中原中也詩集 ちむどんどん(16) ネタバレあり

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中原中也詩集 は明治から昭和にかけて活躍した詩人の詩集です。

今回、中原中也の詩が心情の代わりに代弁しています。暢子には縁がありませんでしたが、ドラマの中で効果的に使われています。

結婚を決めた暢子と和彦。しかし、結婚までは、まだ高いハードルと、バカなにいにいがいるようです。

そんな第15週のネタバレです。

ちむどんどん公式HP

主な登場人物

比嘉暢子のぶこ  黒島結菜  やんばる生まれコックの修業中
青柳和彦  宮沢氷魚  中学生の頃沖縄で暢子達と過ごした。新聞記者

比嘉優子  仲間由紀恵 暢子の母で賢三の妻。
比嘉賢三  大森南朋  暢子の父。暢子が10歳の時に他界。

石川良子  川口春奈  暢子の姉でやんばる小学校の先生。
石川博夫ひろお  山田裕貴  良子の夫で名護の小学校の先生。
比嘉歌子  上白石萌歌 暢子の妹。体が弱いが歌は上手い。
比嘉賢秀  竜星涼   暢子の兄。どうしようもない人。

大城房子ふさこ  原田美枝子 フォンターナのオーナーで暢子の親戚。
平良三郎  片岡鶴太郎 鶴見の沖縄県人会会長。
田良島たらしま甚内じんない 山中崇   東洋新聞社のデスク。和彦の上司。
砂川さとる   前田公輝  暢子にフラれた幼馴染

青柳重子しげこ  鈴木保奈美 和彦の母

第16週のストーリー

両方掴む

比嘉家に挨拶に来る暢子と和彦。

「おかあちゃん、いいよね?」

お母ちゃんは二人で決めたことなら、応援するだけと言ってくれます。

「暢ねえね、仕事はどうするの?」

フォンターナのオーナー房子からは、両方掴むように言われていました。

「いろいろ考えてたくさん悩んだけど、うちは両方掴むことにした。仕事も結婚も」

良子は仕事と家事の両立は大変だと言います。今は別居していますが、結婚当初は夫の博夫と同居し、子供ができるまでは両立させていました。

「和彦くんはそれでいいの?」

お母ちゃんが聞くと、和彦は即答しました。

「自分らしく生きる暢子を好きになったんです」

お母ちゃんからの2つのお願い

「わかりました。では、うちからは2つお願いがある」

お母ちゃんはそう言うと、お願いを言います。

「ひとつ目は、”琉装”の結婚式が見てみたい」

琉装は、琉球王朝時代からの結婚衣装のことです。お母ちゃんの亡くなった姉が、琉装で結婚式をやりたいと言っていたのでした。しかし、姉は亡くなり、お母ちゃんの結婚の時は、戦後でそんな時代ではありませんでした。そして、良子は和装でした。

「もうひとつは、やっぱり親としては、アレを言われたいさ」

アレです。暢子は全くピンと来ていませんが、良子と歌子、そして和彦はピンときたようです。

「お母さん、お嬢さんを僕に下さい。必ず、幸せにします」

期待していたアレを言われ、嬉しくて舞い上がるお母ちゃん。でも言わせっぱなしではいけません。

「不束な娘ですけど、末永くよろしく、うにげーさびら(お願いします)」

一通りの挨拶が終わって、喜びで溢れる比嘉家。

「両家のみんなに祝福してもらいたいさあね」

そう暢子は言いますが、和彦は暗い顔をするのでした。

善一の未練

「できれば、花嫁の父として祝いたかった。どうでもいい独り言」

そう言うのは、共同売店の責任者の善一です。お母ちゃんとの再婚話しがなくなり、ちょっとボヤキぎみでした。

「それで、式はいつ?」

暢子は、来年の春頃に東京で行う予定だと伝えます。暢子の職場も和彦の家も東京です。そして、装束は琉装の予定です。

和彦は、暢子を共同売店の外に連れ出すと、大事なことを言うのでした。

「まだ、母さんに話してないんだ」

それを聞いて、今すぐ連絡しようという暢子。共同売店の公衆電話で電話をします。

和彦の母へ連絡

実家に和彦が電話をすると、母親が出たようです。

「和彦です。大事な話が」

そう切り出すと「なあに、久しぶりに電話してきたと思ったら」と母は言います。

「結婚したい人がいる。その人と会って欲しい」

和彦がそう言うと、「お名前を教えてちょうだい」と言うのでした。

「比嘉暢子さん。沖縄出身で、今は銀座のフォンターナというお店で働いてて。お母さん?聞こえてる?」

和彦の母は「ぜひお会いしたいから、連れてらっしゃい。次の日曜日はどう?」と言うのでした。

そして、電話を切る和彦。滞りなく話しができたことで、暢子は安心しました。そして、もう東京へ戻らなくてはいけません。荷造りしに家に急ぎました。

その後ろ姿を見る和彦。母のことが気になっていました。

あまゆでの報告会

「おめでとう!」

結婚の報告を下宿先の「あまゆ」で、暢子と和彦はしました。

報告したのは、県人会の会長・三郎夫妻と、あまゆ店主・順次夫妻です。

「で、新居はどこになる訳?」

そう順次が聞くと、和彦は言います。

「とりあえず、結婚式が終わって落ち着くまで、これまで通り、ここに住まわせてもらおうと思ってます」

婚約期間も新婚期間の初期も、あまゆの2階で生活するようえす。

「琉装の話し、もう手配はできているの?」

暢子がまだと言うと、三郎の妻が「あたしの持ってるの使って」と言ってくれました。それは、親からもらったものを大事に取ってあったのでした。ありがたく使わせてもらうことにする暢子。

