未成年者取消権 石子と羽男(2) ネタバレあり

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未成年者取消権 は、保護者の同意を得ないで未成年者が契約した場合、契約の取り消しができるという権利です。

子供が高額の課金をして、ニュースになっていたりしています。今回もそのようなケースでした。

そんな第2話のネタバレです。

石子と羽男公式HP

主な登場人物

石田硝子しょうこ  有村架純
羽根岡はねおか佳男 中村倫也
うしお綿郎   さだまさし
大庭おおば蒼生  赤楚衛二

相田瑛子  木村佳乃
相田孝多こうた  小林優仁
丹澤文彦  宮野真守

第2話のストーリー

無料法律相談会

地元の法律事務所と合同で「無料法律相談会」を開催します。うしお法律事務所も、参加します。参加する目的を石子が大庭に説明します。

「気軽に来ていただけるために。1時間の相談無料、依頼は別途料金が・・・」

しかし、当の弁護士・羽男は「あーあ、めんどくさ」と言って乗り気ではありません。

「あなたに依頼が来ないからです。
 うち事務所兼自宅のリフォームローン、光熱費もろもろ、さらにあなたの給与を捻出しないといけません」

やる気のない態度の羽男に注意する石子。羽男はやる気がないながらも、のぼりを立てようとします。しかし、それにも食いつく石子。

「ちょちょちょ、ここの使用は11時からです。
 もう受け付けてる感、出てしまいます、これだと」

あと1、2分ですが、きっちりしている頭の固い石子でした。

「君も大変なところに来ちゃったね」

羽男は大庭に声を掛けますが、大庭は至って真面目です。

「就活している間にアルバイトさせていただいて、感謝しかないです」

石子は「バイト代の分、しっかりお願いしますね」とにこやかに言うのでした。

依頼人

そんな時、落ちている付箋紙を拾う石子。

「天才ネタ、思案する際、眉間に深く皺を入れる」

羽男が自分のキャラを「天才キャラ」に設定して、そのキャラを作るためにやる事を書いた付箋紙でした。前回もそうですが、羽男はすぐ落とします。

その時、声をかけてきた親子がいました。

「あのすみません。もうやってますか?
 息子が無断でゲームに課金してしまったんです。なんとかなりませんか?」

依頼内容

親子から聞き取りした内容を確認のために話しはじめる石子。

「相田瑛子さんは、息子・孝多くんにスマホを持たせていた。
 それはあくまでも、連日遅くまで塾に通うための連絡ツールとしてであった。
 しかし、孝多くんはソーシャルゲーム「ドロッピングパズル」、通称「ドロパズ」に無断で19万8700円を課金してしまった。
 その事実に気づいたのは3日前、相田さんがクレジットカードの利用明細を確認した時であった。
 急いでキャンセルを申し出たが、引き落とされた後であり、ドロパズの運営会社テンションに返金のメールを送ったものの、返金には応じられないと返信があり、困っている」

