私らはチームや は第9週のサブタイトルです。
航空学校の座学過程も終わり、帯広のフライト過程に移ります。
座学過程で一緒だった同期とも、絆は深くなっていきます。
そして、舞の兄・悠人は、会社を辞めたようです。
そんな第9週のまとめです。
主な登場人物
岩倉舞 福原遥 パイロットを夢見る学生
梅津貴司 赤楚衛二 舞の幼馴染、元システムエンジニア
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、ヘッジファンド
柏木弘明 目黒蓮 同期。航空一家
矢野倫子 山崎紘菜 同期。帰国子女
中澤真一 濱正悟 同期。妻子持ち
吉田大誠 醍醐虎汰朗 同期。母子家庭
水島祐樹 佐野弘樹 同期。御曹司
大河内守 吉川晃司 フライト過程教官
梅津勝 山口智充 貴司の父。浩太の幼馴染のお好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
第9週のストーリー
貴司からの知らせ
2007年4月、帯広。座学過程を終了し、帯広フライト課程に進んだ舞。いよいよ、空を飛ぶ訓練が始まります。
そんな時、貴司から絵葉書が届きました。
「舞ちゃん、お元気ですか?僕は今、福井の港で働いてます。もうちょいいろんな所行って、自分の言葉を探そうと思ってます。舞ちゃん帯広で飛行機乗るんやろ?楽しみやね」
そして、絵ハガキには俳句が書いてありました。
「トビウオが 飛ぶとき他の 魚は知る 水の外にも 世界があると」
貴司も元気でやっているようです。
鬼教官
食堂で、同期のみんなで食事をしていると、中澤が聞いた噂話を教えてくれました。しかし、倫子は信じようとしません。
「また大げさなこと言って。都築教官のことだって大した事なかったじゃない」
実は大したことがあったのですが、倫子たちは知りません。遅れてきた舞が何のことかと聞きます。
「こっちでは有名な話なんだよ。自衛隊出身の鬼教官がいるんだって。自衛隊時代は戦闘機のパイロットで、情け容赦なく学生をフェイルしてしまうそうだ」
柏木は、能力がない人間を退学させるのは、教官の仕事で当然だと言うのでした。
そして、担当教官の発表は、今日を予定しています。舞は、中澤に鬼教官の名前を聞きます。
「人呼んで帯広の雷様。サンダー大河内」
そんな舞たちは、3人1チームで担当教官から指導を受けます。舞は、柏木と水島と同じチームになりました。
そして、担当教官としてやってきたのは、大河内でした。名前を聞いていた鬼教官で、舞と水島は唖然としてしまいました。
フライト前日確認
「まずはプロシージャが行えるか、一人ずつ確認する。岩倉学生から」
明日の初フライトに向けた最終確認が行われました。プロシージャは、飛行機を安全に飛ばすための基本的となる作業です。操縦席に乗り込んでから降りるまで、必要な手順を声に出して確認していきます。その数、なんと182項目。ひとつの漏れも許されません。
「サーキットブレーカー、オールイン。パーキングブレーキ、セット・・・」
舞は少ししたところで、思い出せなくなってしまいました。
「岩倉学生はプロシージャを覚えていないのか?」
緊張もあってか、覚えていたはずのプロシージャが出てきません。柏木に変わると、柏木は完璧に言うことができました。
「悪くはない。空では刻一刻と状況は変化する。シミュレーターとは全く違うぞ。次ぎ、水島学生」
なんと、水島も覚えていませんでした。
女性に譲る
学生たちは、翌日のフライトに向けた準備を行います。安全なフライトのためには気象データの解析が重要です。
「明日の説明ですけど、上空では寒気移流の場ですが、地上では高気圧の張り出しで1日を通して晴れ。という流れの説明でどうでしょうか?」
舞は天気図を見て、そう説明しました。しかし、柏木は「それでは不完全だ」と言うのでした。
そして、倫子と中澤と吉田のチームでも、問題が発生していました。
「じゃあ次は、訓練空域を決めましょ。明日は、南東風が予想されるから、雲がたまるHK2-9を避けて、HK2-4にしよ」
地図を区分けして、飛行する場所を数字で言っていました。倫子の提案に中澤が反論します。
