冒険のはじまり は第22週のサブタイトルです。
オープンファクトリーを成功させ、新たな展開が始まります。
ただ、今回の成功は一部の工場だけの参加でした。参加したくてもできない会社もあります。
そこで、舞は御園の協力も得て、新たな冒険をすると決意するのでした。
そんな第22週のまとめです。
第21週「新たな出発」のまとめ。
主な登場人物
梅津舞 福原遥 IWAKURAの営業。旧姓岩倉
梅津貴司 赤楚衛二 舞の幼馴染、歌人でデラシネ店主
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、故人
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母、株式会社IWAKURA社長
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、執行猶予中
梅津勝 山口智充 貴司の父。のお好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
笠巻久之 古舘寛治 IWAKURAのベテラン従業員
結城章 葵揚 IWAKURAの従業員
リュー北條 川島潤哉 短歌担当編集者
御園純 山口紗弥加 毎報新聞記者
安川龍平 駿河太郎 舞の先輩。伝説の男。市役所職員
渥美士郎 松尾鯉太郎 舞の先輩。なにわ大学准教授
木戸豪 哀川翔 五島 船大工
浦信吾 鈴木浩介 五島 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 五島 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる 五島 みじょカフェオーナー
第21週のストーリー
荒れる打ち上げ会場
オープンファクトリーの打ち上げ会場の梅津では、参加者だけでなくお客さんもいました。その中に、東大阪で菱形金網の工場をやっている小堺もいました。
小堺はオープンファクトリー成功と浮かれていることに腹が立っていました。
「平気なもんやな。しょうもないおもちゃ、ごちゃごちゃゆうて作りくさってからに。東大阪の町工場がスクラムを組む。スクラム組めんのはな、体力のあるごっついやつだけや。俺らみたいな弱っちい工場からしたらな、ただみんな目ざわりやねん」
オープンファクトリーで参加者に作ってもらった飛行機のおもちゃを手に取り、投げつけようとします。しかし、投げつけることはしませんでした。
「なんやねん、町工場代表ですみたいな顔しやがって。みんながみんな、自分らみたいに余裕があると思うなよ」
事情を知っている打ち上げ参加者が舞に教えてくれました。
「あいつの工場、今しんどいところやねん。菱型金網作ってるやけどな。年々、注文が減ってんのやんて。フェンスの需要が減ってんねん。たまにある仕事も、安うてぎょうさん作れる大手がかっさらっていくから。あいつもおやっさんから工場継いだ時は、張り切っとったんやけどな」
そんな荒れる小堺の姿をみて、お父ちゃんが生きていた時のしんどそうな顔を思い出す舞でした。
金網業界
ある日、ノーサイドで舞は、御園と食事をしていました。
「オープンファクトリーで、町工場に活気が戻ったらええなって思ってたんですけど、参加したくても参加できへん工場のことまで考えてませんでした」
舞は素直に反省していました。
「苦しんでる町工場、たくさんあるんだよね。小堺さん、悔しさをどこにぶつけていいかわからないのかもね。うちの工場が潰れそうになった時も潰れた後も、父は荒れたりしなかったけど、私の知らない所で小堺さんみたいな顔してたのかも」
御園の父親も工場を営んでいました。舞のお父ちゃんもそうですが、荒れたりしなかったようです。
「私、小堺さんの工場で金網の写真もらってきたんです。ここまで細かい網目は技術力がないとできへんらしくて、この技術を使って、なんかできたらええなって」
舞は、小堺のために何かできないかと考えていました。
更にある日、お母ちゃんは会社で材料メーカーの営業と話しをしていました。