「智はどうしてますか?」

和彦がそう聞くと、暢子達と入れ違いで、沖縄に帰ったと言われます。こちらの仕事は従業員に任せ、仕入れ先を増やすために沖縄を回る予定だと言うのです。

「大丈夫だよ。今は気まずいだろうが、あいつはまっすぐな男だから」

三郎はそう言ってくれますが、やっぱり気まずいです。

フォンターナで報告

「お休み、ありがとうございました。それで、オーナーがおっしゃる通り、仕事も結婚も両方目指すことにしました」

出勤すると、暢子はオーナーの房子、シェフの二ツ橋にそう報告しました。

「もう一つは?自分のやりたい店」

自分の店も、房子から言われて暢子の夢になりました。しかし、怒涛の展開で、まだそこまで考えられていない暢子。房子に「じゃあ、引き続き宿題」と言われました。

そして、結婚の話しです。

「春頃には披露宴をやるつもりですので、お二人も出席して下さい」

そう言うと、苦い顔をする房子と二ツ橋。

「披露宴には鶴見の皆さんも?」

そう二ツ橋が聞くと、暢子は「もちろんです」と言うのでした。

「私はその時期、地方だったか、海外だったかも。。。私のことは気にせず話を進めて」

鶴見の県人会の人達とは距離をおいている房子でした。それは、二ツ橋もそんなに変わらない状況です。とにかく複雑な関係なのです。

和彦の報告

「沖縄県の戦後遺骨収集」

和彦は、沖縄で嘉手刈かでかるさんに取材させてもらったレポートを、デスクの田良島に見せていました。

「いいもの読ませてもらった。いつかかならず、読者にして届けなきゃいけないな」

上司の許可も得ないまま、とりあえず沖縄に行って取材させてもらったので、どういうタイミングで発表できるかわかりません。

「嘉手刈さんが、田良島さんにくれぐれもよろしくと」

そう伝えられ、身の引き締まる田良島。

「重い約束だな。沖縄戦を正しく伝えるには、どう表現するべきか、考え続けるしかないな」

そう言うと、「仕事の話は以上」と言って、和彦の状況を聞きました。

「近々、暢子を連れて母に挨拶に」

そういう和彦に田良島は「おふくろさんと折り合いが悪いって言ってたよな」と聞きます。

「でも、僕ももう大人ですし」

年齢的には大人ですが、どうしても和彦には幼さを感じてしまいます。

「どうかな?母親の一番の不幸は、母親と結婚できないことって言うからな」

田良島に言われると、和彦は「ちょっとやめて下さいよ」と気持ち悪がっていました。

良子の決断と歌子の決意

比嘉家の庭で遊ぶ良子の娘・晴海はるみ。比嘉家では良子が決めたことを話し合っていました。

「また三人で、名護の博夫さんのアパートに?」

お母ちゃんの話しを聞いて、博夫と晴海と三人での幸せを諦めないことを決意した良子。ただ、古い考えを持つ博夫の実家を説得するのは大変です。

そして、歌子は「うちは、暢ねえねの披露宴で歌うたいたい」と決意します。人前で歌うのは、どうしても恥ずかしい歌子が、自分で決めました。

そこに、電話が鳴ります。良子が出ると、相手は賢秀でした。

「結婚!ついに暢子も結婚か。そうなると、俺も長男としてびしっと決めないとな」

賢秀がやる気になると、だいたい失敗します。

「くれぐれも変なことしないでよ。にいにいはどこで何をしているの?」

良子はそう聞きますが、賢秀はそれには答えず「ちょっと声を聴きたかったからよ。次は東京でな、あばよ!」と言って、一方的に電話を切りました。

賢秀は変わっていない

電話を切った賢秀は、養豚場の娘・清恵きよえに突撃します。両肩を掴んで、清恵の顔に賢秀の顔を近づけます。ドキドキする清恵。清恵は賢秀のことが気になっているようです。しかし、賢秀は全く気付いていません。

