キャラクター ネタバレ

映画・ドラマ
映画

キャラクター は、2021年に公開された映画です。

前回見た「哀愁シンデレラ」も怖い作品でしたが、この「キャラクター」も怖い作品です。しかし、絶対的な悪という印象はありません。裁判にかけられていることからも、相手は人間だということがわかります。

そんな「キャラクター」のネタバレです。

原作

キャラクターは、オリジナル作品で、原作はありません。

原案・脚本は浦沢直樹の『MASTERキートン』や『20世紀少年』の共同原作者でもある長崎尚志。

長崎のアイデアを元に、企画の川村元気とプロデュース担当の村瀬健で10年以上前から構想を練っていたようです。

主な登場人物

山城やましろ圭吾けいご 菅田将暉
両角もろずみ   Fukase(SEKAI NO OWARI)
川瀬夏美なつみ 高畑充希
真壁まかべ孝太こうた 中村獅童
清田せいだ俊介しゅんすけ 小栗旬
大村おおむらまこと  中尾明慶
辺見へんみあつし  松田洋治
山城健太けんた 橋爪淳
山城由紀ゆき 小島聖
本庄ほんじょう勇人はやと 宮崎吐夢
山城あや  見上愛

キャラクターのストーリー

漫画家志望

圭吾は、アパートの1室で漫画を書いていました。もう明け方になっています。徹夜で漫画を描き、休憩の時には窓を開けて、煙草を吸います。

寝ていた夏美が起きて、圭吾の作業部屋を覗きます。

「また寝てないの?」

そう聞かれた圭吾は、できた漫画を夏美に見せます。

「相変わらず上手いね。ちょっとは寝たら」

圭吾は漫画の持ち込みをする予定です。しかし、ヒットメーカーだと言われる編集者の大村は、今日15時しか時間が取れません。それに間に合わせるために、徹夜で漫画を描いていたのでした。

「週末、お父さんとお母さんにいい報告できるといいね」

夏美はそう圭吾に声をかけますが。圭吾は何も反応しません。そして、「このページ見てよ、3日かけたんだ」と、力作のページを夏美に見せました。

持ち込み

「絵は上手いね」

そう言って大村に褒められます。アシスタントは本庄先生のところでしていること、先生がデジタルになったのでいらなくなった紙やインクなどをもらって書いていることを伝えました。

圭吾は、持ち込みだけでなく、新人賞への出品もしていました。しかし、入選や佳作は取っていますが、デビューには至っていません。

「ホラーとかサスペンスとか書く人に必ず言うんだけど、本当の殺人とかしたことないだろうし、見たこともないでしょ?だからリアリティがない訳。
 つまり、こういう人ならいるかもと読者に思わせるキャラクターが必要になるだよ。
 絵が上手いけど、キャラがないというか、ありきたりだよね。
 原作付きならどうかなって思ったけど、書く側にキャラが作れないとダメなのよ」

そう言われてしまいました。そして、「がんばって新人賞に出してみてよ」と言って大村は席を立ちました。

報告

駅で夏美に「ダメだった」とメッセージで連絡すると、電話かかってきました。

「大丈夫?圭吾が納得するまで続けてもいいんだよ」

夏美は優しく慰めてくれます。しかし、圭吾は決めていました。

「いや、これが最後って決めてた。仕事探さないとな。高い指輪買ってあげれないけど」

そう言うと、電話を切り、アシスタントとして働く本庄先生の所へ向かいました。

スケッチ

「アシスタントに専念しろよ、食わせてやるから」

本庄先生に圭吾がダメだったことを報告すると、アシスタントをして欲しいと言ってもらえました。しかし、圭吾は一人立ちするのが夢でした。それが叶わないのであれば、漫画から足を洗うことを決めていました。

「お伝えしていたとおり、今日で辞めさせていただきます」

圭吾の意思の堅いことを知った本庄や他のアシスタントは、もう何も言いませんでした。

そして、仕事中に本庄が突然言い出しました。

「あのさ、誰か一軒家スケッチしてきてくれない?どこから見ても幸せそうな家」

アシスタントのみんなは自分の作業で手一杯です。そこで、圭吾は自分が書いてくると言って出て行きました。今日でアシスタントを辞めるので、迷惑をかけることもあり、圭吾が名乗り出たのでした。

リアルな悪人

圭吾がスケッチに出ると、本庄は他のアシスタントに圭吾の話しをします。

「新人賞にはひっかかるのに、何でデビューできないかわかる?
 サスペンス物を目指しているのに、リアルな悪人が書けないのよ。致命的だよ。
 あいついいやつじゃん。だから悪人を書けないんだよ。自分に無い要素だから」

しかし、そんな話をされているとは知らない圭吾は、住宅街を回って、良さそうな雰囲気の家を探していました。

見つけたある一軒の家の前で、圭吾はスケッチを始めました。

えんぴつでスケッチブックにスケッチをしていきます。一方向だけではなく、角度を変えてスケッチします。圭吾のスケッチは、実物を忠実に描いていました。

警察呼ぶよ

ある程度書き終えたところで、スケッチしていた家の扉が開きます。家の中を覗き込んでスケッチしていた圭吾は、怪しい者ではないと断ります。しかし、空いた扉は、圭吾が話している最中に閉まってしまいました。

「音楽うるさいんだけど」

今度は向かいの家から圭吾に声を掛けられました。圭吾は「この家の人じゃないんで」と説明します。しかし、向かいの家の住人は、それでも圭吾に注意するように言うのでした。

「船越さんの家のどなたかと話してたでしょ?迷惑だって言ってくれない?警察呼ぶよ」

圭吾は困りました。ここで警察が来てしまうと、本庄先生に迷惑が掛かってしまうかもしれません。しかたく、音楽のボリュームを下げるように言うことにしました。

見てしまった

呼び鈴を鳴らしますが、反応はありません。しかたなく、門を開けて玄関までいきます。

玄関を開けると、部屋の中は真っ暗です。玄関から声を掛けますが反応はありません。音楽の音が大きいので聞こえないのかと思い、圭吾は靴を脱いで上がります。

その時、足の裏が濡れました。真っ暗で床の状態が見えていませんでした。とりあえず気にせず、部屋の中に入っていく圭吾。

「隣から苦情きてるんですけど・・・」

そう声を掛けながらリビングに入ると、ちょうど外を車が近くを走っていました。その車のライトが真っ暗な部屋を照らします。

ダイニングテーブルに家族4人が座っていました。みんな縛られ、血まみれの状態です。

ビックリして腰を抜かす圭吾。座り込んだ時に手を床につくと、手は真っ赤に濡れてしまいました。血でした。

その時、庭の方から音がしました。とっさに音のした方を見ると、ピンクの髪色の若い男が、返り血を浴びたままの姿で歩いているのが見えました。その男は、手に包丁を持っていました。

