斡旋 石子と羽男(7) ネタバレ

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斡旋 された仕事をこなしていた少女2人。大きな事件の一部でしかありませんが、大きな闇を含んでいました。

そして、石子と大庭の関係は、どう進展するのでしょうか?

そんな第7話のネタバレです。

石子と羽男公式HP

主な登場人物

石田硝子しょうこ  有村架純
羽根岡はねおか佳男 中村倫也
うしお綿郎   さだまさし
大庭おおば蒼生  赤楚衛二

羽根岡優乃 MEGUMI
川瀬ひな  片岡凜
美冬みふゆ   小林星蘭

第7話のストーリー

相談に乗れ

羽男が自転車で帰宅中、キッチンカーで商売をしている売店の看板にぶつかってしまいました。

その店主は外国人。ポルトガル語?ヒンディー語?とにかく、何語かわからない言葉で、まくし立てられます。しかし、よく聞くと、日本語も話していました。

「日本人ハ、ナンデモ壊シヤガル。コノ間ハミラーモ壊サレタ。オ前、相談ニ乗レ!」

キッチンカーはマサーラカリーの車。南インドの料理ということで、ヒンディー語なのかもしれません。

聞き込み

「2週間前の9月10日の朝5時にミラー壊した人がいて、探してるんですけど、知りませんか?」

石子と羽男はそうやって聞き込みをしていました。しかし、朝5時のことです。目撃者はなかなか見つかりません。

そして、店主からは、わからない言葉でまくしたてられます。羽男は、適当な相づちを打って、かわしていました。

「絶対わかってないでしょ?」

石子にそう聞かれると、羽男は「頑張れ的なことでしょ」と適当に言います。しかし、店主は怒っているようにしか見えません。

「弁償させてよ、70万!」

日本語が話せるなら、日本語で言って欲しいです。

報告

聞き込みを終え、石子と羽男は別の場所へ移動します。

「わるかったって、勝手に相談受けて。チャリンコでぶつかった相手に相談乗れって言われたら、断れないでしょ?」

羽男は依頼を受けた経緯を石子に話しました。そして、石子からも報告があります。

「先生、先日は背中を押していただき、ありがとう存じます。
 大庭さんとお付き合いする運びとなりました」

驚く羽男。なんだか複雑な表情でした。

「これまで通り仕事は・・・」

そう言う石子に羽男は、言われなくてもわかっていました。

「心配してなって、あなたがきっちり仕事をする人だってわかってるから」

山ヨコキッズ

石子と羽男が移動したのは、丸来町まるきちょうの山室ビルの横にある広場です。そこにたむろする若者は、山ヨコキッズと呼ばれていました。音だけで言うと「マルキチョウ」と「カブキチョウ」は、何だか似ています。

「ドキュメンタリーでやってた・・・」

石子はテレビで見ていたようです。大人数の子供達の周りは、ゴミが散乱しています。そして、警察も巡回していました。

「こんにちは、私弁護士をしている羽根岡・・・」

その子供達に話しを聞こうとしますが、誰も話しを聞いてくれません。

「この方、ご存じですか?私パラリーガルの石田硝子と申します」

やっぱり聞いてくれません。名刺を渡しても、すぐに捨てられてしまいます。

その中で「話を聞いてあげようか?」という若者がいました。しかし、話しを聞く代わりにタバコを買ってきてくれと要求してきました。

羽男は「はい」と答えますが、石子が止めます。

「弁護士倫理。金品をお渡しするのはちょっと」

なんとか聞き込みをした結果、CAFE KNIGHTナイトのオーナーの服装と似ていると言う情報を聞き出すことができました。そして、石子と羽男は、KNIGHTにやってきました。

「この方、ナイトのオーナーさんじゃないかという情報が」

スタッフに話しを聞くと、そうだと言うのでした。

「この格好、確かにKさんだね。アルファベットのK」

通称Kですが、スタッフも本名は知りませんでした。

「この方に、お会いできたりしますか?」

羽男がそう聞きますが、予想外の答えでした。

「それが2週間ぐらい連絡取れなくて困ってるんですよ。思い付きで旅行に行ったりするから、それだと思うんですけど」

そして、Kの連絡先を聞きますが、連絡しても出ませんでした。

「Kさん、山ヨコの子達と仲良かったそうですね。リーダー的存在だったってみんな言ってましたよ」

そう石子が聞くと、スタッフが教えてくれました。

「ああ、慈善事業ってやつ。相談のったり、ここで飯を食わせてやったり。みんな金ねえから」

助けて

石子と羽男が事務所に戻ってきました。情報を整理します。

「山ヨコキッズの多くは未成年。”地雷系”と呼ばれる、黒を基調としたファッションに身を包む彼らの中には、さまざまな事情で家には帰らず、漫画喫茶やホテルを泊まり歩くものもいる。隠語で”案件”と呼ばれる援助交際をして、宿泊代、食費を稼ぐ女の子もいて、深刻な社会問題と化している」