「給料。どんぐらい前借できますか?」

何を言い出すかと思ったら、また前借りの話しです。それには、清恵も呆れるだけでした。

挨拶の日

そして、和彦の母との約束の日曜日がやってきました。和彦は暢子を連れて、実家に帰ってきました。

「着いた。ここ」

立派な建物が和彦の実家でした。

「母さん、昔からオルゴールと詩人の中原中也が好きで」

そう言われ、暢子は「でーじ素敵なお母さん」と言うのでした。しかし、暢子は詩には興味ありません。「五七五のやつ」と俳句と詩の区別ができていませんでした。

そして、さすがの暢子も、緊張してきました。

暢子達は気づいていませんが、家の中から暢子達の姿を見ている人の姿がありました。その人のいる部屋にはオルゴールが鳴っています。

「思ひ出でては懐かしく、
 心に沁みて懐かしく、
 吾子わが夢に入るほどは
 いつもわた身のいたまるゝ」

中原中也詩集「吾子よ吾子」を暗唱する人です。

緊張はMAX

ただいまと和彦が扉を開けると、出迎えたのは家政婦の岩内いわない波子なみこでした。

「お坊ちゃま、お久しぶりでございます」

そう挨拶する波子に暢子を紹介します。そして、波子の案内で、和彦の母の元に行きます。

「和彦の母、重子でございます」

そう挨拶されると、暢子の緊張は最高潮まで達します。

「私が・・・サーターアンダギーです」

緊張して、自分の名前とお土産のサーターアンダギーがごちゃごちゃになってしまいました。そのことで、数ターンいじられる暢子。

「うふふ、楽しいお嬢さんね」

掴みとしては、いい掴みで場が和んだように感じました。

「母さん、電話で言った通り、僕は暢子さんと・・・」

そこまで言うと、重子ははっきりと言いました。

「許しません。結婚は許しません」

和んだのは気のせいで、笑顔で厳しいことを言う重子が怖くなりました。

熟慮の末

「だけど、この前電話した時は・・・」

いい雰囲気だった電話でのことを思い出す和彦。しかし、重子は結婚を許可した訳ではありませんでした。

「結婚を認めるとは言ってません。熟慮の結果、あなたには相応しくないと判断しました」

会って数分でバッサリと切り捨てる重子。和彦も「あったばっかりで」と食い下がります。

「比嘉暢子さん、昭和29年生まれ沖縄県やんばる村出身。
 最終学歴はやんばる高校卒業。母、兄、姉、妹の5人家族」

重子は、和彦から電話をもらってから、名前を聞いた暢子のことを調べたようでした。

「暢子さんが小学校5年生の時にお父様が病死。借金返済のためにサトウキビ畑を手放し、お母さまは村の工事現場やスーパーマーケット、内職もして家計を支えた。ご家族で大学を卒業されたのは、教師をされている良子さんだけ。
 大学と言っても地元の短大。どこか、間違ってます?」

暢子は「スーパーマーケットではなくて、共同売店です。村のみんなでお金を出し合って、村のみんなのため・・・」とディテールを説明しだしますが、和彦が「長くなるから」と止めました。

「こそこそ調べなくても、村で暢子に会って、小さい頃から良く知ってる。兄妹もみんな仲良く、素晴らしい人たち」

そう言って、母に反抗するのでした。

ネガティブな情報しかない

「あなたは騙されている。
 お姉さんはしばらく別居されていた。妹さんは地元の会社に事務職としてお勤めされていたけど、ご病気で退職されて、現在無職。お兄さんは、千葉の牧場で牛飼いの仕事」

なかなかの情報網です。暢子も和彦も、賢秀が黙っていたこともあって、牛飼い(本当は養豚場)の仕事を知りませんでした。

重子は、手帳を見ながら、まだまだ続けます。

「ご実家の資産は持ち家のみ。地元の金融機関に借金があり、お姉さんの給料なので細々と返済している」

それには暢子も毎月送金していました。賢秀が以前、「紅茶豆腐」という事業で失敗したことも正直に話しました。しかし、そんなネガティブな情報を先に出す必要があったのでしょうか?

「とにかく、みんないい人だっていうのは間違いないから」

和彦は、ざっくりとまとめて、話しを終わらせようとします。しかし、重子はそれで話しを終わらせるつもりはありませんでした。

家柄


「家柄、家の格が釣り合いません」

重子は比嘉家と重子達とでは、常識も価値観も違い過ぎると言うのでした。

「青柳家は大学教授や文筆家も多い、学者肌の家柄。あたくしの実家は明治以来の実業家で、あたくしの父は銀行の重役」

そんなことより、「結婚に一番重要なのは、愛情だろ」と和彦は言います。しかし、愛情より「学歴や家柄の方が信頼できる」と重子は言うのでした。

「あなたのことを悪く言うつもりはないの。ただ、和彦とは釣り合わないと言ってるだけ。ほら、こういう会話も成り立たないでしょ?違いすぎるのよ」

そう言って、暢子との縁談は断るのでした。

愛との比較


「大野愛さんとはどうして別れたの?」

急に愛の話が出てきて、驚く和彦。

「学歴も家柄も素晴らしいお嬢さんだったのに。嫁いだ家の作法にならい家事一切を切り盛りし、働く夫を支える。こちらの沖縄のお嬢さんにできると思う?
 今は良くても、いつか必ず後悔する。絶対許しません」

暢子が反論しようと「お母さん」と言うと、「あなたにお母さんと呼ばれるいわれはありません」と判で押したような答えが返ってきました。

「重子さん、うちの名前は沖縄のお嬢さんではなく、比嘉暢子です。
 たしかにうちは、学歴もなく貧乏だけど、うちの家族はみんな仲良しです。もちろん、たまにはケンカもするし、兄の牛飼いのことは初めて知ったけど。
 心の底ではしっかり結びついている大好きな家族なんです。
 それともう一つ、うちは結婚しても仕事を続けて、いつか独立して自分のお店を持ちたいと思っています」