船越一家殺害事件

圭吾は警察に連絡しました。警察や救急車がやってきて、圭吾はパトカーに乗せられました。

事情聴取は、真壁刑事と清田刑事が行います。清田は元暴走族なのに上手い事して警察になったと噂のある人物です。上司からは暴走するような人物とみられています。

「まず、漫画家のアシスタントって、先生は誰?」

清田は、圭吾に優しく問いかけます。圭吾は「本庄勇人先生です」と答えます。真壁は漫画には興味ありませんが、清田は好きなようです。本庄勇人は「オカルトハウザー」を描く、人気漫画家です。清田も知っていました。

「漫画を書くためわざわざスケッチしてたの?夜だし写真でもいいんじゃない?」

刑事からすれば、当然の質問です。そういう「言い訳」をしていると思われても仕方がありません。

「本庄先生は、家もキャラだっていうんです。
 家の雰囲気そのものが重要なんです。キャラがあるかないかが重要で」

圭吾は本庄に言われていることをそのまま説明しました。

キャラが弱い

「こだわって書いてるのはわかったけど、どうして家の中まで入ったの?」

これも至極まっとうな質問です。

「隣の人が音楽がうるさいって。警察とか呼ばれたら、先生に迷惑がかかるかなって思って。
 玄関から声をかけたんですけど、そうしたらリビングで、あの・・・」

圭吾は本当のことを答えました。それを聞いて、圭吾が持っていたスケッチブックを清田が見ます。スケッチを見ると、完成度が高いスケッチでした。圭吾が本当にスケッチをしに行ったのがわかります。

家のスケッチが2枚。それ以外にもスケッチされていたものがありました。人の顔です。清田がこれは何かと聞くと、圭吾は説明しました。

「普段から、先生にお前の漫画はキャラが弱いって言われているので。
 目につく人を書くようにしています」

そこまで言うと真壁が、犯人の似顔絵を描けるんじゃないかと聞きます。それを聞いて、清田が聞きます。

「圭吾さん、犯人の顔は見てない?」

圭吾は暗闇で見た返り血を浴びた男の顔が蘇ります。しかし、圭吾は「見てません」と答えました。

限りなく怪しい

「本庄に話しを聞いてきたよ。圭吾は嘘はついてない」

しかし、警察から見れば、圭吾は限りなく怪しい第一発見者です。

そんな圭吾は、事情聴取が終わると家に帰りました。事件のあった家で転んだ時に血まみれになった服は、警察に着替えを借りていました。

夏美は心配そうに出迎えます。

「大丈夫?ケガとかない?犯人に襲われたりしなくてよかった」

圭吾はしゃべらず顔を洗うと、部屋着に着替えて、作業部屋に入っていきました。煙草を出しますが、吸うこともせず、今日見た状況を絵に描きだしました。

事件の状況

「今回の事件は極めて異常だ。事件の詳細、特に遺体の状況に関することは口外しないでいただきたい。
 船越ムネユキ53歳、妻、ヨウコ50歳、長男タカユキ20歳、長女アンリ18歳。
 10月24日18時から22時の間に鋭利な刃物で数か所、刺され殺害されました。
 なお、凶器は未発見。
 4人はイスにくくりつけられ、食卓を囲むように配置されていました。
 殺害後、犯人は現状に滞在し、同じ食卓に座っていたものと思われます。
 犯人の動機は不明。通り魔と怨恨、併せて捜査をすすめる」

その状況で、容疑者となりそうな人物がいました。事件現場の近くに住む男です。

「辺見敦50歳。18歳の時に一家4人を殺害して、医療少年院に12年間収容されていました」

警察は、辺見に事情を聞くことにしました。

容疑者・辺見敦

「辺見敦さんですね、事情を聞かせてもらえます?」

持っていたコンビニの袋を投げつけ、辺見は逃走します。しかし、警察は辺見を囲んでいました。

囲まれた辺見は、「なぜ逃げる?」と聞かれ、すぐに自白しました。

「すみません、すみません。私がやりました。全部私がやったんです」

身柄を拘束して、警察で事情を聞きます。辺見は素直に応じました。

「辺見さん、あんた船越さん一家を殺したって認めるんだね?」

取り調べでも、辺見は認めました。仲間はいないこと、船越一家は知らない人だということはすんなり認めました。

しかし、殺害の動機や状況、凶器の場所については「覚えていない」と言うのでした。

逮捕

「早期解決だな。どう考えても辺見だろう。一課長にもそう報告しておくから」

真壁の上司はそう言います。しかし、清田は納得できませんでした。

「やったことは認めてるけど、動機、状況は覚えてないの一点張り」

しかし、一件落着で送致しろというのが、「上」の指示です。

テレビ報道では、辺見の逮捕が報道されました。

それを見た夏美は、圭吾に犯人が逮捕されたことを伝えます。しかし、映像で辺見の姿を見た圭吾は、一言「違う」とだけ言うのでした。

圭吾は、漫画を描いていました。慎重に深呼吸して、大事な顔を描き始めます。描き始めたら一気に書き上げました。書いたのは、あの夜、庭で見た犯人の顔でした。

新たな事件

車で山奥を走る車。4人家族の一家です。

一家は、走りながら、途中で停まっている車を見つけました。故障のようです。しかし、人は誰もいませんでした。

そして、しばらく走ると、手ぶらで歩いている男を見かけます。故障した車の人かと思い、追い抜いたあとで車を停めて声をかけます。

「大丈夫ですか?」

男はピンク色の髪の若い男です。船越一家の現場にいた男でした。

「大丈夫じゃないです。乗せてもらってもいいですか?すぐそこまで」

そう言われ父親は車に乗せようと思います。しかし、母親は心配です。知らない男性を乗せることに抵抗がありました。ただ、1人だということ、山道で本当に困っているだけの可能性があると思い、父親は母親の心配には構わず「どうぞ、良かったら乗って下さい」と声をかけました。