石子が山ヨコキッズの情報をまとめて、羽男に話しました。

「Kはこの子たちの救世主だった。なんとかして、連絡とれないかな」

羽男がそう言っていると、羽男の電話が鳴りました。

「たすけてー!すぐ丸来町来て!」

逃亡と転落

「放して!誰か!」

スーツ姿の男に追われる地雷系ギャル。荷物を奪われ、蹴られていました。

石子と羽男は「Kの情報渡すから、早く!」と言われ、急いで向かいます。近くに着くと、電話で現在地を聞きます。

「助けて!マル地下の歩道橋の近く」

しかし、漠然とし過ぎて、どこかわかりません。

「歩道橋いっぱいありますので、他に何か見えますか?」

そうやってやり取りしながら、合流しようとしています。

その時、追われていた地雷系ギャルは、ホテル街を走っていました。逃げ切ったと思った時、地雷系ギャルは、よろけて階段から落ちてしまいました。

そこに石子と羽男も到着しました。見ると、救急車で運ばれようとしている地雷系ギャル・美冬は、血だらけになっていました。その姿を見て、石子は何かを思い出していました。手で顔を覆って、しゃがみ込んでしまいます。

予断を許さない状況

集中治療室に入っている美冬。そこには、追いかけていたスーツ姿の男もいました。

そして、羽男は飲物を買って、石子に手渡します。

「さっきの、どうした?」

ただならぬ様子だった石子のことを聞きますが、石子は「なにも」と言って、多くを語りませんでした。

そして、羽男に電話男かけてきた少女・ひなにも飲物を渡そうとしますが、手を撥ね退けられてしまいました。

そこに医者がやってきて、美冬の母親に状況を説明します。

「最善を尽くしますが、予断を許さないことをご承知下さい」

母親は集中治療室のガラスに手をついて、泣いています。そこに寄り添うのは、追いかけたスーツの男です。スーツの男は、美冬の父親でした。

弁護士なら助けられると思った

医者の話しを聞いていた美冬の父親にひなが掴みかかります。

「お前のせいだ。美冬のこと殴ってただろう」

しかし、父親は相手にしません。

「なんです?殴るって」

そんな父親に怒る、ひな。

「とぼけんなよ。さっきだって美冬のこと連れ戻して、殴ろうとしたんだろう」

それでも、父親は冷静にかわします。

「違います。私だって、こんなことになって辛いんです」

見かねた石子と羽男は、ひなを父親から遠ざけようとします。

「落ち着きましょう」
「手を出したら負けだよ、手をだしたら負け」

そして、遠ざけたひなに何があったのか聞きます。

「もういい」

ひなは心も口も閉ざしてしまいました。

「じゃあ、どうして、我々に連絡を?」

羽男がそう聞くと、ひなは答えました。

「弁護士なら助けられると思ったの」

スーパーマンじゃない

そう言われて、羽男は困ってしまいます。

「申し訳ないけど、我々もスーパーマンじゃないからさ。空飛んで駆けつけるみたいなことはできないんだよね」

若い少女に「スーパーマン」が通じません。スーパーマンの説明をしようとする羽男を石子が止めます。

「なんで警察に連絡しなかったの?」

そうすると、ひなは驚く告白をしました。

「”案件”やってるうちらが、警察呼べる訳ないじゃん」

うちに来て下さい

ひなの告白に驚く、石子と羽男。一旦落ち着くようにひなに言います。しかし、ひなは気にせず去ろうとします。

「お待ちください。どちらへ?」

しかし、ひなは「どこだっていいだろう」と言って出て行こうとします。

「法律に携わる者として、未成年をこのまま帰す訳にいきません」

しかし、ひなは「関係ない」と言って、石子の話しを聞きません。

「いいえ。繋がりができた以上、あなたたちが万が一トラブルに巻き込まれた際、私たちに責任が生じかねません。私が困るので、うちに来てください」

そして、ひなと石子は、「きて」「いかない」を繰り返すのでした。

「こうなったらこの人しつこいよ。どっちがお会計払うみたいな会話になってるよ」

そう羽男に言われ、渋々石子の家にひなが行くことになりました。

相談

石子の家にやってきたひなにチャーハンを食べさせます。石子の父・潮は、お茶を淹れてあげます。

ひなは、チャーハンに入ったグリンピースをよけて食べていました。それを見た潮は、大皿のチャーハンからグリンピースをよけてあげます。

それを見たひなは、グリンピースを食べました。弱い所を見せたくなかったのでしょうか?

