ドーピング は、アスリートにとって大きな問題です。
大きなリスクを背負うだけでなく、選手生命のピンチでもあります。それは、スポーツマネージメントを越えた部分でもあるのかも知れません。
しかし、新町は高柳と対立しながら、問題解決に奔走します。
そんな第9話のネタバレです。
主な出演者
新町亮太郎 綾野剛
新町果奈子(旧姓:糸山) 榮倉奈々
高柳雅史 反町隆史
深沢塔子 芳根京子
城拓也 中川大志
梅屋敷聡太 増田貴久
真崎かほり 岡崎紗絵
葛飾吾郎 高橋克実
麻生健次郎 渡辺翔太
伊垣尚人 神尾楓珠
第9話ストーリー
ドーピング違反
水泳の試合で勝つ、麻生。その後、ドーピング検査で陽性になってしまいました。
その麻生をビクトリーに呼んで、話を聞きます。
「検査はいつだったんですか?」
麻生は、大会翌日の朝、5時過ぎに検査官が来て検査を行ったことを説明しました。
「その時、採取された尿からスタノゾロールが検出された訳ですね」
その話を聞いていたスタッフ達が話をしています。
「スタノゾロールってなんですか?」
「筋肉増強剤に近い禁止薬物だよ」
「それを飲むと記録が伸びるですか?」
「でも、スタノゾロールを飲んだからと言って記録が劇的に伸びるとは言われてませんよね?」
「そうだね」
しかし、禁止薬物であることには間違いありません。故意であるかどうかに寄らず、ドーピング違反になることには変わりないのでした。
不安
「僕は、これからどうなるんですか?」
麻生は不安で、新町にそう聞きます。
「とにかく、僕たちが対応を考えるから、麻生君は変わらずトレーニングを続けて」
しかし、そんな気持ちにはなれない麻生。
「まだ処分が決まった訳じゃないから、諦めないで」
新町は麻生を落ち着けるためにそう言うのでした。
スキャンダル
ビクトリーでは、スタッフが集まってミーティングしていました。
「所属アスリートがドーピング違反に問われるなんて、ビクトリー始まって以来ですね」
葛飾がそう言うと、城は新町に聞きます。
「Jリーグにもドーピング検査ってあるんですよね?」
そう聞かれて、新町は答えました。
「もちろん、風邪薬を飲むとかサプリメントを取る時には、みんな気を付けてる。だけど日本のアスリートは、ドーピングに対する認識が甘いともよく言われる」
麻生もそういうことだったのでしょうか?
「自分は禁止薬物を飲んだって認識はないんですよ」
新町は麻生の言葉を信じていました。
「それはどうかな?100%彼の主張を信じる訳にはいかない。どっちにしろ違反は違反。対して変わらない」
社長・高柳は冷静でした。
「麻生さんは、これからどうなっていくんですか?」
新町の質問に葛飾が答えました。
「検査をしたアンチドーピング機構からの報告を受けて、ジャパンアンチドーピング規律パネルってところが、裁定を下すんだよ」
それにしても、スキャンダルになることは間違いなさそうです。麻生はオリンピック候補にもなる、日本のトップスイマーです。
「ビクトリーの業務に大きく影響するぞ」
確信
暗い顔をしながら、家で洗い物をする新崎。そこに果奈子が、帰ってきました。
子供達は大喜びで出迎えます。
「どうだった講演。上手くいった?」
新町がそう聞くと果奈子は、上手く行ったと思うと答えました。しかし、新町が暗い顔をしていることに果奈子は気づきます。
子供達は、ママのニュースを見ていたことを話し、お土産を受け取って喜んでいました。
「どうした、亮ちゃん、何かあった?」
寝室で二人きりになると、新町は麻生のドーピング違反の件を話します。
「麻生選手って、お父さんも水泳選手で、たしかオリンピックで銀メダル取ってたよね?前にテレビでやってたの。
親子二代でオリンピックのメダリストになろうって約束してたけど、一昨年お父さんが亡くなられたって」
麻生がパリオリンピックに向けてもっと強くなるために自分を追い込むと言っていたのは、父親との約束があったからでした。
果奈子からそれを聞いて、新町は麻生が嘘をついていないことを確信するのでした。
裁定
ジャパンアンチドーピング規律パネルでは、麻生を呼び裁定結果を通達しました。
「麻生健次郎さん、あなたは4年間の資格停止処分といたします」
それを聞いて、麻生はショックを受けます。そして、待っていた新町に話をします。
「4年。もう水泳はできないってことですよね?
