妊娠 した暢子。独立と重なってしまいました。
そんな暢子にフォンターナのオーナー房子から命令が下ります。独立する条件3つ、クリアすることができるのでしょうか?
そんな第20週のネタバレです。
- 主な登場人物
- 第20週のストーリー
- 妊娠
- 房子の反対
- お母ちゃんへ相談
- お母ちゃんの包容力
- 協力者達
- 探り
- ドキッ!
- 良子の責任
- 強敵・安室のおばあ
- そんなことはわかってる
- 言うだけなら誰でもできる
- 和彦と離婚して下さい
- 就職斡旋
- 重子の正論
- 名前のすれ違い
- 房子が反対する理由
- この子と一緒に頑張りたい
- 房子の信頼
- もう一度考えて欲しい
- 思いを込めて
- 暢子の活動
- 和彦の活動
- 食い逃げ犯
- 働いて返す
- 逃亡者・矢作
- スカウト
- 嫌だね
- 井戸端会議
- 安室のおばあは見た
- 智の策略
- あとはあんたの仕事
- 矢作の妻
- 諦めていない
- 企画を買ってくれた
- 矢作探し
- 歌子の珊瑚礁デビュー
- 歌子の怒り
- からかってる
- ファン第1号
- お芋
- ファン第1号のライバル
- 発見
- 房子の反省
- 離婚届
- 沖縄そば
- 長い間ご苦労様でした
- プライドを捨てても捨てられなかったもの
- 給料は決めて下さい
- 涙の千切り
- 最後に
主な登場人物
比嘉暢子 黒島結菜 やんばる生まれ自分の店をもつ
青柳和彦 宮沢氷魚 暢子の幼馴染の元新聞記者。暢子の夫
石川良子 川口春奈 暢子の姉でやんばる小学校の先生
石川博夫 山田裕貴 良子の夫で名護の小学校の先生
比嘉歌子 上白石萌歌 暢子の妹。体が弱いが歌は上手い
比嘉賢秀 竜星涼 暢子の兄。どうしようもない人
大城房子 原田美枝子 フォンターナのオーナーで暢子の親戚
平良三郎 片岡鶴太郎 鶴見の沖縄県人会会長
田良島甚内 山中崇 東洋新聞社のデスク。和彦の元上司
砂川智 前田公輝 歌子に急接近中の幼馴染
青柳重子 鈴木保奈美 和彦の母
矢作知洋 井之脇海 元フォンターナの先輩
安室のおばあ あめくみちこ 山原小中学校の給食調理員
第20週のストーリー
妊娠
むかむかすると言って、倒れてしまった暢子。和彦と一緒に病院にやってきました。
「2ヶ月だって。新しい家族が増える。うちと、和彦くんの赤ちゃんが生まれるんだよ」
診察が終わると、和彦にそう報告しました。
「暢子、すごい、すごいよ」
和彦ももろ手を挙げて大喜びです。無職なですけどね。
新しい生活、新しい出発、新しい命。暢子はちむどんどんするのでした。
房子の反対
フォンターナのオーナー房子の所に妊娠の報告にきました。出産予定は来年の年明けです。
「お店をオープンして半年ぐらいでお母さんになりますが、仕事も育児も両立して頑張ります」
そう意気込む暢子に房子は冷静な判断をします。
「延期。お店のオープンは延期しなさい。
計画は全て白紙に戻し、この店に戻って経理処理の仕事をお願いします。時期が来たら産休を取って、元気な赤ちゃんを産む」
有無を言わさない房子。私の命令は絶対と言って、立ち去ってしまいました。
お母ちゃんへ相談
沖縄のやんばるの共同売店では、優子が働いていました。そこに、智がやってきます。
「昨日帰ってきて、週末明けたら東京に戻ります。仕入れのことでどうしても用事があって。コーラーひとつ」
仕事が順調な智は、暢子にプロポーズを断られたことは、もう吹っ切れているようでした。そんな共同売店に電話がかかってきました。暢子からの妊娠報告です。出たのはおかあちゃんです。
「あ、暢子。どうしたわけ?え?え!?赤ちゃん?良かったね、おめでとう。それで相談ってなに?」
驚くとともに喜んでくれるお母ちゃん。そして、暢子の相談を聞いてくれました。
「実は、フォンターナのオーナーが、妊娠したなら独立開店許さないって。
ちょうど独立してお店を始めるのと同じ時期になるわけ。お医者さんは、今のところ十分に気を付ければ問題ないって言ってくれてるから、うちはお店を諦めたくない。両方やりたい、頑張りたいと思ってる。うちのお腹に赤ちゃんが、命が宿っていると思うと、涙が出る程嬉しい。それより大事な物なんか、何もないと思う。
だけど、この子と一緒では、お店ができないとか、お母ちゃんはどう思う?うち悪い母親じゃない?