その時、石子は事務所の方で、羽男の姉・優乃に相談をしていました。

「少女が階段から落ちた原因が、追いかけた父親にあったと刑事責任を追及できないでしょうか?」

しかし、優乃は難しいと言います。

「ああ、難しいね。追いかけられてる途中で落ちたなら、可能性があるけど。逃げ切った後に起きた事故だよね」

通報者の証言は「一人でふらつき、転げ落ちた」ということになっていました。

「じゃあ、直接的な因果関係はないって判断されると思う」

しかし、それは想定内でした。ただ、優秀な検事の優乃であれば、なにか方法を教えてもらえるかもしれないという淡い期待で電話したのでした。

「やはり、そうですか。お忙しい所ありがとうございました」

そう石子がお礼を言うと、優乃は石子を誘います。

「ううん、今度さ、ゆっくり飲みに行こうよ。スーパー銭湯行ってその流れでとか」

石子は快諾していました。

ルールを破る

石子が電話を切った後、羽男は電話した相手が優乃だったことに驚きます。

「ビックリするわー。勝手に人の姉と繋がって」

気にせず石子は言います。

「お姉さまと気があうもので」

それは良いとして、羽男は気になっていることがありました。

「てかてかてか、いいの?金にならないことはやらないんじゃなかったの?」

しかし、こればかりは見過ごすことができません。

「今回ばかりは、ルールを破ることを自分に許します」

はやり、父親と同じように「人権派」と呼ばれる、人に寄り添っている石子なのでした。

私が訴える

「チャーハン、お替りしてくれたんだよ。先生もご飯、食べて行ったら?」

潮にそう言われ、羽男は「ありがとうございます」と答えていました。

「しばらく泊まって行って下さいね。ひなさん、お家の方は?」

石子がそう聞くと、ひなは「両方死んでる」と答えます。

「児童相談所はご存じですか?女性専用シェルターというのもあって」

石子が説明しようとすると、ひなは拒否します。

「いい。大人は信用できない」

それでも、ひなのためになると思う石子ですが、ひなはそれ以上に大切なことがありました。

「同情してるの?別にかわいそうじゃないから。私なんかいい、美冬を助けてよ。あのおやじを訴えたい。私が美冬の代わりに訴えるよ」

民事裁判

美冬は、3年前に母親が再婚した相手である現在の父親から、暴力で支配されてきました。1ヶ月程前、激しい暴行を受けた時に家を飛び出し、山ヨコにいるようになったのです。