でも、4年経ったら僕は29です。その次のオリンピックの時は31歳。それまでまともに練習もできないし、レースにも出れない。もうアスリートとしてのピークは過ぎちゃうんです」
それだけ言うと、立ち去っていまう麻生。
世間は麻生のニュースで話題になていました。
「スポーツ選手がこんな卑怯なことしちゃダメよねー」
「ショックです。応援してたのに」
「4年間って、もう終わりじゃん」
「アスリート失格だよな」
ビクトリーのスタッフ達も、ニュースを見ていました。まだ不服申し立てをしている状態です。しかし、ネットは大炎上していました。
フォロー
ニュースを見た新町は、麻生に電話しました。
「水泳仲間も、この間のレースで僕が勝ったのもドーピングのせいだと思っています。まるで犯罪者扱い。俺は何にもしていないのに」
そう苦しむ麻生に新町は言います。
「僕はなんとかして君を助けられないか考えてる。君は一人じゃない。僕がいるから、だから間違っても変なこと考えちゃダメだよ。じゃあ、またすぐ連絡する」
しかし、新町もどうしたらいいか、わかりませんでした。
長くは待てない
ネット検索する新町は、過去のドーピング違反になった例を調べました。そして、高柳の所へ行きます。
社長室に入ると、新町が話す前に、高柳が告げました。
「麻生健次郎をビクトリー所属から外す。
資格停止4年は致命的だ。もはや、うちはマネージメントできない」
しかし、新町は納得できません。
「ちょっと待って下さい社長。過去に一旦下された処分が変更されて、軽くなった例があります。
禁止薬物の摂取が故意でないことや、日ごろから十分注意していたのに体に入ってしまったことを証明して、処分が2年とか何カ月とかに変わったことがあるって」
それは、極めて希な例です。
「僕が証明して、麻生くんを助けます。こんな時こそ、僕たちが頑張らなきゃいけないじゃないですか」
そう新町は言いますが、高柳は同意できません。
「この件で、うちがどれだけ迷惑をこうむってると思ってるんだ。ビクトリーのイメージは地に落ちるぞ」
新町は高柳の言うことも理解できますが、納得はできませんでした。
「でも本人は、訳の分からないままドーピングの汚名をきせられて、引退することになるんです。もう少しだけ待って下さい。お願いします」
そして、高柳は長く待てないといいながらも、新町の行動は許可しました。
スパイ活動
新町が麻生が故意に摂取した訳でないと証明することに、スタッフ達は懐疑的です。さすがに難しいと思っています。しかし、新町は諦めるつもりはありません。
「感情的になりすぎてるな」
高柳は新町の言動について、そう感想を言いました。しかし、秘書の真崎は、新町らしいと言うのでした。それを聞いて、高柳は言います。
「ネットで、麻生健次郎のマネージメントしてるのが、ビクトリーだと話題になってる。担当は新町亮太郎。元Jリーガー、元日本代表という異色のキャリア、奥さんは話題の糸山果奈子さん。注目されない方がおかしい。
ドーピングはアスリートにとって、犯罪のようなものだ。犯罪者をかばい続けたら、ビクトリーのイメージはどんどん悪くなる。真崎くん、新町くんの言動、逐一報告してくれ」
真崎にまたスパイのような活動を支持する高柳でした。
父の教え
そして、新町は麻生の家に行き、調査を始めます。
「とにかくどこでスタノゾロールをとったか、改めて確認しよう」
そう言うと、飲んでいたサプリメントを確認します。
しかし、麻生が飲んでいたサプリメントは、全てアメリカ製でした。そして、サプリの内容については、麻生は一度は調べています。
「もう1回ちゃんと調べるんだよ」
新町はそう言うと、スマホで検索しだしました。
「もう他にはないの?」
