矢作の反乱 は、フォンターナのスタッフの矢作のことです。
和彦への気持ちを自覚した暢子ですが、フォンターナはそれどころではありません。
そんなちむどんどん第13週のまとめとネタバレです。
第13週の主な登場人物
比嘉暢子 黒島結菜 やんばる生まれコックの修業中
青柳和彦 宮沢氷魚 中学生の頃沖縄で暢子達と過ごした。新聞記者。
大野愛 飯豊まりえ 和彦の恋人。新聞記者
砂川智 前田公輝 暢子のことが好きな暢子の幼馴染
大城房子 原田美枝子 フォンターナのオーナーで暢子の親戚
二ツ橋光二 高嶋政伸 フォンターナのシェフ
石川良子 川口春奈 暢子の姉でやんばる小学校の先生
石川博夫 山田裕貴 良子の夫で名護の小学校の先生
上原照賢 大工哲弘 暢子の父の歌の先生。
比嘉歌子 上白石萌歌 暢子の妹。歌は上手いが体は弱い
第13週のストーリー
暢子の恋
「恋人がいる人に好きとか言えないじゃないですか」
オーナーの房子と飲んだ時に、暢子は酔って、初めて自覚しました。
生まれて初めて、恋に落ちたことを知った暢子でした。
しかし、暢子は仕事中もぼーっとして、ミスばっかり連発してしまいます。
ただ、和彦が愛とハグしているシーンを思い出してはイライラしてしまいます。
そんな精神状態で、配膳も間違い、転んで料理をぶちまけてしまいました。
智の決意
そんな暢子の所に智がやってきました。珍しくスーツ姿です。今日は独立したので、挨拶まわりをしていました。
「この間はありがとうな。付きっきりで看病してくれて」
智は喜んでいますが、暢子はそんな気分ではありません。
「ああ、今、バタバタしてるから」
そう言って、適当に話しを切り上げます。
「やんばる、明日から帰る。おばさんに二人のこと話してくるから」
そう言われた暢子ですが、和彦への想いがあるので、真剣には考えられません。
「ごめん、今忙しいから」
そう言うと、フォンターナの厨房へ戻ります。それを隠れて二ツ橋が聞いていました。
先輩か後輩の話し
仕事が終わり、暢子はテーブルに座っていました。そこで、二ツ橋に声を掛けられました。
「困っていることがあるなら、相談して下さい」
しかし、暢子は説明できません。それに、困っているという訳ではないのです。
「では、やるべきことをきちんとやって下さい。
今のあなたを見ていると、以前一緒に働いていた先輩を思い出します」
以前は後輩の話しだったはずですが、先輩になっていました。
「その先輩は、同じ店にいる女性に片思いしながら、働いていました。
オーナーは”貴方の気持ちには答えられない。仕事に差し障るなら、十分な退職金と紹介状を用意するわ”と言いました。
”いえ、私は個人的な感情を仕事に持ち込みません”と言うと、先輩は悶絶するような恋の悩みを料理に没頭することで成長を遂げました。
暢子さんも悩みがあるなら、それを仕事の原動力にして下さい」
それを聞くと「偉いですね、シェフは」と感想を伝えます。
しかし、二ツ橋は「後輩の話しです」と言います。
暢子は二ツ橋のことだとわかりながらも「先輩の話しじゃなかったんですか?」と聞いていました。
賢秀の失恋
賢秀は失恋して、養豚場でぼーっとしていました。
「逃がした魚は美らカーキ」
どんな意味かはわかりません。
そこに養豚場の社長・猪野寛大がやってきて「まだ続いてるのか、恋煩い」と娘の清恵に聞きます。
「後遺症。見たらわかるでしょ、振られたの」
清恵はあっさりと言っていました。
愛の苦悩
愛は新聞社の自分のデスクで、父親からの電話を受けていました。
「ちょっと待ってお父様」
愛の父親は、勝手に式場を抑えていました。高輪の叔父さんのホテルで、大安で取れる日がその日しかなかったと言います。それと、マンションの件もそろそろ頼むぞと言います。
「早く孫の顔を見せてくれ、就職を決めた時の約束だっただろう?」
そう言われ、何も返せない愛でした。
愛の企画
「大野、例の企画最後まで残ったぞ」
文芸部のデスク・田良島は愛にそう伝えました。
「シリーズ変わりゆく日本と世界」
愛が企画を出したものです。ファッションの変遷から日本と世界を比較するような内容です。田良島は、企画が通るまであと一歩だと言います。
しかし、愛は仕事に打ち込める状況ではありません。和彦とのことが、宙ぶらりんの状態で、もやもやしてしまいます。
「大野は優秀だ。映画演劇、音楽美術、もちろん料理。
どの分野もそつなくこなし、取材相手や上司の扱いも上手い。
だけど、これは大野にしか書けない、という仕事には恵まれてこなかった。
諦めるのか?自分の幸せを。
幸せは結果ではない。わくわくして、夢にして頑張る時間。
それが幸せっていうものじゃないのか?