一気に言ってしまう暢子でした。

和彦の後悔

「父さんが生きていたら、この結婚には賛成していたと思う。父さんは沖縄のことをライフ・・・」

そこまで言うと、重子が割り込みます。

「あなたもお父さんも、どうしてそこまで沖縄に執着するの?私には理解できません」

重子が反対する理由には、沖縄に対する嫉妬のようなものがあるのかも知れません。和彦の父も和彦も、沖縄に執着していることで、重子は心を閉ざしているのかも知れません。

「とにかく、もう決めたから。誰に反対されても、僕は暢子と結婚する。帰ろう」

和彦は話しを切り上げて、帰ろうとします。そこに重子は「絶対後悔します」と言い切りました。

「もうしてるよ、母さんの子供に生まれたこと。僕は好きで母さんの子に生まれた訳じゃない」

母に言ってはいけない言葉を言ってしまう和彦。

暢子はどうしていいかわからず、無言で礼をして出ていくしかありませんでした。

重子はショックを受けていました。

暢子は諦めない

「和彦くん、待って、待って。ごめん、つい頭に血がのぼってしまって。
 だけど、和彦くんも言い過ぎさ。昔、和彦君のお父さんとお母さんがお互いを好きになったから、和彦君がいるんだよ」

暢子は、和彦の言葉を非難します。

「家同士が勝手に決めた縁談だったんだ。お互いが好きになったんじゃない。母さんはお手伝いさんが当たり前にいる箱入り娘で、学者肌の父さんとは最初からそりが合わなかった。父さんと口論した後は決まって、裕福な実家との違いを嘆いていた。
 僕は物心がついた時から、両親は毎晩のように言い争い、僕は食卓を囲むこと、食べること自体嫌になっていった。
 そんな僕を心配して、父さんは僕を沖縄に連れて行き、母さんから遠ざけてくれたんだと思う」

和彦の過去を暢子は初めて聞きました。

「やっぱり、結婚の話は母さんを無視して進めるしか」

そう和彦は言うのですが、暢子は諦めたくはありません。

「それはダメ、うちはお母ちゃんをがっかりさせたくないし、ちゃんと披露宴をやって喜ばせたい。  
 和彦君のお母さんにもうちのこと、この結婚のことを認めてもらって、披露宴に出て欲しい。
 あきらめないで、頑張ろう」

歌子も諦めない

名護中央公民館では、沖縄民謡の勉強会が開かれていました。

「次、比嘉歌子さん。ねえねえの披露宴で歌う歌の練習だったね」

そう言われ、歌子は一人で三線を弾いて、歌を歌います。しかし、家で歌うようには歌えません。人見知りからくる緊張で、三線も思うように弾けないのでした。

「今日は、ここまでにしとこうか」

見かねて助け舟を出されますが、歌子は食い下がります。

「すみません、もう一度歌わせて下さい。うちは、諦めたくありません」

しかし、すぐには人前で歌えないようです。

良子も諦めない

「仕事を辞めるつもりはない?」

良子は博夫の実家で、おじい、おじさん、お父さんと対峙していました。石川家では、女は家庭に入るものだという考えです。

「家事も育児も二人で分担して助け合って、家族三人もう一度やり直すと決めました」

良子は決めたことを宣言します。

「良子さん、料理は得意か。
 石川家では、女たちが行事の際のうさんみ料理を作るのがしきたり。
 来週、仏壇行事がある。あんた、うさんみ料理作ってきてくれるか?できないんだよね?本家の嫁は務まらん!」

博夫の父親は頼りになりません。なんでもかんでも「おじいと、おじさんのいう通り」と言うだけです。それは、博夫にも、影響が出ている気がします。

「私は諦めません。私は、博夫さんの妻、石川家の家族です。
 そして、働くことに誇りを持っています。仕事は辞めません。
 その上で、家族の一員として認めてもらうまで諦めません!」

そう良子は宣言するのでした。

賢秀は諦めた

養豚場の寛大ともひろと清恵を前に賢秀は話しをしています。

「これからは、心を入れ替え、身を粉にして働いて、真面目にコツコツ頑張ろうと思いました」

それはもう「過去形」になっていました。

「でも、諦めます。結婚する妹に長男として、一発勝負にどーんと勝負にでます。
 お世話になった御恩は一生忘れません。待ってろよ暢子ーー!」

そう言って、また養豚場を飛び出した賢秀。

賢秀だけは、変わっていませんでした。

賢三の教え

あまゆで、挨拶に行った顛末を話して聞かせる暢子。

「かまうことないよ。結婚は当人同士の意思が一番重要さ」

順次は無責任にそんなことを言います。しかし、暢子は違いました。

「ダメです。うちはお母ちゃんにも約束したし、和彦くんのお母さんにも祝福してもらいたい。そのためには、まず、お母さんと仲直りしないと」

弱気になっている和彦に、暢子は父・賢三の教えを伝えました。

昔、和彦が沖縄に初めて来た時、「和彦君と仲良くなれない」と賢三に話したことがありました。みんなには和彦が「俺たちとは住む世界が違うぜって感じ」や「俺たちを完全に馬鹿にしている」というような感じに映っていました。

しかし、賢三は「東京の中学生ならいろんなことを知ってるから、友達になればおもしろい話聞けるはずよ」と言って友達になることを勧めたのでした。そして、友達になる方法を教えてくれました。

「相手が好きになってもらうには、まず相手を好きになることさ。諦めず話しかけてみれ」

その話は、和彦も初耳でした。そこで暢子が思いついた作戦がありました。

「美味しいものを作って、和彦君のお母さんに食べて喜んでもらうわけ」

食いしん坊らしい発想です。上手くいくでしょうか?