「お母さんは美冬さんをかばってくれなかったの?」

潮は疑問に思いますが、暴力が怖かったのか、何もしなかったようです。

「美冬さんの父親を訴えたいって、君も何かされたの?」

潮がひなに聞きますが、ひなは首を横に振るだけでした。

「難しいな。被害を被った本人じゃないとね」

そう言って、羽男は民事裁判のことを説明します。

「えっと、父親の責任を法的に追及する方法は2つあって、民事裁判っていうのと、刑事裁判っていうのがあります」

その時、石子が話の腰を折ります。

「先生!書き順が違います」

羽男に「今はいいでしょ」と言われ、潮にも「今はいいね」と言われて、黙ることにしました。

「それで、民事裁判ていうのは、原則として被害を被った本人の意思が確認できないと訴えられない」

ひなが聞きます。

「じゃあ、美冬だけ?」

それに潮が答えます。

「お母さんは?未成年なら法定代理人でお母さんも訴えられるんじゃない?」

しかし、そんなに簡単ではなさそうです。

「動いてみるつもりです。ただ、父親の言いなりのようですから、ちょっと難しいかと」

石子はそう答えました。

刑事裁判

「こっちの刑事裁判というのは、警察が動いて事件となったもの」

そう説明をしだした羽男にひなが聞きます。

「よくわかんない。無理ってこと?」

そう言われて、羽男も怒りだします。

「それを今、説明してるんでしょ!なんで腰折るの何回も何回も」

しかし、ひなは気にしていません。

「なんでもいいからさ、あいつをなんとかしてよ。本当に美冬は虐待されてるんだよ」

しかし、わかったと言う訳にはいきません。

「それ、証拠あるの?・・・って言われちゃうのよ。俺たちは別にひなちゃんを疑ってる訳じゃない。あの父親を法律で裁くには証拠が必要になる」

そして、潮が補足ます。

「推定無罪の原則。疑わしいってだけじゃ罰を与えられない」

しかし、ひなは納得できません。

「無実の人が罪をきせられたときに、冤罪にならないようにそうなってるんです」

そうなると、本人以外は、何もできないということになってしまいます。

「だから、時に本物の悪人も守られてしまうんだよ」

羽男は悲しそうにそう言うのでした。ひなは「なんだよ、それ」と言うと立ち去ってしまいます。追いかける潮。頭をかかえる石子。

「弁護士なんて所詮法律の範疇でしか動けない。スーパーマンじゃない」

羽男は無力そうにそう言うのでした。

朝ごはん

ひなが起きると、食事が用意されていました。

「ひなちゃん、よかったら」

潮の似顔絵付きの置手紙が置いてありました。

そして、羽男が出勤してくると、電話の最中です。相手は、キッチンカーの外国人です。

何を話しているわからない羽男は、適当に相槌をうつだけです。

「・・・タノムゾ、マジデ」

やっぱり日本語が話せるようです。

「日本語話せるなら、最初からさ・・・」

羽男がそう言っている最中に、電話は切られてしまいました。

Kの正体

事務所には石子と羽男が揃いました。その時、母屋の方から物音がしました。駆けつける二人。

「空き地で桑田佳那美さん20の遺体が埋められた状態で見つかりました」

ニュースで、アナウンサーがそう言っていました。そして、その画面には

「山ヨコキッズのカリスマ殺害で19歳の少年逮捕」「山ヨコキッズ三銃士のひとり”K”として多くの若者から支持された」

そうテロップが入っていました。

「死んだのKだって」

ひながそう言うと、石子と羽男は驚いていました。

「えええ、女性!?勝手に男だと思ってた」

あまりにも情報がなさ過ぎて、羽男が思い込んでも仕方がありませんでした。

さらにニュースでは驚く情報が語られていました。

「逮捕された少年は、権力争いで負けたと容疑を認めています。桑田さんも売春の斡旋に携わる利権争いにまきこまれたか」

それを聞いて石子が確認します。

「斡旋してたんですか?」

それに対して、ひなは「うん」と短く答えました。

さらに、ニュースでは、死亡推定時刻は9月9日の午後で、死亡後に埋められたと言っていました。

それを聞いて、何か思い出した羽男が走り出しました。

ドラレコの人物

羽男はキッチンカーのドライブレコーダーの映像を確認していました。

「殺されたの9月9日って言ってた」

それを聞いて、石子も理解しました。

「ドラレコにKさん映ってたのって、9月10日ですよね?」

そうなると、ドライブレコーダーに映っている人物が誰かわからなくなります。その二人をみて、動揺する、ひな。

「何か隠してる?」

そう聞かれて「いいや」と答えます。

「今の事件の事何か知ってる?」

それには「知らない」と答えます。そして、その場を立ち去ると、庭でタバコを吸おうとします。

「こら、未成年です。隠さずに教えて下さい」

タバコを取り上げられて、ひなは話し出しました。

「ドラレコに映ったK、美冬」

しっかり取りたてないと

ひなは、事情を話してくれました。

「私も美冬も、金がなくなるとKに客紹介してもらってて、紹介料で7割渡さなくちゃで。
 Kに文句言ったら、案件中に隠し撮りされててさ。その映像ネットに晒すって脅されて。
 1週間ぐらい前から見なくなったから、映像入ってるSDカード取り返しに美冬がKのフリして店に忍び込んだ。けど失敗して、逃げて車に・・・」

石子は「良く打ち明けてくれました」とひなにお礼を言いました。

そして、羽男は、良いアイディアを思いつきました。

「えー残念ですが、車を傷つけたのが美冬さんなら、修理代を弁償していただくことになりますね。しかし、彼女は未成年ですし入院中ですので、お支払いいただくのはご両親ということになりますね」

そう言われて、石子も理解しました。

「これで、美冬さんのご両親との関わり合いができましたね」

そういうと、羽男は悪乗りしてきます。

「はい、はい。お家に伺って、いろいろお話を聞くことができますね。
 賠償請求をするにあたって、お父様の暴行の証拠を見つけてしまったばやい・・・は、それはそれだよねー」

石子もノリノリです。

「ええ、しっかりと取り立てないと」

ただの事務員

美冬の父親に会いに行く、石子と羽男。美冬の家は、ゴミ屋敷のように家の外にゴミが置かれていました。

「70万・・・」

美冬の父親は、金額に驚いています。

「ボディに傷がつき、ドアごと取り替える必要があるため」

羽男がそう説明すると、父親は疑問を投げかけます。

「そもそも、本当に美冬がやったんですか?」

それに対して、羽男が答えます。

「一緒にいたご友人が、そう証言しています」

しかし、それは父親にとって好都合でした。

「その子もきっと家出中ですよね。そんな子の証言が当てになるのかどうか」

父親は、母親に「スリッパは!」と怒鳴ります。

それを見て、石子は頭に血が上ってしまいました。

「家出は、やむを得ない事情があるからです。失礼ですが、美冬さんにも家に居られない事情があったのでは?」

そう聞くと、父親も黙っていません。

「なんですか?あなた、タダの事務員ですよね?」

そう言われてしまいます。

「いいえ、パラリーガルは法律の知識が必要な事務員で」

しかし、父親はその説明を聞きません。

「私は、弁護士さんと話しています。あなたが発言する場面じゃない」

そう一喝されると、石子は我慢ができませんでした。

「端的に言わせていただきますと、原因はお父様の暴力では?」

父親はそれには答えず、羽男に言うのでした。

「これはなんですか?羽根岡さん、訴えるなり好きにして下さい」

力になりたい

美冬の家から戻っている最中、羽男は石子に文句を言います。

「ちょっと、思ってた展開と違う。もっとじっくり攻めるつもりだったんだけど」

それは、石子も反論できません。

「すみません。本人を目の前にしたら」

しかし、羽男も石子の気持ちは理解できます。

「わかるけどさ。車の傷で依頼を受けてる以上、美冬さんは依頼者の敵なの。ね、彼女のために動いたら、利益相反になるんだよ」

それでも、石子は美冬やひなの力になりたかったのです。

「でも、助けたいじゃないですか。美冬さんもひなさんも。
 昨夜寝る前に、ひなさんが自分の話をしてくれたんです。山ヨコには2年ほどいるとか、ずっと友達を作らずにいたとか。でも、美冬さんと先月出会って、二人ともコンビニのおにぎり開けるの下手すぎて意気投合したこととか。初めてできた友達だって嬉しそうに。わずかでも心を開いてくれたんです。これをきっかけに美冬さんとひなさんの人生が変わるかもしれないから、少しでもお手伝いができればと強く思いました」