「明日は初めてのフライトなんだし、飛びやすい海岸線の方がいいと思う。HK2-12だ」
しかし、風向きで海岸線を飛ぶと霧がでるのではないかと、倫子が心配します。中澤は、時期的にまだ大丈夫だろうと簡単に考えていました。
「それを示すデータがないじゃない」
倫子に詰め寄られると、中澤は「ここは女性に譲るとしよう」と言うのでした。
その言い方に倫子は、部屋に帰ってから舞に愚痴るのでした。
空を飛ぶ楽しさ
舞は、寝る前にプロシージャの確認を一緒にして欲しいと倫子に頼みますが、断られてしまいます。仕方なく男子の部屋に行き、水島と一緒に確認することにしました。
確認をしていると、柏木が風呂から帰ってきました。柏木は、段ボールでコックピットの中を再現しているのを見て、「お前、暇なのか?」と言うのでした。
そんな時、水島に電話がかかってきました。水島が部屋から出て行ってしまったので、柏木が代わりに確認してくれます。
最初から仕切り直して、舞が確認項目を口に出していきます。最後まで言い終えて、柏木に合ってるか確認しました。
「うん、あってる。だいぶ遅いけど」
少し安心した舞は、柏木も確認するかと聞きますが、柏木は大丈夫だと断るのでした。
舞は、柏木に明日のフライトが不安だと、本音を漏らします。
「明日のフライト、俺は楽しみだ。だって、飛ぶためにきたんだろう?」
そう言われ、舞は飛ぶことを楽しみだったことを忘れていたことに気づきます。そして、水島と3人で頑張ろうと誓うのでした。
飛行準備
ついに初フライトの日を迎えました。飛行準備室で、大河内にフライト計画を説明するブリーフィングが行われました。安全にフライトが行えるか、教官たちに説明するのです。
大河内は「わかりました」と言い、舞は安心するのでした。
そして次は、セスナ機の機体チェックです。
「報告します。外部点検異常なし。柏木学生以下2名、搭乗します」
点検結果を大河内に報告すると、大河内は言います。
「岩倉学生はプロシージャはできるようになったのか?」
舞は「はい」と答えると、舞が一番最初の操縦者に指名されました。
マックスパワー
舞たちが乗り込み、プロシージャで畿内の確認をします。柏木、水島は、後ろの席から心配そうに見つめています。
プロシージャが終わり、プロペラを回し、運行管理室に連絡します。
「パーキングブレーキリリース」
動き出すセスナ。滑走路に入っていきます。
「マックスパワー」
ゆっくり走り出すセスナ。緊張する舞。機体が右にズレていきます。
「センターがズレてる。目線を遠くへ」
そして、セスナは飛び立っていきました。
初フライト
飛び立ったセスナは、フラフラしてしまいます。そんな時は、教官側の座席にも操縦桿があり、学生を助けながら指導するのです。
「この上昇姿勢を目に焼き付けろ」
大河内に言われた言葉も、運行管理室からの通信も、舞は焦ってしまって聞こえていないようでした。
「よし、水平飛行をキープだ」
少しすると、やっと余裕が出てきて、自分が飛んでいることを自覚することができました。嬉しくて泣きそうになります。
「岩倉学生、現在のヘディングから左に360度旋回」
大河内からの指示で左を確認して、旋回に入ります。しかし、機体が下を向いてしまいます。
「ピッチダウンになっている、支えろ。ピッチアップ」
そう言われても、舞は上手くできません。焦ると、大河内が操作して、期待を安定させることができました。
「よし交代、水島学生」
しかし、水島はフライトに酔って、エチケット袋に履いていました。そこで、柏木に代わります。
舞は、緊張で汗だくになっていました。空の上で柏木と交代します。柏木は、冷静に操縦することがきていました。
そして、フライトから戻るとすぐに始まるのが、デブリーフィング。反省会です。
その後は夕飯ですが、酔いもあってか、食欲のない舞。それは、倫子たちも同じ感じでした。そして、みんな上手く行かなかったのか、落ち込んでいました。
「ちゃんと乗れるようになるのかな?」
母の心配
大阪では、お父ちゃんとお母ちゃんは、貴司の実家のお好み焼き屋で食事をしに行っていました。