指くわえて待ってても、幸せは訪れない」
田良島はそう言うと、「俺、いいこと言っちゃった?はずかしー」と言って去っていきました。
逃げてるのと一緒
「戦没者の遺骨収集」の企画を和彦が考えていました。
和彦は、会社を辞めてでも取材したいと思っている企画です。
愛は、和彦に愛の企画の話しを聞きます。
「特集記事で評価されれば、パリにまで取材に行ける可能性もあるんじゃないか」
和彦が答えると、愛は話しをずらします。
「マンションの契約の件、どうするの?父から電話があって、11月に結婚式場を抑えたって。
このまま放って置いたら、何もかも父親が決めたことになる。それでいいの?」
企画のことも聞きたかったのですが、本当はこっちの方が聞きたい話しでした。
愛の本音
「僕は、愛の意思を尊重する。女性も自分自信の意志で人生を選ぶべきだっていつも言ってるじゃないか」
和彦はそう言うと、愛に丸投げしてしまいます。
「何にも決めないし行動しない、決断を任せる?それって逃げてるのと一緒じゃない?
私は和彦の気持ちを聞きたい。
親の期待も裏切りたくない。
女としての幸せも手にしたい。けど、記者としての私も大事にしたい。
でも、どうせたいした仕事もできないって自分を疑う自分がいる。
この自己矛盾を誰かに解いてもらいたい。強い光で照らして欲しい。
正式にプロポーズもされていないのに、どうして私だけで話を進めないといけないの?」
愛のフラストレーションは爆発してしまいます。それを聞いて和彦は「ごめん」と謝ってしまいます。
愛には和彦に好きな人がいると思っています。それは暢子なのではないかという疑問があります。しかし、和彦は肝心なことは話してくれません。
矢作の反乱
暢子がフォンターナの掃除してると、「事務所の方にこんなものが」と退職届3通を持ってくるスタッフ。
「まさかやー」
矢作、モモキ、タマシマの3人の包丁がありません。
「お前らいつまで働き蜂のままでいる。お前らもいい加減、気づけ。
どこまで行っても消耗品。その巣を抜け出さない限りな」
矢作がそんな話をしていたのを聞いたスタッフがいました。しかし、突然3人いっぺんに辞めるなんて、フォンターナは大変なことになります。
「今日の予約は?」
房子がやってきて、状況を確認します。予約は都合10組32名が入っていて、予約なしも含めたら40人ぐらいになる予定です。
二ツ橋は「臨時休業ですね。ご予約のお客様に連絡を」と言いますが、房子は反対します。
「店は休みません。私が厨房に入ります」
ビックリする暢子とスタッフ達。でも、それしか方法はなさそうです。
房子の腕前
房子がストーブ前に陣取って、テキパキ指示を出し、料理を作ります。
料理を作る順番から、お客様の動向、スタッフの動きに至るまで、房子がチェックします。
スタッフ達はとにかく忙しく、バタバタと仕事をしていて、休む暇はありません。
「楽しい!体中の血が騒いでる。オーナーと一緒に働けることがでーじ楽しい」
そう言う暢子は、房子が働く姿を見て、見とれて「手が止まってる」と怒られていました。
しかし、営業は1日だけではありません。翌日の営業をどうするか房子に聞くと、知り合いの店から助っ人に来てくれる人がいるようです。
仕込みはやっておくからと言う房子に「仕込みは私にやらせて下さい」と言う暢子。一人で翌日の仕込みをします。
愛が会いにきた
一人で大量のたまねぎを剥く暢子。
そこにフォンターナのドアをノックする音が聞こえてきます。開けると、そこには愛が立っていました。
「愛さん、どうした訳?」
暢子がそう聞いても、愛は黙ったままです。和彦とのことを聞きにきたのでしょうが、どう話していいかわからない愛。
「ちょうど良かった。私も愛さんに話したいことがあった訳」