飲んでいたものを調べてみても、怪しいものはありませんでした。そこで見つけたのは、過去に麻生が飲んでいたサプリの容器でした。
「父がサプリは一粒残して全部取っておけって」
容器を取ってあると、中に1錠入っていました。そして、蓋には、そのサプリを飲んだ期間が書いてありました。
「ドーピングが疑われた時にこれを飲んでいたと言えるから。でも、新町さんが調べたのと同じサプリです。
人から渡されたものは絶対に食べない。蓋の開いてないペットボトルしか飲まない。自分の食事は全部記録しておく。全部父からキツく言われてましたから」
麻生はそう教えてくれました。
不安の連鎖
新町は麻生から借りてきて食事のリストを見ていました。
「スタノゾロールが体内に残ってる期間が約1ヶ月。だから、検査を受けた日から1ヶ月前までさかのぼって、麻生君の食事の内容を検証している」
自分で作ってる時は、当然気を付けていた麻生。残るは、外食した時です。そこで出された食事にスタノゾロールが含まれていた可能性があるのかも知れません。
「東京の店は全部調べたけど、そこには無かった」
新町は、調味料まで聞いて、徹底的に調べていました。あとは、神戸の大会の時にも、外食していました。神戸のお店まで行くつもりかと聞かれた新町は、答えました。
「もちろん、神戸でも外食したって言ってるからね。それに麻生くんのアスリート人生がかかってるから。僕はどうにかして麻生くんを助けたい。自分も元アスリートだったけど、ドーピングの知識はほとんどなかった。アスリートを守る側として、今回の麻生君のことはしっかり検証しなきゃって思ってるんです。じゃあ、行ってきます」
そういうと、新町は神戸に入ってしまいました。
新町は一生懸命ですが、他のスタッフが担当するアスリートにも影響が出ていました。みんな不安に思っていて、ビクトリーとの契約を辞めようかと言う話も出ているようです。
神戸へ
真崎から新町が神戸に行ったことを聞いた高柳は驚きます。
「新町くんは、私の了解を得ずに行ったのか?なぜ、君は同行しなかった?逐一報告しろと行ったはずだ」
なぜか真崎が怒られてしまいました。
そんなことも知らず、新町は神戸の中華料理店に来ていました。
「フォアジャオ?」
材料だけでなく、調味料も調べます。
「中国の山椒。変なものが入ってる訳ないじゃない」
そう言われて、記録だけしていました。
真崎の不満
真崎が葛飾を誘って、高柳の話をしていました。
「私には良くわからないです。どうしてあんなに新町さんのことを気にしているのか。私、ずっと会社で嘘ついてる感じがして」
スパイのようなことをしている自分が嫌になっているのでした。
「ビクトリーを作ったころの社長は、今とはぜんぜん違ってたんだよ。でも、会社創立メンバーだった一人に裏切られてね。所属アスリートを引き抜いて、独立して行ったんだよ」
確かに高柳は、そんなことを言っていました。
「その時の社長は、かわいそうでね。見ていられなかったよ。ずっと面倒みてたアスリートがあっさり出て行ったんだもん。それまでの社長は、実は新町くんみたいな人だったんだよ。なによりもアスリートファースト。一緒に笑って、一緒に泣いて、あれがあってから社長は変わった。だから新町くんに危うさを感じてるんじゃないかな。そのやり方は間違ってるって」
そして、葛飾に話を聞いてもらって、少しは真崎の不満が解消されたようです。
もう無理だ
翌日、神戸から帰ってきた新町は、調べた結果をみんなに話します。
「結局、麻生くんが行った神戸のお店には、スタノゾロールが入った調味料はなかった」
みんなは「もう無理だ」と新町に言います。しかし、新町は無理だと思うことができません。
「もう諦めろ新町くん。麻生健次郎を助けるのは不可能だ」
