マルバマンネングサ らんまん(12) ネタバレ

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マルバマンネングサ は第12週のサブタイトルです。

ついに万太郎は、寿恵子と気持ちが通じ合いました。

寿恵子は高藤からの誘いを断ると、その足で万太郎の所までやってきたのです。

ただ、二人の気持ちだけでは結婚することはできません。これから両家に許してもらうことになります。

そんな第12週のまとめです。

前回、第11週「ユウガオ」のまとめ。

らんまん 公式HP

主な登場人物

槙野万太郎  神木隆之介    植物が大好きな語学の天才。
西村寿恵子すえこ  浜辺美波     白梅堂の娘。
井上竹雄   志尊淳      番頭の息子。東京での万太郎の相棒

槙野タキ   松坂慶子     万太郎の祖母
槙野綾    佐久間由衣    万太郎の姉。家業に熱心なしっかり者
西村まつ   牧瀬里穂     寿恵子の母。白梅堂店主
阿部文太   池内万作     白梅堂の菓子職人

波多野泰久  前原滉      東京大学植物学教室・2年生
藤丸次郎   前原瑞樹     東京大学植物学教室・2年生
堀井丈之助  山脇辰哉     十徳長屋・東大の落第生
田辺彰久   要潤       東京大学植物学教室・教授
笠崎みえ   宮澤エマ     寿恵子の叔母。新橋の料理屋のおかみ

第12週のストーリー

ちっともわかっていませんでした

十徳長屋の子供たちに「ユウガオのお姫様」と呼ばれたのは、寿恵子でした。舞踏練習会の発足式から、ドレスを着たそのままでやってきたのです。

万太郎の胸に飛び込む寿恵子。万太郎は、躊躇しながらも寿恵子を抱きしめます。

「何してるんですか?人のこと、散々ほったらかして。今まで何してたんですか?」

いきなり問い詰められた万太郎は「ごめんなさい」としか言うことができませんでした。

外で話していたのですが、万太郎は寿恵子を家に呼び込みます。

そんな時、竹雄が仕事から帰ってきました。万太郎の家の前には、長屋の人達が集まっています。

竹雄が戸を開けると、寿恵子が立っていました。それもそのはず、部屋は散らかり放題だったのです。真白なドレスを着ている寿恵子が座れる場所などなかったのです。

開いた戸の先には、長屋の人々が聞き耳を立てていました。寿恵子は長屋の人達に挨拶します。竹雄のことは覚えていました。

「釣書はお受け取りいただきましたでしょうか?」

竹雄が聞くと、寿恵子は「頂戴致しました」と答えました。

「ですが、私わかっていませんでした。ちっともわかっていなかったんです」

寿恵子が発した言葉の続きは、いい話じゃないと感じた長屋の人々は、みんな帰って行くのでした。

苦労をかけます

寿恵子は、やっと座布団を出してもらって、座る場所を確保することができました。

「あの、あなたがいらっしゃらなかったのは、雑誌をお作りになっていたのだと」

万太郎は、石版印刷を学び、雑誌ができるまではと、寿恵子に会いに行くのを止めていました。万太郎が寿恵子に作った雑誌を見せます。

「わしは日本の全ての植物を明らかにして、図鑑を作りたいがです。全ての植物を明らかにならんと、この先見つかった物が新種かどうかもわかりません。植物は、気候、地質、水、他の生き物も関わりがある。その植物が明らかになったら、他の領分の研究にも必ず役に立ちます」

途方もない計画に驚く寿恵子。一人でやるのかと尋ねると、万太郎は「これはわしの仕事です」と言い切るのでした。

寿恵子が「もう決められたのですか?」と問いかけると、万太郎は「はい」と答えました。しかし、決めたと答えることで、寿恵子の心が離れていくことを恐れた竹雄は、まだ決めていないと言い出します。それを遮って、万太郎が続けます。

「寿恵子さん、この雑誌を作ってはっきりわかりましたけんど、どこにも属さん自分が図鑑を作るがは、版元が引き受けてくれません。ほんじゃき、自分の金で出さんといかんがです。大変な金が要ります。あなたには苦労かけます」

余計なことを言い出した万太郎の口を竹雄が塞ぎます。しかし、すぐに振りほどかれてしまいました。

万ちゃんの都合

竹雄にいくら止められても、万太郎は言わずにはいられませんでした。

「わしにはあなたが必要ながです。勝手な言いぐさだとわかっちょります。けんど、わしは寿恵子さんを好きながです。どうしようもなく。一目見た時から、心に決めちょりました。理屈じゃないき、寿恵子さんに会えると嬉しい。花が日差しを待つように、水を欲しがるように。わしの命にはあなたが必要ながです」