お弁当

朝早くおきて、あまゆの厨房で卵焼きを作る暢子。そこに和彦が起きてきます。

「どうしたのこんなに早くに」

和彦がそう聞くと、暢子は「重子さんにお弁当を。本当はお店に来て食べて欲しいけど、まずは毎朝お弁当を作って届けることにした」と言うのでした。

しかし、和彦は暢子がそこまでしなくともいいと言うのでした。

「言ったさ。うちは絶対にあきらめない。まくとぅそうけいなんくるないさ」
(信じることをしていれば、なんとかなるさ)

暢子はそう言うのでした。

うんめー

「おはようございます」

暢子が和彦の実家を訪ねました。しかし、重子は朝食に出かけていました。

「あや、会合か何かですか?」

暢子はそう聞きますが、重子は毎朝、決まった店で一人で朝食を食べているのでした。

仕方なく「そしたら、これ渡して下さい。うちが作ったお弁当です。波子さんの分もありますよ」と暢子は渡そうとしますが、波子は受け取ろうとしません。

受け取れません、受け取って下さい、受け取れません。何度か繰り返して、押し付けるように波子に渡して暢子は帰りました。

暢子が帰ったあと、仕方なくお弁当を開けてみる波子。とても上手にできていました。食べてみると、とても美味しかったのです。

思わず「うんめー」と声を出してしまう波子なのでした。

喫茶サーカス


重子は、毎朝「喫茶サーカス」で朝食を取り、食後のコーヒーを飲んで本を読んでいるようです。読んでいたのは、中原中也の詩集でした。

そこに、和彦がやってきました。和彦もコーヒーを頼みます。

「今度、鶴見に来てくれないか?まずは、僕がどんな風に暮らしているか、母さんに知ってもらいたい。暢子も同じ下宿に住んでる。沖縄料理屋の2階なんだ」

和彦は、重子に歩み寄ろうとします。しかし、重子には近づくことができません。

「あのお嬢さんにも、沖縄にも興味ありません」

沖縄に興味がないと言う重子ですが、和彦にとってはなくてはならない経験でした。

「あの時、父さんと一緒に沖縄に行っていなかったら、今の僕はまったく別の生き方をしていたと思う。
 沖縄で暢子達に出会って、東京では味わえなかった生活を、ぜんぜん違う生き方を知ることができた。それまで知らなかった父さんの姿も知ることができた。
 僕は沖縄で何度も、海を眺める父さんの背中を見た。二人でいつまでも海を眺めて、大きく強い自然の姿に感動した。
 父さんと過ごした沖縄は僕にとって特別な場所。だから母さんにも・・・」

しかし、重子は「貴方はお父さんとの思い出を美化しているだけ」と言うのでした。

詩集

「母さんだって、父さんとの間に美しい思い出もあるでしょ?愛情を感じた時期も・・・」

そう言う和彦を重子は否定します。

「愛情なんて無かった。最初から最後まで。あの人は私のことを世間知らずな女だと見下していた。ロクに電車にも乗れず、物の値段も知らず、家事もできない女だとバカにしていた。
 学問に夢中になると他のものが見えなくなって、家のこともわたくしのことも後回し、沖縄の研究に熱を入れて・・・」

愛情があっても、お互いが愛情の向け方がわからなかったのかも知れません。

「そんなに父さんの事、悪く言わないでくれ。その詩集は父さんからもらったものでしょ?」

しかし、重子は「どうだったかしら?」ととぼけます。

「砂川智という青年とあのお嬢さんを奪い合ったんですって?
 同じ村の出身で幼馴染なら釣り合う。貴方とあのお嬢さんでは、住む世界が違うの」

そう言われ、和彦は「家の格やつり合いだけが全てなの?」と聞きます。重子は「一時の気まぐれで人生を棒に振るの?」と問い返します。

「母さんと向き合って、話し合うためにきた。だけど・・・
 暢子は諦めないって言ってる。僕も諦めない。
 母さんともっと話したいし、母さんに暢子のことを好きになってもらいたい。
 鶴見には必ず来て欲しい。日曜日の夕方、暢子がごちそうを作って待っている」

そう言うと、和彦は喫茶店を後にしました。

誰にも言えなかった智の気持ち

家では、ちゃんと弾けて、ちゃんと歌える歌子。そこに智が顔を出しました。

智のことが好きな歌子は、喜びます。

「東京の商売も順調で、やんばるの家族もみんな元気なら上等さあね」

そう歌子が言うのに対し、智はいきなり核心に迫ります。

「うん、聞いてるか、暢子のこと。和彦と結婚するんだよな?」

そして、智は誰にも言えなかった自分の気持ちを歌子に打ち明けます。

「完璧にフラれたーーーみっともなくて、しばらく誰にも会いたくなかった。でもなんでか歌子には、自分からちゃんと言いたいなって思って。
 あれからずっと考えて、なんで俺じゃなかったのか。俺のどこがダメだったのかなって。で、一番惨めな気持ちを言ったらすっきりした。歌子のおかげやさ」