暢子はそう言うと、愛をフォンターナの厨房へ招き入れました。暢子は仕込みをしながら、話しをします。愛に話は何かと聞かれた暢子は、正直な気持ちを話します。
「うち、和彦君のことが好き。自分でもずっとぜんぜん気づいてなかったけど好きってわかってしまった訳。
でもさ、諦める。うちはたぶん、生まれて初めて男の人を好きになって、仕事も手につかないぐらいイライラしてた訳。
だけど今日、何も考えられないほど忙しくて、体を動かしてるうちに、なんでかね、でーじすっきりした感じというか、やっと答えが見つかったというか」
諦める
そう言うと、すっきりした顔で暢子は続けます。
「和彦君は前から愛さんのことが好きで、愛さんと付き合っている。
だから、好きだけど、綺麗さっぱり諦める。
でも、愛さんに嘘はつきたくないから、言ってしまいたかったわけ。
困らせるようなこと言ってごめんね」
そう言われ、素直に話せる暢子のことをすごいと思う愛でした。そして、フォンターナのスタッフが3人いなくなった話しを聞いて、愛も仕込みを手伝います。
「女だからって料理の記事を担当させられることが多くって、いろいろ覚えちゃった」
そういう愛は、上手にたまねぎの皮を剥きます。
男性の職場
「暢子ちゃんの仕事って、ほとんど女性がいないよね。大変じゃない?」
暢子はそう言われますが、愛の働く新聞社も男ばかりで、女性は数えるほどしかいません。暢子は愛の方がすごいと思っていました。
「女性の料理人はほとんどいないけど、今日初めてオーナーが厨房に入って、すごい訳よ。
目の前のことだけじゃなくって、全体が見えていて料理も指示も完璧。
うちもいつか、オーナーみたいになりたいさ」
そう話す暢子。房子は、厨房の扉の陰で聞いて笑っていました。
「一つ聞いてもいい?暢子ちゃんにとっての幸せって、恋愛より仕事?」
愛は誰にも聞けない「幸せ」を暢子に聞きました。
「正直、何が幸せかわからないけど。今は、料理の仕事にでーじちむどんどんしてる」
愛にとっての「ちむどんどん」が何をしている時なのか、まだわかりません。仕事も恋愛でも、悩んでばかりです。でも、暢子は話して、少しはわかった気がしていました。
企画をやる
「特集の件、やらせて下さい。お願いします」
田良島に頭を下げる愛。田良島は愛が吹っ切れた様子に驚きます。
「何があったんだ?って聞くのは、つまんない大人みたいだから、やめておくか。
大野のやりたい、大野にしかできない企画にしてこい」
そう言われ、愛は取材に出かけます。途中で和彦を見つけ、話しかけます。
「この間はごめん。取材、行ってきます」
誠との距離
やんばるでは、良子が受け持ちの児童・誠のことで悩んでいました。
教室で片づけをしている誠を良子が隠れながら見ていました。そこに後輩の知念先生がやってきて、様子を聞きます。
「あれからすぐおうちに伺って、お母さんにも理解してもらって、誠も学校に来るようになったんだけど、口をきいてくれない訳。
今からきちんと話します」
知念先生は、少なくとも良子より誠とコミュニケーションが取れています。せっかく助け舟を出してくれましたが、良子は断りました。
「誠。ちゃんと話を聞いて。ちゃんと先生の話を聞かないとダメ」
誠を捕まえて話しをしようとしますが、良子のてを手を振りほどいて帰っていっていまいました。
エゴイスト
博夫の家に良子がやってきました。良子は今はやんばるの実家に住んで、博夫とは別居しています。
うなだれて立っている良子を見て、心配する博夫。中に入れて、話しを聞きます。
「誠が許してくれないのも当たり前さね。結局うちは、子供の時から成長してない。
自分は人よりできる、正しいと思って大きくなって、今度は誰より子供の気持ちがわかる教師だとうぬぼれてた。
自分本位ではいけないと教えていた私が、誰よりエゴイストだった。