「IWAKURAさんは景気良くて安心ですね」
そんな言葉をかけられにこやかに対応するお母ちゃん。その材料メーカーの営業が帰る時、舞は話しかけ金網業界の話しを聞きました。
「うちの取引先の金網屋さんも、廃業したところ多いんですよ。金網って使い道が限られてるでしょ。ほんで、たいがいがフェンスやないですか。大手の注文無くなったら、売りたくても売られへんのですわ」
舞は「新しい使い道を考え」ようと思うのでした。
提案
舞は、梅津で食事をしてる小堺に会にきました。
「この間そちらの工場にお邪魔してから、勝手ですけどちょっと考えてみたんです。こんな風に風鈴作るのどうですか?」
舞は菱形金網を使ったイメージをスケッチして、小堺に見せました。小堺は突然のことで「作ってどないすんねん」と聞き返します。
「売るんです。風鈴やなくてもええんですけど、金網で新しいもん作って売ってみるのどないでしょ?」
小堺はつい「何をアホなことゆうてんの」と言ってしまいます。その「アホ」を聞き逃さない舞の義父・勝。
「うちの娘にアホとはなんや。アホとは」
そして、義母・雪乃は「今のアホは冗談やんな」とめっちゃ凄んでいました。小堺は「冗談です」と言うしかありません。
脱線した話を元に戻します。
「価格競争は大手にかないませんけど、技術力活かして小堺さんの所でしか作られへん物を作るんです」
しかし、小堺は「無理や」と諦めています。
「売れるかわからんもの作る余裕なんてないで。それにな、うちはな下請けだけでやってきてんね。自社製品なんか、企画したり売り込んだり、考えただけで気遠くなるわ」
その腰の重い感じ、当然と言えば当然かもしれません。
「小堺さん、企画やるんやったらお手伝いできると思います。金網で何が作れるか、一緒に考えさせてもらえませんか?」
舞はそう提案するのでした。
原点
デラシネでは、編集者・リュー北條が来ていました。
「この間の短歌教室、反響が大きくてさ。あっちこっちの学校から、うちでも教えてもらえないかって問い合わせきてんのよ」
北條がそう言うと、貴司は静かに喜びます。
「それで編集長喜んじゃって、梅津さんに連載持ってもらおうって言い出したのよ。日本中旅をしながら短歌を教えて、自分でも作る。その歌とエッセイを本紙に連載してもらう。奥の細道的なやつね。こんな企画めったにないよ。それぐらい梅津さんには期待してるのよ、短歌界を背負って立つ新星としてね」
貴司はただ喜ぶわけにはいきませんでした。
「家には、帰れますか?」
北條にそう聞くと、「帰れるよ、時々は」と返事が返ってきました。本当の奥の細道であれば、半年ぐらいは家に帰れませんが、今の時代はそんなことはありません。
「せやけど、そうだったらその間この店は?」
北條は簡単に「休業じゃない?」と言います。庭先には、デラシネによく来る少年・大樹が聞いていました。
「考える時間、いただけませんか?」
貴司はそう言って、即答しませんでした。
「いいけど、考える必要ある?旅しながら歌を作る、それが梅津さんの原点でしょ」
運命共同体
夜、貴司はお母ちゃんと一緒に夕飯を食べていました。そこに舞が帰ってきました。
「金網、小堺さんのところで使わんやつもろてきた」
お母ちゃんは「何に使うの?」と質問しますが、舞は得意げに「それを今から考えんねん」と楽しそうです。
夕飯を済ませて、舞と貴司は自分達の部屋に引き上げました。舞は、金網を手に何を作れるかと考えています。
「これで棚作るのどないやろ。何段か重ねて家具作るねん」
舞の提案に貴司は「便利そうやな」と答えました。そして、舞はスケッチを始めます。そんな舞を嬉しそうに見つめる貴司。
「金網屋さんって、そんな大変なん?」
貴司が質問します。
「今まで通りの仕事やと、やっていかれへんて。この辺の町工場も、私らがちっちゃい頃よりだいぶ減ってるやんか。町工場が減ってるんは、他人事やないねんな。金型屋さん、メッキ屋さん、材料屋さん。みんな繋がってて、どこか一つ潰れてしまったら、他の会社も危なくなる」