「どこへ行く予定だったんですか?」

そう聞かれた男は「この辺だっけな?」と思い出そうとします。この先には民宿があるので、そこかと聞く父親。

「今、民宿なんだ」

男は何か思い出があるような感じで、感慨深そうに言っていました。

サンジュウシ

「こんな山奥でキャンプなんかですか?」と聞かれた若い男は、それには答えず「4人家族って幸せそうでいいですね」と発言しました。

上手く会話が噛み合いませんが、父親は気を使って会話を続けます。

「どうかな?3人家族も5人家族も幸せそうなところは幸せそうですよ」

しかし、男は頑なに4人家族がいいと言うのでした。

「いいえ、4人家族が一番ですよ。3人や5人じゃダメなんです」

そして、突然、漫画雑誌を読む息子に話しかけます。

「もしかして、それ、ライジングサン?サンジュウシって知ってる?」

そう聞かれて、付けていたイヤホンを外す息子。

「殺人鬼のダガーってキャラ、僕に似てない?」

そう言われ、サンジュウシのページをめくり、その殺人鬼のダガーが描かれているページを開きます。髪はピンクで細く若い男。確かに似ていました。

「お父さん、この辺で大丈夫です」

父親は急に声をかけられましたが、この辺には何もないと言います。しかし、気味悪がっている母親は、「いいじゃない、ここっていうんだから」と車を止めるように父親に言いました。それを聞いた男は

「やだなお母さん、もしかして僕のこと気味悪がってます?」

そう言うのでした。

原一家殺人事件

山道から外れ、転落している車がありました。しかし、沢まで行かず、途中の木にひっかかって、横向きに停まっています。

そこに真壁と清田がやってきました。以前の船越一家の事件と共通点があると思って、やってきたのでした。

「ちょっとだけ、ちょっとだけ見せてもらえますか?」

そう言うと、清田は勝手に写真を撮ります。そして、引き上げた車の中には、一家4人が刺殺されて血だらけになった姿がありました。

その時、清田が聞きます。

「天井の内側って探りました?」

鑑識に確認して、清田が車の天井部分を剥がして手を入れます。

「みっけ」

そう言うと、天井部分から血の付いた刃物が出てきました。

原作者

真壁は「冴えてるな」と言うと、清田は漫画本を真壁に見せました。

「34?」

「サンジュウシって読むんだ」

清田は読み方を教えると、ざっくりと内容を真壁に教えます。

「主人公の刑事が同窓会で再会した同級生、犯罪歴史学者と霊能力者と3人で、4人家族を狙うダガーを追うんだ」

そして、その漫画本には、残忍な殺害方法の描写が描かれていました。それは、船越一家殺人事件の現場と一目でわかりました。写真のように忠実に描いてありました。

「おい、この殺し方・・・」

表紙に書かれた作者は「山城圭吾」でした。それにも驚く真壁。

普通に考えれば、漫画の模倣犯の犯行か、作者本人の犯行というのが、ありえるパターンです。清田が考えるもう一つの仮説は、船越一家と原殺しは同一犯で、辺見は無実。犯人は別にいるというものでした。しかし、真壁は受け入れられません。

「それはありえない」

まずは圭吾に話しを聞こうと、真壁と清田は動き出しました。

ベビーベッド

圭吾はデジタルで作画作業中です。そこにスマホの通知がきて、作画を止めて出かけました。

呼び出したのは夏美です。夏美は、以前働いていた家具屋に圭吾を呼び出しました。

ベビーベッドを取り置きしたことを圭吾に確認しています。そして、圭吾の両親に会って子供ができたことを報告したいと言う夏美。

しかし、圭吾は乗り気ではありません。

圭吾の実家

それからしばらくして、圭吾は夏美と一緒に実家に帰りました。なにかよそよそしい圭吾。両親と妹と一緒にダイニングテーブルを囲みます。

「夏美さんもお母さんか、何か困ったことがあったら言ってね」

母親はそう言いますが、妹は「困ったことなんてないでしょ。この人たち大金持ちだし」とズバッと言うのでした。それを聞いても、夏美は嫌な顔をしませんでした。

「圭吾、また痩せた?」

妹は微妙な空気を構わずに話します。しかし、圭吾は何も話しません。

「そうなの、私ばっかり太っちゃって、大変じゃないですか(笑)」

圭吾が何も話さないので、夏美が気を使って話してばかりです。

「圭吾くん、体だけは気を付けてね」

母親は圭吾の体の心配しますが、やっぱり妹は気にせず話します。

「あんな漫画書くから病むんだよ。お母さんも怖いって言ってたじゃん」

またまた夏美は場を取り持つように話します。

「アヤちゃん、私も一緒、結構怖いよね」

そんな雰囲気の中、やっと父親が話します。

「こんな大人しいやつが、あんな怖い絵を書けるなんてな。
 でもな、好きなことで食べていけるって幸せだぞ」

そう言われ、圭吾はやっと「うん」とだけ答えました。

父親は近くの本屋で単行本買い占めていたようです。あまり話はしませんが、圭吾のことを心配してくれているのでした。

その時、圭吾のスマホが鳴ります。編集者の大村からの電話でした。

「圭吾さん、なんかした?」

事情聴取

タワーマンションに編集者の大村と真壁と清田がやってきました。オートロックが2重にあるような、警備も万全なマンションです。

真壁は漫画家は儲かるのかと大村に聞きます。

「出来のいい物はありますけど、実際に売れる物は少ないんです」

そんな話をしながら、3回インターフォンを鳴らして、やっと圭吾の家に着きました。豪華で広いリビングで夏美が対応します。圭吾はメゾネットの2階を作業部屋にしていました。

