飛躍のチャンス は第23週のサブタイトルです。
東大阪の工場を繋ぐ仕事をするために起業した舞。御園という共同出資者と共に、大空へ羽ばたこうとしています。
貴司は2冊目の歌集を製作し、久留美はキャリアアップを目指しています。
そんな第23週のまとめです。
第22週「冒険のはじまり」のまとめ。
主な登場人物
梅津舞 福原遥 IWAKURA子会社こんねくと社長。旧姓岩倉
梅津貴司 赤楚衛二 舞の夫、歌人でデラシネ店主
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、故人
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母、株式会社IWAKURA社長
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、投資家
梅津勝 山口智充 貴司の父。お好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
結城章 葵揚 IWAKURAの従業員
津田道子 たくませいこ カフェ・ノーサイドのオーナー
リュー北條 川島潤哉 短歌担当編集者
御園純 山口紗弥加 こんねくと共同出資者。元新聞記者
我妻花江 久保田磨希 職人上がりの社長
的場仁 杉森大祐 板金屋。舞の協力者
仙波和樹 森下じんせい パンチング屋
木戸豪 哀川翔 五島 船大工
浦信吾 鈴木浩介 五島 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 五島 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる 五島 みじょカフェオーナー
第23週のストーリー
こんねくとの船出
舞が社長になったIWAKURAの子会社「こんねくと」。その準備で舞と御園は、IWAKURAの従業員に手伝ってもらって、借りた事務所に荷物を運び入れました。
「この工房、開発した商品でいっぱいにしよう」
御園の意気込みに舞も応え、二人で握手しました。
そして、仕事を得るために二代目社長の会で営業です。
お好み焼き屋の梅津に集まったみんなと名刺交換し、パンフレットも渡しました。
「みなさんの中で商品開発に興味の方がいらっしゃったら、ぜひ一緒にやらせて下さい」
御園がみんなに声を掛けると、板金屋の的場が声をあげてくれました。
「僕、一人紹介できそうな人いますけど。でも、仕事になるかわからへんけど。IWAKURAさんにはほんまにお世話になったんで、今度連れて行っていいですか?」
そうして、初めてのお客さんが決まりました。
デザインパンチング
ある日、的場が連れてきてくれたのは、仙波でした。
仙波は、こんねくとに入ってくると、ちゃんとした会社かどうか心配になりました。しかし、的場に諭されて、なんとかテーブルにつきます。そして、仙波が自分の所の技術を説明してくれました。
「パンチングメタルって知ってはる?金属板に穴開けた物で、建築資材にはようつかわれてるんやけど、身近な所やったらスピーカーのカバーとか。今日見せたかったのはこれや」
そう言って取り出したのは、金属板に細かい打ち抜きで絵のように見える板でした。これはデザインパンチングという技術です。絵は、お城の天守閣(姫路城?)でした。
「めっちゃええやろ。加工した時にはっきり絵が出るように工夫して、そっからデザインデータ取って穴開けてんねん。ここまで細かい穴経とピッチの狭さは、これはうちの職人らしかできへん。これは俺の趣味で作ってんねんけどな、どうせなら商品にできへんかなって」
しかし、仙波は信用した訳ではありません。またまた的場に諭されて、サンプルを置いていくことにしました。
仙波が帰ると、舞と御園は実績がなく、信用がないことを実感するのでした。その信用を得るためにも、実績を作ろうと気合を入れました。
悠人との関係と佳晴の春
ノーサイドで舞と久留美はお茶をしていました。
「この間、初めてお客さんが来てくれて。これ見て、デザインパンチングってゆうてな、小さい穴いっぱい開けて絵にしてんねんで」
舞が初めての仕事を久留美に説明しています。しかし、久留美が思うほど順調ではありません。
「この商品売れるまではお金になれへん。こっからやわ。ちゃんとお金入ってくるようにせな、御園さんの給与も出さなあかんし。創業支援金ゆうてな、3年で返さなあかんお金も借りてんねん」