こんな時にお店もオープンしたいとか、欲張りなのかね?」
暢子は、持っている全てを相談しました。
お母ちゃんの包容力
「違うよ。確かにまずは、元気な赤ちゃんを産むことが最優先。それさえちゃんとできれば、暢子がちむどんどんしてる姿を生まれてくる子供に見せてあげたらいいさ。
だけど、房子さんとは、もう1回話をしなさい。きちんと話を聞いて、和彦君と、和彦君のお母さんとも、よく話し合いをしなさい。お店も子育ても、一人でやったらダメ。暢子、一人の問題ではないからね。反対する人の話にも、ちゃんと耳を傾けて、ね。何があっても、うちは暢子の味方だからね」
そう言って、暢子を肯定して、優しく包んであげるのでした。電話を切ると、共同売店の責任者の善一がお母ちゃんを褒めます。
「すごいね、優子さんは。俺なら、頭ごなしに反対してるよ」
反対するのも理解できます。でも、おかあちゃんは、自分の判断基準を持っていました。
「悩んだらいつも、賢三さんならどうするかって考えるわけ。まくとぅーそーけーなんくるないさ。本人がやりたいと思った道を信じてあげるしかない」
そう言われて、善一も納得するのでした。
協力者達
電話を切った暢子は、あまゆでみんなに相談します。そこにいたのは、県人会長の三郎夫妻と、あまゆの順次夫妻、暢子と和彦です。
「さすが優子さんね。私も両立できると思ってたの。上の子がお腹にいる時は、戦争の真っ最中。この人が出征して、家業を切り盛りして、現場にもでて。
暢子ちゃんがやりたいというなら、私は仕事との両立を応援する」
三郎の妻・多江は、そう言って当時を振り返って、暢子を応援してくれました。
「そうだったな。いつの時代も、出産、子育ては大変。だからって、あぶない、万が一ばかりで、妊娠したら何もするなってのもな。俺も全力で応援するよ」
三郎も応援してくれます。そして、順次夫妻も応援してくれます。
暢子は感謝してもしきれない気持ちでいました。
探り
やんばるの暢子の実家では、歌子がレコードを聴いていました。そこに智がやってきました。
「熱出てると聞いて、これ豆腐」
智は、実家の豆腐屋の豆腐をお土産に持ってきてくれました。そして、話題は暢子の妊娠の話しです。
「ありがとう。もうほとんど下がってる。聞いた?暢ねえねえの話し」
智も共同売店で聞いています。
「でーじ驚いたさー。あの暢子がお母さんになるって」
そう聞くと、歌子は探りを入れます。
「智にいにいは考えてないの?いつ頃まで結婚したいとか」
しかし、智はプロポーズを断られて、しばらく結婚は考えていないと言っていました。
ドキッ!
そして、縁側から座敷に上がると、暢子の聞いていたレコードを聞きます。
「なにこれ?なんか落ち着くな」
そう言うと、歌子は自分の夢を話しました。
「うちもいつかこういうのを出せたらいいな」
そんな野望があるとは知らなかった智は驚きます。
「レコード?歌子はプロのレコード歌手を目指してるわけ?
頑張れ。俺は歌子の歌が大好きさ。歌子なら、たぶんプロのレコード歌手になれる」
そう言われ、ドキドキしてしまう歌子。そのドキドキを隠すように智が持っているレコードを奪おうとします。そして、バランスを崩した智は倒れ、その上に歌子が覆いかぶさるようになってしまいました。
ドキッとする二人。恥ずかしくなった智は、逃げるように帰っていきました。
良子の責任
良子は、給食主任になって、どう残飯率が下がるか考えていました。そして、地元の野菜の美味しさを再確認した良子は、給食に使いたいと教頭先生に談判するのでした。
「学校独自の献立?そう言う話は・・・」
ぜんぜん前向きに聞いてくれない教頭先生。
「教頭先生聞いて下さい。この辺にはたくさんの農家があって、新鮮で美味しい野菜で溢れています。週に1回、調理員さんに協力してもらって、地元の材料をふんだんに使った給食を作る。そしたらきっと、子供たちの野菜嫌いも減って、残飯率も下がると思うんです」
しかし、教頭はぜんぜん前向きではありません。
「だけど、名護の栄養士さんが決めた献立を勝手に」
そこまで言うと、良子はかぶせるように言います。
「栄養士さんにはもう相談してます。大賛成。現場のみなさんが良ければ、ぜひ協力したいと言ってくれています」
それを聞いた教頭は、態度を180度変えます。
「あ、そう。了解得ているわけね。なら、頑張ってみたらいいさ。
だけど、何か問題が起きたら、良子先生の責任だよ」
そこは責任取ってくれよ、教頭先生。しかし、良子は自分の提案が受け入れられたこもあって、戸惑いながらも了解するのでした。
強敵・安室のおばあ
旧職員たちが休憩しているところに良子は行って、話しをします。もちろん、強敵・安室のおばあがいます。
「協力はできないね。この辺りの出荷とかしたことない人が多い。子供達みんなの分を安定して収めてもらうのは無理やさ」
確かに安定供給には、問題があるかもしれません。
「昔から収めてくれている業者さんを裏切ることになるしね」
他の給食員のおばあも、安室のおばあに同調します。
「足りない分を業者さんにお願いするというのは、どうですか?」
安易な良子の提案に、安室のおばあは怒りだします。
「仕入れ先がいくつも増えたら、検品も大変。バラバラに納品されたら、手間も何倍にもなるさ」
しかし、良子は諦めません。自分も手伝うと言い出します。
「先生の担任の仕事はどうするわけ?」
良子は「ちゃんと両立させる」と言いますが、おばあ達には受け入れてもらえませんでした。
そんなことはわかってる
安室のおばあは、かなり手厳しく良子に言うのでした。
「あんたは料理好きでも得意でもない。今まで通りでやってれば、何年かで給食主任は交代。それでいいさ」