こんなうちに教師の資格なんて・・・」
そう言う良子に博夫は優しく話します。
「俺もそんな風に考えてたよ、何回も。友達を大切にと教えている俺が、大事な家族すら大切にできてない。
こんな自分が子供たちを導けない。だけどこの頃、それも思い上がりだと思った訳。
俺たちは教員免許は持っているけど、人としてはまだまだ不完全。
これからもたくさん失敗すると思う。だから、上から目線で子供達に向かうんじゃなくて、もっと子供たちの話を聞いて、子供達から教わっていけばいいんじゃないかって。
立派な教師になれないし、ならなくてもいい、そう考えたら気持ちが楽になった。
これから先、何年もかけて、俺はどんな教師になれるかなって考えたら、ワクワクしてきた。変かね?」
良子のちむどんどん
「ううん、それ聞いたら、うちもなんかちむどんどんしてきた。昔みたいに」
そうやって言うと、良子はやっと笑うことができました。
「やっと笑った」と言って、ティッシュを渡して涙を拭くように言う博夫。二人の子供の晴海のことを良子に聞きます。晴海も良子と一緒にやんばるの実家に住んでいます。
「歌子とお母ちゃんに懐いて、毎日大騒ぎ」
そうして、良子は博夫と一緒にラーメンを作りました。料理の苦手な良子は、ラーメンを吹きこぼれさせていました。
誠と和解
「おはよう」
朝、一人で教室にいる誠に挨拶する良子。しかし、誠は無言です。
「教えてくれない?」
そう言うと、誠が得意なあやとりを取り出します。
「先生ぶきっちょだからあやとりは苦手さ。箒、どうしたらいい?」
そう言うと、誠は良子のあやとり紐を取って教えてくれます。それで、やっと誠が口をきいてくれました。ここを逃すなとばかりに良子は、誠に謝ります。
「誠、この前はごめんなさいね。先生を許してくれる?」
「うん」と言って、誠は許してくれました。良子は素直にありがとうと言うことができました。
エイサー
夏が近づき、鶴見ではエイサーの練習をしていました。エイサーは沖縄の盆踊りみたいなものです。暢子と和彦が下宿する「あまゆ」は、エイサーの練習のため休んでいました。
あまゆの厨房で暢子が料理を作っていると、和彦が帰ってきました。そして、愛が来ていないかと暢子に聞きます。
しかし、暢子もちょっと前に帰ってきたばかりです。愛を見てないことを伝えます。
「企画の手伝いするって約束したんだけど、取材が長引いて。何作ってるの?」
そう言うと、カウンターに座ります。暢子は、明日届ける仕出しの手伝いをしていました。今日はエイサーの練習で誰もいません。
「暢子に聞きたいことがあるんだけどさ」
そう和彦に言われ、暢子が和彦のことが好きだと言うことが和彦に伝わっているのではないかと、暢子はドキドキします。
遺骨収集
「暢子は、両親から沖縄戦の話しは聞いてる?
特集記事の企画を考えているんだけど、戦争を絡めた話しを提案しようと考えてて」
予想とは違った質問で、安心するやらビックリするやらです。しかし、暢子は戦争の話は聞いたことはありませんでした。お父ちゃんやお母ちゃんだけでなく、村のおじい、おばあも誰も戦争の話しは聞いていませんでした。
「そっか。いや、沖縄で遺骨収集してる嘉手刈さんって人がいてね。
南部の洞窟なんかでは、遺骨や遺品がそのままになってる。
それを掘り出して、わかるものは家族に返す。
20年ぐらい前にうちの新聞社の誰かが記事にした。
改めて話しを聞きたいんだ」
しかし、記事が出てからは、嘉手刈さんは一切取材を受け付けてないみたいです。那覇支局の和彦の同期も、何度か取材に行っても門前払いされてしまっていました。
いつか
練習しているエイサーの音が近づいてきました。
「エイサーってさ、沖縄の中でも地域によって、微妙に違うんだよね?