大村が先導して2階に上がると、広い部屋でパソコンに向かう圭吾の姿がありました。

「お久しぶりです圭吾さん。覚えてらっしゃいますか?」

そう聞く清田。圭吾は「はい」とだけ答えました。

「それで、ご用件は?」

そう聞くと、清田が話し始めました。

モチーフ

「神奈川と山梨の県境付近で原さん達一家4人が殺害された事件、知ってます?」

しかし、圭吾は知りませんでした。山道の車の中で刺殺されていた現場の写真を圭吾に見せます。

「この写真、見てくれますか?似てません?」

そして、漫画に描かれていたように、天井から凶器が発見されたことを伝えます。

「ちょっと、圭吾さんが容疑者ってことですか?」

大村は驚きながらもそう聞きます。

「そうは言ってませんよ。模倣犯の可能性があります。近しい人物で、思い当たる人は?」

しかし、圭吾は「ぜんぜん、誰も思いつきません」と、淡々と答えます。

「あと漫画の1話目の殺人。あれ、船越一家の事件モチーフにしていますよね?」

大村が「圭吾さんは漫画家です。あんな体験したら作品にします」と擁護します。

「責めている訳ではありません。問題は、その次のエピソードなんですよ。
 この漫画では、第一発見者は犯人の顔を見てる

しかし、圭吾はあっさり否定します。

「創作です。ダガーは俺が作ったキャラクターです。オリジナルの」

そう言われても、清田は納得できません。

「本当に何にも隠してない?」

圭吾はやっぱり「はい」とだけ答えました。

凶器のオチ

「そう言えば、車中の天井から見つかった凶器、あれどういうオチになるんですか?」

しかし、圭吾はまだ決めていませんでした。

「まだ決めていません。この後の打ち合わせで決めます。もう仕事に戻ってもいいですか?」

そう言うと、真壁と清田が帰るまで、仕事をしていました。

圭吾の心配

真壁と清田が帰ると、圭吾は大村に相談します。

「連載、止めた方がいいんじゃないでしょうか?」

しかし、大村は止めます。編集長にはサンジュウシを漫画雑誌「ライジングサン」の柱にしようと言われています。それに、今現在すごい売れています。辞めることは、選択肢にありませんでした。

「圭吾さんってアシスタントを長くやってて、やっと華開いたじゃないですか。もったいないですよ。
 それと、さっきの天井から出てきた包丁、どうしましょうね?」

そう言われ、圭吾は「原稿がひと段落したら次回のネーム(下書きの下書き)をやろうと思っているので、考えます」と答えました。

清田

路地裏の飲み屋に圭吾が一人で飲みにやってきました。そこの主人は圭吾が漫画家だと言うことは知っていました。しかし、圭吾の作品は読んでいません。

そこで一人で圭吾がビールを飲んでいると、清田がやってきました。

「圭吾さんじゃないですか」

圭吾は尾行されていたのかと清田に聞きますが、清田は「偶然ですよ、偶然」と言ってはぐらかしました。

「さっきは厳しく聞いちゃったけど、俺サンジュウシ、好きなんだよね。
 警察としては、喜べないけど。描写も細かくて、世界観に引き込まれるんですよ。
 圭吾さんすごいな。並大抵の努力や才能じゃないでしょ?
 プロになるのだって大変な世界で、これだけ売れて」

清田は一気に話します。しかし、圭吾は警戒してか、淡々と話すだけでした。

「俺、漫画を尊敬してるだけです。
 漫画って、正しいってことは正しい。間違っていることは間違ってるって言える世界じゃないですか」

真壁からの電話

「連絡先教えてなかったよね。何か思い出したら、ここに連絡してくれる?」

清田は圭吾と番号の交換をします。しかし、圭吾は連絡をするつもりはありません。

「もう本当に話すことがないですよ」

そう言う圭吾に清田は話します。

「殺人事件っていうのはね、終わりがないんだよ。
 たとえ犯人が捕まっても、遺族や友人は一生心の傷を背負っていく。
 だから、真実を掴んであげたい、それが俺の仕事なんだよ。
 なんでもいいから、思い出したら教えて」

そんな時、清田に真壁から電話が入ります。

「単独行動してるんじゃないだろうな?お前のことだから圭吾を付けてるじゃないよな?」

勘の良い真壁でした。

両角

「山城先生ですよね。サンジュウシ読んでます。握手してもらってもいいですか?」

清田が電話で席を外している間、そう言って近寄ってきた男がいました。

圭吾は握手をして顔を見ると、それはあの夜に見た犯人でした。

「両角っていいます。サンジュウシ大好きです。ダガーって僕に似てますよね?」

もちろん記憶ですが、圭吾は両角を思い出して描いたのです。似ているというか、本人です。何も言えない圭吾でしたが、両角は話し続けます。

「自分もわかりますよ、ダガーの気持ち。先生の気持ちもわかりますよ。
 幸せの象徴と言ったら4人家族ですよね。仲が悪い4人家族もいるけど。
 僕のためにリアルで芸術的な作品を書いてもらってありがとうございます。
 先生が書いたものをリアルに再現しておきましたから」

圭吾は恐怖で何も言えません。しかし、両角は続けます。

「でも、ただ一つ気になっていることがあるんです。
 先生、話しを盛り上げるために車の天井に包丁入れましたよね?
 あれ、どうなるか考えてなかったでしょ?
 僕ね、いいストーリーを思いついちゃったんです」