そう言う石子に羽男は「大げさ」と言うのでした。

しかし、石子は大げさに言ったつもりはありません。

「人生って、些細なことで変わると思うんです」

そして、思い出す石子。

石子の人生を変えたこと

石子は、思い出したことを羽男に話します。

「2019年、交通事故を目撃しました」

石子が横断歩道で信号を待っていると、イヤホンをして、スマホを見ながら、横断歩道を進む女性がいました。歩道の信号は赤。トラックがきて轢かれてしまいました。

それは、司法試験会場のすぐ近くでした。石子の足に、女性の血が飛び散ったのです。

「女性が目の前で。初めての司法試験に向かっている途中でした。その後、受験をしましたが、頭は真っ白で、それから毎年、試験を受けるたびに思い出してしまって」

それが司法試験を4回落ちている理由でした。

「つくづく思います。誰かの人生が変わるのなんて、一瞬なんだなって。事故が事件があった場合、被害者や加害者やご家族だけでなく、ただ目撃した人の人生も一瞬で変わってしまう。山ヨコにいる方たちや、ひなさんや美冬さんも、同じだと思うんです。ちょっとした何かとの遭遇で、望まない環境に身を置くことになったんじゃないかって。だとしたら、逆に私たちとの遭遇で、彼女たちの人生を少しでも帰られるかもって、思いませんか?」

羽男は言っていることは理解できます。しかし、そんなに甘くもないとも思っていました。

「そうだね。ただ俺は、期待しすぎない。この仕事、期待しても叶わないことが多すぎる」

お家伺ってもいいですか?

そこに大庭から電話が入りました。

「あ、先輩。営業初日で契約取れました!」

石子の気持ちは知るはずもない大庭は、ノー天気にそんな話をします。

「おお、おめでとうございました」

石子がそう言うと、天然な事を言い出します。

「あ、名乗るの忘れてました。大庭です」

ふふふふと笑いながら、石子は言うのでした。

「わかってますよ。今度お祝いしましょう」

そういうと、嬉しくて今日は一人で乾杯しちゃうと言い出す大庭。そんな大庭に石子がいいます。

「大庭さん、お家伺ってもいいですか?」

その発言には、羽男も大庭も驚いていました。

大庭の家

迎えに出てくる大庭。石子一人で、やってきました。

「道、大丈夫でした?」

大庭がそう聞くと、石子は「ええ」と、ちょっと緊張しているようでした。

そして、大庭の家に上がる石子。

「初デートが家ってびっくりして。俺はぜんぜん大丈夫なんですけど、いいですか?」

そう言われた石子は、一瞬戸惑いましたが、石子なりの理由で答えました。

「お付き合いしてる方の家には上がってもいいというルールですので、ええ」

大庭の家は、思った以上に綺麗でした。石子と話した後、多少の掃除はしたようですが。

「でも、俺、役に立ちますかね?」

大庭がそう聞くと、石子が言いました。

「これなんですが、パソコンに詳しい大庭さんの知恵をお借りしたく」

甘いデートではなかったようです。

朝、大庭の部屋で起きる石子。作業をしながら、雑魚寝してしまっていました。

大庭はまだ寝ています。その大庭の寝顔をみて微笑む石子でした。

そんな時、ひなは「案件」を紹介され、朝帰りしていました。手には、報酬で買ったコンビニの袋と、そのおつりが握られていました。

収穫

大庭の家から戻ると、羽男が出勤してきました。

「美冬さんの父親、真面目ないいひとって評価でさ」

それは、話しをした石子も「常識的な印象」を持っていました。

「ただ、会社帰りに行く行きつけの飲み屋があるんだけど、そこでの評判は良くない。典型的な強い者には弱く、弱い者には強いってタイプみたいで、店員さんとか女性とか若者には横柄な態度で絡むんだって。この辺さぐれば、ボロがでてくるかもしれないな」

調べてくれていた羽男をじっと見つめる石子。

「諦めないでいてくれたんですね、彼女たちのこと」

そう石子が言うと、羽男は嬉しい気持ちと憤慨する気持ちと両方がでてきました。

「当たり前でしょ?何だと思ってるの、俺の事」

そして、石子も収穫があったと、羽男にドラレコの画像を見せます。

「映像が鮮明でなかったので、大場さんにご協力いただきました。
 こちらにあざが。車を傷つけた人物が美冬さんである証明になりませんか?」

突然大庭の家に行くと言った石子の真意を知った羽男。

「やるね、石子さん。ただ、これは2週間前。さすがにアザは消えているだろうし、2週間前に美冬さんにあざがあったって証明できるものが・・・」

いい着眼点でしたが、決定打にはなりそうもないという羽男。

「あの映像は?Kに隠し撮りされてたやつ。私らの裸も写ってる」

朝帰りしたひなは、扉の前で話しを聞いていました。

警察に押収されたか

そして、3人はKのカフェに行きました。しかし、もぬけのカラです。SDカードが入れてあった引き出しも開けられていました。

「警察に押収されたか」

殺人事件の証拠品として、押収されたのかもしれません。

「貸してもらえないの?私ら映ってるやつだし」

ひなはそう聞きますが、難しいようです。

「殺人事件の証拠として使用されるでしょうから、簡単には貸してもらえないかと」

脅し

そこにひなに電話がかかってきました。知らない番号からでした。

「誰?」

ひなが出ると、電話の先の人は、ひなのことを知っていました。

「ひなちゃん、聞いて聞いて」

馴れ馴れしい口調ですが、ひなには誰だかわかりません。「誰だよ」と聞くと、名乗りました。

「キザキだよ。何度かKさんの店で会ったんだけど。
 あの店閉まっちゃったんだ。金に困ってるんだー。だから、協力してよ。Kの持ってるSDカード、俺が持ってるだよね」

