのでしょうか?リーマンショックで挫折して、五島で癒されるパターンなのでしょうか?
とにかく、楽しみです。