舞の危機感は、東大阪の工場が共同体だというところから発生していたのです。
私が探します
夜、小堺から呼ばれた舞が梅津にやってきました。
「会社、畳もうと思ってな。もう菱型金網ではやって行けへんねん」
舞が座るとすぐに小堺はそう切り出しました。もう耐えられないと言うのです。
そんな小堺の姿を見て、舞は工場を畳むと決めた時のお母ちゃんの顔を思い出すのでした。
「工場畳むまで、まだ時間ありますよね?いくつか考えてみたんです。金網で新しい商品、つくりませんか?」
舞はそう言って食い下がります。菱形金網で作れそうな物をデザインしたノートを見せます。しかし、小堺は「どれもうちでは作られへん」と言うのでした。
舞は、オープンファクトリーで作った飛行機のおもちゃを小堺に見せます。
「これ、7社の力が合わさってできたものなんです。うちのネジも使ってますけど、的場さんところの板金技術と落合さんところのレーザー加工があって、初めて作れたものなんです。小堺さん、東大阪の町工場と協力し合えれば、いろんな物が作れます。挑戦してみませんか?」
小堺は、舞の書いたハンモックを指さして、本当はやってみたいと言うのです。しかし、菱形金網の工場では、支柱は作ることができません。
「支柱作れるところ、私が探します。取引先も探します」
舞はできるだけ協力すると申し出ました。
売り込み先
3週間かけて、金網を使ったハンモックが形になりました。
「素材はしっかりしてるんですけど、編み上げるから適度な弾力があってハンモックにぴったりやって思いました」
舞は自信満々に説明しました。
「営業に雇いたい」
そんな風に言われますが、アキラが止めていました。
そんなハンモックをなにわ大学の准教授・渥美が見に来ました。
「ええな、欲しいな。けどな、うちにあっても置いておくところないからな」
その反応は、舞が営業した先で散々聞かされた言葉です。渥美は購入できないものの、売り込み先をアドバイスしてくれました。
「もしかしたら、河内大学が興味持ってくれるかも。あそこな、来年リノベーションするねんて。校舎の中も外も新しくしてな、そこに地元の産業取り入れたいって、この間もオープンファクトリーのこと聞きに来たんよ。せやから、東大阪の技術で作ったもん、ぜひ使こうて欲しいって売り込んだら、話し聞いてくれるんじゃないかな」
希望の光が見えてきました。
御園の異動
ノーサイドでは、御園が舞を待っていました。
「いつ楽しそうに飛び回ってていいね」
御園は忙しそうな舞が羨ましそうです。
「御園さんこそ、いろんなことに興味持って、フットワーク軽く飛び回って、新聞記者って仕事がピッタリですよね」
舞には、御園も楽しそうに見えていました。
「そう、だったんだけどね。まあ、飲んで。異動になるのよ。営業部に行ってらっしゃいって」
辞令が出たことで、御園は舞と話がしたくなったのでした。
「やけ酒じゃないよ、景気づけの一杯。これからの生き方を考える時間をもらったんだからさ。取材して、記事書いてって楽しんだけどさ、時々思うんだよね。私は、誰かが頑張ってるのを覗きに行ってるだけかもって」
しかし舞は、御園の自虐的な発言を否定するのでした。
「舞ちゃん達見てたら、父のこと思い出しちゃった。モノづくりが好きだったのに工場辞めなきゃいけなくなって、辛かっただろうなって。そろそろ私も、何かを頑張ってる方になりたいなって思う気持ちもあるんだよね」
そんな御園に舞は、可能性がいっぱいあると勇気づけるのでした。
いい影響
「お嬢さん、河内大学さんこられました」
事務員の山田にそう言われた舞は、打ち合わせに出かけました。
「凄いな、また別の大学やて。次から次とようやるわ」
山田の感想を聞いた営業の藤沢は、舞の行動の良い点に気づいていました。
「パッと見、関係なさそうやけど、案外IWAKURAの役に立つかも。これ見てみい、インターンの申し込み。この間オープンファクトリーで手伝ってくれた学生さんなんやけど、オープンファクトリーに関わって製造業に興味持ちましたって」
人手不足のIWAKURAにとって、いい影響になっているようです。