押収はされていませんでしたが、カフェのスタッフの手に渡っていました。

「この映像流されたくないよね?早い話、俺がKの代わりやるってこと。おぉーい!聞いてんのかよ!」

Kの代わりに斡旋して、上前を撥ねると言うキザキ。しかし、そうはいきません。

「はーい、しっかり聞いていましたよ。以前お店に伺いました、弁護士の羽根岡です。あなた、今完全に脅しましたよね?これは刑法第222条の脅迫罪にあたり、謝っても無駄ですよ。この会話も録音していますから。あなたはまず、今の発言を反省し、今後は犯罪に関与しないと誓って下さい。そして、お持ちの映像をこちらに速やかに渡して下さい。コピーとかしてないでしょうね?もししてたら、大変なことになりますよ。今、カフェの前にいるので」

驚いたキザキは「すぐお持ちします!」と言って電話を切りました。

勝算

電話を切ると、羽男はドヤ顔で言います。

「まぁ、私にかかればこんなもんです」

それに石子が乗っかります。

「そうなんです、やる時はやる方なんです。左右違う靴下履いてますけどね」

靴下を見たひなが言います。

「ひょっとして、おじさん、ドジ?」

羽男は動揺しながらも話しを変えます。

「いいえ、おっさんはドジではない。今流行ってるの知らない?そんなことより・・・映像が手に入れば、裁判大丈夫だよね?」

それに対して、石子は「はい」と答えます。

「裁判って車のでしょ?美冬のは?」

そう聞くひなに、羽男はドヤ顔でいいます。

「任せなさい。上手く行けば、車と暴行、二つの戦いで勝てるかも知れない」

裁判

裁判では、ドライブレコーダーの映像が美冬かどうかが争点です。

「ドラレコ映像を見ても、美冬さん本人ではないと断言できると」

弁護側の質問に父親が答えます。

「はい、これは間違いなく娘ではありません。私たちに賠償責任はないと考えます」

そして、原告代理人の羽男の番です。

「早速ですが、甲11号証の写真をご覧ください。こちらはドライブレコーダーの映像を拡大したものです。こちらの人物には大きなアザがありますが、見覚えありますか?」

そう聞くと、父親は「全くありません」と否定します。

「こちらは9月10日に撮影されたものですが、その日は家出をした6日後」

そこまで言った所で、父親が口を挟みます。

「日にちまで覚えていません」

それを聞いて、羽男は裁判官の印象に残るような言い方をします。

「娘さんが、家からいなくなった日を覚えてらっしゃらない?なるほど、そういうものなんですかね。ちなみに、家を出た日は9月4日ですね。美冬さんの体にアザはありましたか?」