そう言うと圭吾の耳元で何かを囁きました。

そして、両角は立ち去ります。その時、まだ電話中の清田の背中を見つめる両角がいました。

公務員

「今ここにいた人、よく来るんですか?」

飲み屋の主人に両角のことを聞きますが、主人は両角を見ていませんでした。しかたなく、コースターに両角の似顔絵を描く圭吾。しかし、主人は知りませんでした。

「誰だか知らないけど、相変わらず上手いね」

電話を終えた清田が席に戻ると、両角だけでなく、圭吾もいませんでした。

「あれ?圭吾さんは?」

主人にそう聞くと、「今さっき帰っちゃったよ」と言われてしまいました。仕方なくお勘定を使用とすると「お題は圭吾さんからいただいてます」と言われてしまいました。

「公務員なのにまずいな・・・」

清田は違う意味で焦ってしまいました。

夏美との関係

家に帰ってきて、作業部屋で震える圭吾。そこに夏美がやってきます。

「また寝てないの?体壊しちゃうよ?」

しかし、圭吾は夏美にかまっていられません。

「いいから、寝ててくれよ」

ついついぶっきらぼうな言葉遣いをしてしまいます。

「大丈夫?ご飯もロクに食べてないし。刑事さんの話しは?」

夏美は心配してくれています。しかし、夏美に話すことができません。

「なんでもない。休んでる暇はないんだよ。
 何がなんでも書くしかないんだよ。
 何も知らないくせに無責任なこと言うな」

そう言われても夏美は怒りません。ただ、圭吾のために机に水を置いて、黙って立ち去りました。

圭吾は血走った目で作画を始めました。

冤罪

車の天井から出てきた包丁のDNA結果がでました。

真壁はそれを清田に伝えようとします。しかし、清田は先回りして結論を言います。

「船越一家の殺人事件の包丁とか?」

今日発売されたサンジュウシで、包丁の鑑定結果が出ていました。それと全く一緒だったのです。

その後、真壁は本部長に呼ばれて部屋に行きました。

「もう結論は出たよ。私から検察に報告したら、即無罪の決定を下したよ」

包丁が船橋一家の事件の凶器と判明して、辺見の無罪が決定しました。

キャンプ場

山を登る両角。そこに川でキャンプする声が聞こえてきました。4人家族でキャンプをしていました。

その頃、辺見の会見が行われていました。

「やったって言った私が悪いんです。誰が悪い訳でもありません」

辺見はそう言います。しかし、弁護士は黙っていません。

「本人は当初から、犯行時の記憶がないと言っていた。警察や検察に自白の強要があったと考えます」

そして、記者からの質問が入ります。

「辺見さん、18歳の時の犯罪も記憶がないと言いながら自白はしていたと思います」

それについても、辺見はあいまいなことを言っていました。

「あれも本当に覚えていないんですよ。でも、あたしがやったんですかね」

杉村一家殺人事件


テントで刺殺された4人の遺体が見つかりました。

これも漫画の通りの惨状です。

清田は圭吾に連絡を取ろうとしていました。しかし、圭吾は電話に出ません。仕方なく編集者の大村に連絡を入れます。

「わからないですけど、締め切り終わりでガード下で飲んでるかも」

以前、清田と一緒に飲んだあの店に清田は行ってみました。しかし、圭吾はいません。主人も最近来ていないと言います。

その時に見つけたのが、圭吾が描いた似顔絵でした。

「あれ、ダガーですか?」

清田はそう聞きますが、主人は否定します。

「圭吾さんがささっと書いた似顔絵です。
 隣にこういう顔の人がいたらしいんですよ」

いつか聞くと、清田が一緒にいた日のことでした。何か思い当たるような顔をする清田でした。

表紙と巻頭カラー

「発送が遅れたので、直接持ってきました」

大村は最新号のライジングを持って圭吾の家に来ていました。

「包丁の伏線回収、編集部でも話題ですよ。
 それでですね、3号先の表紙と巻頭カラーお願いできませんか?」

圭吾は一瞬考えますが、引き受けました。

「やらせてもらいます。いつ最後になるかわからないので」

しかし、大村は真に受けていません。

「ですから、終わりませんって。それと、映画化の話しですが」

そこまで話したところで、圭吾は「もう出なきゃ」と言って話しを切り上げました。

男の子と女の子

「再来週の定期健診の予約、忘れないようにして下さい」

夏美は一人、定期健診に来ていました。順調のようです。

診察室を出ると、圭吾がいました。迎えにきてくれたのでした。

「ここんところ、まともに話せてないよね」

そういう圭吾に夏美は、嫌味っぽく聞こえないように言います。

「連載はじまってから、ずっとだよ」

そして、圭吾は前に夏美に言った言葉を後悔していました。しかし、夏美は気にしていないそぶりです。そして、やはり圭吾の体を心配してくれました。

「夏美は?どう?最近病院とかも付き添えてなかったから」

「順調」と伝えると、圭吾は「そっか、良かった」と気のない返事をします。それにはさすがに夏美も気になりました。

「本当にそう思ってる?」

そして、圭吾に聞くのでした。

「圭吾はさ、男の子か女の子かどっちがいい?」

夏美は医者から聞いていました。しかし、圭吾を驚かせるために言いませんでした。

両角再登場

「圭吾先生じゃないですか?」

地下駐車場で、両角は圭吾に話しかけました。とっさに夏美をかばう感じに手を広げる圭吾。しかし、両角は気にせず話し出します。

「最新号読みましたよ、包丁のエピソードおもしろかったです。
 奥さんですか?両角です」

夏美は誰かわかっていませんが、「お世話になっております」と丁寧に挨拶しました。

「サンジュウシ、共作してまして。僕のアイディアよく使ってくれるんです」

そういうと、びっくりする夏美。そんな話は圭吾から聞いていません。そして、そんなそぶりもありませんでした。

「そんな方いたの?」

しかし、圭吾は何もいいません。そして、両角は二人を気にせず話し出します。

「今日はどうして病院に?もしかして子供?」

夏美は律義に「そうなんです」と答えます。

「子供って幸せの象徴ですよね。そっか、だからベビーベッド買ってたんだ」

その時から両角は見ていたのでした。流石に怖くなった圭吾は「夏美、行くよ」と言って車に乗り込みました。

警察に話す

「ねえ、どういうこと?」

夏美は不思議そうに圭吾に聞きます。圭吾は、もう黙っていることはできませんでした。

「ごめん、俺サンジュウシの連載やめる。
 あいつは連続殺人犯だ。見てたんだよ、あの夜に、犯人の顔を。
 犯人をキャラクターにして、漫画を描いてしまったんだ。
 あいつがダガーだよ。大丈夫。警察に、刑事さんに何もかも話すから」

それだけ言うと家に急ぎました。

圭吾の本音

清田を家に呼んで、圭吾は今までのことを全て話しました。

「そうか、ようやくつじつまがあったよ」

清田はやっと納得できる回答を得ました。謝る圭吾に清田は聞きます。

「どうして、隠してたの?」

圭吾は話します。

「理解してもらえるかわかりませんけど、俺、漫画の才能が全くないんです。
 あいつと目があって、あいつが俺の中に入って、俺があいつに入って、生まれてはじめてすごいキャラクターができて。
 でも、やっぱり俺は普通の奴です。もう、耐えられません」

しかし、清田は圭吾の言うことを理解できません。

「前にも言ったけど、俺は好きだよサンジュウシ。
 やつに出会ったことだけが、売れた理由じゃないと思うよ。
 犯人はあんな顔なの?ダガーにそっくりな?」

圭吾は両角と名乗ったこと以外は知りません。それを正直に話し、再度謝ります。

しかし、清田は圭吾が隠していたことを気にした様子はありません。

「圭吾さんのことは後だ。新作のことでも考えてな」

ここは広すぎる

「嘘ついてて、ごめん」

圭吾は清田が帰った後、夏美に改めて謝ります。夏美は何か隠していることは気づいていました。しかし、圭吾が言い出すまで、夏美からは聞こうとはしませんでした。

「昔はさ、原稿できたら、見せにきてくれてたじゃない?
 私は圭吾の漫画、すごいと思う。だから、才能ないとか言わないで」

その言葉で少し落ち着いた圭吾。今後のことも考えます。この家はセキュリティはしっかりしていますが、家賃が高すぎます。そのことを夏美に伝えると、夏美は気にしていないように言うのでした。