それを聞いて、歌子は嬉しいような悲しいような表情をするのでした。

「うちは、いつでも、智にいにの味方だから」

そして、智は歌子の体調を心配します。

「相変わらず。実は、沖縄民謡を習い始めて。
 一人の時はいいんだけど、人前に出たら上手く歌えなくて」

そういう歌子を「大丈夫、上手く歌えるようになる」と励ますのでした。

気まずい智

「ねえ。一緒に売店にいかない?」

売店には歌子のお母ちゃんがいます。お母ちゃんに合わせる顔がない智。智は、お母ちゃんに暢子と結婚すると言ってしまっていました。

渋る智を無理やり引っ張って、売店へ連れ出す歌子。しかし、売店の前でも智は、帰ろうとします。そんな智を「行くよ」と引っ張って、売店の中に入って行くのでした。

「智、はいさい、帰ってたのか?」

善一に声を掛けられます。そこには、お母ちゃんもいました。

「おばさん、あの・・・。すみません。絶対幸せにするとか言って・・・」

しかし、そんな智のことを心配するお母ちゃん。

「おかえり。会えて嬉しいさ。うちは、智のことが心配だった。
 うち達と会うのは嫌じゃない?本当?無理してない?
 なら上等。もし、嫌でなかったら、やんばるに帰ってきたら、必ず顔を出さないと。
 うち達は智の顔を見られれば、それだけで嬉しいんだから」

智の気持ちを汲み取って、嫌じゃなかったら必ず顔を出すように言うのでした。昔から、智の砂川家とは近所付き合いしていました。それは、実の子ではありませんが、実の子と同じようなものなのかも知れません。

波子が太る

暢子は毎日、和彦の実家へお弁当を届けていました。

「困ります。毎日毎日。
 私も一応女ですから、体重も気になりますし。
 太るでしょ?毎日二人分食べてたら」

重子が食べない分を波子が2人分食べてくれていたのでした。

「まさかやー波子さんが二人分?
 でも、鶴見には来てくれますよね?
 和彦君から話しがあったと思うんですけど、夕方腕によりをかけた料理を作って待っていますと伝えて下さい」

そう言伝を頼んで、暢子は帰るのでした。

おもてなし料理

日曜日、あまゆで料理作る暢子。

「大丈夫かい?もうそろそろじゃないのか?」

三郎は心配で気が気ではありません。暢子は、渾身の料理を作って、それがやっと出来上がりました。沖縄には言ったことのない三郎が「でーじ美味そうヤッサ」と言うぐらいの料理です。

「こっちは、柑橘を使ったラフテー。こっちはクーブイリチー。てびちは昨夜から煮込んでおきました。シブイブシーは東京の人の口にも合うように味噌だけじゃなくって、醤油も使ってみました」

これなら絶対喜んでくれると太鼓判を押されましたが、そもそも来てくれるかわかりません。和彦が途中まで迎えに行っています。

「暢子ちゃん、着替えなくっていいの?」

そう言われ、慌てて着替えに二階に上がる暢子。あまりオシャレに興味がなさそうな暢子でも、さすがに重子に会うときは、気合がはいります。悩んでいると、あまゆの店の方で物音がします。