それでも、良子は諦めません。
「うちは確かに料理は得意ではないけど、小さい頃からお母ちゃんが作ってくれた野菜を食べてきました。この村の野菜は美味しい、でーじ美味しい。それを子供達に教えたいんです」
良子が言う正論は、おばあ達にとっては癇に障るのでした。
「そんなことはうち達はよく知ってる。子供達に美味しいもの食べさせたいよ、残して欲しくないさ。
だけど、献立通りに作れってあんたたちに言われてよ、できる限り何年も何年も頑張ってるんだよ。急に出てきて偉そうに言われてもや」
張り切っている良子の気持ちもわかりますが、おばにはおばあの理論があるのです。
言うだけなら誰でもできる
そう言われて、良子は素直に謝ります。
「すみませんでした。だけど、みなさんも知ってる通り、うちの家族はにいにいも暢子も、やんばるを出て東京に行きました。けどうちは、ずっとここで生きてきました。結婚をして子供もできて、昔と違うことを思うようになったんです。勉強するだけだけじゃなくって、やんばるの子供達にやんばるのいい所を知ってもらいたいんです」
正論を言われ、安室のおばあは言い返します。
「言うだけなら誰でもできるよ。だいたい、仕入れ先は誰が探す訳?」
仕入れ先を探すのも良子がやると言い、おばあは無理だといいます。そんな応酬が繰り広げられましたが、結局二人は妥協点を見つけられませんでした。
和彦と離婚して下さい
和彦の実家に妊娠の報告にきた、暢子と和彦。重子の攻略は難しいので、和彦は話は自分がすると暢子に伝えました。
居間に通された暢子と和彦は、緊張した面持ちで座っています。それもそのはず、重子に和彦が新聞社を辞めたことを悟られてはいけません。重子には「和彦の仕事の邪魔をしないで」と言われていました。
お茶を出してくれたお手伝いの波子に「お辞めになったそうですね」と聞かれてドキっとする二人。しかし、波子はフォンターナのことを言っていました。
「あ、そっち。そっちは、はい、辞めました」
明らかに動揺する暢子。「あっち」は言ってはいけません。しかし、重子は地獄耳でした。
「東洋新聞社をクビ同然に辞めてしまったそうね」
そう切り出した重子。そして、暢子に告げるのでした。
「暢子さん、和彦と離婚して下さい」
就職斡旋
和彦が退職するきっかけになった週刊誌を重子も見ていました。
「悪徳商法の事務所で乱闘事件を起こしたんですって?新聞社に電話して事情を聞きました」
地獄耳というか、すごい臭覚を持っている重子でした。
「仕事を辞めたことを黙っていたことは謝る。だけど、辞めるのは僕が自分で決めたこと。むしろ、暢子に迷惑をかけた」
そう言って、和彦は暢子をかばいます。
「その通り、悪いのは和彦。暢子さんの独立を控えた大事な時に、二人の経済基盤を揺るがして、責任感にかけています。暢子さんの夫として相応しくない。だから私は、暢子さんのために別れなさいと言ってるの」
予想外の展開です。てっきり暢子を責めると思ったら、重子は暢子を心配してくれていたのでした。
「離婚とかしません。うちたちは大丈夫です」
暢子は別れる気はないと告げますが、重子は心配でたまらないのです。
「なにが大丈夫なの。暢子さんのお店が軌道に乗るまで、これから二人でどうやって生活していくの?
どうしても離婚が嫌なら、和彦、おじ様の銀行に勤めなさい。私は大学をでた・・・」
しかし、重子に言われても、和彦は銀行員になる気はありません。そして、いとこの代理店や、大叔父の商事会社はと重子は言いますが、和彦は就職活動をするつもりはありませんでした。
重子の正論
和彦は、就職せずどうしたいのか、重子に話して聞かせました。
「フリーランスの記者になる。いろんな雑誌や出版社に企画を売り込む。地方文化の企画。自由に動けるし、これまでよりもっと時間を取って、深い内容の仕事ができる。いずれは、父さんの遺志を受け継いで、僕なりに沖縄のことを1冊の本にまとめてみたい」
しかし、重子は認めません。
「フリーなんとかの記者って、言ってみれば売れない漫画家や小説家みたいな不安定な仕事でしょ?」
フリーの記者に安定は似合いません。
「確かに、収入は減るだろうし、生活は苦しくなるかもしれない。でも、やりがいと喜びが」
和彦は一生懸命に話しますが、重子の正論の方が一枚上手でした。
「あなた、いくつになったの?やりがいや喜びで、夫婦二人が生活していけるとでも?」
重子の言うことの方が正しく聞こえます。
名前のすれ違い
しかし、2人ではありません。3人になるのです。
「暢子は妊娠してる。本当は今日、そのことを報告に」
このタイミングで妊娠報告は、タイミング悪すぎです。
「それならなおのこと、許せません。夫が身重の妻を放りだして、好き勝手に日本中飛び回るなんて」
和彦は、今日の説得は諦めました。暢子に帰ろうと言うと、席を立ってしまいます。
「待って。うちは、和彦君のやりたい仕事を応援したいです。うちもお店を開きますし、お金のことは大丈夫かと」
暢子はお母ちゃんの言うとおりに、反対する重子にもちゃんと話をしました。そして出て行こうとする暢子と和彦に重子は問いかけます。
「待って!名前は、もう決めたの?なんて名前?」
そう聞くと、暢子は答えます。
「名前は、ちむどんどん」
重子は子供の名前を聞いたのですが、暢子と和彦は店の名前を答えました。
「由緒ある青山家の子供の名前がちむどんどんだなんて・・・」
そうショックを受けた重子ですが、孫ができる事は嬉しかったようです。
房子が反対する理由
暢子は反対派の房子に話しをしにフォンターナにきました。
「つまり、あなたの考えは変わらないのね?