そんな舞を羨ましそうに見る久留美。
「すっかり社長さんや。悠人さんもなんだかんだゆうて、心配してたで」
久留美から悠人の名前が出て驚く舞。悠人に会っているのかと久留美に聞きます。
「たまにな。世間話か投資の話しやけど。意外に面白いねん。お父ちゃんともよう飲みに行ってるようやしな」
悠人の事件後、佳晴は舞の結婚式に悠人を連れてくるなど、仲の良さはわかっていました。
「へえ、案外気があうねんな。お兄ちゃんとどんな話しするんやろ」
そう聞くと、久留美は「お父ちゃんの恋愛相談とか?」と笑います。
佳晴は、ノーサイドのオーナーといい雰囲気です。そう言えば、舞の結婚式のブーケトスを受けたもオーナーだと言っていました。これは、春が近そうです。
ランプ
貴司が部屋で本を読んでいると、舞に声をかけられました。
「なあ、貴司くん、ちょっと見て。ええこと思いついてん。これランプにしたらどうやろ。これをデザインパンチングに変えて、電球を囲ったら光が漏れて、ええ感じに模様が浮きでてくるんちゃうかなって」
貴司は「おもろそうやな」と好意的に受け入れてくれます。その言葉が、また舞に頑張れる力をくれるのでした。
舞は後日、御園とも相談しました。
「ランプか、いいかも」
御園の反応も良かったので、あとはターゲットとコンセプト決めて提案することにしました。
そして、仙波を呼んで、考えた商品をプレゼンです。
「平らな箱型の照明にして、天井に絵を浮かべるような形にしたら、デザインパンチングが活かされると思ったんです」
御園と二人で考えたキャッチコピーは「日常に特別な時間を灯すランプ」。ストレートな表現になりました。
これを見て、仙波が一緒にやってくれるかが問題です。舞と御園は、一緒にやってくれるかと聞きました。
「よっしゃ、やったろ。いやーええアイディアもろたわ。何かおもろなってきたな」
最初は半信半疑だった仙波ですが、すっかりやる気になっていました。
試作品づくりの問題点
「早速、試作のご相談です。今の構想やと、メインのパンチングメタルと土台と外枠が必要です」
デザインは舞が担当します。そして、設計は紹介者でもある的場にお願いしようとしましたが、的場からはいい返事をもらえませんでした。
「金属加工と言ってもいろいろあって、特に照明器具の加工は光源の選定やら照度やら、細かい規定があるんです。せやから、加工技術を理解した上で、専門の設計ができる人に頼まなあかんのです」
ランプを作るのは決めましたが、そこまで細かいことを調べていませんでした。設計の担当と板金屋さんを新たに探す必要があります。
「我妻さん、どう思います?」
的場は仙波に聞くと、仙波は「ええ!?」と拒否反応。舞と御園は誰のことかわかりません。
「職人上がりの社長さんでな、設計から加工まで何でもやってくれます。照明器具にも詳しいと思います」
舞と御園に的場が説明してくれました。それを聞いて、舞は頼みたいというのですが、仙波は「頼み方間違えたらえらいことになんで」と言うのでした。
我妻
その我妻を工房に呼びました。早速、企画書を見てもらいます。しかし我妻は、即座に断りました。御園は試作品の開発費用をちゃんと払うことを伝えますが、問題はそこではありません。
「こんな見込みあらへんようなものに、試作もなんもあるかいな。的場さん、勘弁してえな。IWAKURAさんの話しゆうから来たんや」
しかし、舞たちは引き下がる訳にはいきません。
「すみません、こんな小さい会社で。信用も何もないのはわかってます。けど、これ仙波さんの所で作ったデザインパンチングです。この細かい打ち抜き、町工場ならではの技術が詰まってます。私はこれを多くの人に見てもらいたい。工業製品ではなく、身近なインテリアとしてやったら、それも実現できると思うんです」
しかし、我妻は取り合いません。
「仙波さんの所では、1ミリの板厚に0.5パイの小さな穴をあけることができるんです。せやから写真みたいなリアルな絵ができるんです」
舞は必死に食い下がります。しかし我妻は、鉄板にネジで止めるだけの厚さがないと言います。
「でもバーリングしたら、タップが立つのでそこでねじ止めできます。デザイン的にもかわいいと思います」
バーリング加工は、素材に穴をあけ、その穴の縁を円筒状に伸ばして板厚を増すことを言います。その伸びた部分をタップというのです。