高柳が社長室から降りてくると、新町にそう言います。新町は、高柳に向かって感情的になってしまいます。
「まだわからないじゃないですか!!!」
しかし、高柳は冷静です。
「新町くん!今、ビクトリーは信用を失いかけてる。私が20年作り上げてきた会社だ。わかるか?私には、アスリートと社員を守る義務がある!君の勝手な行動で、会社の屋台骨を揺るがすようなことになれば、私は絶対に許さん」
対立
しかし、新町は受け入れることができません。
「たしかに、ドーピングはあってはならない行為です。でも、アスリートにとって、4年間の資格停止処分は、死を意味するんです。麻生くんは、パリオリンピックに人生のすべてを賭けてた。そんな彼がリスクを冒して、薬に頼るはずはありません。お父さんとの夢を叶えるために毎日練習して、トップスイマーになったんです。なんとかして、彼を助けてあげようと思うのが、何がいけないんですか?」
それには、高柳が反論します。
「たった一人のために他のアスリートを潰すつもりか?」
新町も黙っていません。
「たった一人のアスリートを守れないで、どうするんですか?」
聞き分けのない新町にダメ押しする高柳。
「このことでみんな、担当するアスリートに不安や緊張を与えてしまっている。君の奥さんだって、迷惑を被ってるんじゃないか?それを理解してるのか?麻生健次郎を外す。もうビクトリー所属じゃない」
突然、果奈子のことを言われ、驚く新町でした。
ママ友
ママ友とランチ会は久々に見る光景です。噂話が好きな人達に心配される果奈子。
「大変じゃない果奈子さん」
「あのドーピングした人、ビクトリー所属だったんでしょ?」
「担当は旦那さんだったってネットで見た」
「せっかく果奈子さんが再ブレークしてるって時に、災難ね」
好き勝手言われ、困惑する果奈子。再ブレークと言われて苦笑いしてしまいます。
「だって果奈子さんの記事、良く見るわよ」
「もう果奈子さんをバッシングしてる人もいたわよ」
「旦那さんは犯罪者をかばってるような立場だもんね」
そう言われ、果奈子は全然気にしないと、平気ではなさそうに言うのでした。
「泉実ちゃんは大丈夫?このことで学校でいろいろ言われてるって聞いたけど」
みんなにそう言われ、さすがに心配になってしまう果奈子でした。
エゴサーチ
ママ友とのランチから帰宅すると、ネットでエゴサーチする果奈子。
「旦那のせいでピンチ」
「糸山果奈子のインスタフォローするのやめよー」
「離婚間近?」
ネットでは、無責任な人が無責任なことを言っています。
そこに泉実が帰ってきました。泉実の様子を伺いますが、いつもと変わった感じはありません。
「泉実さ、学校でなんかあった?パパのことで変なこと言われてない?」
直接そう聞いてみます。
「ううん、ぜんぜん。お腹空いちゃった」
何かを隠している感じはあります。しかし、心配させないように普通にしているのでした。
その頃新町は、高柳に言われ、果奈子のことをネットで検索してみます。好き勝手に言われていて、新町が迷惑をかけている現実を知ってしまいました。
うなだれる新町のことを見ている、真崎の姿がありました。
迷惑
新町は帰宅しました。
「遅かったね、忙しかった?」
果奈子はいつも通りに声を掛けてくれます。しかし、新町は堪えることができませんでした。
「あの、果奈子、本当にごめん。俺のせいで果奈子がバッシング受けて。本当ごめん」
シナシナになっている新町。果奈子は優しく声をかけます。
「そんなこと、気にしないで。でも、泉実は学校でいろいろ言われてるかも。本人は何も言ってこないんだけど、大丈夫。私が泉実とちゃんと話しておくから」
それを聞いて、更に新町はシナシナになってしまうのでした。
「俺のせいでみんなに迷惑かけてるよー。