あなたまだ若い。この先いくらでも、自分の店を持つ機会はある。今は最善とは思えない」
房子はそう言って、暢子を説得しようとします。しかし、暢子は譲りません。
「今諦めれば、やんばるの姉が出してくれたお金も無駄になるんです。次に開店資金が貯まるまで、何年かかるかわかりません。どうしてそこまで反対するんですか?」
そう聞くと、房子は反対する理由を話してくれました。
「妹のような思いをさせたくない。
戦時中、私は妹と一緒に暮らしていた。妹は身重の体で、出征した夫の帰りを待っていた。ただで居候させてもらうのは悪いと言って、商売を手伝ってくれた」
しかし、毎日目が回るほど忙しさで、ついつい妹・智子に甘えてしまった房子。そしてある日、お腹を抱えて倒れる智子。流産してしまったのでした。
「直接の原因はわからない。仕事を手伝っていてくれたらかどうかも、本当はわからない。だけど、どうしても考えてしまうの。私がもう少し気にかけていればって」
この子と一緒に頑張りたい
房子がツライ過去を話してくれたことを感謝する暢子。しかし、それを聞いても、暢子の気持ちは変わりませんでした。
「話してくれてありがとうございます。今まで以上に気を付けます。自分の命と、新しい命とどちらも大切にします。でも、うちは諦めたくないんです。長い間のいろんな人の支えがあって、うちは今お店を始めようとしています。そんな時に、お腹にこの子がいてくれることが、最高に心強いことだと思っています。うちは、お店をやりたいんです。この子と一緒に頑張りたいんです」
暢子の覚悟を聞いて、房子は説得するのを諦めました。
房子の信頼
説得を諦めて、房子は条件を出しました。
「条件が3つある。ひとつ、店の味を任せられる料理人を雇うこと。体調が悪い時、疲れた時、それから産前産後にあなたは、必ず店を休まなければならい。そんな時、100%信頼できる料理人がいなければ、あなたのその思いも、絵に描いた餅。
もうひとつは、店の看板メニューを決める。お客様を引き付ける魅力的な看板メニューがあれば、仕入れも調理も効率的にできる。結果、体の負担が減る。
もうひとつは、心身ともに健やかでいること。どんなに忙しくても、きちんとお医者様に通う。重い物を持ったり、立ちっぱなしになったりしないようにする。階段は1段ずつ上り下り、体を冷やさない。良く寝て良く食べて、体がしんどいと思った時には、すぐに仕事の手を止める。この3つを守れるなら、私は反対しない」
暢子のことを考えてくれるオーナーの優しさに涙する暢子。それを見て、房子は暢子の手に触れます。
「貴方のことを信頼する。やるからには成功させなさい」
房子の気持ちに答えたいと思う暢子でした。
もう一度考えて欲しい
重子が毎朝食事をする喫茶店サーカスに和彦は呼ばれていました。
上目遣いで和彦を見る重子。
「どうしても、どうしても、もう一度考えて欲しい。ちむどんどんのこと」
重子はそう切り出しました。
「言ったよね。僕は素晴らしい名前だと思っている。店の名前はちむどんどん。それは譲れない」
和彦は言い切りました。
「そんな・・・・え?お店の名前?」
それを聞いて驚くと共に安心する重子。
「沖縄の言葉で、ちむは心。心がどんどん、わくわくする」
気づかず和彦は名前の良さを説明していますが、重子はもう気にしていません。
「いい、いい名前ね。素敵。それで、子供の名前は?」
和彦が「それはまだ」と言うと、重子は安心しました。
思いを込めて
重子は、紙を取り出しました。
「男子20名、女子20名分考えたわ。生まれてくる子供の名前。あくまで候補として」
和彦も逆に安心しました。
「とても大事なことでしょう。名前というのは、親が子にあげる一番最初の贈り物。父さんだってあなたの名前を決める時は、何日も図書館に通って、何十冊も本を借りて、悩んで悩んで決めたのよ。
もちろん、私も一緒に。いくつも候補を出し合って、最終的に平和への思いを込めて、なごむ、やわらぐという文字をあてた」
そう聞いて、和彦は嬉しい気持ちになるのでした。
暢子の活動
そして暢子は、ちむどんどん開店に向け、信頼できる料理人を探していました。しかし、面接は難航を極めていました。
「前職は横浜のホテルで厨房を?」
暢子がそう聞くと、面接に来た人は滑舌が悪すぎて何を言っているのかわかりません。
「うちなんちゅは俺一人、でーじ苦労したんどー」
そして、どんな料理を担当していたか聞きます。
「そこは皿洗いで1ヶ月、だけどよ巣鴨の寿司屋には3か月いたからよ」
さらに他にも、面接に来た人がいました。
「沖縄料理は食べたことありますか?」
しかし、どう見ても食べたことことのなさそうな老人でした。
「板前人生50年、魚を見る目には自信がある」
なかなか厳しい結果でした。
和彦の活動
同じように和彦は、フリーの記者として、あちこちに自分の企画を売り込む日々が続いていました。
「ダメダメ、そんな企画。もっとナウい企画を」
そんな風に言われていました。
さらに田良島も同席しての売り込みも難航してしました。
「今おっしゃった原稿料は取材の経費込ということですか?」
そう聞くと、「全て込々、不満?」と聞かれていました。
「青柳は学芸部時代も骨太の記事を書く記者で、実力は保証します」
田良島も売り込みに協力してくれますが、全く受け入れられませんでした。
「いくら新聞で実績があっても、うちは週刊誌だからね」
食い逃げ犯
暢子はあまゆでみんなに相談していました。
「しかし、そいつは困ったな。俺の方でも知り合い当たってみるよ。沖縄料理の経験があるやつ。うちなんちゅがいいんだよな?」
三郎にそう聞かれると、暢子は言います。
「沖縄出身でなくてもいいんです。沖縄料理の経験がなくても構いません。料理人として幅広い知識と腕があって、料理にまっすぐな人であれば」
それを聞いた順次がとんでもないことを言いだします。
「よっしゃー灯台デモクラシー!フォンターナの二ツ橋さん、スカウトしよう」
妻に「できるわけないでしょ」とたしなめられていました。できませんし、暢子はしません。