売り込み
舞は河内大学の職員3名に小堺と一緒に対応していました。実際にハンモックに寝てもらって、寝心地を試してもらいます。
「思ったより、くつろげますね」
「意外にオシャレですしね」
そんな感想を聞いて、小堺は「色を変えて編むこともできます」と一生懸命に売り込みます。
「これ他の町工場のみなさんと、力を合わせて作ったんです。河内大学さんのあるこの東大阪で、こんな品質のええもんが作られてるって、学生の皆さんにも知ってもらいたいと思ってます。地元の高い技術を知って、モノづくりの可能性を知っていただきたいんです」
舞の説明に職員たちの反応は上々です。
「これ、いいんじゃないですか?産官学連携のコンセプトに合いますし」
しかし、一人の職員は、冷静でした。持ち帰って検討すると言って帰ろうとするところを舞が引き留めます。
「金網って、おもしろいんです。安全を守れるのは、形を変えてショックを吸収させるからなんですよ。頑丈やけど、しなやかで、ただの壁とは違うんやなって、私にも発見がありました。どうか、前向きにご検討下さい」
その時、職員の一人が小堺に「どれぐらいの大きさまで作れるか」と質問しました。小堺は「なんぼでも」と答えます。
「来年作られる文芸学部の校舎、外壁をカラフルな金網で覆うのはどうでしょう。小堺さん、12階建て高さ50mの壁を飾る金網、作れますか?」
小堺は「やります。やらせて下さい」と頭を下げました。
新たな展開
舞をきっかけに町工場が繋がって作られたハンモックは、新たな扉を開きました。
校舎を囲む金網の件も、正式に小堺が受注することになりました。そして、河内大学から新たな依頼があったことをお母ちゃんに報告します。
「河内大学の新しい校舎に学生さんらが自習したり、ミーティングできるフリースペースを作るそうなんです。そこのデザイン考えるの手伝って欲しいって言われました。小堺さんのハンモックみたいに東大阪の技術を使っていろんなインテリアを作って欲しいって」
お母ちゃんは、なぜ舞に依頼がきたのか不思議です。
「オープンファクトリーにも小堺さんの件にも関わってて、あんな風に東大阪のいろんな会社に声かけて、纏めて欲しいって頼まれたんです」
お母ちゃんは困惑してしまいまいた。
「うちの仕事の延長なんてレベルの話とちゃうな。反対してるのとちゃうで。でも、舞の体はひとつしかあらへんねんからな。営業の仕事、私にできることあったらやるから、なんかあったらゆうて」
困惑しながらも、舞がやることを応援してくれるお母ちゃんでした。
お父ちゃんみたい
舞は早速、梅津に工場の社長たちを集めて話をしました。
「東大阪の技術を使ったインテリアを作って欲しいって。みなさん、一緒にやりませんか?」
そう声を掛けると、みんな乗り気になっていました。
工場の社長たちを纏める舞の姿を見て、勝も雪乃も頼もしそうに見ているのでした。
その会合の夜、舞は一人キッチンでデザインを考えます。
「まだ起きてるの?」
寝たはずのお母ちゃんが起きてきました。舞は「もうちょっとで寝る」と伝えます。
「なんか、不思議やな。舞がインテリアのデザイン考えてるってな」
舞は社長たちと「まだ世の中にないもん作るで」と盛り上がった話しをしました。
「まだ世の中にないもん。なんや、お父ちゃんみたいなことゆうてるわ」
お父ちゃんのことを思い出す舞。
「せやけど舞、無理だけはせんといてや。あんたはなんでも一生懸命やるやろ。仕事して、家事して、河内大学さんのことまでして、いっぱいいっぱいにならんようにな」
お母ちゃんの忠告をしっかり受け止める舞でした。
久留美の笑顔
舞は自分が書いたデザインを久留美に見せました。
「まだぜんぜん足りひんけどな。ええの思いついたら教えて」
そう言われた久留美は、「カバン置き場とかは」と答えていました。そして、ノートにメモする舞。そんな一生懸命な舞の姿を見て、久留美は微笑みます。
「夢中やな。ええな、私も新人の頃、そんな風にがむしゃらやった」
そんな久留美も、もう中堅看護師になっています。
