未来を信じて は第25週のサブタイトルです。
大学時代の先輩・刈谷と玉本が開発している「空飛ぶ車」。舞も空への憧れを忘れていませんでした。
そんな中、貴司の第三歌集の製作が行き詰ってしまいます。
そんな第25週のまとめです。
第24週「ばんばの歩み」のまとめ。
主な登場人物
梅津舞 福原遥 IWAKURA子会社こんねくと社長。旧姓岩倉
梅津貴司 赤楚衛二 舞の夫、歌人でデラシネ店主
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、故人
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母、株式会社IWAKURA社長
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、投資家
梅津勝 山口智充 貴司の父。お好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
結城章 葵揚 IWAKURAの従業員
津田道子 たくませいこ カフェ・ノーサイドのオーナー
リュー北條 川島潤哉 短歌担当編集者
御園純 山口紗弥加 こんねくと共同出資者。元新聞記者
刈谷博文 高杉真宙 舞の先輩。AKIBILU社長
玉本淳 細川岳 舞の先輩。刈谷と一緒に起業
木戸豪 哀川翔 五島 船大工
浦信吾 鈴木浩介 五島 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 五島 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる 五島 みじょカフェオーナー
第25週のストーリー
空に憧れ続けた男
大学の先輩・刈谷が開発しているという「空飛ぶ車」を見に行くことになりました。
刈谷の会社ABIKILUの新しい作業場は、舞が紹介した倉庫です。
「こげな大きなドローン、見たことないやろ。まだ骨組みやけん不格好やけどな。四隅にペラ4つ、面白か機体やろ」
舞は素材がカーボンでできていることを指摘しました。
「最初アルミで作ってたんやけどな、軽さと丈夫さではやっぱりこれや」
そう言われ、舞が期待を触ると、大学で作った人力飛行機・スワン号のことを思い出しました。
刈谷は、大学時代の夢を思い出にせず、ずっと空に憧れ続けてきていたのです。
「これは、あの機体の5分の1スケールモデルたい。まずはこうやって小さか機体でテストすると。俺たちが作ろうとしてるとはただのドローンじゃなかけん。人を載せて飛ぶ空飛ぶ車たい。安定させて飛ばすためにはいくつものステップを踏まんといかん。岩倉、見とけ。来年にはきっと、友人飛行に辿りついて見せる」
刈谷は熱く語ります。
「誰もが気軽に自由に空を行き来できる未来を、俺たちが作る」
そんな刈谷の言葉を舞は羨ましく感じるのでした。
貴司の苦悩
朝、舞は保育園に歩を連れて出かけました。
貴司は遅れてデラシネに出かけます。出かける直前、おばあちゃんに話しかけられました。本には縁がなかったおばあちゃんですが、大阪で自由な時間を読書しているようです。
「良かったら、これからデラシネ行きませんか?」
貴司に誘われ、おばあちゃんは一緒にデラシネに行きました。そして、デラシネにある本を見て回るおばあちゃん。
そこに、貴司の担当編集者・リュー北條がやってきました。
「梅津さん、大活躍です。第二歌集はデビュー作を越えるヒット。現代歌人の新たなスターなんて言われてね。今日も人気エッセイの打ち合わせです」
お世辞も込みの北條の言葉に暗い顔の貴司。
「五島は梅津さんの原点だって聞きました。祥子さんのことも大事な恩人だって言ってました」
北條に言われ、照れるおばあちゃん。貴司は真剣にそう思っています。
おばあちゃんはデラシネで本を探している間、奥では貴司と北條が打ち合わせです。
「あとは問題ないね。よし、来月の連載分はこれで」
そう言って貴司から原稿を受け取りました。
貴司は遅れたことを謝ります。
「少しぐらい大丈夫ですよ。梅津さんも忙しいんでしょ。ただ、そろそろ三冊目の歌集、まとめていかないとね。歌、詠めてます?」
そう聞かれ、一瞬間を置いて「少しずつ」と答える貴司。
しかし、貴司は歌を詠むことができないでいたのです。そんな貴司に声はかけませんが、舞も心配していました。
アビキルの課題
こんねくとでの仕事を終え、舞は刈谷たちの作業場へ向かいました。
「刈谷、もう時間ない。ええかげん現実見てくれや」
言い争う刈谷と玉本。舞は「どないしたんですか?」と声をかけます。玉本は、何も言わず頭を冷やしに行ってしまいます。舞は、玉本と梅津でお好み焼きを食べました。
「ごめんな、カッコ悪いところ見せて。せっぱ詰まるとお互いカッカしてしもうて」
舞が心配すると、玉本は話してくれました。
「だいぶ遅れてんねん。本当だったら今月中にあの機体浮かせて、投資を呼び込まなあかんねんけど。普通のドローン飛ばすのとは訳が違う。市販のドローンは重くてせいぜい1kgかそこらやけど、あれは100kg以上ある。安定浮上の成功にはまだまだ時間かかりそうでな。開発が遅れると、金がどんどんなくなっていく。金がないとスペアパーツも揃えられへん。悪循環や」
舞は何か手伝えることはないかと提案しようとしますが、玉本に食い気味で断られてしまいました。
「大丈夫やで、ありがとう。岩倉も忙しいやろ。俺らの問題やし、なんとかするわ」