「他のお店で働いている人を強引に引き抜いたりしたくないです」
そんな時、外から声が聞こえてきました。
「食い逃げだー捕まえろ!」
捕まっていたのは、矢作でした。
働いて返す
暢子が矢作に声をかけたのを聞いた三郎は「知り合いか?」と聞きます。
「お店の先輩で・・・」
そう説明すると、三郎は事情を聞きます。
「こいつ、そこの食堂で二人分飯食べて、金がないから働いて返すっていいやがて」
説明している男の手が緩んだのを見て、逃げようとする矢作。そして、懐に入れていた包丁を落としてしまいます。
「なんだこれ。こいつ、刃物までもってやがる」
しかし、知ってる人が見れば、矢作が大切にしている包丁だとわかります。
「それは、返してくれ。違う、返してくれ」
そう言って暴れる矢作。殴られてしまいます。それを見て、止めに入る暢子。もみくちゃになって、矢作に突き飛ばされてしまいます。
その時、暢子の後ろにいたのは和彦でした。身重の体で無理しちゃダメです。
そして、倒れて押さえつけられる矢作でした。
逃亡者・矢作
三郎のとりなしで、とりあえずあまゆで話を聞くことになりました。包丁は矢作に返されます。
「借金取りに追われて、女房とも別れて。日雇いの仕事を転々としているうちにこの辺りに来て、だけど、不景気で何日も仕事にあぶれて、腹が減って。腹が減って」
矢作は、状況を説明します。しかし、困っているのは矢作だけではありません。
「だからって、無銭飲食していいのか?不景気なのはお前さんだけか?」
優しく三郎に諭され、意気消沈の矢作。
「笑うだろう?調子乗って独立して、見栄張って分不相応な店構えて、半年ももたねえでこのザマよ」
スカウト
そんな自虐的な矢作に暢子は声をかけました。
「矢作さん、もしよかったらうちの沖縄料理の店、手伝ってもらえませんか?」
和彦はそう声をかけた暢子に驚きました。
「沖縄料理の店、お前の?」
独立してお店を出すことにしたと説明する暢子。
「イタリア料理の店じゃなのかよ」
みんなそう言いますが、暢子は沖縄料理の店を出すと言います。
「ただ、妊娠していることがわかって。
オーナーから、お店と出産を両立したいなら、お店を任せられる信頼できる料理人を雇えと言われて」
そう矢作に説明します。しかし、矢作のスカウトには、みんな反対です。
「フォンターナの権利書盗んだの、この人だよね?」
「その上、今日は食い逃げだよ」
しかし、暢子には矢作の腕が必要でした。
嫌だね
「矢作さんはうちの求めている料理人の条件を全部満たしています」
そう言われても、矢作は受け入れることができません。
「冗談じゃねえ。なんでお前の下で、沖縄料理なんて知らねえし」
しかし、暢子は諦めません。
「沖縄料理は、うちが教えます」
そう言われても矢作はうんとは言いません。
「嫌だね。第一、俺は料理人じゃねえ。料理なんてこりごりだよ」
そう言うと矢作は出て行ってしまいます。後を追う暢子と和彦。
「さっきは、突き飛ばしたりして、すみませんでした。お腹の子、大事にしろよ」
そう言うと、矢作は去っていきました。
井戸端会議
石川の家に帰宅した良子。娘の晴海は、夫・博夫が、今寝かしつけた所です。博夫は良子が給食で残業していることを心配しています。
「電話で栄養士さんと献立の打合せをしてて、だけど安室のおばあが、確かに仕入れとかどこからどう手を付けていいのか」
良子はやんばるのお母ちゃんの所へ行って、相談することにしました。
「この村の野菜を給食に?とってもいい考えさ」
お母ちゃんは大賛成でした。
「でも、なかなか周りの理解がえられなくて」
そう話している時に、近所のおばあたちがやってきました。お母ちゃんは、ちょっと休んでいってと言って、お茶を振るまいました。
「村の野菜を給食にって話していたわけ」
そうおばあたち相談するお母ちゃん。おばあたちは、ゴーヤだったらあそこ、あのおじいは畑を辞めたと、井戸端会議をしだします。
「どうしたらいいかね?」
そう言うと、おばあたちは近所の人に話をしてくれると言っていました。
「こうやって話してたら、井戸端会議で話しが大きくなって、いろんな知恵が集まるから」
良子はお母ちゃんの知恵に感謝するのでした。
安室のおばあは見た
良子は共同売店に行きました。
「あ、善一さん、昨日お願いした農家の件、どうでした?」
しかし、良くない返事でした。
「ごめん、言いに行こうと思ってた。断られてしまった。どこも年寄りが多くて、新しいことやるのを嫌がってしまって」
学校の給食用となると、責任が大きくなります。それもあって、二の足を踏むおじいやおばあがいるようです。しかし、良子は諦めません。
「農家を紹介してもらえませんか?私から直接お願いしてみます。
本土復帰して、だんだんマイカーを持つ家が増えて、この辺でも町のスーパーで買う家が増えてきました。スーパーは便利だけど、子供達が地元の野菜を食べることが少なくなったんです。だから、給食を通して、このやんばるの、故郷の味を知ってもらいたいんです」
その話を、安室のおばあが聞いていました。そして、見つかる前に逃げるように帰っていきました。
安室のおばあは、良子の本気を見たのでした。
智の策略
智の得意先に珊瑚礁という名の居酒屋がありました。
「比嘉歌子って俺の幼馴染の子ででーじ歌がうまいレコード歌手の卵がいるんですけど、このお店で歌わせてもらえませんか?」
智は歌子の夢を聞いて、少しでも力になりたいと謳える場所を探していました。
「レコード歌手の卵?そりゃー歌手の卵が歌ってくれたら、お客も喜ぶと思うけど。その女の子、美らカーキ?美人?」
しかし、美らカーキでも、ギャラを払う程の余裕はありません。
「お金はいりません。うちの野菜もサービスしますから」
智はそう言うと、約束を取り付けるのでした。そして、比嘉家に向かう智。今度は歌子を説得します。
「なんでうちに?」
嬉しい気持ちより、なぜの方が先行する歌子。
「知り合いが、歌、三線できる人を探していて、ギャラも前払いで払うってもらってきたさ」
