「東の海神 西の滄海」は、雁国の物語です。
この物語もアニメ化されていますので、知っている方も多いと思います。
景王・陽子が即位する、500年程前のお話しです。
陽子・景王になる「月の影 景の海」
景王の苦悩と成長「風の万里 黎明の空」
延王と延麒
延王・尚隆、延麒・六太は共に胎果です。
胎果は、蓬莱(日本)で生まれ、育った十二国記の世界の人のことを言います。
六太は戦国時代の戦乱の中で、貧しい生活をしていて、親に捨てられました。
その時、死の寸前で蓬山(麒麟が生まれ、育つ山)に戻ることができました。
蓬莱での経験から、国を統治する者の存在を嫌っていました。
そして、麒麟の仕事である王を選ぶことができずに、蓬莱へと戻ってしまいました。
麒麟は、自由に蓬莱と十二国記の世界を行き来できます。
それで起こる蝕の影響はあるものの、麒麟だけの行き来であれば、少ない影響で済みます。
戻った蓬莱で出会ったのが、滅亡に瀕した小松水軍を率いる「小松三郎尚隆」でした。
会った瞬間に六太は、王気(王である気配)を感じます。
しかし、統治するものを嫌っていたために、王として選ぶことができませんでした。
ただ、尚隆が命を懸けて民を守ろうとする姿勢は、六太自身の理想と重なりました。
そして、敵の攻撃を受け、絶体絶命の尚隆を助け、延王として十二国へと連れ帰ることになります。
麒麟と誓約を交わした王は、人ではなく神に近い存在となります。
更夜と麒麟
それから20年後、雁国は荒れた荒野から緑の大地へと復興を遂げていた。
しかし、雁国の元州では治水の権限を王が奪ったままになっていました。
梟王(先王)時代に破壊された漉水の堤が、復旧されない事に苛立ちが募っています。
そして、元州に謀反の動きがあるという情報が入ってきました。
そんな時、六太の古い親友である「更夜」と名乗る少年が玄英宮を訪れます。
更夜は、親に妖魔の住む森に捨てられました。
本来なら食われてしまうところでしたが、子を亡くしたばかりの妖魔「天犬」に助けられて育ちます。
最初に六太と出会った時は、更夜は六太のことを麒麟だと認識していませんでした。
その時に「更夜」という名を六太にもらい、天犬には「ろくた」という名をもらいました。
その時六太は、更夜も天犬にも、人を殺さないように言いました。
それ以来の再会でしたが、更夜が連れてきた天犬の口の中には、赤子が入っています。
赤子を人質に六太をおどした更夜は、六太を元州城へと連れ去りました。
元州
元州城で待っていたのは、元州の令尹・斡由でした。
斡由は、六太に「漉水の堤」の修繕の権限を名目として、天網(天帝が決めたとされる理)で禁じられている「上帝位の新設」を奏上します。
天網では、王は人の最上位で、王の上には天帝がいるとあります。そして、王の上に役職を作ってはいけないことになっています。
斡由は、その禁を破って、王を傀儡として自信が「契約のない王」となることを求めたのです。
権力者の存在に否定的な六太は、これを拒否します。そして、監禁されてしまいます。
その時、六太の額に赤索条(一つが切れると他の綱が絞まる呪)を結ばれ、麒麟の力を封じられてしまいます。
その赤索条は、赤子の首にも繋がり、結ばれています。六太が逃げようとして赤索条を切ると、赤子の首が閉まり死んでしまいます。
元州の反乱
延王・尚隆のもとへも、同様の要求が伝えられます。
しかし、これを拒否します。
尚隆は、延の武官・成笙を元州に派遣し、道中で民を募って漉水の頑朴(元州の州都)の対岸に堤を築くよう指示します。
そして尚隆本人は、正体を隠して元州に行きます。
その際、王だと知らない元州師(元州の軍隊)から勧誘を受け、元州師に潜り込みます。
斡由の誤算
国府には宰輔(麒麟の役職)の危機を聞きm徴兵を希望する民衆が各地から押し寄せます。
さらに、支援を申し出る郡や郷が沢山現れます。
斡由があてにしていた諸侯諸官が、宰輔誘拐という強攻策に反発してしましました。
状況は、斡由の思惑とは異なり、斡由に不利になっていきます。
そんな時、雨季が始まりました。
尚隆の計略で堤は築かれましたが、元州の対岸にだけ築かれています。
その状況だと、雨季の雨で増水した川の水が、堤の無い元州へと流れ込んできます。
斡由は、対策として州師に対岸の堤を切るよう指示します。
せっかく築いた堤を壊そうとする州師と、民の戦いとなり、王師(王直属の軍隊)が民を守ることになります。
これは、「民のために堤を」と掲げていた斡由にとって、正反対の構図になってしまいました。
地下牢の男
元州城の内宮では、「誰が上に立っても同じ」と言う六太に対し、六太と一緒に捕らえられた女性官吏の驪媚が「宰輔が選んだ王以外のものが国権を握ってはならない」と返します。
そして、驪媚が六太を王師まで逃がそうとします。
驪媚が六太の赤索条を切り、そのために驪媚も赤子も死んでしまいました。
赤索条が切れた事を知って駆けつけた更夜は、驪媚と赤子の血を被って呆然としていた六太を見つけます。
そして、六太は血に酔って(麒麟は血や穢れに弱く、最悪の場合死に至る)具合が悪い身体で、元州城から脱出しようとします。
しかし、脱出できずに、地下迷宮に迷い込んでしまいました。
六太は、そこで牢に閉じ込められた先の州侯・元魁と遭遇します。
州侯は、王が任命します。しかし、州侯の実権を握る為に、斡由は元魁したのでした。
六太は、斡由の過去や、人となり、斡由の目的を知り、斡由は民のためにならないと確信します。
その後、六太は元州城に潜入していた尚隆に見つけられ、負ぶわれて迷宮を抜け出します。
対決
そして、六太は斡由と対峙します。
斡由は、非を臣下の白沢や、更夜へなすりつけようとします。
しかし、尚隆によって、全てを断罪されます。
斡由は尚隆に斬りかかりますが、六太の使令によって瀕死の重傷を負ます。
最期は、尚隆に介錯され絶命しました。
最期に
「東の海神 西の滄海」は、十二国記の世界の中でも、かなり古い物語となっています。
のちに、更夜も別の物語で、重要な役割で出てくることになります。
悲しく、国の在り方を巡って、延王・尚隆に傷をつけた物語になっています。
しかし、この物語があったからこそ、雁国の500年の繁栄があったとも言えます。
概要を書きましたが、ぜひ一度は読んでもらいたい物語「東の海神 西の滄海」です。