そして、羽男は孝多のスマホを借りると、ゲームを確認します。

「他も見てもよろしいでしょうか?」

そう聞くと、発信履歴も確認しました。羽男は、写真のように見たものを記憶できる能力を持っています。どっかの公正取引委員会の調査官のようです。

未成年者の過失

「民法第5条で未成年者が親の同意を得ずにした契約は取り消すことができると定められています」

羽男はそう言うと、依頼を引き受けることにしました。

母親は「多、悩んだけど来て良かったね」と言うのですが、孝多は微妙な表情をしていました。

そして、母親は「裁判になるか、裁判費用が高額ではないか」と羽男に聞きます。しかし、この程度の金額では、裁判になることを相手も望まないはずと答えていました。

「先輩、子供がやったからって無しにするのは、モヤモヤするんですけど」

大庭は石子にそう聞きます。

「あー気持ちわかりますが、未成年者の過失は社会全体でカバーすべきというルールなんです」

石子は大庭にそう説明しました。

交渉相手

「一人で大丈夫だから」

ゲーム運営会社の顧問弁護士と交渉する場に羽男だけでなく、石子も同席します。

「いえ、弁護士倫理に欠けるあなたの言動が心配ですので」

顧問弁護士は「リック&ベンジャミン法律事務所」です。羽男が以前所属していて、クビになった弁護士事務所でした。

「羽根岡先生、元気ですか?」

そう声をかけてきたのは、担当弁護士の丹澤でした。

「まさかこちらが顧問だったとは。突然辞めてしまい申し訳ありませんでした」

丁寧に挨拶する羽男ですが、丹澤は「こちらは支障なく」と嫌味を言うのでした。でも、実際支障がなかったのだと思います。

話しを聞かない二人

「ご指定のアカウントのアクセス履歴です。
 何度も課金を繰り返していることから、ミスではないのがあきらかで・・・」

丹澤が説明している最中に羽男は遮って話し出します。

「ただ、利用者は現在12歳です。未成年者取消権に基づき・・・」

遮られたことに対して、丹澤も遮って話します。

「しかし、スマホの名義がお母様になっているため、未成年者が利用した確証がありません。それを証明していただかなければ・・・」

不毛な戦いです。意地なのか、プライドなのか。とにかく、相手の話しを聞かず話していますが、話は噛み合っています。

「では、それを証明できれば、返金していただけるということですね。今、証拠を集めておりますので・・・」

年齢認証

丹澤は、少しずつ、テンションが高くなってきています。

「羽根岡先生、問題はですね。ドロパズでは、18歳以上かを確認する表示が出て、”はい”を選択したユーザーしか課金できないようになっているんです。
 今回は、自ら成人だと偽ったことになるんです。これは、明確にゲーム事業者をだます意図があった・・・」

羽男も同様にテンションがおかしくなっています。

「経済産業省の基準では、成人ですかの問いに未成年者が詐術しても、罪にはならないと・・・」

丹澤がかぶせてきます。

「羽根岡先生、ドロパズは18歳以上ですかと尋ねているんです」

さらに羽男がかぶせます。

「それはもちろんわかっています。成人年齢が引き下げられ、成人ですかと18歳以上ですかは、同じ意味を・・・」

丹澤は限界に達しました。

「羽根岡先生、は、ね、お、か、せ、ん、せ、い!!!
 では、法廷で決着つけるしかありませんね。それで認められたら、返金します」

フリーズする

しかし、裁判になるのは、羽男も相田親子も望んでいません。

「では諦めていただくしかないですね。
 聞いてますよ。うちをお払い箱になったあと、どこにも雇ってもらえなかったんでしょ?
 そんな方が、この案件、覆せます?」

そう言われ、フリーズしてしてしまう羽男。手が震え、頭が真っ白になってしまいます。

「では、法廷で」

そう言われて、帰る石子と羽男。

「まいったね。俺を動揺させようとあんな嘘を。まさか信じてないよね」

取り繕う羽男ですが、前回のことで石子は良くわかっています。そして、父親にも聞いていました。

母親のため

時間を気にしながら家事をする孝多の母親。

石子と羽男は、孝多の家に行き、状況を報告します。

「そうですか、私もいけなかったんです。仕事仕事で管理できていなくて」

孝多の母親は、シングルマザーで一人で孝多を育てています。家の壁には「中学受験だ」とか「経明中合格する!!」などと書かれた紙が貼られていました。

「私はぜんぜん頭になかったんですけど、この子がいい学校に入って将来お母さんを楽にさせてあげたいって言ってくれまして。気づかないうちに子供って大きくなるものですね」

そう言う孝多の母親は、嬉しそうでした。

「先生、それで、裁判になるということでしょうか?」

母親にそう聞かれますが、上手く説明する方法がありません。その時、孝多が話しだしました。

「俺もう受験ヤダ。自信ないし塾辞めたい。
 もう限界なんだよ。受験が嫌でゲームばっかりしてたんだよ」

母親が話したことと真逆のことを言い出す孝多。

「絶対嘘、お母さん認めませんからね。
 孝多、どうしたの?孝多、孝多、お母さん見て」

毒親疑惑

「本当に彼が受験したいと言い出したんですかね?お母さんが自分の願望を押し付けているような」

事務所に戻った石子は、孝多の発言と母親の言うことが食い違っていることが気になりました。大庭が「毒親ってことですか?」と聞くと、石子は「言うなれば」と答えました。

「だとしても、今回の依頼とは関係ありません」

羽男はスマホでゲームをしながら、深く立ち入りすぎる石子をたしなめていました。

「仕事だよ仕事。ドロパズの確認。これで見えてくることもあるの」

しかし、石子には時間の無駄としか思えません。

鉄子と盛男

「それに眉間に皺を寄せる練習も無駄な時間かと」

そう言われ、驚く羽男。

「見たな、メモ。いろいろあるのよ、弁護士にはね」

そう言って大庭に繕います。

「この方が標準的な弁護士だと思わないで下さい」

石子は大庭に釘を刺します。

「標準よりすごいって意味ね」

羽男はこれも繕おうとします。

「違います。規範の概念が標準的ではないと言う意味です。
 自分を大きく見せるきらいがあります。ご注意を」

羽男は「何を根拠にこんなことをこの方は言ってるんでしょうね?」と、石子の発言を否定します。

「一昨日のSNSです。忙しくて仕事の合間に講演でホットドッグとなっていますが、本当は事務所でのんびりラーメンをすすってましたよね。
 誇大広告を言われてもしかたがありません」