その時、隣の部屋から声が聞こえてきました。

「それって万ちゃんの都合だよね。寿恵子さん、よく考えた方がいい。万ちゃんの都合のためについてきてくれって言ってるよ」

それは丈之助でした。

「そうですね、牧野さんのご都合です。だから、私も自分で決めます。私、冒険に出たかったんです。自分の力を思いっきり試せたら、すごく楽しいだろうなって思っていました。でも正直、この部屋を見るまでは、私全くわかっていなかったんです。いえ、今だってわからない。ただ、あなたと生きるのは、とてつもなく大変ってことだけ」

お世辞にも綺麗な長屋でなく、広い部屋でもありません。寿恵子は、ここで暮らすことを想像し、苦労することを実感したのでした。

「私、あなたが好きです。だから私、性根を据えなきゃ。あなたと一緒に、大冒険を始めるんだから。その代わり、約束して。図鑑、必ず完成させて下さい」

寿恵子は、苦労をすることを覚悟し、万太郎と一緒に生きることを決めました。

万太郎さんのもの

「馬琴先生の八犬伝は、全98巻106冊です。先生は目が見えなくなられた後も、最後は口伝えで完成させたんです。だからこそ、八犬伝は傑作なんです」

しかし、丈之助は「馬琴なんて古臭いよ」と言うのです。丈之助は馬琴のことが好きでした。ただ、馬琴の作品は、世界に通用しないことを知っています。馬琴という作家を葬り去る為に新しい作家が必要だと思っているのです。

「例え、作者が亡くなったとしても、完結した物語は消えないんです。本を閉じても輝いてるし、心から心に渡されていくんです。100年経っても消え去りはしない。私はそう思う。完結した物語は生き続ける。でも、完結してなきゃダメなんです」

そう言うと、寿恵子は万太郎に必ずやり遂げるように迫るのでした。

「一生かけて必ず、やり遂げてみせます。あなたと作り上げる」

万太郎はそう答えました。そして、丈之助は、寿恵子の男前さに惹かれ、嫁にして欲しいと言い出します。

「ダメです。だって私は、万太郎さんのものですから」

一瞬にしてフラれた上之助は、部屋の外に飛び出すと大きな声で叫びます。

「あーもう!あーもう!小説に書いてやる。牛鍋屋行くぞ、万ちゃんのおごりで!」

その声を聞いて、長屋の住人がみんな出てきました。

白梅堂へ挨拶

その後、白梅堂は店を休み、万太郎を迎え入れて話しをしていました。

「寿恵子さんを必ず、必ず幸せに致します」

万太郎は洋装、寿恵子は和服に着替えて、おっかさんに頭をさげました。

「釣書も拝見しましたし、あなたの人柄もわかっていますけど、万太郎さんこればっかりは聞かせていただかないといけません。お金はどうなさるおつもりですか?」

万太郎は、寿恵子と考えた内容を話します。

「小学校の講師や手習いの師範、わたしにできることはありますけんど、自分の研究する時間が削られては本末転倒です。わたしは、日本中の草花を明らかにして、図鑑を作りたいがです。そこで、寿恵子さんと相談して考えました。名づけて八犬伝方式。いわゆる分冊です。八犬伝は全98巻、106冊。わしの図鑑も日本中の全ての草花を明らかにしてから原稿を書いて発刊したら、正直いつになるかわかりません。白髪頭になってしまうかも知れませんき」

そして、寿恵子が「できる所からちょっとずつまとめてちょっとずつ発刊していく」と後を引き取りました。

そう言われても、おっかさんは納得できません。

「私も働きます。内職もできるし、売り子もできます」

寿恵子の言葉におっかさんは、白梅堂を頼るなと言うのでした。

おまつと呼んで

「文太さんがね、店を辞めて国に帰るって言ってるのさ。決めてないけどね。この人には柳橋にいた時分から、ずっとお世話になってたからさ、今度は私が恩返ししようかってさ」

文太の実家は、榛名山の近くの温泉地で湯守をしていました。そこにあるちいさな宿の後を継ぐというのです。そして、おっかさんの言葉に驚き、感激する文太。おっかさんは文太に「おまつ」と呼ぶように言うのでした。