その説明を聞いた我妻は、舞の知識に感心しました。提案書を再度見直します。
いっぺんだけ付き合うてあげる
打ち合わせ後、舞は我妻とサシで飲みに行きました。作業着でない我妻は、大きな虎のプリントのシャツを着ていて、まさに大阪のおばちゃんです。
「あんたIWAKURAさんの所の娘さんなんやて?ええご身分やな。あないな大きな工場ともなると、娘に会社作って遊ばせておく余裕があんねんな」
言い方に棘がありますが、思ったことを口にするタイプなのかも知れません。舞は、遊びでやってる訳ではないと強く否定しました。
「どこの工場も今、生き残るだけで精一杯や。売れるかどうかわからんもの作ってる余裕なんかあらへんねん」
我妻の言っていることは最もです。しかし、それはハンモックを作る前の小堺が言っていたことと同じです。舞は、東大阪の工場が連携して、東大阪の特色を活かしたモノづくりをしたいと訴えます。
しかし、我妻は「時代の流れには逆らえへん」と言うのでした。それでも、舞は食い下がります。
「せやから新しいことをするんです。うちの仕事はまだ手探りです。けど、誰もやってないことを挑めるぐらいやないと、今の状況は変えられません。その最初の一歩を我妻さんと仙波さんと、一緒に踏み出したいんです」
舞の熱意に我妻も気持ちも変わります。
「覚悟はあんねんやろうな。中途半端に投げ出したら、二度と仕事せえへんで。いっぺんだけ、付き合うてあげる」
そうして、我妻が仲間になりました。
背中を押す
ランプを試作してくれる会社が見つかった舞。どんなデザインで作ってもらうかあれこれアイディアを練っていました。そこに久留美からメールがきました。
「明日のお昼、久しぶりに貴司くんも誘ってごはん行かへん?」
そして次の日、梅津で待ってる舞と貴司。そこに久留美が夜勤明けでやってきました。
「あ、こないだゆうてたあれなんやったっけ。なんかええアイディア、思いついた?」
久留美はデザインパンチングの進捗を聞きます。舞は、ランプにすることを伝えました。
「アイディアのスケッチも見せてもらったけど、ええ感じやったで」
貴司がそう言うと、久留美は羨ましそうです。
「やっぱり二人で仕事の相談とかもするんや。ええなー」
それより、久留美が呼び出した理由を聞きたい舞。久留美は、カバンからパンフレットを取り出しました。
「フライトナースって知ってる?事故や急病や災害で、要請があった時にドクターヘリに乗って一番最初に現場に行く看護師のことなんやけど。これ、挑戦したいなって思ってて」
そのパンフレットは、長崎にある総合病院のパンフレットでした。フライトナースになると、久留美は長崎で働くことになります。
舞は「やりたいこと、やったらええ」と背中を押すのでした。久留美も、誰かに背中を押して欲しくて、舞に連絡したのかも知れません。
人に届くまでがモノづくりや
ある日、こんねくとの工房に的場、仙波、我妻が集まりました。
「あれから考えてんねんけどな。こういう形状はどうや」
そう言ってデザイン画を見せたのは我妻です。形状は円筒形になっています。
「このサイズ、もっと大きくならへんかな。この狭い中に穴開けても何見せたいかようわかりませんよ」
仙波の工場の職人がそう口を挟みます。しかし、スルーされて、今度は仙波が考えた物を出しました。
「それよりこれ見て。十二面体で、全部に星型の穴開けて、プラネタリウムみたいにするのはどうや」
しかし、十二面体は加工方法や組み立てのことを考えると、想定の予算をオーバーしてしまいます。
御園は、円筒形の天板の大きさを100ミリより大きくすることを提案しました。その提案が受け入れられ、120ミリで調整することになりました。しかし、仙波の職人は「150ミリ」を希望しますが、仙波に却下されます。
「デカすぎても邪魔になるしな、いっぺん120ミリの中に何が描けるかデザイン考えてみよか」
そうして、3社の打ち合わせの後、いくつかの試作品を作り、ランプが完成しました。
円筒形のランプは、側面に灯台と海、天板には飛行機がパンチングされていました。天井に飛行機が映し出されます。
「ほんまにみなさんのおかげです。ありがとうございました」
舞はみんなにお礼を言いますが、我妻がたしなめます。
「まだ完成してへんで。人の手に届くまでがモノづくりや」
台風の夜
風の強い夜。ノーサイドで舞が久留美にランプの渡します。