それに対して「頭が固いね、鉄子さん。石より硬いから、鉄子」と羽男は言います。

しかし、石子も負けていません。

「ずいぶんくだらないことをおっしゃるんですね、盛り男さん。話しを盛る男」

巻き込まれる大庭。どちらにも味方せず、中立でいるのでした。

孝多へ事情聴取

孝多が通う塾では、塾にいる間はスマホを塾に預けています。プラスチックの仕切りのあるケースに名前が書いてあり、そこに自分のスマホを入れておくのでした。

石子と羽男は塾に行き、孝多に話しを聞きます。

孝多を呼び出すと、孝多の友達・エイイチが孝多に誰か聞きます。孝多は簡単に「弁護士さん」と紹介していました。

「弁護士っていうことは頭がいいの?大学はどこ?」

エイイチにそう聞かれ「海外の大学を。意義が見出せなくて途中で辞めたけど」と説明する羽男。しかし、子供は賢いもので、「高卒ってこと?」と聞き返します。羽男が「まぁ」と認めると、羽男への関心がなくなってしまいます。

今度は石子へ質問です。「お姉さんは?」と聞くと「東大です」と石子は答えました。それを聞くと石子にだけ「お姉さんさようならー」と言って帰っていきました。

孝多の友達の男の子の家は代々医者の家系のようです。そして、その子も医者になるように塾に通わされているのでした。子供ながら、親からのプレッシャーは相当なもののようです。

「でも、あんだけ金持ちならなんとかなるでしょ。本当に親ガチャ外れた

バレたか

横道に逸れましたが、話しを孝多のことに戻します。

「これはあなたのドロパズのアクセス履歴です。
 これによると、平均で週に2回。月で7回しかプレイしていません。
 19万8700円を課金するほどのめり込んでいるのに少ないなと」