もしかしたらビクトリーも辞めることになるかもしれない」
突然の「辞める」に驚く果奈子。
「麻生君のことで、社長と言い合いになっちゃって。麻生君は、ビクトリーの契約切られたんだ」
そう言って事情を説明します。
「それで亮ちゃんも、ビクトリーにいられなくなるの?麻生さんを守ろうとしたから?」
果奈子には理解できません。
「なんだろうな。やっぱ俺、青臭いのかな?スポーツマネージメントのことなんかわかってないのに偉そうなこと言って、やっぱり社長が正しかったのかな?いやーごめん。本当に」
輪をかけてシナシナになる新町でした。
パパは間違ってない
そこに泉と明紗が、部屋から出てきました。
「パパは間違ってないよ。パパのことで意地悪なこと言ってくる子はいるけど、でも私は平気。だってみんな、なんにもわかってないんもん。パパがマネージメントしている水泳選手が、使っちゃいけない薬を使ったって言われてるんだよね?でも、それはワザとじゃないってパパ、信じてるんでしょ?パパは何にも悪いことなんかしてない。私は信じてるもん」
泉実は、本当に大人になりました。
「みんな信じてる。亮ちゃんには味方がいるから大丈夫。何があっても大丈夫」
果奈子に言われ、涙があふれ出す新町。
「パパ泣いてんの?」
明紗に言われてしまいます。
「泣いてるよ。嬉しくて泣いてるよ。泉実、明紗、ありがとう。パパ諦めない。頑張るから、ね」
新町は決意を新たにするのでした。
絶対なんてない
落ち着くと、新町は麻生に電話しました。麻生にビクトリーから契約のことで連絡があったか確認します。
「ありました。僕との契約は解除するって」
それを聞いた新町は、改めて麻生に話します。
「僕はまだ諦めてないよ。会社がなんて言おうと、僕は諦めない」
しかし、麻生は諦めモードです。
「絶対無理ですよ」
それでも、新町は諦めません。
「絶対なんてないよ、ないよ。大丈夫。大丈夫だから」
そう言って、麻生を励ますのでした。
新たな希望
朝、塔子に声を掛けられる新町。
「塔子ちゃん、いろいろ迷惑かけて本当にごめんなさい」
そう謝ると、塔子は新たな希望を教えてくれました。
「まだ麻生さんの事、なんとかしようと思ってるんですか?私、見つけたんです。ドーピング問題に詳しい弁護士さん」
そう言うと、塔子も一緒に弁護士の所へ行ってくれることになりました。
風間法律事務所に新町、塔子、麻生の三人は向かいました。
「全部のお店を?良く調べられましたね。サプリメントもチェックした?」
そう言われて、チェックした内容を見せます。
「全部アメリカ製ね。禁止薬物が入っていないという表示をそのまま信じてはいけません。何らかの理由で、サプリメントが汚染されていた可能性も否定できない。全部のサプリメントを1錠ずつ残していたのは、非常に懸命です。それをGADAの認証分析機関に送りましょう」
GADAは、国際アンチドーピング機構のことです。
「もし、そのサプリからスタノゾロールが検出されたら、僕の処分は変わるんでしょうか?」
麻生がすると、風間弁護士は希望を聞かせてくれました。
「可能性はあります。でも、期待はしないで下さい。検査結果が出るまでには、時間がかかります。それまでに調べておかなきゃならないものがあります」
追加調査
新町と塔子は、風間弁護士に言われた「調べておかなきゃならないもの」の調査を行います。会議室に荷物を運びこみ、高柳には内緒で調べます。
確認するものは、目薬、湿布薬、のど飴、リップクリーム、風邪薬、ハンドクリーム、虫よけスプレーなど多岐に渡ります。
始めようとした時、会議室の扉をノックして入ってくる人がいました。城でした。
「麻生さんが使ってたものですか?もしかして、この中にスタノゾロールが?