「なに?嫌な予感がする。。。」

やっぱり賢秀

物音の正体は、やってきた賢秀でした。競馬のラジオを聞きながら、暢子が作った料理を食べてしまっています。

「ダメ、それは食べたらダメ」

しかし、競馬中継を聞いて、人が変わってる賢秀。暢子の言うことなど、耳に入りません。

応援しているのは、イチバンボシボーイ。賢秀自身とダブらせているのかも知れません。三郎も順次も戻ってきて、食べる賢秀を止めようとしますが、止められません。

「このレースに俺のプライドと、兄貴としての存在価値が全てかかってるわけよ」

そこに重子が、和彦に連れられてやってきました。その時、イチバンボシボーイが破れ、賢秀が大外れして、大荒れしています。

「めんそーれ、ようこそ」

暢子は繕ってそう言います。しかし、賢秀は賢秀を見る重子に「なに見てんの、おばさん、しっしっ」と失礼極まりない言葉を投げかけます。

「にいにい、和彦君のお母さん」

そう暢子が言うと、すっかり改めて、賢秀は挨拶しました。

「はじめまして、暢子の父親代わりの兄、比嘉賢秀です」

しかし、もう後の祭りです。重子は「言ったでしょ、住む世界が違う。ごきげんよう」と言って帰ってしまいました。

みんなに怒られる

「住む世界が違うの一点張りで、母さんにはまたちゃんと説明して誤解を解いておくから」

和彦は重子を呼び戻すことができず、あまゆに帰ってきました。

「誤解じゃない、ありのままのにいにいを見られただけ」

暢子はそう言います。賢秀は、気まずいのか、顔を背けて座っていました。

「よりによってこんな時に」とか「間が悪すぎる」とか、みんなに怒られる賢秀。

「しょうがないさ、何も知らなかったからに」

そう開き直るしかありませんでした。

「博打で妹のご祝儀稼ごうとするバカ、どこにいるよ」

三郎に怒られる賢秀。

「バカはバカなりに、妹のために何かしてやりたかった。
 新しい門出を祝ってやりたいと考えたわけ。
 わかったよ。もう二度と暢子には近づかん。結婚式も欠席する」

そう言うと、あまゆを出ていく賢秀。それを追いかける暢子。

バカなにいにいでごめん

「にいにい、行くわけ?」

出ていく賢秀に声をかける暢子。

「暢子、バカなにいにいでごめんな。だけど、少しは俺の気持ちもわかってちょうだい」

そう賢秀は言います。

「わかってるよ。よーくわかっている。その気持ちだけでうれしいさ」

そう言うと、重子から聞いた賢秀のことについて確認します。

「千葉で牛飼いの仕事してるって本当ね?」

そう聞かれ、「牛飼いは違ってる」と冷静に訂正する賢秀

「どこで何をしてるの?寝るところはあるわけ?」

しかし、賢秀は答えません。

「心配するな、暢子。暢子は、幸せになれよ。じゃあな」

そう言って立ち去ろうとします。しかし、暢子は「待って、お金ないんでしょ?」と言って、お金を賢秀に渡そうとします。

そして、悩んだあげく受け取る賢秀。

「いつか、倍にして返すから。また良子にガミガミ言われるはずな」

そう言って去って行きました。

お肌つるつる作戦

「昨日は大変だったそうですね」

翌朝、和彦の実家にお弁当を持っていく暢子。

「あの、和彦くんのお母さんに伝えてください。こんどうちが働いてるレストランに来てくださいって」

そう言うと、今日のお弁当を渡します。

「受け取れません。私、2kgも肥えたんですよ」

波子はそういいますが、暢子は負けていません。

「今日は沖縄のクーブイリチー。昆布は太らないし、お肌もつるつるになりますよ」

そう言うと渡すことができました。

母さんみたいな奥さんが欲しい訳じゃない

和彦は重子がいる喫茶店にやってきました。

「昨日は、ごめんなさい」

謝る和彦を座らせる重子。

「今回のことで、よーくわかったでしょ?今は違うと思っても、結局母さんの言う通りにしておけば良かったと思う日が来る。ずっと仕事を続けたい女性と結婚して、幸せになれる?
 家事や育児は誰がするの?両立するはずがない。あなた、騙されてる」

そう諭す重子に和彦は反論します。

「僕は母さんみたいな奥さんが欲しい訳じゃない。むしろそんな女性は嫌だ。
 暢子には夢があり、やりがいのある仕事もしてる。僕は暢子の生き方を肯定してるし、結婚してもそのままの暢子でいてもらいたい。
 暢子の人生はキラキラ輝いていて充実してる」

そう言われ、傷つく重子。

「あたくしの人生はつまらないのね?母さんの人生は否定するのね?」

そういうことを言いたかった訳ではなかったのですが、そう取られても仕方がありませんでした。

そして、喫茶店から立ち去る重子。

同じ世界に住んでいる

「ちゃんと謝るつもりだったんだけど、もういいよ。あの人の言葉を借りれば、住む世界が違うんだ」

和彦は暢子に朝のことを話します。

「あの人とか、言わないで。手紙を書いたら、手紙なら伝えられるかも知れないさ」

暢子はそう言います。しかし、子供の頃にやっていた文通のようにはいきません。

「諦めないで、お願い。上手く言えないけど、和彦くんが諦めたら、和彦君のお母さんも悲しいはす。
 だって、うち達は、同じ世界に住んでいるんだのに」

そう言って、和彦に諦めないように言うのでした。

むなしい人生

中原中也の詩集を開いたまま、重子は部屋でぼーっとしていました。

「奥様、お着換え、お風呂場に置いておきました。それでは、本日はこれで」

波子が帰ろうとします。そこで、重子は波子に「和彦は、いい子だった?」と聞くのでした。

「もちろんでございます。とても物分かりのよい、お行儀のよいお坊ちゃまでした」

波子にそう言われ、つい重子は愚痴ってしまいます。

「愛情をかけて世話をして、自分の命よりも大切だと尽くしても、大人になるとコロッと忘れられて。
 あの子が子供を持ったらどんな親になるかしら。親になって初めてわかる、親にならなきゃわからないことがたくさんあるのに。
 母親なんて、むなしい人生ね」

そう言われ、困ってしまう波子。

「そんなことおっしゃらないで下さい。
 わたくしの人生は奥様やおぼっちゃまのおそばに居させていただいたおかげで、とても楽しく充実したものになりました。失礼します」

帰ろうとする波子に声をかける重子。

「ありがとう。ご苦労様。波子さん、ごめんなさい。どうかしていました」

それよかかなしきわか心
いはれもなくて拳する
誰をか責むることかある?
せつなきことのかぎりなり。
修羅街輓歌

手紙

新聞社で、重子が読んでいたのと同じ中原中也詩集を読む和彦。

僕はなんでも思ひ出します
僕はなんでも思ひ出します
でも、わけても思ひ出すことは
わけても思ひ出すことは・・・
別離

同じ頃、重子も和彦のことを思って、昔の家族写真を手に取っていました。

母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
然しその声は、どうなるのだらう?
たしかにその声は、海越えてゆくだらう?
暗い海を、船もゐる夜の海を
そして、その声を聴届けるのは誰だらう?
子守唄より

暢子に言われたように、手紙を書こうとする和彦。

重子は写真を見て、「和彦は渡さない」と口に出すのでした。

御三味

名護の家に帰ってきた良子。晴海を寝かせる。

「石川家では、女たちが行事の際のうさんみ料理を作るのがしきたり。
 御三味料理も作れない女に本家の嫁は務まらん」

その言葉を思い出して、料理をする良子。揚げ物で油が跳ねて、危険な状況です。

「那覇の石川の実家に私が作った御三味料理を持っていく」

御三味は、旧盆や清明祭などの行事や法事に欠かせないお供え料理で、豚肉を中心に重箱に詰め合わせた料理のことです。

しかし、本を見ても作り方がわからない良子は、暢子に電話しました。

「てんぷらは棒状にした魚に塩を振って下味をつける。
 次に天ぷらの衣にもしっかり味をつける。
 衣をつける前に魚の水気はしっかり取る。
 一番肝心なのは、衣に酢を入れること。冷めてもサクサク食べられる。酢の代わりにマヨネーズを入れてもいい」