そう聞かれた孝多は「バレたか」と言うと、本当のことを打ち明けてくれました。

「本当は別ゲームは好きじゃない。けど、受験が嫌なんだってことをわからせるためにやったんだ。ゲームにはまりすぎたやつが親に塾を辞めさせられたのを思い出して」

孝多の受験が嫌だと言う気持ちが、ゲーム運営会社や母親、そして石子と羽男も騙すことになってしまったのでした。

「お母さんに真実を伝えましょう」

石子がそう言うと、孝多は自分で言うと言うのでした。

「わかった。言うからちょっと待って」

受験は親のため

「そうまでしないと、お母さんが受験を辞めさせてくれないと思ったんですかね?」

どうしても孝多の心情に寄り添ってしまう石子。

「我々には関係ないの」

羽男は、依頼とは関係ないと言います。

「中学受験って、どこまで本人の気持ちなんだろう?」

石子は中学受験はしていません。

「俺、小6の時、遊びと剣道しか頭になかったな」

大庭は受験とは縁のないところで育ちました。

「俺中学受験したし」

羽男は中学受験をしていました。しかし、孝多のようにゴリゴリに勉強した訳ではなく、「塾にもいかず、特に苦労もなく」合格したと言うのでした。

「記憶力、ずば抜けていいんで。ただ、受けたくて受けた訳じゃない。受験は親のためだな」

そう言うのでした。

来年が最後

「硝子ちゃん、昔からあたまいいんですか?
 ストレートに東大でしょ?相当頑張ったんだろうなー」

石子の父・潮が、友人の蕎麦屋・塩崎と話していました。

「うん、中学あがるころ離れたから、それ以降のことわからないんだけどね。別れた妻が頑張ったんだろうな」

潮はそう言うのでした。

「それにしても司法試験って難しいんですね。そんな硝子ちゃんが4回も落ちるなんて。さすがにあと数回で受かりますよね?」

塩崎は潮にそう聞きます。

「ただね、5回までしか受けられない決まりなんだよ」

そんな話をしているのを羽男と大庭は聞いてしまいました。後からやってきた石子は、聞こえていたはずですが、知らない顔で入って行きます。

石子の司法試験は、来年が最後ということになります。

新しい問題

そこに相田親子がやってきました。

「羽根岡先生は?」

そう聞く母親に羽男河対応します。

「またゲームの請求が」

そう言うと、上限の30万円まで使ったと言う通知画面を見せるのでした。

「ご利用日 6/27 株式会社テンション ご利用金額254,000円」

1日だけで限度額全額使ったというのです。

「俺じゃないよ」

孝多は聞かれる前に自分で言いました。それに母親も同調します。

「違うと思います。あの請求がきてから、スマホではゲームできないように設定しておりますので。
 あの、カードは停止しましたので、どうしたらいいでしょうか?」

そう聞かれると、羽男は孝多を母親から離れたところに連れていき、確認します。

「本当に違うんだね?だとすると、誰かがアカウントを乗っ取り課金したということか」

そして、大庭は大事なことを確認します。

「言いにくいかもだけど、誰かにいじめられてるとか、ない?」

それについては、孝多ははっきり否定していました。

困っている人たちの傘

「クレジット情報が誰かに漏れている可能性は?アカウントのパスワードは?」

そう羽男に聞かれますが、親子には心当たりはありませんでした。

「これは以前の課金問題とは全く異なる事案です。不正アクセスにクレジットカード使用となると刑事事件です。警察に相談しましょう」

これは「刑法第245条の2 電子計算機使用詐欺罪」にあたります。

それを聞いた母親は「対処費用の方が再度請求して下さい」と言うのでした。

しかし、潮は「いえいえ、当初の依頼費で対処できますよ」と言って、追加の契約の必要はないと言うのでした。潮をにらむ石子。

「困っている人たちの傘になるのが私たちの仕事ですから、ね」

そうやっているから、生活が苦しくなるんです。しかし、人権派弁護士がいることで、弱者が助けられていることが多いのも事実です。

諦め癖

事務所の屋上で、またドロパズをやっている羽男。

「休憩中はいいだろう?」

そういう羽男に「仕事中もしてません?」と聞く石子。

そして、今後の方針を聞きにきたのでした。

「どうします?進め方。当初の返金に関して」

しかし、羽男には打つ手が見つかりません。

「依頼人が裁判を拒む限り、相手に開き直られたら打つ手ないよ」

そんな諦め癖のついた羽男に石子は「諦めないで下さい」といいます。

「25万の方も警察に依頼したから、やることないし」

本当に羽男には、現状できることがありません。

「情報開示まで時間がかかります。孝多くんのお母さんに恨みがある人も含めて、調査してみませんか?」

そう石子は提案しますが。羽男には有効な手だとは思えませんでした。

「警察に任せよ」

好きなの?

仏壇に水と花を供える孝多の母親。

株式会社ジャスティという不動産屋で働いていました。そして、仕事が終わると自転車に乗って移動します。今度は、ハンバーガー屋でダブルワークです。

それを見る石子。一生懸命働く母親の姿を見て、毒親かと思っていた印象が変わってくるのでした。

そんな時、羽男は事務所から帰る途中でした。大庭が駅まで一緒に帰ります。

「あの、改めてよろしくお願いします。就活を進めながらなんでご迷惑をおかけすると思いますが・・・」

大きな声で羽男に挨拶する大庭。

「固い固い、でうるさい。
 でさでさ、あのーどう思ってるの?石子さんのこと」

挨拶よりも、大庭が石子に好意を持っていると勘繰る羽男。男同士なら話しやすいと思って、直接聞いてみました。

「その・・・尊敬する先輩として。好きとか、そういうアレじゃないです」

羽男が期待していた応えとは違いました。

「どっちでもいいから、鈍いから聞いておこうと思って」

羽男はそう言ってニヤニヤするのでいた。

石子のルール

「孝多と仲が良かったのは、北野エイイチ、田中エミル・・・」

石子は、孝多の塾で聞き込みをしていました。そこに、羽男から連絡がはります。

「子供に接触するなってクレーム入ったぞ」

このご時世、子供が知らない大人と接触することは、大きな問題になりかねません。

「犯人の手がかりが掴めないかと。
 わかりませんが、可能性はゼロとは言えません。
 お母さんの印象が少し変わったんです」

石子は羽男にそう説明します。

「毒親だとか言ってなかった?」

最初はそう思っていた石子でした。

「その結論は出てません。しかし、少しでも役に立ちたいと」

石子がそう言うことに驚く羽男。

「そんなこと言う人だった?お金にしか興味ないのかと思った。
 とにかく、俺の指示なしに動かないでしょ。君はパラリーガル。ね!クレーム入るって、君のルール上OKなの?」