調べましょう。ずるいですよ塔子さん。自分だけ新町さんの味方して」
そして、葛飾も入ってきました。そして、2人も手伝ってくれることになりました。
その会話を真崎は、扉の外で聞いていました。
勝手なことを
梅屋敷がデスクで食事を取ろうとしていると、誰もいないことに気づきました。そこに、真崎が怖い顔で戻ってきます。梅屋敷が話しかけますが、真崎は答えずに社長室に入っていきました。
真崎は、高柳にみんなが協力して調べていることを報告します。
「みんなで調べてる?勝手なことを」
そう言って、高柳は怒ります。しかし、真崎は報告だけではなく、高柳にお願いしました。
「たしかに、麻生さんはビクトリーの所属ではありません。でも、でも、私にはみんなの気持ちがよくわかります。新町さんが言ったじゃないですか。こんな時こそ、自分たちが頑張らなきゃいけないんじゃないかって。アスリートがどん底にいる時こそ、サポートの手を離さないのがスポーツマネージメントだと思います。もう少しだけ待ってあげて下さい。それまでにみんなが何もできなかったら、その時は私からもうやめて下さいって言います。だから、お願いします」
高柳は、仕方なく受け入れました。
そして、それを梅屋敷が聞いていました。
エース登板
会議室にやってきた梅屋敷は、みんなに言います。
「みんな社長に黙って、いい根性してるよ。知ってるんだよ、俺は。スタノゾロールの出どころ調べてるんだろう?」
葛飾は「社長に告げ口するつもり?」と聞きます。
「俺はそんなに小さい人間じゃありませんよ。手伝うよ。この試合、エースが登板しないと勝てないからだよ。俺の席、ここってこと?」
自分たちのデスクの並びと同じにしているのは、城が落ち着かないからでした。だからこそ、梅屋敷は自分の席がわかりました。
「で、何に調べればいいの?」
梅屋敷がそう聞くと、新町から分担を言われます。
「じゃあ、梅屋敷さんは、麻生くんがサプリメントの成分をネットで確認していたかと、過去に同じサプリを飲んでドーピング陰性だったことがあるかを調べて下さい」
麻生がそれだけドーピングに気を付けていたという証明するためです。それを聞いて、梅屋敷は難色を示します。
「いきなりそんな大変なやつ?」
しかし、みんなに「エース」とおだてられ、嬉しそうに手伝うのでした。
高柳と葛飾
高柳は葛飾を呼び出しました。
「新町くん、手伝ってるんですか?」
ストレートに聞かれ、葛飾は素直に「はい」と答えました。そして、塔子も城も梅屋敷も手伝っていると話します。
「社長の気持ちはわかります。でも、みんなの気持ちもよくわかる。選手生命を絶たれようとしている、アスリートを助けたい。スポーツマネージメントに関わってる人間なら、だれでもそう思いますよ」
しかし、高柳は「綺麗ごとじゃ済まない」と言います。
「わかってます。でも、どうしようもないんですよ、こればっかりは。社長は忘れちゃったかな?20年前の社長は、新町くんと同じこと言ってましたよ。私は新町くんを認めてます。”全てのアスリートにリスペクトを”。彼の考えは、会社の理念そのものですよ。昔、我々を裏切った誰かとは違う。違いますよ、社長」
そう言うと、葛飾はみんなの元にかえりました。
そして、高柳は思い出しました。昔の自分は、確かに新町と同じことを言っていたのでした。
塔子と梅屋敷
「あー疲れた」
梅屋敷は、すぐに泣き言を言いだします。
「こんなことで疲れてちゃダメですよ」
しかし、お母さんのように優しく諭す塔子。梅屋敷の扱いがわかっています。
「調べること多すぎるんだよ」
梅屋敷は、さらに塔子に甘えます。
「だから、梅屋敷さんが手伝ってくれて助かってるんです。ありがとう、梅屋敷さん」
そう言われ、嬉しい気持ちでいっぱいにになります。
「塔子ちゃんがそんなこと言ってくれるの?俺、頑張る」
それにしても、単純な梅屋敷。
店は、よく来ているので、注文する前に「いつものワイン」がでてきました。しかし、ワインを手にしようとする梅屋敷ですが、塔子に手を掴まれてしまいます。塔子は、まだ作業をするつもりです。お水と食事だけいただくと告げ、出してもらったワインは下げてもらいました。
手を掴まれて、嬉しい梅屋敷でした。
