黄昏の岸暁の天 十二国記(6)

本読書

黄昏の岸暁の天 は、戴極国(戴国)の話しで、「風の海迷宮の岸」の次の作品になります。

本来なら、途中に「魔性の子」が入りますが、それはまた今度紹介したいと思います。

王座についた泰王と泰麒と、その後のお話しです。

十二国記の基礎知識 もチェックして下さい。

事件

戴国の泰王・驍宗ぎょうそうが登極して半年が経過しました。

先王の時代から、驍宗は配下に優秀な部下を持っていました。

その部下を国府の中央に配置することで、信の厚い人物で固められ、急速に体制を整えていました。

その中、戴国の文州で叛乱が勃発します。

驍宗ゆかりの町・轍囲てついが包囲されたため、王自らが出兵することになりました。

轍囲は、先王に対して反乱を起こしました。その時鎮圧に向かったのが、禁軍の将だった驍宗でした。

しかし、反乱とはいうものの、轍囲の民が反乱を起こす気持ちも理解できます。

そのため、驍宗は轍囲攻略にあたって、盾に白綿を貼らます。こちらからは危害を加えないという意味です。その盾を見て、民は反乱をやめました。

そういった経緯もあって、驍宗に対して、轍囲は特別な土地だったのです。

鳴蝕

驍宗の身を心配する泰麒は、ただ2つしか持たない使令を驍宗のもとに差し向けることにします。

しかし、文州の乱は単なる暴動ではなく、大逆(王を殺すること)の一環でした。

驍宗は、行方知れずになってしまいました。

その時、泰麒の信任を得ていたのが、禁軍右将軍・阿選あせんでした。

阿選は、先王の時代に驍宗と「双璧」と呼ばれる程の実力者でした。それもあって、驍宗が王になってからも、阿選は禁軍右将軍に任命されていました。

その阿選が、突然泰麒を襲いました。

泰麒は、阿選に麒麟の角を攻撃され、鳴蝕(月の呪力を使わず、麒麟が起こす小規模な蝕)を起こして、蓬莱(日本)へ渡ってしまいました。

蓬莱

泰麒は元々、胎果(十二国記で生まれるはずが、日本に流されてしまい、人が出産して生んだ人や麒麟)でした。

流された日本では、日本にいた時の姿になっていました。

名前は「高里たかさと かなめ」です。

鳴蝕を起こしたのは、阿選に麒麟の角を攻撃されたからでした。

その影響もあってか、十二国記の記憶を失ってしまっていました。

厳しかった祖母の葬儀の日、泰麒は高里要として、生家に戻ってきました。

※ここから先の高里要の物語が「魔性の子」となります。

李斎

驍宗、泰麒が行方不明になって、6年の月日が流れました。

戴国は、謀反の首謀者と思われる将軍・阿選が権力を握っています。

そして、驍宗の臣下は次々と排除されていました。

女将軍・李斎りさい(詳細は「風の海 迷宮の岸」参照)も罪人として追われていました。

そして、追い詰められた李斎は最後の手段として、景王に助けを求めることを決意して、戴国から脱出します。

助けを求めると言っても、実際には泰麒と同じ胎果で登極したばかりの景王を「唆す」ことを考えていました。

その時景王・陽子は「和州の乱」から1年が経過した頃の時の話しです。

慶国は、乱に参加した者達を登用し、安定しつつありました。

そんなある日の午後、王宮の門前に瀕死の李斎が現れます。

李斎は、「景王に奏上したいことがある」と申し出ます。

そして、拒絶しようとする門番の対応に業を煮やした李斎は、強行突破を試みます。

その時、たまたま出会った陽子の側近・虎嘯こしょうに助けられ、景王に泰国の救済を願うことを伝えて意識を失ってしまいました。

李斎は載から脱出する際に妖魔に襲われて、武将の命である右腕を失っていました。

覿面てきめんの罪

李斎は昏睡状態から回復すると、面会に来た陽子に改めて助けを求めます。

陽子は心動かされ、雁国の王・尚隆と麒麟・六太に協力を仰ぎます。

しかし、延王は「その国の王の依頼がなければ軍が他国に入ることはできない」という「覿面の罪」(破ると王は死ぬ)になると言います。そして、決してこの罪を犯さないよう忠告します。