「いいよ、ここは広すぎるよ」

圭吾は父親や家族にもちゃんと話したいと思うのでした。

直談判

圭吾は連載を辞めることを決めると、編集長に直接話に行きました。

「いきなり連載打ち切りって早計じゃないかな?」

そういう編集長に圭吾はしっかり説明します。

「犯人はサンジュウシを読んで殺人シーンを再現しています。
 これは、書いてはいけない漫画なんです。
 お願いします。辞めさせてください」

しかし、困ってしまう編集長。柱にしたいと思っている漫画を簡単に辞める訳にはいきません。

「じゃあ、休載というのはどうですか?
 あれだけの作品ですから、雑誌としても痛いんです」

それを聞いた大村が、編集長に助け舟を出しました。

「読者に対する責任もあるんじゃないですか?
 圭吾さんだって、最後まで書ききりたいでしょ?」

そして、休載となることが決定しました。しかし、いつ再開するか、それともしないのかは、決まっていません。

最終回はやろうよ

圭吾は本屋にサンジュウシを見に行きました。サンジュウシの専用コーナーが作られていました。

「34を最後まで描き切りたい!その強い思いは変わりません。ですが、今は断腸の思いで休むこととなりました。読者の皆さん、ごめんなさい」

それが、休載のお知らせとして、雑誌に載った内容です。それを手に取って見る圭吾。そこに両角がやってきます。

「なんで休載するの?訳を言ってよ」

圭吾は人を呼ぶぞと両角を脅します。しかし、両角はひるみません。

「呼べば?誰か死ぬことになる」

そう言われ、人を呼ぶことができない圭吾。警察に全て言ったことを告げます。

「警察に全部話した。初めてお前を見た日のことも、名前も。人殺しになんか加担できない」

しかし、名前はどうでもよさそうな両角。そして、圭吾を責めます。

「自分だって人を殺してるじゃん。漫画の中で楽しんで人殺してるじゃん。
 何が違うの?先生は楽しんで4人家族を殺してる。
 あと一つで連載に追いつくから、せめて最終回はやろうよ

両角はそう言って圭吾に迫りました。

両角の履歴書

圭吾は両角と会った後、清田に電話をしました。

「わかった。その本屋の防犯カメラを調べてみる。圭吾さんもできるだけ出歩かないで」

清田はそう言うと、電話を切りました。

以前圭吾が描いた家のスケッチに、家の前に停まっていた車も書かれていました。その車は宅配業者の者で、その配達員が両角と名乗っていたことがわかりました。

その宅配業者の会社に行くと、両角の履歴書がありました。住所は東京都板橋区。そこに清田と真壁は向かいます。

両角の家

両角の家派、古いアパートです。窓に紙を貼って、いるかいないかわからないようにしていました。そして、部屋の壁も紙がたくさん貼られています。

帰宅して、突然キレだす両角。よく見ると、壁に貼ってあるのは、事件現場の写真とサンジュウシの漫画でした。

「休載だって?でも僕は続けるから」

両角は一人でそうつぶやきました。紙の貼っていな壁には、4つの顔が不気味に描かれていました。

別人

清田と真壁が履歴書の住所にやってくると、ゴミが散乱するアパートでした。

ノックして呼び出すと、年老いた女性が顔を出します。

「修一なんかやりました?」

警察が来たので、とっさにそう聞く女性。両角修一はいませんでした。

「もう10年ぐらい会ってない」

そう言いますが、たまに借金取りがくるらしく、生きてはいるようだと言います。

両角修一は、昔から問題の多い子でした。事故で足が悪くなって、すさんで悪さばっかりしていました。そして、家出したというのです。

犯人の両角は、防犯カメラの画像を見ても足は悪そうに見えませんでした。そして、両角修一の卒業アルバムを見せてもらうと、防犯カメラに映っていた人物とは違う顔でした。

その時、犯人の両角は、新しいターゲットを物色していました。

一軒家に住んでいる4人家族が、庭先からリビングで楽しくゲームをしているのが見えます。その家に入って行く両角。一家を惨殺すると、漫画の絵の通りに並べ、ポラロイドで撮影していました。

性格がでる

真壁は両角が別人だったことで、手掛かりが消えたことを残念がっていました。

「借金のカタに戸籍を売ったってことだよ」

そう言うと、そもそも圭吾の証言に信憑性があるのか疑問に思ってしまいます。

しかし、清田は「信じるしかないよ」と言います。

ただ、信じるしかないのはわかりますが、圭吾は取り調べで警察に嘘をついたことがありました。それを思うと、素直に信じることができません。

「道に迷ったら、誰でも遠回りするだろう」

清田はそう言って圭吾をかばいます。清田は圭吾と昔の自分を重ね合わせているのかも知れません。

「ホシの性格、キャラクターか。それが捕めないときは、そいつの犯罪現状を何度も見直すべきだ。人間の行動には必ず性格がでる」

清田はそう言うと、今までの事件現場の画像を見直すのでした。

コミュニティ

防犯カメラ映像を見直す清田。つい呟いてしまいます。

「お前はだれだ・・・」

そして、漫画の絵と見比べます。そうすると、漫画に描いてある看板が、実際の事件現場にもありました。看板は「九條村」の看板でした。

ネットで検索すると「ユートピア。4人家族を幸せの一単位と考えるコミュニティ」という記事が見つかりました。

その頃、両角は自分の家に帰ってきました。事件現場から帰ってきた姿は、返り血を浴びたままの姿でした。そして、凶器として使った包丁は、流しに置きます。

現場で撮影したポラロイド写真と漫画の写真を比べます。

「なかなかの出来だよ、先生」

両角は、自分の再現具合に納得したようでした。

九條村

「圭吾さんは、なぜここを舞台に選んだの?」

清田は圭吾の家で話を聞きます。

「1989年頃、九條村は廃村でした。そこに10組の4人家族が住んでたんです。
 4人家族を幸せの一単位と考える宗教みたいな集団がいたんです。
 妻には趣味が悪いって言われましたけど、殺人事件の文献とかに興味があって、たまたまこの山道を舞台に選んだだけなんですよね」

しかし、山道なんて腐るほどあります。漫画を見ただけではここまで模倣できないと思う清田。両角はこの辺に土地勘があったということかも知れません。

「そのコミュニティの出身?」

そう考えてみますが、今はまだわかりません。4人家族を引きはがされた、当時の恨みかもしれないと清田は思いました。清田は、圭吾から九條村の書かれている資料を借りました。