「これ付けたらええ感じになると思うねん。使ってみて感想聞かせて欲しい」
久留美は嬉しそうに受け取りました。話はそれだけではありません。
「久留美、おっちゃんには相談した?」
しかし、久留美は父・佳晴に話しをしていませんでした。やはり、父親を一人置いていくことができないと思っているのです。
そんな時、店の扉が開きました。入って来たのは、悠人と佳晴です。
「おばちゃん水ちょうだい」
酔っ払った佳晴に水を飲ませ、悠人が家まで送ることにします。悠人は舞に台風で風が強くなるので、早く帰るように言うのでした。
舞は、デラシネが気になって貴司の元へ向かいます。お母ちゃんは名古屋に出張に行っていますが、電車が止まって名古屋に泊まることになりました。
舞と貴司は、一つの毛布に包まり暖を取り、台風が過ぎるのを待ちました。
停電
悠人と久留美は佳晴を家まで連れて帰り、寝かせます。悠人がすぐに帰ろうとした時、停電しました。
久留美は悠人を危ないからと引き留めます。悠人は遠慮しますが、久留美に押し切られるように留まることになりました。停電しているので、久留美は舞からもらったランプを明かりの代わりにします。
「お仕事どうですか?」
久留美が悠人に訊ねると、悠人は素直に話し出しました。
「知り合いの社長に何のために仕事やってるんですかって聞いてみてん。そしたら、一人でも多くの人を幸せにしたいからって言われた。びっくりしたわ。俺そんな風に考えたことなかったしな」
その悠人の言葉に久留美は嬉しくなります。拗ねているような、斜に構えていた悠人はもういません。
「そっちはどうなん?何か悩んでるみたいやけど」
久留美も素直に打ち明けました。
「仕事のキャリア考えて、長崎行ってフライトナースなろうって思ってたんです。でも、今の病院でやれることいっぱいあるから」
それを聞いて悠人は納得しました。佳晴と飲んでいる時、佳晴が「なんも相談してくれへん」と言っていたのです。
「親父さんのこと、もうちょっと信用したって。大丈夫や。子供が頑張ってたら、親父も頑張れんねん。離れたら離れただけ強くなる、心も絆も。俺はそう思う。自分の幸せ考えて、前に進んだ方がええ」
心配してくれる悠人を優しい目で見つめる久留美でした。
一歩踏み出してみたら?
翌日、久留美が佳晴に話しをします。
「フライトナースになるために長崎の病院の面接受けたい。ドクターヘリの体制が整ってる病院があんねん」
そう言われ、驚く佳晴。佳晴はドクターヘリは危ない仕事だと心配するのでした。
「けど、挑戦してみたい」
久留美がもう決めていることで、佳晴も覚悟を決めます。
「やりたいんやったらやったらええ。お父ちゃんも頑張る。せやから久留美も頑張れ」
ただ、一人残された佳晴の事が心配です。
「お父ちゃんは大丈夫や。居酒屋の仕事もだいぶ板ついてきてな、そろそろシフトマネージャかゆわれてんねんぞ」
昔から仕事のことは、久留美は気にしていません。
「仕事はええけど、私はノーサイドのオーナーの津田さんと一緒になってくれたら嬉しいな」
佳晴は「はあ!?」と言いながら、ドキっとしていました。
「好きなんやろ。お父ちゃんも一歩、踏み出してみたら?」
悪い話やない
舞と御園は、ランプの販売用HPの撮影の撮影をしていました。そんな時、仙波がある人を連れてきました。
「株式会社SIAZ バイヤー 瀧本慶」
超大手のインテリアメーカのバイヤーです。
「仙波さんからお話を伺い、御社のHPを見ました。これ、素晴らしい商品です。この商品、ぜひうちで取り扱わせてもらえませんか?」
瀧本は、このランプを海外も含めて販売したいと考えていました。それは、東大阪で作ったランプが広く届けられるのは、舞たちにとってもいい話です。
しかし、瀧本は価格を1万円程度にすると言うのです。全て東大阪の工場で作ると、1個3万円以上の価格にしないと採算が取れないと舞たちは考えていました。
舞たちは、東大阪の町工場ブランドを活かすために会社を作りました。東大阪の職人さんの技術を安売するつもりはありません。そして、設計も加工も東大阪ですることに意味があるのです。
「もちろん、この技術の価値は十分理解しております。なので、デザインパンチングは仙波さんにお願いし、他の部品は中国の工場にお願いしようと思っています。そうすることで、安く大量生産することができるんです」