城と留美
城と留美は、小籠包を食べにきていました。
「まだ見つからないの?」
留美にそう聞かれ、城が答えます。
「見つからないんだよースタノゾロール」
そして、留美が麻生はどうなるかと聞くと、城は小籠包を取りながら答えます。
「今のままじゃ、処分が軽くなる理由もない訳だから」
そして、取った小籠包を留美に渡すと、留美は城にあーんしてあげるのでした。
中から汁が溢れて熱そうな城。でも、とても幸せそうでした。
走ろうぜ
麻生は家で、寝ていました。ドーピング問題があってから、何もする気になれません。
そこにインターフォンが鳴りました。見ると、インターフォンを押したのは新町でした。
「走ろうぜ」
そう言って、麻生を外に連れ出しました。
「水泳選手はランニングとかするの?」
新町は、単純な疑問を走りながら麻生に聞きます。
「しますよ。ふくらはぎとか太ももの筋肉は、スタートとかターンで壁を蹴る時に使う筋肉ですから」
それを聞いて、新町はギアを上げます。麻生を置いていくのでした。
ポジティブ
新町はすっかり体力が衰えてしまっていました。少し走ると、ストレッチをし、マッサージをします。
「麻生くん、諦めちゃダメだよ。まだわからないんだから。アメリカに送ったサプリメントから、スタノゾロールが出たら、ドーピングが意図的じゃなかったってことになる。そうなったら、4年間の資格停止なんて、重い処分は絶対変わるから」
新町は、そう言って麻生を励まします。
「いいですね、新町さんは。いつもポジティブで」
しかし、この前もシナシナになっていて、新町はいつもポジティブな訳ではありません。
結果を出せ
「まあ、現役の時からそれが売りだったからね。でも、僕だって落ち込んだ時はあったよ。まだできる、ここからだって思ってたのに現役引退に追い込まれた時には、まあ引きずったよね。でも、みんなのおかげで、僕の味方になって助けてくれた人達のおかげで吹っ切れた。麻生くんにとってそれは、僕たちだ。お父さんとの夢だったんだよね?親子二代でのメダリストで、悲願の金メダル。僕たちは、どうにかして君を助けられないか頑張ってる。でも、もし、4年間の資格停止処分が変わらなかったとしても、君はまだ29歳だ。その時は、31歳でオリンピックを目指そうよ」
しかし、麻生は不安です。
「でも、ドーピングした麻生健次郎というレッテルは剥がれません」
そういう麻生に新町は言いました。
「結果をだせばいいんだよ。アスリートの強みは、どんなバッシングされても、結果を出せばだろ」
そして、また走りだしました。
調査結果
新町達は、追加の調査を終えました。
「もう私たちにできることはない」
そう言うと、梅屋敷が突然言い出しました。
「もしかしたら、麻生くんの活躍を妬んだ誰かが、禁止薬物を飲み物に入れたとか。でも、そんなこと証明できませんよ」
梅屋敷は自分で可能性を言いだして、それを自分で否定してしまいました。城から突っ込みがはいります。
「いや、でも、みなさん本当にありがとうございました。ここまでやり切ったんですから、あとはGADAに出した禁止薬物の結果を待ちましょう」
新町がそう話した時、新町に着信が入りました。弁護士からでした。
「GADAの認証分析機関から、回答がきました」
非はありません
風間弁護士と麻生は、オンラインで異議申し立てをしていました。
飲んでいたサプリの容器を示しながら、説明しています。
「ここには禁止薬物は使用されていないと、明確に表示されています。でも実際には、スタノゾロールが検出された。何らかの理由でサプリが汚染されていたんです。
これとまったく同じ事例が、2016年にあったことは、世界スポーツ仲裁裁判所も把握されていますよね。つまり、麻生健次郎選手は故意でもなく、不注意で口にしたわけでもなく、サプリの汚染によって体内に禁止薬物が入ったんです。麻生選手には、何の非もありません」
風間弁護士は、できる限りの反論をしていました。
練習場所を探そう
スポーツ仲裁裁判所の判定が出る日、新町も塔子も、落ち着いていられませんでした。
「二人共座んなさいよ」
葛飾にそう注意された時、麻生と風間弁護士がビクトリーにやってきました。
「先生、麻生くん。どうでしたか?」