「今日な、舞初めて自分で操縦して飛行機飛ばすんやゆうてたんやけど、連絡がないねん。心配やし、電話してみようかな?」
しかし、雪乃に止められます。そんな雪乃も、貴司から手紙がきていないかと、そわそわしている毎日なのでした。
そんな時、舞はメールを打っていましたが、上手く送ることができませんでした。布団の中に入っていたものの、やっとお腹が空いてきて寝れなくなってしまうのでした。
舞は、一人で談話室でカップラーメンを食べていると、吉田がやってきます。吉田も同じ感じだったようです。一緒にカップラーメンを食べました。
「今日のフライトさ、緊張したけとちょっと楽しかった。いつか自分で飛ばしてみたいって憧れてさ、いろいろ勉強して今日初めてこの手で操縦して、緊張したけど楽しかった」
そして吉田は、舞に感謝の言葉を伝えました。
「岩倉さんがいてくれて良かった。宮崎で諦めてたら飛べてなかった。ありがとう。岩倉さん、困ったことがあったらなんでも言ってきて」
母親の看病のために1カ月、吉田は学校から離れていました。そこで諦めてしまいそうになった時、舞や他の同期が教官に掛け合ってくれたのです。
そんな親密そうな二人をたまたま通りかかった柏木が見ていました。
大阪に悠人
舞がバイトしていた「ノーサイド」に久留美がいました。ニヤニヤしながらメールを打っていると、オーナーに「彼氏?」と聞かれます。
しかし、メールをしていたのは、舞とでした。
「舞です。フライト訓練毎日大変みたいです」
時間を見ると、仕事に行く時間になっていました。看護学校を卒業した久留美は、看護師になっていたのです。
そして、店を出ようとしたとき、入ってきた人とぶつかってしまいます。それは、悠人でした。悠人と久留美は舞を介して、お互い存在は知っています。しかし、悠人は久留美の名前を憶えていませんでした。久留美は、まだ悠人のことを覚えていました。
「東京で働いてるんですよね?IMORI電機でしたっけ?」
しかし、そこはもう辞めてしまったと悠人は言うのでした。
「今は、投資。こっちの会社、リサーチにきてんねん。久留美ちゃん、看護師になったんや」
久留美は、花園総合医療センターの救命救急で働いてますと答えました。
「はあ、またきっつい仕事選んでんねんな。給料安いんやないの?もっとええ仕事ありそうやけどな。俺に金預けてくれたら、何倍にもできんで」
そんな感じ悪い悠人と別れて、久留美は仕事に向かいました。そして、舞にメールを淹れました。
「今日、舞のお兄ちゃんに会ったでー。お兄ちゃん、会社辞めたらしいなぁ。あんな感じやったけ・・・」
ヘッジファンド
久留美からのメールを見て、舞は悠人に電話しました。
「会社辞めたってほんま?お父ちゃんとお母ちゃんにもゆうた?」
しかし、悠人は「大したことちゃうし」と連絡はしていませんでした。
「お兄ちゃん、投資家、なんの?」
舞の質問に悠人は答えます。
「ヘッジファンド。舞にはわからん思うけど、でかい仕事してんねん。前よりもっと稼いでるから心配せんでええ。そんなことより、お前はどうやねん。ええ感じに空飛んでんか?」
舞は苦戦してますが、悠人には正直に言えなかったのでした。
「ちゃんと、飛んでんで」
逆だ
毎日のフライト訓練で、舞は苦戦していました。
「岩倉学生、この畑の線をキープしろ。風に流されている」
舞はキープできずに期待をフラフラさせていまいます。
「風はどっちから吹いているんだ?」
舞は「右です」と答えますが、大河内は「逆だ」と言うのでした。
フライト訓練の難易度は日々上がっていきました。基本的な空中操作を徹底的に学びます。舞だけが苦戦している訳ではありません。倫子も苦戦していて、揺れがひどく、中澤が酔っていました。
そして、舞がもっとも苦しんでいるのが着陸です。
「速度多いぞ。パワー絞れ。センターズレてる、足使え」
大河内からのダメだしになんとか対応しようとする舞ですが、上手く来ません。
「ダメだ、早い」
大河内に直されてしまいました。
課題
フライト訓練後、デブリーフィングを行います。
「柏木学生、自身の課題は?」
大河内に聞かれ、柏木は答えます。