「やれることは増えたけど、これからどうすんのか、考えなな」
そんなことがあった後のある日、久留美はキャリアアップを考えていました。
ノーサイドに久留美。同じ店にいるのにカウンターにいる久留美の父・佳晴。
「今度花園でイベントあるんやけど、一緒に行かへんか」
佳晴はオーナーを誘っていました。オーナーの返事は「まあ、ええけど」です。二人の関係も進展しそうです。
久留美がノーサイドを出ると、悠人に出会いました。悠人は大阪に戻ってきて、近くに部屋を借りて住んでいるようです。そして、久留美がキャリアアップの本を持っていることに気が付きます。
「これからどなうしていこうかなって、今日もこれから先輩に話し聞きに行くんです。じゃあまた」
別れ際、久留美を呼び止める悠人。
「ちょっと待って。親父さん元気?」
久留美がノーサイドにいることを告げると、悠人は入っていきました。その悠人の姿を見る久留美の笑顔は、特別な感じがしました。
お互いを尊重する関係
夜、部屋でデザイン考えてる舞と考え事をしている貴司。
「あんな」
二人同時に声をかけ、笑っていました。そして、貴司の話から聞きます。
「北條さんがな、連載せえへんかって。まだ引き受けた訳やないねん。内容がな、日本中旅して子供達に短歌教えるっていう連載で、留守がちになるし、舞ちゃんに相談してから決めよって」
貴司がそう相談すると、舞は貴司のやりたいことを応援すると言うのでした。
「旅せえへんかって言われた時、改めて思ってん。今の生活がどんどん大切になってるって」
旅は貴司の原点ですが、今の幸せも大事にしたいと思っているのです。そして、舞の話しを聞きます。
「私は、IWAKURAの仕事と、いろんな町工場を繋げること、両方すんのはちょっと無理あるんかなって。お母ちゃんに心配かけてしもてる。けどな、この町の工場みんなが生き残る方法考えるのは、IWAKURAの未来にとっても大事なことやと思うねん」
舞の相談に貴司は「ほんまに大事やなって思う仕事、やったらええと思う」と答えるのでした。
御園からの提案
ある日、舞は梅津で昼食を取りますが、食事をせずにデザイン画を書いていました。
そこにやって来たのは、御園でした。舞に何を書いてるか聞きます。
「板金を使った椅子です」
御園は、二人掛けにしてもいいとアドバイスします。そして、ミニテーブルとセットにしてもいいかもと更にアドバイスしました。御園は、舞が仕事を一生懸命やってる姿が羨ましく思えます。
「仕事と言えるかは微妙なところですけど」
まだ売り上げが出ていない状況をそう説明しました。
「仕事にしたら?会社作って」
御園は起業したらどうかと言うのです。
「あれから考えてみたんだけど、今舞ちゃんが考えてること、新しいと思うんだよね。元請けと下請けっていう従来の関係じゃなくって、町工場同士を横につなげていく仕事。そうやってできた品物とお客さんとを繋ぐ。今まで誰もやってこなかったことでしょ。もしかしたら、これからすごく伸びる仕事かもしれない」
舞はそう言われても自信がありません。
「冒険してみる価値はあると思う。起業するのは冒険でしょ。もし舞ちゃんが冒険するなら、私も一緒にやりたい」
それを聞いた雪乃が「舞ちゃん起業するの!!」と大声を張り上げて驚いていました。
悠人のコンサルティング
梅津の店前で雪乃と舞で起業の話をしていると、そこにお母ちゃんがやってきました。舞は家に帰って、お母ちゃんに起業の説明します。
「起業するって決めた訳ちゃうで。御園さんが提案してくれはって。私が起業するんやったら、御園さんも一緒にやりたいって」
お母ちゃんは起業するにしても、どんな仕事をするのか心配です。
「繋げる仕事。町工場同士を繋げて、新しい物作りたい。作ったものを必要としてる人に繋げて、町工場と人を繋げたい」
舞に説明されても、お母ちゃんにはピンときません。仕事として成立するのかもわかりませんでした。
そんな話をした後、お母ちゃんは悠人をノーサイドに呼び出して相談しました。
「舞がな、起業考えてるみたいやねん。町工場と人、繋げる仕事やて。悠人、起業する人、ぎょうさん見て来たやろ。そう言う仕事、どやろ?」