「おとっさんを忘れた訳じゃないけどさ、この人の代わりもいないようにおとっさんの代わりもいない。離れた所に行ったら、あんたのことすぐに助けてあげられないんだよ。二人とも、惚れた腫れたじゃどうにもならないんだよ。どんな時も、ひたすら暮らしていかなきゃいけないんだ」

それを聞いて、万太郎は改めて覚悟します。寿恵子は、あっけらかんと「大丈夫、私はおっかさんの娘ですもの」と言うのでした。

そんな寿恵子におっかさんは、困ったら叔母・みえを頼るように言いました。ただ、今回の高藤の申し出を断ったことで、みえは怒っています。しかし、実の娘のように思っている寿恵子のことなら、必ず助けてくれるというのでした。

そんな感じで話は終わり、夕飯の支度する間、寿恵子は万太郎と自分の部屋にいていいかと、おっかさんに確認しました。

「万太郎さんとやることがあって、夜通しかかるの」

万太郎とやることとは、八犬伝の布教活動でした。

助手交代

それから半年、再び春がやってきました。万太郎たちは酒造りの繁忙期を避け、こしき倒しに会わせて峰屋に帰ることにしました。万太郎と竹雄は洋装。寿恵子は和装で山道を歩きます。

土佐に入った万太郎が見つけたのは、マルバマンネングサです。小さい葉は、肉厚でぷにぷにしています。

「こういう肉厚の葉を持つ植物は、多肉植物とゆうがじゃ。この子もバイカオウレンと同じ、冬でも枯れん常緑じゃき。この子は6月に入ると、黄色い花を咲かせるがじゃ。5枚のちんまい花弁をパッと開いて咲くがじゃ。遠くから見たら、まるで金色の星粒がキラキラしてるようがじゃ」

万太郎の説明は、寿恵子の心を掴みました。寿恵子も見てみたいと思うのでしたが、東京で見た記憶はありません。日本で生えている草花は、大陸からやってきたものも多く、西日本だけに生えているものもあります。

「あなた達はこの山が好きになって、土佐の子になったのね」

寿恵子がマルバマンネングサに語り掛けると、万太郎は他の植物を見ています。その時、竹雄が寿恵子に話しかけました。

「寿恵子さん、佐川におる間にあなたに大事な役目を引きついでもろてもええでしょうか?植物学者、牧野万太郎の助手の役目です」

寿恵子は「竹雄さんは?」と問いかけますが、竹雄は何もいいませんでした。

その頃、実家の峰屋には、寿恵子の釣書が届いていました。そして、具合の良くないおばあちゃんは、横になって眺めています。

土佐へ里帰り

万太郎たちはまだ知りませんでした。酒屋にかけられる税が造石税に変わったことで、峰屋が苦境に陥っていくことを。

万太郎の姉・綾が、店の前に「峰の月」の看板を掲げているところに役人がやってきました。

「精が出るの。今日は甑倒しじゃったか。甑倒しゆうたら、今日で仕込みが終わりじゃゆうことじゃ。ほんじゃき、わざわざ来ちゃったがじゃ。おまんら酒屋は隙があれば横流しするきのう」

峰屋はそんなことはしません。峰屋は、土佐一の酒蔵としての誇りを持って、同業者たちの手本になっていました。

「本当は古酒も作りたいところも、年内に売り切るように勤めましたき。売値を下げ、身を切って、蔵の酒泣く泣く全部だしたがじゃ」

綾が反論しますが、役人は笑うだけです。

「そりゃ商いに張りがでちゅうのう。政府も酒屋も、相見互いに万々歳。造石税になって良かったじゃ」

そう言うと、峰屋に入って行こうとする役人たち。

「お待ちください。後生でございます。甑倒しの日は、半年間自分の村を離れ、家族とも別れて、この峰屋のために一心に酒造りに励んでくれる蔵人らを労う大事な日でございます」

綾は土下座して役人に頭をさげました。峰屋の者たちも、一緒に頭をさげます。

「あ、あの・・・信じることは、そんなに難しいことでしょうか?」

若旦那の帰還

若旦那と呼ばれた万太郎。役人は、万太郎に「若旦那じゃと?」と聞きます。

「いえ、わしは姉に全てを任せて、この家を出た身でございます。今は東京大学に通っちょります。東京は日々変わっちゅう。鹿鳴館も今年まもなく開館致します。政府が西洋化を急がれちゅうのは重々承知しちょります」