しかし、歌子は「うちにはむり」と言って断ります。
「そういわず頼む。大事な取引先で断り切れない訳。俺の顔を立てると思って、がんばれ」
そう言われ、しぶしぶ了承する歌子でしたが、本心では嬉しい気持ちがありました。
あとはあんたの仕事
良子はまた給食の件で、一人残業していました。
「ありがとうございます。栄養士さんにそう言ってもらえると助かります。仕入れ先が見つかったらすぐ連絡しますので、引き続き相談にのってください。私はあきらめません。失礼します」
そこに安室のおばあがやってきました。そして、無言で紙を渡します。
「うちの親戚と友達。この人たちは給食用に野菜を提供してもいいって言ってくれてる」
厳しいことも言いましたが、良子の本気の姿を見て、協力してくれようとしてくれました。
「世間話のついでにちょっと話しただけさ」
しかし、良子自身が交渉して、そんなに簡単に引き受けてくれないと、肌身に感じていました。
「だけど、そんな簡単に受けてくれるはずは・・・」
そう言うと、安室のおばあは逆ギレです。
「いちいちうるさいよ!大事な給食をあんただけにまかせられんからね。
あとはあんたの仕事、その人たちの気が変わらないうちに、連絡しなさい」
良子は「すぐに連絡する」と約束します。
「あんたの為じゃない、子供達のためやさ」
そう言うと去っていく安室のおばあ。その後ろ姿に改めて良子は、頭を下げるのでした。
矢作の妻
フォンターナに暢子がやってくると、出て行こうとする女性がいました。
暢子は、房子と二ツ橋に矢作の件を報告しにきたのでした。
「そうですが、矢作さんがそこまで。悪い予感はしてたんですが、食い逃げするほど追い詰められていたとは」
食い逃げ事件を報告すると、二ツ橋はそう感想を言うのでした。
「もし、オーナーがいいと言っていただけるなら、矢作さんにお店を手伝ってもらいたいんです。
矢作さんならお店を任せられる料理人だと思うから」
暢子はそうお願いしました。しかし、矢作にいい印象はまるでありません。
「え?矢作さんを?」
「いや、技術的にそうでも、彼は・・・」
二人の反応は理解できます。
「もちろん、わかっています。このお店にも迷惑をかけたし、独立開業に失敗して、奥さんとも別れて・・・」
そう言うと、入れ違いで帰って行った女性が、矢作の妻の佳代だと教えてくれました。
「あきさみよー、そうだったんですか?」
そして、二ツ橋は矢作の過去を教えてくれました。
「上京して最初で働いたお店で、同じレストランのコックとウェイトレスとして出会ったそうです。矢作さんの一目ぼれで、やっとプロポーズを受け入れてもらったと話してくれていたこともありました」
しかし、別れた妻が何でフォンターナにきたのかはわかりませんでした。
諦めていない
暢子は家に帰ると、和彦にフォンターナでのことを話しました。
「そっか、矢作さんの別れた奥さんがフォンターナに。で、暢子はどうしたいの?」
和彦は暢子の気持ちを聞きました。
「うちは、やっぱり矢作さんにかけてみたい。矢作さんとしか、”ちむどんどん”はやれないと思えてきた」
暢子がそう言うと、和彦は全力で応援すると言ってくれました。しかし、矢作が引き受けてくれるかどうかです。
「矢作さんはまだ料理人としての自分を諦めていないと思う」
暢子は、矢作の気持ちには確信を持っていました。
「だけど、もう料理はこりごりだって」
しかし、矢作はそういう人物であるということは、暢子はよく知っていました。
企画を買ってくれた
業者が沖縄料理店”ちむどんどん”に荷物を運び入れています。
「みなさん、お茶ここに置いておきますね」
暢子は、業者の人達にお茶を振る舞っていました。そこに鶴見信用の坂田が、遅刻してやってきました。暢子から渡されたお茶を一気に飲み干します。
「いやあ、だんだんお店っぽくなりましたね」
しかし、綺麗なお店だと思っていましたが、実際にはあちこち修繕が必要でした。それで、思ったより費用もかかっています。
「提案した通りだったでしょ?融資は多めに申し込んだ方がいいって。
我々みたいな小さな金融機関は、事業者のみなさんとは、運命共同体ですから。あ、ダメだ。お手洗いを」
せわしない坂田。
そこに和彦が帰ってきました。
「暢子、仕事決まった。小さい枠だけど、月刊誌が企画を買ってくれることになった」
嬉しい知らせです。そして、和彦は暢子の進捗を聞きます。しかし、暢子の方はまだ矢作の行方を掴めていません。
「矢作さん、どこで何をしてるのかねー」
矢作探し
暢子が矢作を使いたいと言ってから、みんな協力して矢作の行方を捜していました。
「ええ、矢作知洋です。以前うちで働いていた。もし噂を聞いたりしたら、ご連絡していただけますか?」
しかし、まだ手がかりもつかめていません。そこに二ツ橋が入ってきました。
「矢作さんですが、彼の昔の勤め先何軒か尋ねましたが、連絡はないと」
二ツ橋の方も手掛かりが見つかりませんでした。しかたなく、また探すことにしました。
その頃、矢作は、就職活動中でした。
しかし、雇ってくれるところはなかったようです。夕方、洋食屋「キッチンたけし」の前で途方にくれている矢作。包丁を見ながら、昔のことを思い出す矢作。やっぱり、料理人になることを諦めていないようです。
歌子の珊瑚礁デビュー
珊瑚礁では、智が段取りした歌子の舞台が整いました。
「えーみなさん、いよいよやんばるの歌姫、比嘉花子ちゃん、拍手!」
歌子は名前を間違えられても、訂正する余裕などありません。ガチガチに緊張しています。そして、舞台に立つと、挨拶します。
「ご来店ありがとうございます。聞いて下さい」
そう言って、三線の調整をしますが、なかなか上手くできません。見かねた智が、「もう大丈夫だから」と声をかけ、やっと歌に入ることにしました。
緊張の割には、上手に三線が弾けています。しかし、歌いだすと、恥ずかしいのか声が小さすぎて、聞こえません。
外を飛ぶ飛行機の音にかき消されてしまいます。