そう羽男は言って、電話を切りました。

股にお茶

石子が最寄りの駅に戻ってくると、雨が降っていました。上着を傘代わりにして、走る石子。その時、帰宅する大庭とすれ違いました。石子に大庭は傘をさしかけます。

しかし、石子は必要ないと言って傘を断ります。大庭は負けずに言います。

「一緒ならいいですか?事務所に忘れ物あったの思い出して。一緒にいきません?」

そこまで言われた石子は、「では、お言葉に甘えて」と受け入れました。

「ちゃんと傘、入ってます?」

石子は大庭が自分にだけ傘を向けている気がして確認します。

「大丈夫です」

そう言い切った大庭ですが、反対側の肩はずぶ濡れでした。

「この前、おもしろいジョークを聞いたんです。とあるマタニティの話しです。
 そのマタニティが、股にお茶をこぼしてこう言ったんです。これが本当のま・・・あ。
 オチ言っちゃった。やっぱりダメっすね。
 一旦、マタニティ、忘れてもらっていいですか?
 妊婦さんが・・・・」

しかし、無理です。全てわかってしまいましたし、マタニティを一旦忘れることもできません。

「ぜんぜん元気ないから笑わせようと思ったんだけど、ダメっすね」

大庭の気持ちが嬉しい石子。

「恩に着ます。おかげで元気でました。
 妊婦の股にお茶で、マタニティですね、わかりました」

確認して一緒に事務所へ戻りました。

一人の食事

羽男は、家でもゲームしていました。

そして、そのゲームでチャット機能を利用して、コミュニケーションを取っていました。

羽男は一人暮らしのようです。一人でレトルトの食事を作っていました。

そこに着信が入ります。

「羽根岡優乃」

名前からすると母親か、姉妹でしょうか?しかし、羽男は電話に出ませんでした。

その頃、孝多も同じように一人食事をしていました。母親は仕事でしょうか?

スマホを横にして、動画を見ながら、食事をしていました。

アカウント乗っ取り犯

翌朝、羽男を出勤すると、さっそく石子が話しかけてきました。

「おはようございます。これ、レベルってどうやって上げるんですか?ドロパズ、私も始めてみました」

どういう心境の変化でしょうか?石子は「時間の無駄」だと言っていたゲームをしていたのでした。羽男は「敵倒したり、イベント周回して経験値稼いだり」と、簡単に教えます。