いつか、見てみたいな、沖縄で」
そういう和彦に「うちも久しぶりに見たいさ。沖縄で」と返す暢子。
「一緒に行ってみる?」
突然の和彦からの誘いです。
「うちと和彦君が?愛さんと言ったらいいのに」
そう暢子が言いますが、それについては和彦は何も言いませんでした。
「暢子は、いつか沖縄に帰るの?」
そう聞かれた暢子は、今は東京で仕事がしたいと言います。子供の頃に沖縄にいた時よりも、今東京から故郷を思うと、良さが良くわかります。
「和彦君のお父さんがそんなこと言ってたさ」
あの小学生の夏、和彦の父親が授業をしてくれたことを思い出した暢子でした。
和彦の夢
和彦の父親は戦時中、沖縄の部隊にいました。米軍が上陸する前に配属が変わって、生きて帰ることができました。生前、父親は「首里城の美しさが忘れられない。沖縄の文化を後世に伝えたい」と、和彦に言っていました。
「僕は父の思いも引き継ぎたいと思ってる。
目の前の事件を追うだけでなく、今の僕らの暮らしが、どういう物語があって成り立っているのか伝えたい。
東京中心じゃなく、地域からの視点で、沖縄からの視点で伝えたい。
だから、いずれは新聞社を辞めると思う」
和彦がそんなことを考えていたとは、暢子は知りませんでした。
海を見に行こう
和彦が父親が残した沖縄のノートをめくると、そこにはあの夏に撮った写真が入っていました。
「不思議だね、子供の頃に沖縄で出会った僕らが、今は鶴見の同じ下宿で一緒に暮らして、エイサーを聞いてる」
しかし、和彦は愛と一緒に住むために下宿を離れる予定です。
「夏が終わるまでには」
そういう和彦との生活が終わってしまうことに寂しさを感じる暢子。そこで、提案をします。
「そうだ、引っ越す前に海行こう。うち、こっちに出てきてから一度も見てない。沖縄では毎日見てたのに」
そう言うと、和彦も「行こう、夏が終わる前に」と同意します。しかし、暢子が「最後にパーッと騒ごう、みんなで」と言うと、和彦は「二人でも、いいけど」と言うのでした。
あまりにも驚きすぎて、包丁で手を切ってしまう暢子。心配して駆け寄る和彦。二人の距離が縮まります。見つめあう二人。
三郎は見た
その時、県人会会長の三郎が、あまゆに入って来ました。
三郎が見ると、暢子と和彦は手を握りあっていました。
「ごめんよ」
ついつい、謝って外に出てしまいます。そこに、あまゆの主人達がやってきました。店に入ろうとしますが、三郎は止めます。
「入るか?入りてえか?」
店の中に声をかけて入ると、二人はちゃんと離れていました。変な雰囲気を感じ取って、暢子と和彦に聞きます。
「何かあった?」
しかし、暢子は何も答えず、「お休みなさい」と言って自分の部屋に戻っていきました。駆け込んだ部屋で暢子は、今あったことが信じられずにいました。
愛はいた
「おかえりなさい」
店の奥から出てくる愛。愛は来ていなかったのではなく、もういたのでした。
「いつから?」
動揺した和彦が愛に聞きます。
「ずいぶん早く着いたんだけど、お店の奥で書き物している間にウトウトとしちゃって。
ぐっすり寝ちゃった。こんな時間だから、また明日」
愛は気にしたそぶりもせず、いつもと変わらない感じで話します。しかし、和彦が「送るよ」と言うのですが、「大丈夫」と言って一人で店を出ました。
店を出たところで愛は立ち止まり、店の方を見ていました。やっぱり聞いていたようです。暢子の気持ちは聞いていましたが、和彦の気持ちが暢子に寄っていることを改めて知ってしまいました。
智の帰郷
やんばるの家では、歌子が歌いながら洗濯物を畳んでいました。
そこに智が突然やってきました。驚いて、喜ぶ歌子。歌子は智のことが昔から好きでした。智が東京に行ってからは、なかなか会うことができません。サプライズで帰ってきたことで、喜びが爆発してしまいました。