その後を引き取るように竹雄が話します。

「西南戦争で政府が大きな借金をしちゅうことも、地租改正がうもういっちゃせんことも、ようわかっちょります。だから金は取れるところから取るゆうことも」

そして最後に万太郎が、言葉は柔らかい物の、はっきりと言いました。

「そうやったせめて、思いやっていただけないでしょうか?酒屋にとって、一年で一番大事にしゆう甑倒し。その一日だけでも、共に重んじてはいただけないでしょうか?」

そして、峰屋は若尾のお殿様に献上していた酒を造っていた誇りがあり、横流しはしないと約束しました。万太郎たちの周りは、役人と揉めていると知った村人たちが取り囲んでいます。

「峰屋、真っ当じゃ」
「役人は出直しや」
「そうじゃそうじゃ」

村人たちの声援もあって、役人たちは出直すと言って帰っていきました。

役人が帰ると、店の者たちが万太郎を改めて出迎えてくれます。万太郎は、ちょっと離れた所にいた寿恵子を連れてくると、みんなに紹介しました。

「御寮人様じゃ」

結婚はしていませんが、店の者たちはそうはやし立てるのでした。

おばあちゃんの具合

寿恵子のことは、台所でも噂になっていました。そして、番頭の息子・竹雄が洋装で帰ってきたことも話題に上ります。その竹雄の噂は村に広まり、近所の娘たちが一目見ようと峰屋にやってきました。

万太郎と寿恵子は、綾と竹雄の母と話しをしています。

以前、酒問屋の息子・藤丸が、これから酒蔵は大変という話しをしていました。それで万太郎は、大体の話はわかっているつもりです。

「試しに仕込むこともできんき。峰の月とは違う酒が試せんようになってしもうて」

作った時点で税金がかかるため、酒を残しておくほど税金の支払いに困ってしまうのです。そのため、作った酒はその年のうちに売り、古酒として残すことができないのでした。

そして、それより心配事があると言葉を濁す綾。万太郎は、おばあちゃんのことだとピンときます。

万太郎は、万太郎が東京へ出てから体調が悪くなったことを聞き、自分のせいではないかと考えてしまいます。そして、何故知らせてくれなかったのかと聞きました。

「おばあちゃんの願いじゃ。おまんが植物を選んだこと、東京大学に出入りを許されるようになったこと。誰よりも応援しゆうがよ」

綾はそう言って、知らせなかった理由を話しました。竹雄の母は、万太郎が寿恵子を連れてくることで、晴れ姿を見れそうだと言っていたことを泣きながら話しました。

万太郎は不安になっておばあちゃんの部屋に行きました。

勝負

万太郎がおばあちゃんの部屋の前まで来ると、寿恵子もついてきました。

「おばあちゃん、万太郎です。ただいま帰りました」

中からおばあちゃんの声がして「おはいり」と言われ、襖を開けると部屋には、百人一首が並べてありました。

驚く万太郎。まず万太郎だけが入って、おばあちゃんに挨拶をします。おばあちゃんは髪が白くなったものの、気丈に座っていました。万太郎が体調を気遣います。

「どうせ、ふじと綾が大げさにゆうたがじゃろう。わしは、この通りじゃき」

安心した万太郎は、廊下で待つ寿恵子を呼び込みます。寿恵子も畳に置かれた百人一首に驚いていました。

戸惑いながらも、寿恵子が挨拶すると、おばあちゃんは釣書を見たことを告げました。

「おばあ様、不束者・・・」

寿恵子が挨拶をしようとすると、「まだ認めちゃあせんき」と挨拶を止めました。

「さあ、勝負じゃ。決まりじゃき、わしもこの家に嫁ぐ時には、お母さんと勝負致しましたき」

万太郎はそんなしきたりがあるとは知りませんでした。おばあちゃんは話す機会がなかっただけだと言い、寿恵子に勝負するように言います。

「勝たなければ認めていただけないということでしょうか?」

おばあちゃんはそうだと言い、万太郎に読み手をやるようにいいました。

寿恵子は覚悟を決め、勝負が始まります。

おまんさんでほんまに嬉しい

おばあちゃんも寿恵子も、たすき掛けをして真剣勝負です。

万太郎が上の句読み上げている途中で「はい」と声を上げ、おばあちゃんはガンガン札を取っていきます。寿恵子も取ろうとはしますが、おばあちゃんに遠慮して、枚数を増やすことができません。

その時、おばあちゃんの胸が痛みました。大丈夫だと言いますが、万太郎が勝負を途中で止めてしまいます。それは、部屋に花を欠かしたことのないおばあちゃんが、花を活けていないことに気づいたからです。