帰り際、清田は圭吾に聞きます。

「漫画、書いてる?」

しかし、まだ圭吾はそんな気分になれませんでした。そう伝えると、清田は「楽しみにしてるよ」と言って帰っていきました。

惜しかったね

清田は帰り道で真壁から電話を受けます。

「あいつがまたやった、緑区の4人家族だ」

すぐ向かうと清田は言うと、真壁に圭吾から聞いた情報を伝えます。

「原さん一家の現場の近くに4人家族を幸せの一単位と考えるコミュニティがあったみたいで」

そう言うと、真壁は「こっちで調べておく」と言って電話を切りました。

清田が現場に向かおうとするその時、陸橋の上から声がしました。

「惜しかったね。いいところまでいったのに」

後ろを振り向きますが、声の主がわかりません。そして前を向くと、そこには包丁を持った辺見が立っていました。辺見は迷わず清田を刺します。捕まえようとする清田。しかし、辺見は清田を刺し続けます。倒れた清田にまたがり、辺見は最後の一撃を加えました。

葬儀

清田の葬儀が行われている会場に圭吾がやってきました。それを見つけた真壁は、圭吾に近づきます。

「どうしてきたの?危ないから家にいろって言っただろう。送って行くよ」

そう言うと圭吾と並んで歩きながら、真壁は言います。

「ホシは辺見ってわかったから捕まえるだけだ。あいつも無念だろうけど、ホットもしてるよ」

しかし、圭吾は犯人が辺見だとは思えません。

「本気で辺見が主犯だとお思いですか?」

圭吾が言いたいことはわかっています。

「両角ってやつが、もう一人の犯人だと思ってるんだよな?」

圭吾は「はい」と言うと、「清田さんは俺のせいで・・・」と言いかけます。しかし、それを遮るように真壁は言うのでした。

「清田ってさ、内緒だけど暴走族上がりでね。逮捕歴はないけど若い頃はやんちゃでさ。
 俺が若い頃、所轄の少年課の時にいろいろ話を聞いてやったんだよ。
 あいついろいろあって、肉親がばあちゃんしかいなかったしな。
 口は悪いやつだったけど、人のせいにするようなやつじゃない。それは昔からだ」

圭吾は清田が、そんな生い立ちだとは思っていませんでした。

「圭吾さんは、漫画を描きな。あいつは本当にあんたの漫画が好きだった。新作、待ってた。
 あんたはあんたで、やるべきことをやりなよ。清田はそれを望んでいるんじゃないかな」

そう真壁に言われ、圭吾は描くことを決めました。

最終回

仕事部屋に戻ると、電気をつけ、奥にしまった紙とペンや作業台を出します。最終回はデジタルで描くのは違うと思っていた圭吾。昔と同じようにペンを使って紙に描きだしました。

そして、大村に連絡をしました。連載再開はできないが、最終回は描くということを伝えました。そして、最終話のために50ページ欲しいとお願いしました。

大村から話を聞いた編集長は、その申し出を受け入れます。そして、完成する2週間後に合わせて、いまから予告として、2ページ入れるように指示しました。

その予告を見て驚き、喜ぶ両角。

圭吾は、書きあがった原稿を昔のように、まず夏美に見せました。そして、原稿を大村に渡すと、掲載するかどうかは編集長の判断に任せることにしまいた。

大村は編集部に持って帰ると、編集長に判断してもらいます。ただ、大村は「載せて下さい」と言って渡しました。

「漫画との関連性は認めるがな、この通り犯人がのこのこやってくるかね?」

捜査本部では、最終回の原稿を元に話し合いが行われていました。真壁は、これの内容を実現するためにやってくる可能性があると思っています。

「明らかに罠だってわかるだろう。こんなのに人員は割けんよ」

上の判断は当然と言えば当然です。しかし、真壁は食い下がります。

「では、うちの班だけでもやらせて下さい」

突拍子もない話ですが、清田なら信じたと言って、許可を取り付けました。

最終回の内容は、4人家族の作者の家にダガーがやってきて、作者を殺し、ダガーも同時に死ぬというものです。圭吾は妻と二人暮らしですが、圭吾の実家は圭吾を入れて、ちょうど4人です。

圭吾の実家

両角は、雑誌を買ってきて一人で読みます。

「おっと、そう来たか」

その頃、圭吾は実家に戻っていました。真壁も班員と一緒に圭吾の実家に来ています。

「本物の家族をおとりにするなんて危険すぎないか」

しかし、本物じゃないと両角は来ないと圭吾は思っています。

「巻き込んでしまってすみません」

圭吾は、素直に両親、妹に謝ります。

「圭吾くん、困った時はいつで言ってって言ったでしょ」

素直に「ありがとう、お母さん」と言えました。両親は再婚で、妹は母親の連れ子です。家族ではありますが、圭吾は上手く接することができませんでした。

「今までの俺の態度、みんなに謝りたいんだ」

その時、辺見が現れたと一報がはいりました。

清田からの電話

同じタイミングで、圭吾のスマホが成りました。相手は、清田です。正確には、清田のスマホを持っている両角です。電話にでると、両角が話し出します。

「もしもし、もしかして実家?それは違うでしょ。
 両親は再婚で、妹さんは血が繋がってないんでしょ?
 皆うまくやろうしてるのに、先生だけが受け入れてないんでしょ?
 そらぞらしい4人じゃない。先生も4人の幸せな家族が憎いんでしょ?僕と一緒だよ。
 幸せな4人家族を殺すってストーリーは守ろうよ。だから、本物の方選択したから」

そう言うと電話が切れました。本物の方とはどういうことか考える圭吾。

襲撃

圭吾は考えて、夏美に電話をします。

「俺たちは4人家族か?」

そう聞くと「よくわかったね」と返事がきました。夏美のお腹の子は、男女の双子でした。

両角は、夏美の所に行こうとするはずです。電話はつないだまま、実家を飛び出す圭吾。真壁は両親と妹を安全な場所に避難させ、圭吾の後を追います。

タクシーで家のマンションまでたどり着くと、圭吾は誰もいないことを確認してオートロックを開けます。

その時、オートロックを開けた手を現れた両角に刺されました。圭吾は開いたオートロックの中に逃げますが、両角も追ってきて腹を刺されてしまいました。さらに、指と指の間に包丁を入れ、切り裂かれました。