しかし、智はそんなことは知りません。そして、用事があるのは歌子ではなく、お母ちゃんでした。お母ちゃんがいるかと聞く智。
「お母ちゃんは晴海と売店で、良子ねえねは学校。
いつ帰ってきたわけ?ゆっくりできるの?」
歌子は歌子で、喜んでしまってそれどころではありません。
「この何日か商売で那覇とか走り回って、今日の夜には帰らないと」
そういう智は、お茶を出すという歌子の誘いを断って、やんばるで農家を何軒か回るつもりでした。ちゃんと仕事をしています。
歌子は、智と少しでも一緒にいたいので、ついて行きたいと言うのでした。
絶好調
「東京の名刺です」
そう言って渡したのは、じゃがいもを作っている農家です。この農家は、以前ハンバーガーショップで働いていた時にポテトフライを出すために交渉した農家でした。
「絶好調!絶好調!」
交渉は成立して、智は大喜びです。そして、一緒についてきた歌子も喜んでいます。
「智にいにすごい!3件、交渉成立。こんなお土産までもらってからに」
智は沖縄の美味しい物を東京に紹介したいと思っていました。
「智にいに、夢に向かって頑張ってるね」
頑張っている姿に感動する歌子。しかし、智はそんな歌子の気持ちも知らず、余計なことを言ってしまいます。
「暢子も夢に向かって頑張ってる」
一気に歌子のテンションが下がってしまいました。そして、時計を見る智。共同売店で叩く歌子のおかあちゃんが、まだ売店にいるかと聞きます。
「大事な話がある」
それだけ言う智でしたが、嫌な予感がする歌子でした。
挨拶
共同売店では晴海が、しゃぼん玉を飛ばしていました。歌子は共同売店には入らず、外で様子を伺いながら、晴海を見ていました。
智は沖縄の食品を東京で売り出し、いつか商売を大きくして、沖縄の魅力を紹介したいという夢を語っていました。
そして、ついに本題です。
「商売が軌道に乗ったら、暢子と結婚したいと思ってます。許してくれますか?
正式にはまだですけど、伝えてあります」
驚くお母ちゃん。そして、外にいた歌子も予感はしていましたが、現実になって驚いていました。そして、暗い顔をする歌子。
「暢子は鈍感な所があるから、ちゃんと伝わってるかね?」
お母ちゃんは良くわかっています。しかし、智は疑うことを知りません。
「大丈夫です。必ず幸せにします」
そう言い切る智の言葉を聞いて、お母ちゃんは不安になり、歌子のことが心配になるのでした。
上原照賢
「いいね、あんたはそこで咲けるから」
歌子は自分の夢がありません。いや、歌手になる夢はありました。しかし、体調を崩しやすい暢子はオーディションで失敗していました。それから、夢を叶えられないと思っています。
「比嘉健三の家か?」
その時やってきたのは、見知らぬ老人でした。名前は、上原照賢。照賢は、家に上がると、賢三の位牌に手を合わせます。
そして、歌子はお父ちゃんとの関係を聞きます。
「賢三が民謡歌手になろうとしていたころ、歌を教えた」
初めて聞く話に驚く歌子。そんな歌子をよそに縁側で三振を取り出し、歌を歌います。
その歌を正座して聞く歌子。その歌声にお父ちゃんと三線を弾いて、歌を歌っていた時のことを思い出します。さらに、高校で気にかけてくれた下地先生のことを思い出すのでした。歌子は涙を流していました。
小さい夢
「上原さんがわざわざ来てくれたの?」
お母ちゃんが帰ってくると、照賢が来たことを伝えました。良子も帰ってきています。
そして、照賢から聞いた「お父ちゃんは民謡歌手になるのが夢」という話が、本当だったのか確認します。その話は、良子も聞いたことがありませんでした。
「であるね」
笑顔でそう言うお母ちゃん。その言葉を聞いて、良子は驚きます。そして、更に驚くことを歌子は言い出しました。
「うち、なりたい。何年かかってもいいから、うちは民謡歌手になりたい。
上原さんから、名護にある三線の教室を教えてもらったわけ。行ってもいい?