そして、お母ちゃんは舞に直接聞いて欲しいと悠人に頼みます。悠人は忙しいと言いながらも、舞の話しを聞きに来てくれました。
「起業ってな、簡単やないねん。たった1年生き残るのも難しい。お前もよう見てきたんとちゃうんか?社長と言うもんがどんだけしんどいんか。それでもやりたいって言うんか?」
悠人の問いかけに舞は熱く、価格競争ではなく、独自の技術を活かして町工場を助けたいと答えます。
しかし、舞の理想はわかりましたが、悠人は舞に現実的なプランを考えるように宿題を出すのでした。
仲直り
ある時、貴司がデラシネにいると、陽菜がやってきました。しかし、貴司の顔を見ると、帰ろうとします。貴司は陽菜を呼び止め、デラシネの中に入れました。
貴司がお茶を淹れている間、陽菜は辞書を見ていました。
「言葉ってさ、こんなにいっぱいいらんくない?中学に行ってわかってんけど、みんなに合わせて、ヤバイとカワイイとキモイだけゆうとったらやっていけんねん」
貴司は「キモイってそんなに言う?」と聞きます。
陽菜は、大樹のスケッチブックがクラスの友達に見られた時、友達と一緒に「キモイ」と言ってしまったことを告白しました。
「・・・帰るわ。ダイちゃんに会いたないし」
帰ろうとする陽菜に貴司が言葉を掛けます。
「陽菜ちゃん、言葉がいっぱいあんのはな、自分の気持ちにピッタリの言葉を見つけるためやで。ヒナちゃんの気持ちにピッタリくる言葉はどっちやろ。会いたないんか、合わせる顔がないんか」
しかし、陽菜は何も答えず帰っていきました。
それからしばらくして、デラシネで大樹が絵を描き、舞が悠人を納得させるプランを考えていると、陽菜がやってきました。
「ダイちゃんおる?」
大機は気にせず絵を描いています。陽菜は後ろから近づくと、大樹に話しかけました。
「大ちゃん、ごめんな。大ちゃんのこと、ほんまはキモイなんって思ったことない。これからも思わへん」
そうやって謝ると大樹は「もうええよ」と許してあげるのでした。
バイト募集
貴司は自分達の部屋で舞に報告しました。
「舞ちゃんあんな、連載引き受けようって思う。けど、デラシネは閉めたないねん。せやから、これ」
そう言って見せたのは、半紙に書いた短歌でした。
この小舟 守って欲しい 月七日 ときどき本の 売り買いもして
それを見た舞は、バイト募集の貼り紙だと気づきました。
「北條さんに頼んで、旅するの月7日にしてもろた。留守の間はバイトさんに店任せて、のんびり連載させてもらうわ」
それを聞いて、舞も賛成します。
「貴司くんのペースでやれるんやったら、ええな」
家を空けることは気がかりでしたが、貴司は連載を楽しみにしていました。
「いろんな子に短歌教えるの楽しみやわ。舞ちゃんには寂しい思いさせるかも知れへんけど」
舞はちょっと寂しそうな顔をします。
「せなな、寂しい。けど、貴司くんが新しい何か見つけてくるの、楽しみや」
再プレゼン
舞は一生懸命書いた企画書を御園に見せました。その企画書の内容で悠人に再度プレゼンします。
「IWAKURAにとってのネジみたいに、町工場の多くは部品を作ることに特化しています」
舞がそう説明すると、御園が自分の実家もそうだったと補足します。
舞と御園は、東大阪の強みの多用な技術を持った町工場を活かして、私たちの会社が町工場と町工場を繋ぎ、まだ世の中にない商品を作り出すことを考えていました。それは、オープンファクトリーの模型飛行機や小堺のハンモックのようなものです。
しかし、悠人は「まだわからん」と言うのです。
「今、やろうとしてるのは、まだ誰もやったことのない事業や。新しい事業は、世の中に認められるまで時間がかかる。それまで持ちこたえられる体力あるんか。これやったら利益計画が甘すぎる。資本調達もな。俺やったらこの事業に投資するの躊躇するわ。おふくろは?おふくろやったら、この事業に投資する?」
悠人は問題点を指摘し、お母ちゃんに意見を求めました。
「お母ちゃんやったら、投資したいと思う」
悠人はお母ちゃんが投資したいと言うのを待って、隠していた提案をしました。