そして、仙波は「これ悪い話やないと思ってんねん」と言います。勝手な物言いですが、舞には仙波の気持ちも理解できました。こんねくとで売るよりも大手メーカーで売った方が、より多くの人に届くはずです。
怒り
仙波と瀧本が帰った後、御園は怒っていました。
「なんで突き返さなかったの?検討の余地もないじゃない。仙波さんも勝手よ。私から連絡しておく、もうすぐ販売用のHPもできるし、今更委託できませんって」
しかし、舞は結論をまだ出せません。瀧本が売るとなると、こんねくとは販売権を失います。ただ、仙波にとっては、大手メーカーとの取引のチャンスです。
「最終判断はあなたに任せる。でも社長なら、自分の会社のことも考えて。ランプを手放すってことは、この1ヶ月取り組んできた仕事が、無駄になるってことだからね」
御園に言われ悩む舞。舞は我妻に連絡し、今回の話をしました。
「申し訳ありません。仙波さんにランプの販売を大手のメーカーさんにお願いしたいと言われました。海外で大量生産して、販売するそうです。仙波さんがぜひそっちでやりたいと」
我妻は呆れています。
「呆れたお人好しやな。うちは試作しただけやからかまへんけど、結局仙波のところだけが得をするって話しやろ」
我妻は自分のことだけでなく、舞たちのことも考えて怒ってくれていました。それでも、舞には仙波のチャンスを潰すことができませんでした。
「それは、あんたらがやろうとしてたことと違うのとちゃうか。うちはあんたらの志に共感してたんや。あんたらが新しいことやるゆうたからつきおうたんやで」
そう言って我妻は帰って行きました。
再スタート
落ち込む舞。リビングで元気のない舞にお母ちゃんが「仕事どない?」と声を掛けました。
舞は大手メーカーに譲ることにしたと伝えます。もっと実績があれば、結果は変わっていたかも知れません。
「しゃあないな。信用ゆうもんは、そない簡単に手に入るもんとちがう。必死に頑張って、実績作って、それを何年も積み重ねて、ようやっと手に入るもんや。落ち込んでる場合やないで、できることからやって、一歩一歩進んでいくしかあらへん」
お母ちゃんの励ましに舞は前を向くことができました。
それから御園と二人で飲みに行きました。
「最初の1軒目があかんかったからって、へこんでる訳にいきませんよね。20件でも30件でもどんどん仕事して、信用勝ち取りに行きましょう」
そんな前向きな舞の発言に笑い出す御園。まだ会社は始まったばっかりです。一度ダメでも前を向く必要があります。
「我妻さんにももっぺん会って、次の商品こそ一緒に作りましょってお願いしてみます。もっといろんな工場に行って、職人さんにも話し聞いて、どんなことができるのかもっぺん考えてみます」
そして、次の商品はターゲットを明確にして、少量でも売れるものを作ろうと誓いあうのでした。
ただ、御園はしっかりしていました。
「ランプの件、アイディア提供と企業連携による技術開発料として、ちゃんとお金はもらいます。再スタートだね」
舞だけでは交渉は困難だったかもしれません。
佳晴のアホ
御園と飲んでいたノーサイドには、佳晴の姿もありました。オーナーは佳晴に対して怒っています。
「は?あんた、なにゆうてんの」
佳晴は久留美に言われたようにオーナーと一緒になりたいと思っていました。しかし、もじもじして、上手く伝えられません。オーナーに「はっきり言いや!」と怒られてしまいます。
「せやからその、結婚せえへんか。ほら、津田さんみたいにしっかりした人と一緒になったら、久留美も安心やん。老後も安泰やから」
絞りだした言葉は、プロポーズの言葉にしては、あまりにも「アホ」な言葉でした。
「帰り。あほ、誰があんたの家政婦なんねん」
オーナーは怒ってしまいました。
舞は佳晴を梅津に連れて行きます。そこに久留美もやってきました。久留美は、オーナーになんと言ったのか問い詰めます。
「津田さんと一緒になったら、老後も久留美も安心やとか、そんな感じの。。。」
流石に久留美も呆れてしまいました。
「違うんやって、そういうつもりでゆうたのと違うねん。確かに言葉はまちごうた。せやけど、オーナーと一緒にいたら楽しいし、これからもずっと一緒にいて欲しいと思ってんねん」
それを言っていたら、返事は違ったかも知れません。舞の提案で、もう一度オーナーに正直な気持ちを伝えることにしました。
佳晴の依頼
数日後、舞が会社に佳晴が訪ねてきました。