陽子は、景王になる際に、延王に協力を得ています。しかし、それは、契約を済ませた本物の王の陽子からの要請だったから、兵を出すことができました。

そのことを確認した陽子は、李斎に泰の民が自ら阿選を討つことはできないかと聞きます。

しかし、李斎は気候の厳しい泰の民はすでに生きるだけで精いっぱいであることを伝えます。

そして、阿選を討つために人を集めても、どういう訳か多数の脱落者が出てしまって、戦うことができなかったと言います。

また、仙である阿選は寿命もなく、王も麒麟も行方が分からない(死んでいないようだ)という状況では、仙の資格を取り上げる方法もないと言います。

そうすると、阿選を止めるために天の摂理が一切が働かないのです。

陽子は、できる限りのことはすると、李斎に約束します。

李斎は、罪深いこと(覿面の罪を犯させるよう唆そうとした)を考えて慶に来たことを謝罪しました。

碧霞玄君へきかげんくん

陽子や景麒、延王や延麒が討議した結果、天が許す範囲でできることは泰麒の捜索だと結論がでます。

そして、それが可能なのは麒麟だけでした。

王が蓬莱へ渡るためには、大きな蝕を起こさなければなりません。そうすると、沿岸の民に影響がでてしまいます。

しかし、麒麟であれば、最小限の蝕で渡ることが可能です。それでも、多少は影響が出てしまいます。

そして、陽子の発案で、各国の麒麟に協力を呼びかけることになります。

ただ、前例のないことだけに女仙の長・碧霞玄君に相談した方がいいということになり、陽子と延麒は蓬山を訪れます。

碧霞玄君は、麒麟たちが泰麒を探すことは天網に反しないと告げます。

しかし、陽子は天網(天の理)に違反した場合の罰が、非常に教条的(原理・原則に固執する応用のきかない考え方)であることに驚きます。

そして、天というシステムが実在することに違和感を覚えます。

泰麒発見

氾王・呉藍滌ごらんじょうは、捜索に協力するため慶を訪れます。

そして、氾王が驍宗に贈った玉帯が、戴から範に出荷された玉に混ざっていたことを告げます。

ほとんどなかった驍宗の行方の手掛かりです。

そして、慶・雁・範など7国の麒麟で、泰麒の捜索が始まります。

しかし、問題は山積していました。

  • 麒麟たちが現実世界を知らないこと
  • 蓬莱だけを取っても範囲が広いこと
  • 泰麒の気配があまりにも弱いこと
  • 使令の禍々しい気配に隠されること

そのことから、捜索は難航しました。

しかし、麒麟たちの努力の結果、ついに泰麒が見つかります。

麒麟を仙に

泰麒は反乱で襲われた際に角を失っていました。

そして、十二国で暮らした記憶を失くして、ひどく穢れ弱ってしまっています。

麒麟は慈悲の生き物で、肉食はしませんが、日本で生活するには好き嫌いはできませんでした。

そして、一緒に流された使令達を制御できず、泰麒を守るために血の穢れにまみれてしまうことになってしまいました。

そして、麒麟というより、ただの人という状態になってしまっていました。

麒麟ではありますが、実質として人になってしまっていて、十二国記の世界に渡ってくることができません。

そこで、陽子たちは、王が蓬莱に渡って泰麒を仙に召し上げるという手段を考えます。

しかし、麒麟を他国の仙にするという方法が、問題あるかどうか判断できませんでした。

そのため、再び碧霞玄君の判断を請うことにしますが、李斎は天および天意が実在することに衝撃を受けます。

天意

李斎は、かつて自分が昇山した時と比べ、雲海の上の旅があまりに楽なことに驚きます。

そして、王を選ぶためになぜ命をかけて雲海の下・黄海を旅しなければならないのかと嘆きます。

麒麟が王を選びますが、その麒麟は天が決めた王に告げるだけです。しかし、王が決まっているのなら、黄海での苦労や、死んだ人々は何だったのでしょうか?

陽子は、この世界は神が治める国であり、その神が決めたルールでしか生きられないのかもしれないと思います。

そして、(神も含め)存在するものは必ず過ちを犯すのだから、自らを救うしかないと告げます。

碧霞玄君の元へたどり着いた二人は、碧霞玄君に「泰麒を助けず死ぬのを待てというのが上の意向」であると告げられてしまいます。

しかし、李斎は必死で食い下がります。

そして、天網の条文の隙を付いた「泰麒を雁の戸籍に入れ、一時的に泰麒を仙に任命する」という手段で、泰麒を助けられると授かりました。

救出

泰麒を救出するため、延王が虚海を渡りました。

そして、泰麒を仙にし、無事に連れ戻すことができました。

しかし、泰麒の身体は、他の麒麟が近寄ることもできないほど穢れてしまっていました。

その泰麒の穢れは、碧霞玄君の手にも負えず、女神・西王母せいおうぼに助けを請うことになりました。

李斎の「戴には希望が必要だ」という嘆願もあり、泰麒とその使令は清められることになりました。

しかし、西王母はそれ以上の助力はしませんでした。

角が折れた泰麒は、麒麟としての能力がなくなってしまっています。

使令も清めるために引き離されたことで、十二国記の世界にやってきた幼い頃より、更に無力な状態になってしまいました。

景国の現状と泰麒

泰麒は戻され、慶の王宮で休んでいました。

そして、しばらくして泰麒が眼を覚ました。

陽子が泰麒を見舞っていた時に、慶の内宰(王がいる内宮を司る長)達が乱入し、陽子を弑逆しようとします。

内宮を主幹する内宰を遠ざけ、王の側近の少数の者だけで周囲を固めていました。

さらに、他国の者に肩入れし、他国の王や麒麟を頻繁に出入りさせていたため、陽子が他国に景を渡そうとしていると勘違いしたものでした。

その場は、延麒と景麒が駆け付けことなきを得ましたが、泰麒は自分たちの存在が少なからず慶国の負担になっていると悟りました。

「戴を救うのは戴の民しかいない」と李斎に告げ、共に戴国へ戻ることを決意します。

そして、夜明け前にこっそり出立しようとします。

見張りに付けていた使令によって二人の決意を知った延麒は、二人に餞別の旅費と旌券を渡します。

そして、延王の騎獣も貸し出しました。

泰麒と李斎は、二人だけで戴国へ旅立ちました。

最後に

「黄昏の岸暁の天」は戴国の話しですが、景国のその後も知れる物語です。

泰麒が戻りましたが、まだ戴国は混乱の中です。

驍宗が死ぬことで、新たな王を選ばれ、摂理は戻るはずです。

しかし、驍宗は死んでいません。ただ、どこにいるのかはわかっていません。

そんな中、無力な泰麒が戴国に戻って、どうするのでしょう?

物語は、この先まだ続きます。

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