「前後ろ逆ですよ」

羽男は薄手のセーターを前後逆に着ていました。あくまでも認めない羽男。

「こういう着こなしですけど」

石子は羽男との接し方がわかってきたのか、「それはすみません」と適当にあしらっています。

「じゃあ、会いに行くか。アカウント乗っ取り犯。ゲーム内の孝多くんのアカウントとフレンド登録できてさ」

いきなり羽男は重要な話しを切り出しました。フレンド登録して、チャット機能をつかって連絡をしたのでした。

「私はそのアカウントの代理人弁護士だ。他人のアカウントを奪い不正に課金しているのはわかっている。貴方の情報を取得し特定するのは時間の問題だ」

そうチャットを送ってみたら、すぐ返信がありました。

「助けて、脅されてます」

そして、落ち合う場所を決めたのでした。一緒に向かう石子と羽男。

「遊んでただけじゃないんですね」

石子は純粋に驚いていました。

「当たり前だよ。全部計画通りだ」

全部計画通りではないかもしれませんが、今回は上手く行きました。

脅されたエイイチ

待ち合わせ場所に立つ二人に向かって、歩いてくる小学生の姿がありました。

「すいませんでした」

予想外の人物に驚く二人。

「え?君が乗っ取り犯?」

そう言うと、孝多の友達・エイイチを連れて喫茶店に入りました。

「課金したことは間違いないんだね」

そう羽男が聞くと、エイイチは「はい」と素直に認めました。

「孝多くんに申し訳ないとか思わなかったの?」

アカウント名が「こうた」になっていましたが、エイイチは気づかなかったと言うのでした。

「孝多のアカウント?全然わからなくて、4日前の帰りにカバン開けたら手紙が入っていて」

そういうと、カバンからその手紙を取り出しました。指紋が付かないようにハンカチを使って手紙を受け取り読みます。

「6月5日の模試でカンニングしたな。バラされたくなければドロッピングパズルにログインし課金し続けろ。アカウントは以下のものを使え」

そうの手紙にはIDとパスワードが書いてあり、それが孝多のIDとパスワードだったのです。

もう後がなくて

「ねえねえこれさ、課金するときチェックみたいのあった?」

そう聞く羽男。しかし、ログイン以降はなかったと言うエイイチ。

と言うことは、カード情報はアカウントに紐づいていたってことです。そして、エイイチは事情がわからないまま、従ったのでした。

「ってことは、したんだ。カンニング」

そう突っ込む羽男にエイイチは言います。

「僕、小学校の受験落ちて、もう後がなくて、ごめんなさい」

そして、羽男は手紙の差出人に心当たりあるか聞きます。

「バレませんよね?」

エイイチはもうカンニングのことしか頭にありません。

「一旦、カンニング忘れようか」

羽男にそう諭されていました。

いちごぱんつ

供述に基づく模試の状況をホワイトボードに書いてみました。

行われたのは、全クラス対象の模試で、参加生徒は約40名でした。そして、監督官はコンドウ先生と事務員のフカセです。

「で、栄一くんの席は一番前。犯人絞りズラ」

カンニングに気づくのはエイイチの席より後ろの生徒です。しかし、一番前の席なので、ほとんどが対象者になってしまいます。

その時、大庭が外出先から戻ってきました。

「依頼者から預かってきた通話記録です」

しかし、今は返金どころの騒ぎではありません。それ以上の刑事事件になる問題が発生しています。

「そうだ、いちごぱんつです」

突然大庭が言い出しました。いきなり言われ困惑する石子と羽男。

「孝多くんのスマホのパスワードです。
 1582年、本能寺の変の語呂合わせで思い出したそうです。
 このパスワード、友達のエミルちゃんなら知ってるって」

あの日見た履歴

その話を聞いて、エミルに確認しにいく石子。

「ゲーム好きのあなたが、親に禁止されていることを不憫に思った孝多さんは、授業終わりに1度ゲームをさせてあげたことがあり、その際にパスワードを聞いた。合っていますか?」

石子がそう聞くと、エミルは「はい」と明確に答えました。

「いちごパンツのパスワード、誰かに教えたことはありませんか?」

石子が続けてそう聞くと、エミルは「ないです。でも・・・」と言うのでした。

その頃、羽男は大庭がもらってきた通話記録をみていました。

「通話記録のここ。あの日見た履歴と違う。スマホ上にはなかった」

羽男は、相談に来た時に発信履歴も見ていました。それを写真のように覚えていたのです。通話記録を誰かが、意図的に消したようです。

その消された番号は「フォレスタ法律事務所」でした。

その時、石子から電話が入ります。

「大至急調べたいことが」

子供に気を使わせる

「孝多さんの財布を盗んだ犯人を捕まえるために、証言して欲しいとお願いして集まってもらいました」

そう言って塾にコンドウ先生、事務員のフカセ、同じ教室の子供たちを集めていました。

「真犯人が来るはずです。ここで自供すれば、悪事は公表しないとアプローチしたので」

そう言うと「私たち、力になれますか?」と事務員のフカセに聞かれます。

「ええ、見たことを証言していただければ」

羽男はそう言うと、犯人がくるのをみんなと一緒に待ちました。

しかし、問題が発生します。石子が買ってきた飲物を子供達は誰も手に取ろうとしません。

「チョイスが下手じゃない?なんであんなバラバラに買ってくるかな」

羽男がそう文句を言うと、石子が反論します。

「いろいろあった方が好みにあう可能性が」

しかし、羽男は更に突っ込みます。

「でも、緊張をほぐしてもらうのが狙いでしょ?飲物バラバラで1本ずつだと手を出しずらい。お茶とか水とかオーソドックスなやつが良かった」

不貞腐れる石子。

「小学生が好きな飲み物で検索し上位を買ったんです。お茶とか水とか入ってませんでしたけど?」

そんな会話を目の前でされて、みんな気を使って「飲みます」と言うのでした。

犯人

「はいきたー」

そう言うと、事務員のフカセが取った飲み物を回収します。

「模擬試験の日、孝多くんの財布を盗んだ犯人を捕まえるために証言して欲しいとお願いして集まってもらいましたね。そんな事件は存在しません。
 我々が本当に暴きたかったのは、孝多くん親子に25万円の損害をおわせた人物、つまりあなたです」