指摘されたおばあちゃんは、勝負を止めて座り直します。

「お寿恵さん、かわいらしゅうて、元気ようて、ひたむきで。それに戦いじゃゆうたのに、わしのことも気付こうてくれたきのう。万太郎はもうこの家を出た身、ほんじゃき誰を連れてこようと何も言わんつもりじゃったけど、おまんさんでほんまに嬉しい。人とは違う道を己の道と定めた孫ではございますけんど、どうか末長ごうよろしゅうお願い申し上げます」

おばあちゃんは勝負では勝ちましたが、寿恵子を認めてくれました。

「こちらこそ、万太郎さんと添いたいと願ったのは私でございます。不束者ではございますが、どうぞよろしくお願い致します」

そう言うと、二人で頭を下げるのでした。しかし、おばあちゃんの胸の痛みはひどくなって行くばかりです。

綾の不安

勝負が終わると、甑倒しの宴会が始まりました。寿恵子も峰屋側で、蔵人たちをもてなします。

そして、万太郎の実家の料理を食べさせてもらいながら、おなご衆とも仲良くなっていきました。

そんな宴会を綾は、一人抜け出します。それを竹雄は見ていて、追いかけます。

「綾様、どういたがです?」

綾は酔っただけだと言いますが、それほど飲んでいるようには竹雄には見えません。

「酔うたゆうがはほんまちや。幸せすぎてのう。みんなが笑いゆう。万太郎もお寿恵ちゃん連れて帰ってきて、こんな楽しい甑倒しの宴会、きっとこれが・・・」

最後まで言う前に「先のことはわかりませんろう」と、竹雄が遮ります。

綾は、おばあちゃんの体の具合が良くなることがないことを知っています。そして、おばあちゃんの後は、綾が一人で守らないといけないと思っていました。

「そんなことはございませんろう。手代衆がおる、おなご衆もおる、蔵人らも。峰屋に人はようけおる。私もおりますき」

確かに人数はいます。しかし、おばあちゃんが盾になって守ってくれていたように、今度は綾が盾にならなければいけません。それを綾は不安に思っているのでした。

綾の不安を聞いた竹雄は、伝えるべきか考えます。そして、伝えることを決めました。

ただ呼んでみただけ

竹雄は、万太郎の従者ではなく、相棒になったことを綾に伝えました。東京へ来た時にそう言った万太郎。そして、竹雄の「帰るという嘘」で、二人の関係は決まりました。

「ほんじゃき、先に謝っちょきます。綾様のことももう主とは思わん。あなたは草花が好きすぎる万太郎の姉様で、ただの酒が好きすぎる牧野綾さんじゃ。わしは子供の頃からずっと一緒に育った牧野の姉弟が好きながじゃ。わしは、ただの牧野姉弟が好きすぎる井上竹雄じゃ。あなたのことが好きな、ただの男じゃ。ほんじゃき、あなたを一人っきりにはせん」

竹雄の気持ちは、以前も聞いていました。しかし、その時は竹雄の方へ向くことはありませんでした。

「バカじゃのう。せっかく東京行ったのに。このはちきんの強情っぱりより、かわいらしい人がおったがろうが」

そう言って、照れ隠しにそう言う綾。竹雄は綾を励まします。

「まだ起こっちゃせんことで、めそめそしな。心配せんでもあなたは、泣いても悔やんでも、空が晴れたら立ち上がるがじゃ。大奥様も万太郎も、あなたじゃき託せるがじゃ」

竹雄に励まされ、綾は少し元気になりました。

「・・・・井上竹雄」

竹雄は、名前を呼ばれ、驚いて「はい」と答えます。綾は何か言おうとします。

「呼んでみただけ」

結局、綾の気持ちは竹雄に伝えることができませんでした。そして、縁会場へ戻ります。部屋に戻った綾は、障子をがっと開けて叫びます。

「酒!峰の月、持ってきいや!」

おばあちゃんの決意

宴会の最中、おばあちゃんは横になっていました。竹雄の母・ふじが、傍についていました。

「わしは15の春に、この家に嫁にきたがじゃ。ほんじゃき、甑倒しの宴会も50回目じゃ。こんなにようけ笑い声を聞いたら、さすがに十分じゃ。ありがたい思っちゅうけんど、ふじ明日徹寛先生を呼んでくれんかい」