「ねえねえ、こっち来て一緒に飲もう」
そう客に言われ、客同士がケンカしそうになります。歌子は「すみません」と言うと、部隊を降りてしまいました。
「話しが違うに。あんたもプロならちゃんとやれ!レコード歌手の卵だろ!」
店主にそう言われてしまいます。智がとりなします。
「すみません。帰ります。お金はちゃんと返します」
そういうと、店主ははてなマークが頭に浮かびます。それもそのはず、お金は歌子を謳わせるために智が用意したものでした。
「うちはこの人から、ただでもいいから歌わせて欲しいって頼まれて」
店主がそう言うと、全てを察する歌子。珊瑚礁から逃げ出してしまいました。
歌子の怒り
珊瑚礁から帰ってくると、家の縁側で座ってる歌子。そこに智がやってきます。それを見て、怒って部屋に入ろうとします。
「歌子、待って」
そう言われれ立ち止まると、歌子は怒りをぶちまけます。
「なんで騙したの?うちに同情したから?ならなんで?」
そこにお母ちゃんが帰ってきました。しかし、二人が何やら話しているので、岩の陰に隠れて聞くことになりました。
「なんで?うちをからかった訳?レコードなんか出せるはずないのにバカなこと言ってるって心の中で笑ってた」
それは明確に否定する智。
「じゃあなんで、わざわざあんなお店に」
歌子は思い余って、お店のことを悪く言ってしまいました。
「あんなお店ってなにか?俺の大事なお得意さんやし」
素直に反省する歌子。智に謝りました。
からかってる
「俺はただ、歌子を応援したかっただけさ」
しかし、それで歌子は納得しません。
「暢ねえねえ、の妹だから?智にいにいは、まだ暢ねえねえが好きで、うちは暢ねえねえの妹だから?」
終わった話のはずですが、歌子はそう思っていました。
「暢子は関係ない。俺、暢子のことすっぱり諦めた。暢子と和彦の結婚を心からお祝いすることができた。あの披露宴に出席できたのは、歌子のおかげだったし」
これも智は明確に否定しました。しかし、それを聞いて歌子は「そのお礼のつもり?」と聞きます。
「違う。それだけじゃない。
歌子の歌が好きだから。レコード歌手を諦めないなら、俺はずっと応援したい訳」
歌子は「からかってる」と言って、智の言うことを受け止めることができませんでした。
ファン第1号
智は言葉を尽くして、説明します。
「からかってない。なんで素直に受け取れないわけ?俺は、歌子のファン第1号になる。嘘ついて店に引っ張り出したのはわるかった。謝る。だけど、俺は本気で、歌子を応援したい。その気持ちは嘘じゃない」
智の真剣なまなざしに納得する歌子。
「わかった。カッとなってごめんなさい。それに、ちゃんと歌えなくってごめんなさい。本当に歌手になりたいなら、ちゃんと歌えないといけないよね」
素直に謝る歌子。智もフォローを忘れません。
「初めてにしては、ちょっとやりにくい店だった。俺もごめん」
そして、お互いが「ごめん」と繰り返し謝り、仲直りすることができました。
お芋
仲直りした歌子は、智にご飯を食べていくように勧めます。
「ご飯、食べていけば?お母ちゃん戻るから、うちがなにか・・・」
立ち上がるとよろけてしまう歌子。それを支える智。抱き合う二人。見つめあいます。
お母ちゃんは岩の陰からちら見しています。
そこで、家の前を通った「まもるちゃん」に見られてしまいました。まもるちゃんは、驚きのあまり、持っていた薪を落としてしまいます。そして、岩の陰に隠れているおかあちゃんとまもるちゃんの目が合います。お母ちゃんはジェスチャーで、行くように指示します。それを見た守ちゃんは、薪を拾うとだまって歩いて行きました。
まもるちゃんが去ると、歌子と智は冷静になります。そして、気まずくなって智は帰っていきました。
お母ちゃんは、帰って行く智にも築かれませんでした。しかし、気を緩めた時、手に持っていたザルの中から芋が落ちてしまいました。それに気づく歌子。
「お母ちゃん?」
そう声をかけると、お母ちゃんはすっとぼけます。
「あ、そこにいたの?ただいま」
見られたと思った歌子。お母ちゃんを問い詰めます。
「いつからいたの?」
しかし、お母ちゃんは認めません。
「いつからって、今さ。たった今。ご飯にしようね。お芋お芋」
そう言ってはぐらかすのでした。
ファン第1号のライバル
食事をしながら、歌子は問い詰めます。
「どこから聞いてた訳?うちと智にいにいの話し、どこから?」
しかし、お母ちゃんは頑として認めません。
「うちは何も聞いていないよ」
しかたなく、歌子は自分から話し始めました。
「今日ね、智にいにいの紹介で名護のお店に歌を歌いに行ってきたわけ。でも、うちまた弱気の虫に負けて逃げ出してしまった」
そう告白する歌子を優しく包み込むお母ちゃん。
「何もかも最初から上手く行く人はいないさ」
そして、歌子は打ち明けます。
「お母ちゃん、うち、いつかレコードを出してみたい」
歌子のやりたいことが見つかって、お母ちゃんも嬉しくなります。
「もし、歌子がレコード歌手になってレコードを出せたら、うちが一番に買いにいきたい。そしたら、うちが智より先にファン第1号になる」
言ってしまいました。せっかく隠していたのに、お母ちゃんの口が滑った瞬間です。
「やっぱり、全部聞いたでしょ?」
そう聞かれ、認めずにお茶を淹れに行くお母ちゃんでした。
発見
暢子は矢作を見つけました。三郎が調べてくれたようです。
「矢作さん」
暢子は矢作に声をかけました。矢作は暢子達の姿を見て、逃げ出そうとします。
「うちと一緒に来てもらえませんか?」
房子の反省
暢子は、矢作を連れてフォンターナにやってきました。
「謝る気はありませんから。警察に突き出すなり好きにして下さい。そのつもりで呼んだんですよね?」
矢作は開き直ると、房子にそう言うのでした。房子は懐から封筒を取り出すと、矢作に渡します。
「なんですか?」
矢作の問いかけに「あなたの退職金」と言う房子。
「独立したいと思った時点で、ちゃんと相談して欲しかった。私も反省している。オーナーとしての人徳に欠けていたって。そのこともちゃんと謝りたかった。