逃げて

家のドアが開いて、圭吾が帰ってきたと思い玄関に行く夏美。しかし、そこには血だらけの圭吾と両角の姿がありました。驚いて悲鳴をあげ、腰を抜かす夏美。

「先生が描いてた部屋どこ?」

両角は夏美に聞きますが、夏美は答えられません。

「先生、立って、立って。先生が描いてた部屋どこ?」

そう言うと、圭吾を引きづるようにして部屋にあがります。そして、2階へ上がる両角と圭吾。圭吾は部屋の入口で倒れてしまいました。

圭吾の部屋を見て回り、作画するイスに座る両角。

「ここが先生の部屋か。ねえ、先生。これつけてよ、早く」

圭吾が作画するパソコンの電源を入れるように言う両角。その言い方は、まるで子供のようです。その時、圭吾の元には、追って来た夏美がいました。

「大丈夫。隙があったら、逃げろ」

圭吾は夏美にこっそり言うと、ふらふらになりながら、机に行き、パソコンの電源を入れます。

「聞こえちゃった」

そう言うと、両角は立ち上がり、夏美に近づきます。

「やめろ!」

圭吾は叫びますが、刺された体は動くことができません。両角は夏美に近づくと、太ももに包丁をつきさしました。

そして、圭吾の元に戻ってくる両角。

「先生、大げさだよ。人はねあれぐらいじゃ死なないんだよ。今までどれぐらい頑張ったと思ってるの」

両角の苦労

「殺人はね、2日間寝込むぐらい体力使うんだよ。
 先生はいいよね、こっちの苦労も知らないで好き勝手描いてさ。
 僕に感謝の一言ないんだから」

そう圭吾に話す両角。圭吾は覚悟を決めました。

「あんたを軽く見てた俺が間違ってた。まず、俺を殺せよ。
 最終回読んだんだろう?最初に俺が死ぬはずだ。
 ストーリーは守ってもらう。あんたと俺の共同作品だ」

殺意

そう言われた両角は、圭吾の提案を受け入れました。

「わかったよ、共同制作だもんね」

圭吾は椅子に座って、胸を突き出します。その胸に包丁を突き立てる両角。しかし、包丁は刺さりません。両角は、持っていた包丁を落としてしまいました。

圭吾は、落ちた包丁を手に取り、反撃に転じます。包丁で両角を刺しました。倒れ込む両角。その上にまたがって、とどめを刺そうとする圭吾。

しかし、両角は包丁を握っている腕を掴み、堪えます。耐えましたが、包丁の歯は、両角の顔をかすりました。再度、圭吾は振り上げた包丁で、今度は両角の胸を刺しました。

警備会社のマスターキーを使って入ってきた真壁。今の現状を見て声を張り上げます。

「圭吾さん、もういい、やめろ。ダメだ」

殺意を持ってとどめを刺そうとする圭吾。それを見て、真壁は銃を抜きました。

パン

打たれた圭吾。両角の上に倒れ込みました。それは、圭吾が漫画で描いたラストシーンと同じ姿でした。

救急隊も到着し、圭吾と夏美、両角の手当てをします。圭吾の服を脱がせると、中に防弾チョッキを着ていました。

裁判

裁判が開かれ、両角が出廷しました。両角は命を取り留めていました。しかし、目は虚ろで、どこを見ているかわかりません。

裁判長は名前をききます。しかし、両角は口を開きません。

さらに、生年月日を聞きます。やはり、両角は口を開きません。

そして、本籍をききます。しかし、両角は口をひらきませんでした。

入院

病院では、圭吾が入院していました。夏美が看病しています。

「まだ痛む?」

夏美にそう聞かれ「うん」と答えた圭吾でしたが、圭吾は放心状態のままでした。

そこに看護師が、体温を測りにきました。

生い立ち

裁判所では、検察官が両角の生い立ちを話し始めます。

「被告人は4人家族を幸せの一単位と考える特殊なコミュニティで産まれ、学歴、及び職務歴のいずれも不明です。
 出生後は出生届も出されず、戸籍も持っていないことから、他人から買い取った戸籍を使って、他人に成りすまして生活するようになりました」

両角は微動だにせず、虚ろな目のまま聞いていました。

辺見との関係

両角が住んでいた部屋に警察が踏み込みました。犯人の部屋には清田の写真がありました。その写真は、ガード下の飲み屋で清田と圭吾が会っていた時の写真です。

その事実を元に、検察は両角に質問します。

「清田巡査部長を殺害した犯人は逃走中ですが、あの事件はあなたが指示したということで間違いありませんか?」

両角は、素直に「はい」と答えます。

「なぜ?自分で実行しなかったんですか?」

続けて検察官が質問すると、意外な顔をして答えていました。

「僕の仕事ではないから。作品を作るにはアシスタントが必要でしょ?」

両角の部屋には辺見とやり取りしていた手紙がありました。検察官は、辺見との関係を両角に聞きます。

「最初は僕がファンだったんだけど、そのうち相手が僕のファンになった」

一家4人殺しの犯人として、辺見に興味を持った両角でしたが、最後には辺見は両角の信者のようになっていました。そして、辺見はまだ逃走中です。

視線

「ごめんね、高いのにキャンセルしちゃって。新居、そんなに広くないからさ」

夏美はそう言うと、生まれた子供2人と一緒にベビーベッドのキャンセルをしていました。

「いいのよ。それにしても、大きくなったんじゃない?」

店員にそう言われ「あっという間に大きくなるよ」と笑う夏美。その時、夏美は誰かの視線を感じました。しかし、振り返っても、それが誰だかわかりませんでした。

その時、病室をノックしたのは、真壁でした。圭吾は寝ています。圭吾のベッドの横に立つと、机の上に圭吾が描いた似顔絵が置いてありました。それは、清田の似顔絵でした。

僕は誰なんだ

「あなたは誰として裁かれていると思っていますか?」

裁判では、両角がそう聞かれていました。しかし、両角は答えられません。代わりに質問します。

「逆にお尋ねします。僕は誰なんだ?」

感想

最初にも書きましたが、両角は「絶対悪」という感じがしません。異常者ではありますが、原作に充実なところを見ると、どうしても人間臭い感じがします。

キャラにリアリティがなかった圭吾が、本物の殺人犯を見ることで、リアリティを持たせることができました。それは、圭吾の中に入ってきたように思えますが、実は圭吾が生み出したモノだったのかも知れません。

話題になった映画で、配役も豪華でした。しかし、いつもの菅田将暉や小栗旬を出しておけばいいというような印象を受けてしまいました。このメンバーだからこそのクォリティだと思うのですが、違う配役だったら、また違った面白さがあったかもしれません。

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