そう聞くと、風間弁護士が話してくれました。
「資格停止、4ヶ月。世界スポーツ仲裁裁判所は、私たちの主張を全面的に認めてくれたんです」
調べた結果が実りました。喜ぶスタッフ達。
「パリオリンピックに出られる可能性が残って、本当に良かった」
そういう麻生に、新町は言いました。
「復帰明けの大会も勝てるよう。練習場所を探そう」
戻すことはない
新町は、高柳の所へ報告にいきました。
「麻生くんのドーピングは無罪に近いと、世界スポーツ仲裁裁判所が認めてくれました。これで彼をビクトリーから外す理由はありませんよね?」
しかし、高柳の反応は、良くありません。
「この結果、マスコミがどのくらい取り上げてくれると思う?ドーピング疑惑が掛けられた時、あれほど大きく扱っておきながら、今回の処分はほとんど報道されないだろう。今回の件で、失った会社の信用を取り戻すのに相当時間がかかる。
それに、GADAの認証分析機関に依頼をするだけで、200万円。スポーツ仲裁裁判所に申し立てをするだけで300万円。それに弁護士費用、通訳費もかかってる。麻生君の処分が軽くなっても、ビクトリーが受けたダメージと比べると釣り合わない。これは、ハッピーエンドじゃないんだ、新町くん。麻生健次郎をビクトリーに戻すことはない」
そう言われて、何も反論することができませんでした。
記者会見
高柳の発言にがっかりする新町。帰ろうとロビーまでくると、ここで新町が土下座した時のことを思い出します。そして、過去のことを思い出し、自分の手を胸に当てて考えました。
後日、麻生の記者会見が行われました。報道機関を呼び、テレビ中継もされています。
「この資格停止4ヶ月という決定は、事故に近い形で麻生選手の体内に禁止薬物が入ってしまったという証明です。彼には非はなかったということです」
風間弁護士は、そう説明しました。
クラウドファンディング
「神戸のレースの結果が剥奪されたことについては、どうお考えでしょうか?」
記者から質問が出ると、麻生が答えます。
「当然の事だと思います。僕は、体に禁止薬物を入れた状態で、あのレースに出たんですから。この会見は、謝罪の場でもあり、ドーピング問題提起の場でもあり、僕の決意表明の場でもあります。資格停止処分期間が明けたら、僕はまたパリオリンピックに向けて全力で頑張ります」
そう麻生は宣言しました。しかし、ビクトリーから支援を受けれなくなった麻生は、新たな活動資金を得る必要がありました。風間弁護士が呼びかけます。
「麻生選手を応援してくださる方は、クラウドファンディングを立ち上げましたので、ぜひ彼の活動資金をサポートして下さい」
最後に麻生も呼びかけました。
「僕は必ず、パリオリンピックに出場して、メダルを取ります。僕を応援して下さったみなさんのためにも、ずっと僕を支えて下さった方のためにも。そして、アスリートとしての僕プライドと、父との夢のために。よろしくお願いします」
解雇
ビクトリーのスタッフや高柳はテレビ中継を見ていました。そして、この会見をやったのは、誰が言い出したのかと疑問に思っていました。
その時、会見を終えた麻生が、段からおりました。そして、向かった先には、新町がいました。
新町の家では、果奈子と子供達が、パパの姿を見ていました。
ビクトリーでは、映った新町を心配していました。
その時、新町に高柳から電話がはいります。
「新町くん、君はクビだ。ビクトリーを解雇する」
そう高柳から告げられました。
最後に
新町と高柳の対立が決定的となり、ついに新町は解雇されてしまいました。
しかし、今回の件で言うと、他アスリートへの影響を考えるなら、契約解除ではなく、問題解決が正解だったと思います。もし、同じように問題が発生した時に契約を解除されると思ったら、ビクトリーと契約するアスリートがいなくなってしまうのではないでしょうか?逆に、問題があった時に新町のように一緒に解決してくれれば、安心してビクトリーと契約すると思います。
とは言っても、高柳と新町は対立しなければなりませんでした。だから、こういうストーリーになったのでしょう。
次回は、ついに最終回。新町は、どうなるのでしょうか?
日曜日の楽しみが無くなるのが悲しい。。。