フカセは「なんですか、それ」ととぼけます。

「エミルさんが、孝多くんのスマホを解除する時、パスワード”いちごぱんつ”と声に出したかもと。つまりあなたは、事務所で孝多くんのパスワードを耳にしていた。
 パスワードがわかれば、授業中預かっているスマホを解除できる。あとはゲームを起動させるだけ。
 そして、ドロパスのパスワードは表示させることができるため、それを用いてエイイチさんを脅迫した、可能性がある」

そんなことしないですよー

「可能性があるで、決めつけられても」

フカセはそう言い逃れします。

「可能性はゼロではないので、あなたのことを調べたところ、以前勤めていた塾で同じようなことを起こしていたことが判明しました。
 その事件の際、発覚した際あなたは、自分の親は学がなく、高校を出たら働けと育てられた。いい大学に行けていたら、人生がが開けたのに。
 だから、受験する子供の足を引っ張りたかった。と発言。謝罪を口にすることはなかった。
 あなたは同じ感情を抱き犯行に及んだ。違いますか?」

しかし、フカセは否定します。

「違います。私、そんなことしないよー」

そう言って否定したのですが、逃げ出しました。

親ガチャ引き当てた勝ち組

逃げようとするフカセを捕まえる羽男。

「触んないでよ。なんで私が捕まるんです?」

そう言って、掴まれた手を振りほどきます。

「なんで孝多くんを狙ったんです?」

そう聞くと、フカセは話しだしました。

「塾、辞めたいのに辞めれないって愚痴ってたから、じゃあ考えてあげようって。
 みんな親ガチャで当り引き当てた勝ち組でしょ?うちの親は諦めろしか言わなかったのに」

それを聞いた羽男は、切れてしまいました。

「くっだらねーーー。自分の人生に不満があるからって、矛先他人に向けんなよ。
 もういい、わかったわかった。警察呼びまーす」

そう言うと、離れて電話をしに行きました。

「私は、みんなが恵まれているということをわからせるためにやったんだよ」

フカセは悪びれることもなく、そう言うのでした。

頑張って親をやっている

石子は一歩二歩と前に出て話し出します。

「確かに、人生スタートラインで差がついているのは否めませんよね。しかも、本物のガチャガチャは不良品だった場合、追完請求権で交換できますが、親ガチャの場合不良品だと思ったとしても、交換を命じる法律はありません。
 でも、だからと言って、生まれ落ちた環境を受け入れるしかないとは思いません。
 ひどい親が存在するのは事実ですから。そういう場合は、ぜひ声をあげていただきたい。
 でも、多くの親は頑張って親をやっていると思うです」

孝多の母親は、孝多のために料理を作っている時に動画を撮影していました。その動画を見て、話しかけながら食事する孝多。スマホを横にして見ていた動画は、母親の動画だったのです。

罪状

「多くの子供も、親の期待に応えようと、頑張って子供をやっています。そういう親子の関係を当りだハズレだというのは、何の意味があるんだろう?以上です」

石子の話は終わりました。その時、警察を呼んだ羽男が戻ってきました。

「はい、もうダメ、逃げない。
 貴方の罪は重いですよ。エイイチくんに対する刑法第223条1項の”強要罪”3年以下の懲役。孝多くんのアカウントに不正ログインした”不正アクセス禁止法違反”3年以下の懲役または100万円以下の罰金。さらに、クレジットカードの不正利用として刑法第246条の2″電子計算機使用詐欺罪”10年以下の懲役です。
 まぁ、動機や金額の面も考えて、十分に実刑もあり得るケースだと言えるでしょう」

そう罪状を説明しました。

その後、警察がきてフカセは捕まり、連行されていきました。

ひっくり返す

残るは、19万8700円の返金の問題です。

「返金なーーー。なんにも手がない」

そういう羽男に石子が提案します。

「この手はどうでしょう?ドロパスの攻略サイトを見て気が付いたのですが、
このゲーム32日前に大幅に仕様が変わりましたよね?」

そう言う石子の説明を聞いた羽男は、ゲーム運営会社の顧問弁護士に再度話しを行きました。

「それで、こちらが現在の年齢確認画面です。
 おっしゃっていた通り、18歳以上ですかの問いに対して、”はい”か”いいえ”で答える仕様になっています。
 一方、こちらは、仕様が変わる前の確認画面。
 全体として、利用規約に同意するかしないかで答える仕様になっています。
 ただ、未成年の使用が見込まれるのに、ちっちゃい記載があって、読みずらいんです。
 問題はですねー。相田孝多くんが課金したのは56日前、つまりこの読みずらい仕様の時だったんです。
 当職はこの点において、ドロパス側にも落ち度があるのではないかと考え、未成年者取消権を主張します。もちろん、裁判も視野に入れて」