そう言われ、翌日ふじは、医者の徹寛を呼びにいきました。おばあちゃんは、起きて徹寛に話しをします。

「先生、わしはもう十分に生きました。万太郎は自分の道を行き、綾も峰屋を守ってくれますろう。思い残すことはないのに、願いができてしもうたがです。万太郎の子供を、わしのひ孫をこの手に抱いてみたい。先生、どんな薬を使ってもえいき、わしを生かして。お頼もうします」

頭をさげるおばあちゃん。しかし、徹寛は「作れません」と謝りました。

徹寛にはっきり言われ、おばあちゃんは諦めす。

「あぁ、すっきりした。人には天から与えられた寿命があるゆうに浅ましいことを申しました」

しかし、医学ではない部分で、命を伸ばす可能性があると徹寛は言うのでした。

「大奥様はこれまで、峰屋のために尽くしてこられた。ようやく今、自分のための願いをお持ちになったがじゃ。命ゆうがは、まっこと不思議なもんですき。願いこそが、どんな薬よりも効くことがあります。ゆうてみて下さい。東京に戻らんとそばにおって欲しいと」

佐川で家族になりましょう

その頃、万太郎は寿恵子と一緒に小学校へやってきていました。

「あぁ、懐かしいのう。ここは元々、名教館ゆう学問所やった。ここに蘭光先生という素晴らしい先生がおったき。蘭光先生がおらんかったら、今のわしはおらん」

その時、校長先生が顔を見せました。万太郎と寿恵子を小学校の中に招き入れます。そして、万太郎は臨時の講師として、子供たちの前で話しをしました。

それから、万太郎たちは、裏山の神社へ行きます。

狛犬のいる神社には、今ちょうど花が咲いていました。

「かわいい花。この花、バイカオウレン?私、万太郎さんに教えてもらって、たくさん想像したんですよ。でも、想像よりもっと。本当、光の粒みたい」

そして、バイカオウレンが好きだった母のことを話しました。そんな母の思い出を聞いて、寿恵子は提案します。

「私ね、気づいたことがあるの。万太郎さん、子供お好きでしょう?さっきお勉強、子供達に教えてたでしょ?万太郎さんの顔がすごく生き生きしてた。いつか、万太郎さんが父親になったら、あんな優しい顔で子供達を見るのかなって思ってました。佐川で家族になりましょうか?」

寿恵子の提案は、佐川で暮らすということです。しかし、それでは大学での研究ができません。

「でも、土佐の植物から図鑑になさるんでしょ?教師をしながら、植物採取したら?いいですよ私は。佐川、好きです」

それを聞いて、万太郎はおばあちゃんに相談してみようと思うのでした。

ロシアからの手紙

万太郎と寿恵子が峰屋に戻ってくると、大学から手紙がきていました。東京を離れる前、万太郎は藤丸と波多野にロシアから返信が来たら、知らせて欲しいと頼んでおいたのです。

開けてみると、世界の植物学の権威、マキシモビッチ博士から万太郎への手紙でした。そして、状況を知らせる手紙も一緒です。

「拝啓、万さん。お元気ですか?こちらはもう大騒ぎです。マキシモビッチ博士は標本の検定の正確さを認め、土佐のフローラをまとめた牧野万太郎を高く評価しています。それから、植物学教室にあった田辺教授の標本、トガクシソウが新属に認められました」

そして、万太郎の送った標本の中から、マルバマンネングサが新種の植物と認められたというのです。

「マキシモビッチ博士が学名を付けて、学会に発表するそうじゃ。学名は、セダム・マキノイ。マキノイは牧野じゃ」

万太郎の名前が植物の名前になることを知って、万太郎と寿恵子、竹雄は大喜びです。万太郎は、早速おばあちゃんに話しに行きました。

おばあちゃんも知っている草に万太郎の名前が付くことを聞いた時、おばあちゃんの胸が痛みだします。おばあちゃんは呉服屋を呼ぶように言います。

「お寿恵の衣装、急がせるき。早う祝言を上げて、一日も早う東京に戻り。草の道が海の向こうにも繋がっちゅうがじゃろう。さっさと戻り」

おばあちゃんにそう言われ、万太郎は「うん」とだけ答えました。

最後に

史実的には、トガクシソウの命名で、ひと悶着あったようです。しかし、それはこの物語とは別の話し。

とにかく、万太郎と寿恵子を両家が認めてくれてよかったです。

来週は、祝言をあげるようです。そして、別れの時が近づいています。

祝言の後、万太郎は東京へ戻るのでしょうか?峰屋に残るのでしょうか?

図鑑は作るのでしょうが、どう展開するのかわかりません。

やっと半分。これから半分あります。どうなるのか楽しみです。

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