「やっぱりこのままじゃ終わられへんねん。舞ちゃんゆうてくれたやろ、もっぺん気持ち伝えたらええて。オーナーさんに改めて話ししたいんや」
そんな佳晴に御園は「恋愛相談所じゃない」と突っ込みます。
「すみません。ほんで、頼みたいことゆうのは、指輪なんやけど。ここなんでも作ってくれるんやろ。オーナーに贈る指輪、作ってくれへんやろか」
オーナーは金属アレルギーで、いつもは指輪もアクセサリーも付けていません。そんなオーナーでもつけられる指輪を作って欲しいと言うのです。
「なんとかしてみます。任せて下さい」
舞は悩みながらも、佳晴に約束しました。
そして、我妻を呼んで相談します。
「チタンでお願いしたいんです。金属アレルギーの方に渡す指輪なんです。チタンて空気に触れると表面に酸化被膜ができるから、肌に触れても汗で金属が溶けへん。せやから、金属アレルギーの方でも安心して使えるんちゃうかなって」
そして、それは新しい仕事にしようと言うのです。指輪だけでなく、ネックレスやピアスもチタンで作って売り出そうと言うのです。
「あんたら、アイディアだけは毎回ええな。この前みたいなことにはならへんやろな?チタンでアクセサリーか、ええとこ目つけたと思うで。やろか。ほんで、納期はいつ?」
舞は申し訳なさそうに「指輪は2週間後」と言うと、我妻は飲んでいたコーヒーを噴き出してしまいました。
プロポーズ大作戦
舞たちのアクセサリー作りが始まりました。作る指輪はハグをイメージしたもので、設計を我妻にお願いしました。
その頃佳晴は、家でオーナーに伝える言葉を手紙にしていました。それを久留美に見られ、恥ずかしそうです。
そうして2週間後、我妻が急ピッチで作った指輪は何とか間に合いました。舞と久留美がノーサイドの前で待っていると、佳晴がラグビーのユニホーム姿で登場です。佳晴は指輪を受け取り、ノーサイドに入って行きます。
オーナーは「閉店時間やねん」と冷たく言います。佳晴は構わず、準備した手紙を読み上げました。
「津田さん見て下さい、ドーベルマン望月の復活です」
しかし、オーナーは「ブルドックやんか」と突っ込みました。佳晴は手紙を読まず、自分の言葉で話し出します。
「何も上手く行かへんかった時、ドーベルマンゆうてくれたのはあんただけやった。あんたと話してる時は、しんどいこと全部忘れられた。あんたがいてくれたから明日もまた頑張ろう思えた」
そして「好きだ」と言うと、佳晴は指輪を取り出しました。しかし、オーナーは「指輪つけられへん」と断ります。それでも、付けられる指輪で、今日渡したいと迫ります。今日はオーナーの誕生日でした。
オーナーは恥ずかしそうに左手を差し出しと、佳晴が指輪をはめます。
改めて佳晴が「結婚して下さい」とプロポーズすると、オーナーの返事は「・・・はい」でした。
新しい命
佳晴がプレゼントした指輪と他のアクセサリーをネットで販売し始めました。
その結果、沢山の予約が入ってきました。こうやって、舞の「こんねくと」は少しずつ軌道に乗っていきました。
そして、梅津では二代目社長の会が行われています。そこには、今まで参加していなかった御園や我妻も参加していました。
「IWAKURAさんは無茶ぶり多いし、しぶとう粘るし、叶わへんわ」
我妻にそう言われますが、アクセサリーの成功で嬉しそうです。
「こちら、新メニューの筋こんねくと」
雪乃が出してきたのは、普通の筋コンでした。そして、勝はお好み焼きを持ってきます。
食べ物を前に、ちょっと気分が悪くなる舞。
しばらくして、舞は夕方デラシネに行きました。貴司は書いた短歌を封筒に入れているところでした。
「もう仕事終わったん?」
そう言われた舞は、貴司に伝えます。
「はよ終わらせて病院行ってきた。赤ちゃん、できた」
嬉しそうな貴司。貴司は舞を優しく抱きしめるのでした。
最後に
もう1カ月を切り、起業してもたもたしていられない事情もあり、なんとか軌道に乗ることができたようです。
それにしても、やっとできたランプ(こんねくと価格3万円以上するもの)を、簡単に久留美にあげてしまう舞の太っ腹に驚きです。久留美と悠人の関係を進展させるために必要な経費と言えば、そうなんですけど。悠人も舞の仕事ぶりを見ることができたというのもあります。
そして、来週は舞の子供とばんばの話しがメインのようです。ばんば、大丈夫でしょうか?
フライトナースになった久留美がいれば、大丈夫な気もしますが、どうなんでしょう??
残りあと3週。ここからが追い込みです。