暢子はそう教えてあげるのでした。

おばあが一番偉い

御三味料理を持って石川の実家へ行く良子。

良子が待たされている座敷に、おばあ・ウシ、義母・美和子が出てくる。

「結局、仕事は辞めた訳?」

ウシはそう声をかけます。良子は「辞めてません」と答えると、ウシは無言で立ち去るのでした。

そして、博夫は、おじいやおじさんの前に座っていました。おじいに「言いたいこと言ってみろ」と言われ、思っていることを言います。

「僕はこの家の長男であるという自覚が強すぎて、何をするにもこの家の人の意見を優先してきました。たしかに、今の僕があるのは、両親やおじい、今までの石川の家族がいたからです。
 だけど、僕は、良子と家族になりました。誰に何を言われようと、僕は良子とその家族を大切にします。
 僕はもう迷いません。良子を認めないなら、もう二度とこの家の敷居は跨がない覚悟です」

そこにおばあが入ってきます。

「博夫の言う通りやさ。時代は変わる。先に行く者が後に続くものの未来を縛ってはいけない。
 博夫の嫁は間違っていない。これは、石川の女達のみんなの思い。
 認めなかったら、自分たちで食事を作れ。洗濯も掃除もやれ。
 博夫の嫁を認めなさい。男らしくはっきりしなさい」

そう言われたおじいは「おばあの言う通りやさ」とコロッと発言を変えたのでした。

味見

「博夫、さっきは、よく言った。いい男になったね。嫁を呼びなさい」

おばあにそう言われた博夫は、お願いをするのでした。

「お願いがあります。良子は御三味料理を徹夜で作ってきました。
 信じられないほど美味しくありません。お願いはそのことです」

そして、良子がみんなに御三味料理を振る舞います。

「味見をお願いします」

そう言うと、みんなで食べます。おじいは、立ち上がると「これは、まあさんやー」と明らかに棒読みで言うのです。そして、おじさんも「確かに上出来やさ」、博夫の父も「おじいとおじさんの言う通り」と言って、褒めます。

博夫が言ったお願いはこういうことでした。

「良子さん、仕事も家事も女だけでするのはもう古い。あんたは、やるべきことがある。料理はうちなんかに任せなさい」

おばあに言われ、良子は感激します。

「うちは料理をやります。これからもいっぱい食べてもらいたい」

しかし、おばあはそういうつもりで言ったわけではありません。

「いや、あの・・・」と言い淀んでいると、良子は「料理をやります。食べて下さい」と迫るのでした。

良子は、無事に石川の嫁になれたようです。

和彦の気持ち

重子が帰ってくると、テーブルの上に重箱がおいてありました。そして、そこには手紙が添えられていました。手紙は和彦の書いた物、重箱は暢子の作ったものでした。

「母さん、この前はついカッとなって、言い過ぎました。ごめんなさい。
 母さんは僕を生み、育ててくれたたった一人の大切な人。
 今の僕がいるのは、母さんのおかけです。生んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。
 これからも少しずつ母さんへの理解を深めていきたいと思っているし、僕や暢子のことも理解して欲しいと思っています。
 取り急ぎ、お詫びとお礼まで。
 和彦」

手紙には、そう書いてありました。そして、重箱を開けてみます。美味しそうな御三味料理が詰められていました。

「衣がふわふわ。うん?美味しくない。ちっとも美味しくないわね」

認めたくはないものの、料理は美味しそうに食べていました。

養豚場へ舞い戻る

「美味しい、まーさんや」

そう言って、賢秀は豚肉の生姜焼きをたべさせてもらっていました。場所は、別れを告げたはずの養豚場です。

「あんたね、自分で言ったこと覚えてるの?」

清恵に問い詰められます。

「すみません。もう一度働かせて下さい」

賢秀は懲りずに、また頼んでいました。

「その態度が信用ならないの。あんたなんか居なくても、ぜんぜん平気なんだから出ていけば」

二人のやりとりを聞いていた寛大は、腰が痛いふりをします。

「いつもの腰痛ようつう腰痛こしいただよ。ダメだ、これじゃ仕事にならない」

見事な演技力です。賢秀はそれを見て「俺がやります。すぐやります」と言うのでした。清恵も仕方なく受け入れていました。

矢作、再来

数日後、矢作がフォンターナにやってきました。

「お前、まだいたのか?」

暢子を見て、そう言います。

「てめえ、今更どの面下げて。お前のおかげでオーナーや俺たちがどれほど・・・」

掴みかかったフォンターナのスタッフを振り払い、オーナーを出すように迫る矢作。

その姿は、もう料理人ではありませんでした。

最後に

和彦の母・重子が大きな壁となって立ちはだかりました。そして、賢秀が見事に邪魔をしてくれました。賢秀のことは、いつまで経っても好きになれません。

そんな中でも「諦めない」をキーワードに比嘉家は進んでいきます。

そして、フォンターナで働く暢子達の前に反乱を起こした矢作が登場しました。

波乱の予感しかありません。

次週予告

来週も楽しみです。