そう聞くと、父親は答えます。

「わかりません。娘の体なんか見ないでしょ」

アイツにやられた

その言葉を聞いて、羽男は新しい証拠を提出します。

「では次に、甲14号証の映像をご覧ください。こちらは、9月7日に撮影されたもので、美冬さんが映っております。再生します」

再生された映像は美冬が「案件」をするところでした。上着を脱ぎ、背中が映っています。

「え?そのアザどうしたの?ひどくない?」

「案件」の相手の男が美冬に聞きます。

「アイツにやられたんです。名前も呼びたくないからアイツ。アイツに何年も殴られてて」

そう美冬は言っていました。

アイツ

そして、羽男はそのドライブレコーダーの映像と案件の映像を鑑定した結果を話します。

「鑑定の結果、肩から腕にかけてのアザと、ドライブレコーダーの人物のアザは、形状が一致致しました。この映像の人物は娘さんで間違いありませんね」

そう言われて、認めるしかない父親。

「ところで、このアザがいつどこで、どのようにできたものなのか、お父様ご存じですか?」

そこで弁護士から異議が入ります。しかし、羽男はここで止める訳にはいきません。

「父親がアザのことを知っているならば、車に傷をつけた人物と美冬さんとの同一性はより確実に証明できます」

そう言って、異議を却下してもらい、続けます。

「映像の中で美冬さんは、暴行を受けた相手を証言していましたが、このアイツは東さんのことで間違いないですか?」

突然、ドストレートに聞く羽男。

「なんでそうなるんですか?アイツという呼び方だけで私だと決めつけるのは、無理があるでしょう」

再度、異議が入ります。そして、裁判長は異議を認め、アザを付けた相手の追及は終わりました。

「原告としては、以上の次第で、美冬さんに賠償を求めており、その保護者あるご両親にも賠償の義務があると考えております」

そう言うと、父親は「責任は取ります」と認めました。

原告側にいた外国人は「オマエ、ヤルナ!」と裁判中に大声で話して、羽男に注意されていました。

手を緩めず

裁判が終わると、石子と羽男とひなは、一緒に帰ります。

「今の裁判、勝ったってこと?」

ひなにそう聞かれて、羽男は自信満々に答えます。

「判決はまだだけど、裁判官のリアクションを見る限り、おそらく」

しかし、ひなはそれだけでは満足できません。

「でもあいつ、暴行のこと認めてないじゃん」

そう言われて、羽男は諭すように言うのでした。

「それはこれからなの」

そして、石子も気合が入っていました。

「さあ、手を緩めずにまいりましょう」

怒り

美冬の父親は、行きつけの飲み屋で飲んでいました。

「早くお替り持って来いよ」

裁判の結果で、父親は荒れていました。

そして、父親はいろいろなことを思い出して、腹が立っていました。

美冬「私、アイツに何年も殴られてて」
石子「原因はお父様の暴力では?」
羽男「アイツというのは、東さんのことで間違いありませんね」

父親は「ムカつくなーあいつら」と独り言を言っていました。

そこにスーツを着たサラリーマン風の男性2人が、父親の隣に座ります。

「隣すみません」

入ってきたのは、実は塩崎と大庭でした。

「いやー今日も疲れたね。大場くん」
「全く同感です、部長」

コントのような会話が交わされていました。

シナリオ

事前に大庭と塩崎には、シナリオが提示され、練習していました。もちろん、石子と羽男が、そのシナリオを作りました。

「お二人の設定は、会社の先輩と後輩です。かつ、お二人は結婚して子供がいます。
 隣に座ったら、まず世間話を始めましょう。さりげなく、いいですか?」

そう石子に説明された通り、大庭と塩崎は会話を始めます。

大庭「けど先輩、本当子供ってかわいいですよねー」
塩崎「ああ4歳だっけ?今が一番かわいい時だよなー」
大庭「パパ、パパって迎えに来るんですよ」

そこで、塩崎は急に美冬の父親に話しかけます。

「聞いてもらえます?」

これもシナリオ通りです。

「お酒の席なら、話しかけてもさほど違和感がないです。有無を言わさず、一気に本題に」

乗せる

石子に言われた通り、塩崎は続けます。

「うちの娘が、私のことをアイツ呼ばわりしてくるですよ。今中3なんですけど、腹が立つと思いません?」

それに乗せられて、父親も話しを合わせてくれます。

「それはちょっと問題ですよね」

かかって来たと思った塩崎は、さらに続けます。

「でしょ!舐められてるのかな」

そして、大庭も続けます。

「話しかけても返事しないし。あっちいけとかいうそうです。酷いと思いません?
 リビングで顔合わせてるのに、アイツに言っといて奥さん経由で話して来るんですよね」

塩崎も重ねて言います。

「許せませんよね?」

父親はすっかり話に乗っていました。

「それはむかつくな」

証言を引き出す

打ち合わせ通りの展開です。

「相手が乗ってきたら、さらに具体的な証言を引きだす」

石子に言われた通り、話しを続けます。

「わかってくれます?ずっとモヤモヤしてたんです」

塩崎に上手く乗せられた父親は、やっと自分のことを話し出しました。

「わかります。うちも娘が私のことアイツ呼ばわりで。親と思っちゃいないですよ。世話してやってるのに。完全に俺を舐めてるんだよ」

ついに、父親が「アイツ」を使いました。

そして、石子の指示はこうです。

「アイツ発言は、腹を割るきっかけとして使います。これから一気に確信へ」

そして核心へ

大庭は、父親に聞きます。

「そういう子にはどうしたらいいですか?」

口が軽くなった父親は、本音を出してきます。

「口で言っても埒開かないなら、やるしかないだろう?」

それを聞いた大庭は、更に突っ込んで聞きます。

「やるっていうのは?」

こうなると、止めることはできません。そして、父親はついに自白します。

「殴るんだよ。殴って黙らせるしかないんだよ。女なんて男には勝てないんだから。殴りゃいいんだよ」

そして、ダメ押しで塩崎が聞きます。

「大人しくなります?」

そうすると、父親はもう止められません。

「ぼこぼこにすれば言いなりだよ」

そして、核心へ。

「実際、娘さん殴ってるんですか?」

大庭がそう聞くと、父親は話しました。

「違うな、ただ殴るんじゃない。俺に言わせりゃしつけなんだ。さんざん娘を殴ってきたよ。でもあれは、親として子供が世間に出た時に恥をかかないようにするために必要な躾。だから殴るんだ」

天然な大庭

シナリオ通り、父親の発言を引き出した大庭は、種明かしを始めます。

「へーーそれ、暴行罪ですね」

そして、塩崎も続きます。

「せやな、さすがにマズイんとちゃいます?」

そして、大庭の最大の見せ場へ突入です。

「いいですか?父親だろうと暴力を振るえば暴行罪。ケガをすれば傷害罪が適用されるんです。傷害罪は刑法第・・・」

いい所で忘れてしまう大庭。残念ですが、天然なので仕方がありません。

意識が戻った

そこに石子が登場しました。

「204条です。お忘れですか?弁護士ではないパラリーガルのことなど。
 刑法第204条傷害罪。人の身体を傷害したもは15年以下の懲役、または50万円の罰金に処するとあります。東さん、あなたの美冬さんへの暴力は傷害罪にあたると思われます」