お願い。小さくてもいいから、うちだけの夢を追いかけてみたい」
体が弱いことでいろいろ諦めてきた歌子。しかし、照賢の三線と歌を聞いて、心に響くものがあったのでした。
「こんな気持ち初めてなの。やってみたい訳。歌いたい訳。お願いします」
そして、歌子は正座をして、お母ちゃんに頭を下げます。お母ちゃんは歌子に手を差し伸べて言うのでした。
「歌子は歌子のやりたいように思いっきりやればいい」
良子も「うちも大賛成」と言ってくれました。
やんばる土産
智は、沖縄から鶴見に戻ってきました。そして、やんばるのお土産を持ってあまゆに来ています。そこには、暢子と和彦、愛もいました。
「お母ちゃんたち元気だった?」
そう聞く暢子に智は、「ちゃんと話してきた」と言うのでした。
愛はわかっているはずですが、「何を?」と聞きます。しかし、暢子は話を逸らすように「チャンプル作りましょうね」と言って厨房へ行くのでした。
和彦は暢子を、愛は和彦を見つめていました。和彦の反応を見て、愛は何かを悟ったような表情をしていました。
お似合い
食事が終わると、あまゆの外で愛が仕事をしていました。酔った智が愛に話しかけます。
「なにしてる?」
愛は企画書の提出期限が近いので、その原稿を書いていたのでした。
「和彦と愛ちゃん、やっぱりお似合いださ」
酔った智は、そう言います。
「本当にそう思う?」
愛は智に聞きます。智は酔った勢いもあって「いい夫婦になる。俺が保証する」と無責任なことを言います。しかし、愛はそう思っていないようです。
「本当にお似合いなのは、店の中にいる二人だと思わない?」
愛はもうわかっていました。しかし、智は全く気付いていません。それに、暢子は智と結婚するものだと思っています。
「まさかや。真面目な顔して、冗談言うな」
しかし、外でそんな話をしてるとも知らない暢子と和彦。二人はお互いを意識しながらチャンプルを食べていました。そして、意識して何を話したらいいかわかりません。何も話せない二人。変な空気が流れていました。
思い入れ
企画書を田良島に見せる愛。
「流行の時系列を追っただけ。説明記事を書きたいのか?
思い入れの強い企画でよく陥るパターン。
自分の知識をここぞとばかりに詰め込んで整理が追い付いてない。
読者に何を伝えたいか、そこをもう1回突き詰めて考えてみろ」
締め切りは近いものの、愛は和彦のこともあり、集中できずにいました。そこで、暢子や智や和彦に助けてもらうことにしました。
時代の流れ
「わからなければわからない、つまらなければつまらない、遠慮なく言って欲しい。
まず最初にやりたいことは、20世紀のファッションの歴史と流れについて」
暢子や智は、勉強は得意ではありません。
「智くんが履いているジーンズ、かつては不良が履くものだと言う人がいた」
愛はそう言って、ファッションの歴史を話し出します。
「もともと、ジーンズは労働のためのものだった。ある時から、大人や社会に抵抗する若者が、普段着として履くようになった」
今では女の人も履いています。愛も履いています。しかし、仕事では履けないという愛。
「私には会社には履いていけない。ジーンズもズボンもね。
東洋新聞では、女性がスカートを履くのが当たり前。10年先の未来では、変わっているかもしれないけどね。
労働服だったジーンズが、時代を代表するファッションになったように、これからもっともっと新しい時代の波が押し寄せてくると思うから」
整理
「男性服、女性服の移り変わり」
「大量生産の発達」
「アメリカンカジュアル」
「エキゾチック趣味の台頭」
「若者文化のムーブメント」
「ジャンルの多様化」
洋服のことだけでなく、外国の文化を知らないと整理ができません。ファッションに関する事柄を上げて、どれをテーマにするか考えています。
みんなが煮詰まっている時、和彦がお茶を入れてくれました。暢子は智にもらった沖縄土産の黒砂糖を出してきます。お茶を飲みながら、愛は暢子に聞きます。
