風の万里黎明の空 十二国記(3)

本読書



「風の万里黎明の空」は景王・陽子のその後の話しです。

尚、途中に短編の「華胥の幽夢」に入っている「書簡」の内容がありますが、今回は入れていません。

「風の万里黎明の空」は「月の影 影の海」に続く話しで、アニメ化もされています。

「月の影 影の海」の内容はこちら↓

十二国記の基礎知識はこちら



王座についた陽子

陽子が景王となって1年後の話しです。

暦は「赤楽」と名付けられ、赤楽2年になっています。

景国の朝廷は、冢宰(天地春夏秋冬の各長官の長)の靖共ら長年の官吏に牛耳られています。

それもそのはず、陽子は「胎果」のため、十二国記の世界の仕組みはわかりません。

そのため、官吏達の言うままになってしまっていました。

その靖共と対立する反靖共派の官吏もいますが、これも陽子の味方ではありませんでした。

景国と女王は相性が悪いことが原因です。

陽子の前の女王は、王座に就きましたが、慣れない政務をすぐに投げ出してしまいました。

そういう前例があるため、官吏達は陽子に対しても同じように見ていました。

そのため、陽子は玉座にありながら官吏の顔色をうかがってしまっている状態でした。

特に、王であるために平伏されることに慣れず、不安と恐怖を感じていました。

陽子、王宮を出る

そんな中、少し心を開ける相手だった太師(三公のひとつで、宰輔の補佐)に謀反の疑いが掛かります。

陽子は、靖共の言うがまま、黒幕として名が挙がった麦州(六州あるうちの一つ)侯・浩瀚らを処罰します。

それに加え、監督責任を怠ったとして、靖共を太宰(宮中の諸事を司る天官の長)に降格します。

靖共派・反靖共派から共に権力を削ぐことにしました。

そして、慈悲の麒麟・景麒に、次の冢宰が決まるまでという条件で冢宰に任じます。

陽子は景麒に「自分よりこの国のことが分かっているから」と言っていますが、麒麟であれば民を苦しめることをしないので、ある意味適任だったのかも知れません。

陽子はこの世界の理も、国情も知らないため、自ら町に降りて見聞を広めることを決意します。

そして、景麒の勧めにより、瑛州(六州あるうちの一つ。州公は景麒)の固継という村の里家に逗留することにします。

里は、郡→郷→県→里の、一番小さい単位です。里家は、各里に置かれています。

その里家の閭胥(里宰の相談役。小学の教師と里家の主)の遠甫という老人に教えを乞うことになります。

一緒に暮らすことになる蘭玉と桂桂の姉弟と触れ合いながら、陽子は蓬莱(日本)とは異なる風習を学んでいきます。

火種の気配

そんな中、和州(六州あるうちの一つ)で、暴政が行われているという噂を聞きます。

陽子は、実情を確かめに和州を訪れます。

和州では、重税が課されていて、人々は疲弊していました。

それでも、和州公の圧政のために、声を上げることもできない状況を目の当たりにします。

そんな時、遠甫の元に覆面をした男が訪れます。

蘭玉は「その男がきた次の日は、遠甫が元気がない」と言うのでした。

ある時、陽子が街を見て固継に戻ると、不在の間に里家が何者かに襲われていました。

そして、蘭玉が殺害され、桂桂も重傷を負い、遠甫は拉致されていました。

遠甫の足跡を追うと、和州止水郷の郷長・昇紘を討とうとしている侠客の虎嘯らと出会います。

大木鈴の話し

大木鈴は、100年ほど前に蓬莱から流されてきた海客です。

海客は、十二国記の世界の言葉を話せないため、苦労します。

その生活の中で、言葉が通じる人を見つけます。それは、仙人でした。

陽子は、日本にいる時に景麒を契約を交わし、神になったため言葉に困ることはありませんでした。

そして、その仙人の使用人になることで、自分も仙人になれば言葉に困ることがないことを知ります。

才国の飛仙・梨耀の元で、使用人として働くことになりました。

その梨耀から、執拗な虐めを受け続けて100年、決死の覚悟で采王に申し立て自由の身となります。

その時、女性であり、海客でありながら王となった景王に興味を持ち、慶国を目指すことになります。

その旅の道中で出会った清秀という少年と出会います。