顧問弁護士は、何も言うことができませんでした。

我が家のルール

「今日はいい報告がございます。なんと、返金が・・・」

そこまで言ったところで、母親が言い出しました。

「先生、先ほど、孝多がワザと課金したと聞きました。いろいろしていただいて大変申し訳ないのですが、もう返金を求めないことにします」

驚く羽男。

「いいですか?正当なルールですよ」

しかし、母親は決めていました。

「社会のルールではそうでも、我が家のルールではそうさせてください。
 孝多には責任を取らせたいので、課金した分の半分を毎月のおこずかいから、私に返済させます。
 残りの半分は、私の罰として受け止めます。もう受験も辞めます」

そこで、羽男は最後の疑問を孝多に聞きます。

「ひとつ質問してもいいかな?君のスマホから法律相談に電話した記録が残ってる。
 でもスマホにはその履歴は残ってなかった。どうして消したの?」

そう言われて、孝多は驚きました。

「ここまでバレるか。。。
 塾辞める作戦ネットで調べてたら、未成年何とかで課金が返金された事件が出てきてさ。電話で弁護士さんに聞いたら、基本的に返金されるって聞いたから、課金したんだ。でも、それバレたくなかったから履歴消した」

そう聞いて納得した羽男。

「冷静に相談していたことがわかったら、受験ノイローゼで課金したというシナリオが崩れると思ったんでしょう」

壮大なシナリオの果て

「彼なりの壮大なシナリオだったんですよ。いかにお母さんに迷惑をかけず、塾を辞めるか。でも本当は君、受験辞めたくないんじゃない?」

羽男にそう言われ、孝多は認めます。

「うん、お母さん俺のために毎日すんげー無理してて。
 幸せにしたいから受験するって言ったのに、こんなに疲れさせるのはどうなんだろうって思って。でも、それ言うとお母さん、私はいいからって絶対言うでしょ?
 だからノイローゼってことにして。なのに返金できなくって、迷惑かけてごめんなさい」

母親は「バカ」と言って、孝多の頭をなでました。母親思いの子が、一生懸命子供をやっていたのでした。

「急に辞めたいなんて言うから、おかしいと思った。孝多がしたいなら、やっていいんだよ」

そういう母親に孝多は「うん」と言うのでした。

そこで、石子が口を挟みます。

「差し出がましいかもしれませんが、母子家庭で受けられる手当の一覧です。
 私の母もシングルだからと、何かを諦めさせたくないと、働きながら懸命に私を支えてくれました。
 こういうルールを知っていたら、もう少し楽をさせてあげれてかと思うと、今でも悔しいんです」

渡された一覧の紙を胸に、孝多の母親は「本当に、ありがとうございます」と涙ぐむのでした。

解決後

「どうですか?俺の履歴書」

大庭は潮に就活のための履歴書を添削してもらっていました。潮は、大庭が書いた自己PRを読ませてみます。

「自分は前の職場でパワハラを受け、今も継続して争っています」

あまりにも真面目と言うか、馬鹿正直です。

「そういうのは書かなくてもいいかな。まっすぐなのはいいとは思うけど、雇いにくいと思わないか?」

そう言われた大庭は「添削ありがとうございます」と頭を下げていました。

そんな時、羽男はしかめっ面の練習をしていました。見つめる石子に気づいた羽男は、「なに、また文句?」と聞きます。

「動きを足した方が、天才っぽいかと。
 このキャラ作りは容認します。特に問題になることもなさそうですし、羽根岡先生なりのやり方もわかりましたので」

そう言うと、一緒になって動きを足していました。手を額に当てさせる石子。

魔貫光殺砲まかんこうさっぽうやるピッコロみたいじゃない?」

そう言う羽男。石子は「確かに」と同意していました。

「確かにじゃなくってさ。オリジナルがある感じないかな」

そう言って、仲良くポーズを考えていました。大庭はそんな二人を見つめていました。

最後に

こういうコメディタッチのドラマ、好きなんです。特に「魔貫光殺砲」の所は、アドリブですよね?そんなこと、台本に書いてあるとは思えませんでした。

それだけでなく、飲物を手に取らせる時のケンカっぽい掛け合いなど、台本がある上でとは言え、いいできだなと思います。

そして、次回は「事案03 著作権法違反」がテーマで、羽男の父と姉が登場するようです。

次回予告

今後も楽しみです。