「暢子ちゃんは子供のころからズボン履いてたの?」
暢子の家は、お父ちゃんが亡くなってから、特に貧しい家庭でした。賢秀のおさがりでいつもズボンを履いていました。特に暢子は、海でも山でも活発に遊んでいて、動きやすいからといつも履いていました。
自由
「愛さんはなんでファッションが好きなの?」
愛は、自分を変身させてくれるので、昔から服が好きです。特に、好きな服を着た時は嬉しくて、いつもと違う自分になれる気がします。
そこは暢子も一緒のようです。好きな服を着ると元気になると言うのでした。
「その元気な気持ちって、自由なんだと思う。ちむどんどん、かな」
暢子は昔から自由です。女の子の中で一人だけズボン履いていて、誰に何を言われても気にしていませんでした。しかし、国によっては、女の子がズボンを履くことは禁じられいる国もありました。
「どんな時代に生まれても、ズボンを履きたいし料理もしたい」
暢子はそう言いますが、そういう暢子のような女性がどんな時代にでもいて、今に繋がっているのかもしれません。
ズボンを履いた女の子
それだと言って、整理していた紙を取り上げました。「女性の社会進出」と「パンツルック」を選んで見せる愛。20世紀のファッション史最大の事件は、パンツルックの女性が社会に飛び出したことだと愛は言います。
「タイトルは、”ズボンを履いた女の子”。どう?」
それには、和彦も同意します。
「この100年の間に世界中の女性が戦ってきたことを象徴しているね。
なにより、男性社会の中で戦ってる女性を勇気づける記事になる」
メインのテーマが決まり、暢子や智も協力して整理を続けます。勉強は苦手でも、暢子も智も楽しんで協力しています。
「これで最後かもね。4人でワイワイできるのは」
そう言うと暢子はしんみりしてしまいました。夏が終われば和彦は愛と同棲し、結婚してしまいます。
「そんなことないよ、これからも何回も集まれる」
和彦はそう言うのでした。
海を見に
みんな、朝まで徹夜で作業してテーブルの上で寝ています。しかし、愛はひとりで記事をまとめていました。
「できた」
愛がそう言うと、和彦が目を覚まします。みんなを起こす和彦。
「ねえ、今から海にいかない?」
愛は突然提案しました。和彦も愛も午後には仕事があります。しかし、愛は「ちょっとだけだよ」と言うと、智に車を出させて4人で海に行きました。
あいこ
海ではしゃぐ4人。久々の海です。
転びそうになる暢子を支える和彦。二人の距離は、どうしても近くなってしまいます。
「黒砂糖って美味しいね。楽しい。なんか生きてるって感じがする」
暢子が持ってきた黒砂糖を食べるみんな。愛は、青春を感じていました。
「この幸せがずーっと続けばいいのに」
そう暢子は言いますが、智はそうはいかないと言うです。
「大人になったら、結婚したらそれぞれ家族を持つ」
そう言うと、暢子にプロポーズしようとします。しかし、それを察した暢子は話しを逸らすのでした。
そして、二人になった和彦と愛。海に行きたいと言った愛の発言を「らしくない」と言うのでした。
「らしくないことをしてみたくなったの」
愛はそう言うと「あの夜、海に行きたいって言ってたでしょ?」と言うのでした。動揺する和彦。やっぱり愛は起きて、聞いていたのでした。
そして、和彦にキスをする愛。
「これで、おあいこ」
キスしている二人を見て、目が泳ぐ暢子。暢子の後ろに見える海は、暢子の気持ちを表すように高い波でした。
最後に
矢作の反乱から始まった今週でしたが、メインは和彦と愛、それに暢子の関係でした。智は暴走しますが、暢子は態度をハッキリしましません。これから、愛は和彦の気持ちをどう受け止めるのでしょうか?
そして、歌子は自分の夢を見つけ、進む決意をしました。歌子には、幸せになってもらいたいです。
なんだかんだありましたが、矢作が戻ってくる気がします。というか、戻ってこい、矢作。