そう言われて、父親はビビッてしまいます。

「そんな大げさな」

しかし、もう取り返しはつきません。石子は畳みかけるように言います。

「今の発言、はっきり聞いていましたので、あなたが暴行をしていたと証言させていただきます」

それに、大庭と塩崎も同調して「俺もします」と言うのでした。

しかし、父親は抵抗をします。

「冗談で言っただけだ、そんなの証拠になるか」

石子はぬかりありません。

「念のため、録音もしています。映像と合わせると、証拠足りえるかと。法廷でお会いしましょう」

それを聞いて、父親は逆ギレします。

「法廷ってなんだよ。車の裁判はもう終わったろう」

石子はあくまで冷静です。

「あなたを暴行、傷害を理由に訴えると言う方が現れました。
 現在、担当弁護士が直接出向いております。訴えを起こす美冬さんの元へ。昨日意識を取り戻されました」

告訴

美冬に付き添っていたのは、潮でした。そこに羽男と優乃がやってきています。

父親は、石子に意識を取り戻したなんて聞いていないと突っかかりました。しかし、父親には言わないで欲しいと、美冬が連絡することを拒否したのでした。

「いつか意識を取り戻すと信じ、動いていて良かったです。先ほどの発言と、美冬さんの証言。および、アザの映像により、あなたが日常的に暴力で支配していたと証明さえると思われます。我々は、民事事件として訴える手続きをすすめます。かつ、美冬さんは警察に告訴するそうですので、いずれあなたは逮捕されるでしょう。覚悟しておいて下さい。以上です」

そう言って、父親の元から去りました。

もう逃げない

病室に着いた優乃は、潮に利益相反にならないか確認します。

「キッチンカーの賠償問題はもう解決したんですよね?」

それについては、美冬とひなが真面目に働いて払うということになりました。

「美冬が私のためにもやってくれたことだから、一緒に返す」

しかし、外国人の店主は一括での支払いを求めました。

「ただ、依頼人の方で一括で欲しいおっしゃるので、私が友人として美冬ちゃんにお金を貸しました。
 もちろん、その経緯も依頼人も納得していて、満額渡して、訴えも取り消してるから」

そう言って、潮は利益相反にはならないと説明しました。

「肩代わりしたんですか?」

優乃にそう聞かれた潮は言うのでした。

「弁護士としちゃ褒められたことじゃないですがね。ただ、大人の一人として、どうにかね。本当にお父さん訴えるんだね?」

美冬にそう確認すると「もう逃げないで戦います」と宣言しました。

そして、病室の入り口には、父親の所から戻ってきた石子の姿がありました。石子は、父・潮の背中を見つめていました。

潮は、美冬たちの「」になったのです。それは、石子は口ではいろいろ言いますが、基本的に同じ思いを石子も持っているのでした。

シェルター

退院した美冬は、ひなと一緒に都民シェルター支援センターに行きます。

「じゃあね、おっさん、おばさん」

ひなは、羽男と石子にそう言って別れを告げました。

おばさんと呼ばれたことに納得できない石子。

「ようこそ、こちら側へ」

羽男は石子を迎え入れていました。

そして、シェルターに入る前に、美冬とひなは、石子と羽男に頭をさげたのでした。

不穏

大庭は食事会に参加していました。

そこにその会の代表者と思われる人物が入ってきます。参加者は立ち上がって、拍手をして迎えます。そして、代表者は挨拶をします。

「座って下さい。えー今日は僕と仲がいい、僕がそう思ってるだけかもしれない、経営者に集まってもらいました。やり手の経営者が、将来を嘱望する社員を選んで連れてきたのが君たちだ。楽しみだね、今後。
 ぜひ今日は、横の繋がり作ってもらって、ついでに日本の未来も作っちゃいましょう。本当、成功する方法なんて簡単なんですよ。成功するまで辞めなければいい、なんてね。あはは」

うさん臭さいっぱいの挨拶です。そして、そこに大庭の社長も入ってきました。代表者と社長は、仲がいいようです。

最後に大庭の名刺が映し出されました。

「代表取締役 大庭蒼生 株式会社グリーンエステート」

そして、住所は豊島区です。会社に入ったはずですが、大庭は自分の会社を立ち上げ、その代表になっていたのでした。何か、不穏な感じがします。そして、実に怪しいコミュニティです。

最後に

物語は複雑に絡みあっていました。ただの物損事件だと思ったら、社会問題になっている未成年の問題でした。そして、案件であり、DVも隠されていました。

そして、石子の過去も知ることができました。来年、最後の司法試験は描かれないと思いますが、なんとか合格して欲しいです。

そんな中でも、石子と羽男のバディの絆も深まっています。そして、石子と大庭の関係も、ちょっと進みました。大庭が変なことに巻き込まれないといいのですが・・・。

次回予告

次回は「善児」の弁護をするようですね。楽しみです。