「ターンのバンクコントロールです。僕自身、まだ納得のいくできではありません」
大河内に他にはないかと聞かれますが、柏木は他にはないと言うのでした。
「もっとも事故を起こすパイロットの特徴は?」
そう聞かれた柏木は、集中力が続かない人と答えます。
「違う。自分を過信する人間だ」
柏木は全部を否定された気持ちになりました。しかし、柏木の自信は揺るぎません。
「岩倉学生。今日のフライトの課題はなんだ?」
舞は「着陸が」と答えます。
「着陸態勢に入った時、エアスピードが早く、パスも高すぎた。滑走路に寄せていく感覚も読めていない。岩倉学生は慎重になりすぎて、ひとつひとつの操作が遅い。早く操作感覚を覚えろ」
舞も全部をダメだしされてしまうのでした。
ゴーアラウンド
フライト訓練は1日1時間、限られた時間の中で技術を習得し、審査を突破しなくてはなりません。審査に落ちてしまうと、退学となってしまうのです。中間審査が少しずつ迫ってきていました。
中間審査まで、残り15フライトになりました。
部屋で自主練する舞。大河内の言うことを思い出して、落ち込んでしまいます。そんな舞に柏木が声を掛けますが、舞は気付きません。
「岩倉、気にしてるのか?教官に言われたこと」
落ち込む舞に柏木は、「落ち込む暇があったら、打開策を考えろ」とアドバイスしてくれました。
舞もその言葉で、弱気になっていたことに気づきました。
しかし、物事はすんなりと行きません。次のフライト訓練でも上手くいきませんでした。
「沈みに応じて返せ」
大河内に言われても、その「沈み」が舞にはわからないのでした。
「ゴーアラウンド(着陸のやり直し)」
そう言われ、着陸をやり直すことになりました。そんな舞を柏木が気にしています。
吉田の心配
中間審査まで9フライトになりました。着陸が上手くできな舞は、落ち込んでしまっていました。
そして、中澤も食欲がありません。
「岩倉、食べ終わったら部屋に来い。着陸のイメトレ付き合ってやる」
そんなことを柏木が言うとは思っていなかった舞は、かなりびっくりした様子です。それ以上に、吉田は二人の関係を心配しているようでした。
柏木の部屋で、舞の作った段ボールの機材を使って練習です。
「慎重になりすぎて、積極的に機体のコントロールができていない。外も見えていない。滑走路も見えていない。自分の姿勢もわかっていない」
ダメだしが多すぎます。
「もう1回。目を瞑って、イメージしながらやってみて」
繰り返し練習する二人でした。
中澤の問題
柏木と舞が練習している間、柏木と同室の水島は中澤たちの部屋にいました。その部屋では、倫子たちが明日の飛行計画を立てていました。
「なんであんたがここにいんのよ!」
倫子に怒られる水島。
「青い春を邪魔したくないのよ」
水島がそう言うと、吉田がハッとするのでした。
そんな水島を放っておいて、明日の訓練区域を決めようとしますが、中澤が落ち込んでいました。
「もう1週間妻と連絡が取れていない」
理由を聞くと、中澤の妻と連絡が取れていないのが、落ち込んでいる原因でした。
水島も参加して、中澤が連絡取れない理由を考えますが、中澤にはわかりませんでした。
「応援してくれるって言ったのに」
中澤はそう言いますが、中澤の妻はワンオペで家事と育児をしています。それと、女性への言葉遣いが原因かもしれません。
そんな時、水島がいつもの軽い感じで倫子に質問します。
「倫子ちゃんは?応援してくれる的な彼氏いないの?」
しかし、倫子は「いなーい。いらなーい」と答えました。
「え?なんで?こんなに素敵なのに水島学生立候補します!」
しかし、それににも倫子は「いらなーい」と答えるのでした。
できた
その頃、舞と柏木は変わらず練習を続けていました。
「レフトターンベースに入った、エアスピートチェック」
柏木の問いかけに舞は「90」と答えます。
「パスが高い」
イメージで揉んだ点を指摘する柏木。
「はい。パス3度に合わせました。ランニングチェックリスト・イズ・コンプリーティッド」
柏木が航空管制官役で、パイロットの舞と交信を行います。そして、舞は信号を確認して、着陸態勢に入ります。
「パワー絞ります」