「わかった。じゃあひとつ方法がある。この会社、IWAKURAの子会社として立ち上げんねん。そうしたら資金面でも経営面でもリスクを下げられる。この事業をやって行くにはそれしかないわ」
お母ちゃんが了承すれば、舞も御園も異存はありませんでした。
報告
舞は、お父ちゃんに報告します。
「お父ちゃん、IWAKURAの営業辞めます。新しい仕事、頑張るから。お母ちゃんも、我儘許してくれてありがとう」
お母ちゃんは、一人で立て直すことは出来なかったと思っています。舞が営業だけでなく、お母ちゃんを支えてくれたから、IWAKURAは復活したのです。お母ちゃんは、舞に感謝をしているのでした。
そして、IWAKURAの従業員を集めて、舞が辞めることを説明しました。
「舞がIWAKURAの子会社を設立することになりました」
そう言ってお母ちゃんが、続きを舞に説明させます。
「町工場同士を繋げて商品を開発して、お客さんに届ける仕事です。力をあわせてええもん作る、それは変わりません。これまでみなさんに教えてもらったことを東大阪全体のために活かしたいと思っています。東大阪の技術の素晴らしさを、もっともっとたくさんの人に知ってもらいたいんです。せやから、頑張りたいと思います。みなさん今まで、ほんまにありがとうございました。お世話になりました」
みんなから祝福され、背中を押してもらうことができました。
屋号決定
さっそく、御園を会社を辞めました。もう後には引けません。
そして、会社の名前を考えますが、なかなかいいものが思いつきませんでした。舞はデラシネで悩んでいます。
「繋げる仕事、縁結び・・・ダイちゃん、会社の名前どんなんがええと思う」
デラシネにいる大樹に舞が聞くと、一緒にいた陽菜が舞を注意します。
「舞ちゃん、宿題は自分でやるもんやで」
それは、短歌の宿題の時に陽菜が言われた言葉でした。
舞と貴司が家に帰ってくると、家に魚が届いていました。五島のおばあちゃんから、舞の起業祝いにと送られてきた魚です。大量の魚が届いたので、御園と久留美を呼んで一緒に食べることにしまいた。
料理をしながら、舞は閃きました。
「会社の名前、”こんねくと”はどうですか?”こんね”は五島弁でおいでってことなんです。せやから、”おいで”、”繋げる”で”こんねくと”」
御園の了解を得て、屋号が正式にきまりました。
その夜は、御園、久留美たちと楽しく過ごしました。
久留美と悠人の距離
食事会が終わって、久留美が帰ろうとすると、梅津から出てきた悠人に出会いました。
いつもの柏木公園で、ビールを片手に話しをします。
「今、何してはるんですか?」
久留美が聞くと、悠人はちゃんと説明しました。
「金稼いでる。誰かに言われたしな、それも才能やって。稼いだ金どうやって使おうか考えて、投資してる」
久留美は「今まで通り」じゃないかと悠人に聞きます。
「ちゃうねん、金増やすためとちゃう。会社育てるための投資や。世の中にはな、あんまり金にはならんけど、大事な仕事をしようとしてる会社があんねん。俺にはそういう仕事できへんけど、そういう会社に投資したら何かの力にはなれるやろ。そういうお金の使い方も悪ないんちゃうかなって」
その説明に久留美は、かっこいいと言うのでした。
「なんや、今気づいたんか」
悠人の言葉に笑い出す久留美。二人の関係が更に近づいた気がします。
そして、舞と御園の会社「こんねくと」の事務所を借りました。場所は、柏木公園の目の前です。
ついに舞たちの会社が、離陸しました。
最後に
急な展開で、舞が起業することになりました。IWAKURAの子会社ですが、個人的にはIWAKURAの別部門にするのがいいのではないかと思っています。
仕事として成立させることができるのでしょうか?
そして、来週は佳晴が活躍(?)するようです。やっとダメなお父ちゃんを卒業できるのでしょうか?
久留美と悠人の関係も気になります。距離は縮まったようですが、このまま進展するのでしょうか?
もう1カ月を切った「舞いあがれ」ですが、どう着地するのか楽しみです。