その清秀から、鈴は「自分を憐れむばかりで周囲を見ていなかった」と指摘されます。

鈴は自分の運命をかわいそうだと思っていて、その自分の世界を基準に周りをみていました。

その清秀は、妖魔から受けた怪我が元で、旅をしていくと衰弱していきます。

なんとか清秀を支えて慶国にたどり着きますが、清秀は和州止水郷で郷長の昇紘の馬車に轢殺されてしまいます。

激高した鈴は、昇紘を庇う者の最上位にある景王を暗殺しようと考えます。

そのため、騎獣を買い、仙を殺せる武器(冬器)を買い、才国の遣いを装い王宮に入ります。

しかし、景王が不在の為、王宮を去ることになります。

そして、虎嘯らと出会い、鈴は打倒昇紘の郎党に加わることになります。

祥瓊の話し

祥瓊は芳極国(芳国)の、先の峯王の公主(王になる前の子供)でした。

しかし、謀反によりその地位を失い、素性を伏せて里家に預けられていました。

謀反と言っても、王が国を傾けてしまい、たくさんの人々を殺していたのを止めるための謀反でした。

そのため、王も公主も人々に恨まれていました。

里家での貧しい暮らしが嫌で反発しますが、素性がバレて殺されそうになります。

すんでのところで助けられた祥瓊は、恭国に預けられます。

その恭国でも、屈辱的な仕打ちが耐えられず、宝物を持って逃げ出してしまいます。

そんな時、自分と同じ年頃で王になった景王の噂を聞いて、景国を目指すことにします。

景国に向かう道中で、雁国から依頼を受けて柳国を旅していた楽俊と出会います。

その楽俊から、公主としての務めを果たしていなかったことに気づきます。

そして、景王の人柄を聞いて、改めて興味を持つことになります。

たどり着いた慶国和州の州都・明郭で、芳国のような残虐な刑罰が行われているのに行き会います。

思わず投石してしまい、追われる身になった祥瓊。

そこで、和州侯・呀峰に叛旗を翻そうとしていた侠客の桓魋に助けられます。

和州の乱

身分を隠して虎嘯・鈴らの仲間となった陽子。

打倒昇紘を掲げ、郷城へと乗り込みます。

郷城の制圧と昇紘の捕縛には成功しますが、捕らわれていた筈の遠甫は明郭に移されていることを知ります。

しかも、和州公呀峰は反乱制圧のために州師(州の軍隊)を派遣してきました。

州師相手では、圧倒的に勢力の劣る虎嘯達。

そこに、桓魋や祥瓊らの加勢により戦況は一転します。

桓魋の仲間によるが、明郭で乱をおこし、成功するまで州師を引き付けることを約束する。

しかし、続いて派遣されたのは王直属の禁軍でした。

呀峰は、靖共に庇われていたのでした。

本来であれば、禁軍は、王の許可なく出陣することはできません。

王である陽子は、今反乱軍にいます。

乱の終わりと戦後処理

そんな中、陽子は鈴と祥瓊の話を聞き、王としての責任を改めて自覚します。

王として行動する決意を固め、鈴と祥瓊に自分の正体を話します。

そんな中、禁軍を目の当たりにして動揺する人々に対し、鈴と祥瓊は自分の素性を明かして、景王を信じるよう説得します。

陽子は景麒の背に跨って禁軍の前に姿を現します。

麒麟は、血や穢れを嫌います。それでも、王の命令と反乱を成功させるために、景麒を呼び出しました。

そして、禁軍の将軍に反乱が景王の意思である事を知らしめます。

さらに、将軍に遠甫の救助と呀峰・靖共の逮捕を命じます。

王宮に戻った陽子は、戦後処理として、遠甫を三公の筆頭・太師にします。

さらに、桓魋を禁軍左将軍に、桓魋の主だった元麦州侯・浩瀚を冢宰に任じます。

そして、靖共派でも反靖共派でも関係なく、大規模な人事改革を宣言します。

そして初勅として平時の伏礼を廃し、民のすべてに己という領土を治める王になって欲しいと告げます。



最後に

「風の万里黎明の空」が一番好きな話しかも知れません。

くじけそうになる陽子が、人々に支えられ、真の王となる姿は感動しました。

アニメでも良く描かれていますが、とても感動的なストーリーになっています。

十二国記の公式サイトはこちら

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