舞がそう言うと、柏木はダメだと言います。
「ダメだ!まだ早い!焦るな。このまま速度キープ、しっかりセンター合わせていけ」
舞の手を握り、一緒にイメージトレーニングするのでした。驚く舞ですが、そのまま練習を続けます。
「岩倉、左にズレてきてるぞ、センターライン。まもなくスレッシュホールド」
イメージの中で機体のずれを修正します。
「まもなくスレッシュホールド90、パワーアイドル。支えて、支えて、足で機軸を直して・・・」
そうやって、無事に着陸することができました。舞と柏木は同じイメージを共有していました。できたと嬉しそうな舞、笑う柏木。
手を握っていたことに気付いて、照れて離れる柏木でした。
柏木の過信
翌日のフライト訓練で、問題が発生しました。
「君たちが選択したHK2-11の訓練空域だが、北海道警のヘリが試験で使うそうだ。そのため、HK2-2に変更になった。HK2-2の訓練区域でも可能か?」
大河内はそう聞くと、舞と水島は難色を示します。しかし、柏木は違いました。
「可能です。その空域の練習もしています。私から操縦します」
自信満々で乗り込む柏木。その姿に舞も水島も感心するのでいた。問題なく飛行を続け、訓練空域の端まできました。
「本別の街をインサイドしました。帯広に帰ります」
柏木がそう言うと、大河内が否定します。
「それは本別じゃない」
そう言われ、柏木は焦って地図を確認します。
「柏木学生。このままでは訓練空域を逸脱するぞ。訓練空域を守れ」
そう言われ、更に柏木は焦ってしまいます。
「柏木学生、現在位置がわからないのか?それなら正直に言え」
柏木は、不服ながら「わかりません」と答え、大河内に期待の操縦を預けました。
迷子
飛行訓練後のデブリーフィングで、大河内に問い詰められます。
「なぜロストポジションした?急な変更だったからか?」
しかし、柏木は理由を答えず「二度と同じミスをしません」とだけ答えました。
「現在位置を見失ったのは、思い込みで目標物を間違えたからだ。そのうえ、間違いを指摘されても、それをすぐに認められなかった。自分を過信する人間は、パイロットに向いていない」
大河内にそう言われ、落ち込む柏木。その後の食堂では、みんなと離れた位置で一人食事を取っていました。
「え?迷子?柏木が?」
水島から柏木が離れている理由を聞いた倫子が、驚いて大声で聞き返してしまいました。その声は、柏木にも届いています。
そして、次のフライト訓練でも、柏木の過信は続きました。
「柏木学生、君は今どこに向かっている?」
大河内に聞かれ、柏木は「清水です」と答えました。
「君が向かっているおは御影だ」
そう言われ、柏木はまた焦ってしまいます。地図を出して確認しますが、わかりません。
「位置を見失ったのならそう言え。リカバリーだ。柏木!」
柏木は落ち込みますが、舞に声をかけられると、強がるのでした。
中止
中間審査まで残り5フライトになりました。その日のブリーフィングの前、舞はある提案をしました。
「今日のフライトは中止した方がええと思います」
それに反発する柏木。水島が間に入ります。
「まあまあまあ、今日の気象データを解析したのは舞ちゃんだ。まずは、舞ちゃんの話しをきくべきだろう」
しかし、解析した結果が信用できるものならと、舞の判断を信用できないように言います。その3人のやり取りは、大河内に見られていました。
そして、大河内を交えたブリーフィングを行います。
「本日の気象予測の説明をします。ショワルター安定指数を分析すると、訓練時間中、十勝エリアにて雷雲が発生すると予想できます。安全性を考慮し、本日のフライトは中止すべきと判断しました」
舞の判断に大河内は「そうか」とだけ答えました。しかし、柏木は反論します。
「大河内教官、海上に近い空港南側の訓練空域なら、フライト可能だと思います。内陸部に雲がずれると考えると、訓練は可能だと考えます」
それに舞が反発します。
「けど、風向きを考えたら、今日は無理しない方がええかと」
水島は大河内に意見を求められ「岩倉学生と同意見です」と答えました。
しかし、それでも柏木は折れません。