私自身、何度も店を出して、何度も失敗してきた。店を守ることしか考えられなくなって、お金のことで良心に反することをしたこともある、自暴自棄になったこともある。だけど、最後の一線を越えずに踏ん張れたのは、亡くなった両親や妹、大切な人のことを考えたから。あなたも、大切な人のためならいくらでもやり直せる」
離婚届
房子が矢作の妻のことを言ってるのだとわかった矢作。
「女房とのことは終わったことです」
しかし、妻の方はそうは思っていないようです。房子は暢子に目配せすると、暢子は厨房から佳代を連れてきました。
「なんで?」
そう聞く矢作に佳代は言うのでした。
「やり直そう。もう一度、頑張って、私のために。あなた自身のために。勝手にこんなものおいていなくならないで。あなたがどれだけ料理が好きか、私が一番わかってる。もう一度料理人になって下さい」
そう言って出したのは離婚届でした。しかし、矢作は書いていましたが、佳代は書かずに持っていました。
沖縄そば
そう言われ、矢作は自暴自棄でいられなくなりました。そして、房子に向かって土下座します。
「オーナーすみませんでした」
その矢作を見て、房子は矢作に頭を上げさせます。
「あなたまだ若い、いくらでもやり直せる」
その時、二ツ橋が厨房から料理を持って出てきました。
「お久しぶりです。まずは食べましょう。暢子さんの沖縄そばです。私もお手伝いしました」
無言で食べる矢作。お腹が減っていたようです。
「まあまあだな。鰹と豚の出汁は悪くないが、麺はもう少し細い方がいい。俺ならあと1ミリ、いや2ミリは攻める。昔、初めて食べたときよか、少しはましかな。
覚えてくれていたんですね、あの時の味。あの時、一番最初に美味しいと行ってくれたのは矢作さんでした。正確には「うんめー」でしたが、確かに矢作が言ったのでした。それは、お弁当を食べた波子と一緒の反応でした。
長い間ご苦労様でした
「矢作さん、うちがお店をやるには、お店の味を任せられる料理人が必要です。矢作さんは料理が好きで好きで、まっすくぐに向き合える人です。うちには矢作さんの力が必要なんです。一緒に働いて下さい」
暢子がそう訴えかけますが、矢作はうんとは言いません。その時、二ツ橋が矢作に問いかけます。
「矢作さん、包丁、見せて下さい。いつも持ち歩いていますよね??」
そして、懐から包丁を出す矢作。綺麗に小さな風呂敷で包んでいました。
「軽蔑してますよね、シェフも」
矢作は二ツ橋にそう聞きます。
「あなたが悪い人間でないことは、オーナーをはじめみんなが知っています。でも、あなたは、料理人として道を誤り、信頼を失ってしまった。その重たい荷物は、あなたが料理人を続けていく限り、ずっと背負い続けなければなりません。その覚悟を持てますか?その覚悟を持てるなら、いつかきっと失った信頼を取り戻せるはずです」
矢作は立ち上がりました。
「オーナー、シェフ、このお礼はいずれ、必ず」
矢作は泣いていました。立ち去ろうとする矢作に房子は声をかけます。
「待って。長い間、ご苦労さまでした」
それを聞くと、房子たちにも、フォンターナにも頭を下げて、矢作は立ち去りました。
プライドを捨てても捨てられなかったもの
矢作が去ると、暢子と房子、二ツ橋で話しをします。
「暢子さんの言う通り、きちんと研いで手入れされていました。料理人を諦めていなかった証拠です」
二ツ橋は見せてもらった包丁を見て、確信していました。
「三郎さんが言っていました。矢作さんは、鶴見にきてからも何軒も何軒も飲食店を回ったって。だけど、身元を保証してくれる人もいなかったから、どこも雇ってくれなかったようです」
やはり三郎の探してくれて、矢作を見つけることができたのでした。
「何もかも無くして、プライドを捨てても、包丁だけは捨てられなかったのね」
房子はそう言うのでした。
給料は決めて下さい
店で和彦にご飯を作る暢子。和彦はカウンターに座っています。そこに矢作がやってきました。
「今から言う条件を飲んでくれなきゃ、俺は働かねえ」
相変わらず上から目線の矢作。しかし、暢子は出された条件を全部飲むつもりです。
「休みは週1日、残業はしない。それから、給料は」
そこまで矢作が言うと、暢子は言います。
「給料は矢作さんが決めて下さい」
しかし、矢作はそんなことに動揺しません。
「いや、この辺りの相場でいい。ただし、給料が遅れたり、きっちり全額もらえないなんてことがあったら、即辞める。それも大事な条件のひとつ」
暢子はもちろんですと返事をしました。矢作が働いてくれることが決まりました。
涙の千切り
矢作はいつから働けばいいかと暢子に聞きます。
「今、パパイヤイリチーをいろいろ作っていて、ちょっと手伝ってもらえませんか?」
それに驚く矢作。
「パパイヤ、イリチー?なんだそれ。え?今から?」
しかし、暢子は、驚く矢作を気にせず説明します。
「青パパイヤは沖縄では大事な野菜。妊娠中は食べない方がいいとも言うんですけど。イリチーは炒め物という意味。歯ごたえを良くしたいので、これを全部4ミリぐらいに千切りして下さい。手がかぶれる人もいるので、良かったら軍手使って下さいね」
そう言われて、素直に「わかった」と答える矢作。
そして、包丁を洗い、パパイヤに包丁を入れます。料理ができることが嬉しくて、泣きながら千切りを作る矢作の姿がありました。
暢子と和彦は、店から出て二人、いや三人で話します。
「お店、やろうねー。お母ちゃんとみんなと一緒に。ちむどんどんするよね」
新しい門出になりました。
最後に
それにしても、矢作が「ちむどんどん」の料理人になるとは、波乱しか想像できません。料理人には戻りたかったのでしょうが、暢子との関係は上手くいくのでしょうか?
そして、良子の給食は、どうなるのでしょう?
さらに、歌子の長年の恋は、実るのでしょうか?
そう言えば、賢秀は今週出てきませんでしたが、ちゃんと働いているのでしょうか?
来週も波乱含みのようです。
どうなるのでしょうか?