「わかった。本日の飛行訓練は中止だ。意見を纏められないチームに安全なフライトができるはずがない」
大河内の下した判断は中止でした。
ケンカ
柏木と水島の部屋に舞も集まりました。
柏木は決まったことですが、まだ飛ぶべきだったと思っています。
「八つ当たりはやめろよ。自分のフライトが上手くいかないからって」
水島にそう言われ、柏木は腹が立ちました。
「上手く行ってないのは自分たちだろ?訓練中止したのだって、本当はサボりたかったんじゃないのか?飛ぶと決めた班もあるんだ」
その言葉に舞は反論します。
「私は、自分の判断が間違っていたとは思いません。私なりにきちんと分析した結果です。安全なフライトが可能かどうか、パイロットとして判断しました」
そう言われ、柏木は否定された気持ちになります。そして、お前達で勝手にやってろと部屋を出て行こうとします。それを止める水島。
そして、水島と柏木は取っ組み合いになってしまいます。そして、その勢いで舞の段ボールコックピットを壊してしまいます。
それを見た柏木は、何も言わず出ていきました。
ロストポジションの理由
舞が予想した通り、雷が鳴って雨が降っています。
舞は、大河内に会いに行きました。
「大河内教官、なぜ柏木学生は急に何度もロストポジションしてしまうようになったんでしょう?」
しかし、大河内は舞に理由を話しません。
「君のその質問は、本人が聞きにこないと意味がない」
それでも、舞はチームメイトが困っているのを放っておくことができません。
「自分の何が問題だったのか、向き合うことを恐れているうちは、何も解決できない。それに、全てを一人で抱え込むことが正しいと考えているとすれば、彼はパイロットの本質を理解していない」
そう大河内は突き放した言い方をするのでした。
同期のみんな
中澤と吉田の部屋に水島がやってきました。
「俺、今日日、ここで寝るから」
しかし、中澤は受け入れようとしません。
「こんなときにケンカって子供かよ。俺たちだって余裕ねえんだよ」
仕方なく吉田と一緒に寝ると言い出す水島。しかし、吉田も意見は一緒でした。
「こういう時こそ、一緒にいてあげた方がいいんじゃないかな?」
それでも、水島は「あの部屋息苦しいんだよ」と言って、帰ろうとしませんでした。
その頃柏木は、一人部屋で地図に目印を書き込んで、イメージトレーニングしていました。
「私はちょっとわかるけどね。上手く行かない時ほど、自分ひとりでどうにかしなきゃ、どうにかできるはずって思っちゃうから。でも正直、自分で乗り越えなきゃダメだと思う。ロストポジションがトラウマになっているなら、成功体験重ねて自信取り戻すしかないし」
舞は自分の部屋で倫子と話していました。
弱みを見せない
翌朝、舞は柏木の部屋をノックしました。柏木がドアを開けると、もう一度話したいと言って、部屋の中に入れてもらいました。
「あの、一緒に地図確認の練習しませんか?」
舞がそう提案しますが、柏木は一緒にやっても意味がないと言うのでした。
「これは俺一人で解決するべき問題なんだ。放っておいてくれないか」
しかし、舞も引き下がりません。なぜそう思うのかと、柏木に問いかけます。
「コックピットはそういう空間だからだ。何百人という命を預かるプレッシャーに勝てる人間しか機長になれない。絶対にミスは許されないんだ」
しかし、パイロットは一人ではありません。舞が説明しようとすると、柏木は舞を遮りました。
「そんなことはわかってる。でも、機長は一人だ。全ての責任を背負って判断し、常にそういうプレッシャーと戦って、弱みを見せない。父もそうだった」
それでも、舞は引き下がりません。
「けど、私らは訓練してる最中で、失敗してもええし、弱い所見せたってええと思うんです。いつか一人で飛べるようにもっと、強くなれるように私ら、チームになったんやないですか?」
地図確認
舞に説得され、柏木は体育館にやってきました。体育館では、みんなが山や町や川など、目印を作っています。
「これ、なにするつもりなんだ?」
舞は、頭の中だけでシミュレーションするだけではなく、体も使った方が具体的にイメージできると、みんなに協力をしてもらったのです。その中には、ケンカした水島もいました。
「柏木、あんたがやらないっていうなら、やらないよ。どうする?」
躊躇する柏木に舞は、「私たち、飛ぶためにここにきたんですよね?」と迫ります。柏木は、みんなの提案を受け入れました。
そして、ロストポジションしたと想定して、自分の位置を確かめるところから始めます。
「県庁の目標物はなんでしょう?」
水島にそう聞かれ、柏木は目印から自分の位置を把握しようとします。
「小さい町、中規模の町、赤い屋根が見えて・・・」
その時、舞は「赤い屋根はこの町にもあります」と言います。
舞のいる方向には、牧場、ゴルフ場などの目標物がありました。
「そっちが上士幌で、こっちが士幌だ」
正解した柏木。そして、そこから右旋回して、帰投ルートを確認します。
左手に湖、川の分岐点。右の奥には川の合流点と高速道路。
「えー高速道路沿いに川の分岐があるから、その町が本別。だから、高速道路沿いに南下して、本別、幕別、糠内経由で帰投します」
そうやって、地図上だけでなく、実際に体を動かして地図を頭に入れるのでした。
試行錯誤
体育館での地図確認の後、実際にフライト訓練をしました。
「現在、中札内上空3500フィート。嵐山に向かいます」
迷子になることなく、フライト訓練を終えました。そして、次のフライト訓練の準備で、体育館で地図確認をします。
「大きい町が帯広市だから、西に二つ目の町が御影。十勝川の曲がりに位置してるから、間違いない」
そうやって、舞と水島の協力を得て、柏木は自信を取り戻していきました。
しかし、舞はまだ着陸が上手くできません。
フライト訓練では、つい焦ってしまって、大河内に「まだ早い」と止められてしまいました。
水島の抱えているもの
中間審査(プリソロチェック)まで残り0フライト。翌日に中間試験を控え、みんな個々に勉強していました。
そんな時、中澤の所に手紙が届きます。中澤の妻からの手紙でした。中澤は、誰にも言わず一人で部屋に戻りました。
水島は部屋で携帯でメールをしていました。そこに柏木が帰ってきます。
「水島、ATCの練習、しておかなくていいか?」
しかし、水島はグーサインを出して、大丈夫だと柏木に伝えます。柏木は、水島が余裕なことに呆れます。
「まあでも、俺も正直すっげー不安よ。だって、落ちたら群馬に戻って、水島ストアの店長だもん。俺昔から何やっても続かないから、ほらやっぱりかって親父から笑われるんだろうけど。あはは」
水島も性格的に暗いさは見せませんが、抱えているものがあるのでした。
告白?
舞は一人、体育館で着陸のイメージトレーニングをしていました。そこに柏木がやってきます。
「姿勢を設置点に向けて、パワー15」
柏木はそう声をかけると、舞と一緒に歩きながら手伝います。
「まもなくスレッシュホールド。機軸足でセンターラインへ。エルロンも」
そうやって、舞のイメージトレーニングをサポートして、舞の着陸練習が終わりました。
柏木がやってきたのは、舞に渡す物があったからでした。壊してしまった舞の段ボールコックピットを渡します。
「直してくれはったんですか?」
嬉しそうにする舞を見て、嬉しそうな柏木。
「岩倉、岩倉なら大丈夫だ」
そう声をかけると、舞も答えます。
「柏木さんも、絶対大丈夫です。私に言われても説得力ないやろうけど」
今までなら「説得力がない」と言っていたと思いますが、今の柏木は違います。
「そんなことない。岩倉の言葉には強さがある」
そして、何か言いたげな柏木。やっと口を開きました。
「俺、お前のこと・・・」
最後に
舞のバイトしていたノーサイドのオーナーが言っていたようにフォーリンラブしそうな勢いです。
そして、最後に何かいいかけた柏木の「お前のこと・・・」の続きは、どう続くんでしょう?
「お前のこと、見直した」とか、気を持たせておきながら、肩透かしをするパターンな気がしてなりません。
しかし、不穏な雰囲気も漂っています。吉田が舞を気にしている雰囲気もあり、中澤の妻からの手紙は離婚届なんじゃないかと思ってしまったりします。そして、群馬に帰るフラグが立った水島の運命はどうなるんでしょう?
来週も楽しみです。