そんな中、深夜一人で作業する刈谷の姿がありました。
家に帰り、歩を寝かしつける舞ですが、刈谷たちのことが頭を離れません。あの大学の時、刈谷たちと作ったスワン号の思い出が蘇ってくるのでした。
こんねくとの関り
こんねくとで、地元の小学生を対象にした技術教室が行われました。先生は、笠巻です。小型の旋盤を使って教えています。
技術教室が終わると、舞と笠巻、御園で缶コーヒーを飲んで休憩します。
「笠巻さん、覚えてはります?大学の時、笠巻さんに部品の調整してもろたなにわバードマンの。今、空飛ぶ車ゆうて、人を乗せて飛ぶドローンみたいな乗りもを開発してるんです」
懐かしい話ですが、笠巻は覚えていました。そして、舞は考えていたことを御園に伝えます。
「御園さん、こんねくともなんか協力できないのかなって。今はまだ何ができるかわからないんですけど、将来刈谷さんの機体が実用化されたら、東大阪にとっても大きなチャンスになるんやないかなって」
そんな舞の言葉に笠巻は、「技術教室と一緒で、未来への投資やな」と賛同してくれました。御園は一度見てみたいと言って、舞と一緒に出掛けることになりました。
舞と御園が刈谷の作業場へ着くと、刈谷から相談を持ち掛けられました。
「実は、お二人に相談したいことがあって。このアームの先端部分、今はアルミっちゃけど、できればカーボン、もしくはアームと一体化させたいと思っと」
素材を変えて軽量化したいというのです。そして、そのためにカーボン関係で相談に乗ってくれる工場を紹介して欲しいと言うのです。
それはこんねくとの一番得意な部分です。舞と御園は、紹介することを請け負いました。
浮上試験
舞と御園は、浮上試験を見ることになりました。
アビキルが目標にしてるのは、重さ100kgを越える試作機を安定して浮上させることです。そのため、機体の改造と浮上試験を繰り返しています。
広い場所に試作機を移し、暴走しないようにチェーンを繋ぎます。そして、舞たちの前にはアクリル板を置いて安全を確保します。
「ロック解除、いきます」
プロペラが回って試作機の機体の片側が上がりますが、浮上までいきませんでした。
「やっぱり揺れるな」
「駆動系の動作テスト、もっぺんやり直さなあかんかな」
「回転数が想定まで上がってるか見てみらんといかんね」
刈谷と玉本はそんな話をして、すぐに調整と改良がおこなわれます。
「投資家に見せるのは、まだ厳しいかもしれないね。さっきの部品の話し、ああやって町工場を巻き込めるなら、うちが協力するのもありかもね。ただ、こんねくとも忙しいよ。舞ちゃんは家庭のこともあるんだし」
御園は協力することを認めてくれましたが、舞の心配もしてくれました。
相談
貴司は、歩を寝かしつけて歌を詠んでいます。そこに舞がやってきて、貴司にこんねくとが刈谷の開発の手伝いをすることを相談しました。
「今よりもっと忙しくなるかもで、こんねくともあるし、歩のこともあるから、悩んでて」
その言葉に貴司は背中を押します。
「やった方がええと思うよ。舞ちゃんは大学生の時から、空を飛びたいって夢を思い描いてた。それが巡り巡って、またその夢に出会えた。そんな奇跡みたいな巡り合わせ、逃したら後悔する。忙しなるんやったら、二人で相談してなんとかする方法見つけよう」
貴司の後押しに舞もやる気になりました。それと同時に、貴司に協力したい気持ちも沸いてきます。
「貴司くん、歌の集中したい時あったらいつでもゆうな。私の仕事と違って時間区切るの難しいと思うから」
貴司は、舞の気持ちが嬉しいのでした。
業務提携
刈谷と玉本がこんねくとにやってきました。舞は、御園と話したことを刈谷たちに話します。
「空飛ぶ車の開発、うちと業務提携しませんか?玉本さんから聞きました。資金調達が上手く行ってないって。ぜひ協力させて下さい。業務提携して、うちが資金調達も含めたファイナンス面をサポートします。それから、人材集めや後方の活動、手助けできると思うんです」
舞の言葉を補足するように御園が続けます。
「こんねくとには、東大阪のネットワークとそれを活かすノウハウがありますから」
刈谷と玉本にとっては、願ってもない申し出です。しかし、問題がありました。
「ありがたい話しやけど、協力してもらってもそれに払うお金がないとよ」
刈谷は正直に話します。舞は、今はお金の話は気にしないでいいと伝えました。しかし刈谷は、手伝ってもらうのに無償ということに抵抗があります。
「こんねくとが空飛ぶ車の開発に関わることで、町工場に新しい仕事を作り出すことになると考えています。これまでにない大きな事業として、宣伝にもなります」
御園はそう言って、刈谷の心配を取り除こうとします。
「なにより、私が見たいんです。刈谷さんがゆうてはった、誰でも自由に空を行き来できる未来。一緒にやらせて下さい」
舞もそう言って、協力を申し出ます。そこまで言われて、断る理由がありません。刈谷たちは業務提携することに決めました。
悠人の協力
ノーサイドでは、オーナーにプロポーズした久留美の父・佳晴がウェイターをやっていました。
そこで舞が待っていたのは、兄・悠人です。
「新しい投資家さん探してんねんけど、誰かおらん?お兄ちゃんも興味あったら」
舞にそう言われますが、悠人は乗り気ではありません。
「飛行機は全くわからん。そもそもハードウェア開発の投資はハードルが高い。まだ世の中にないものに金出してもらないとあかんねんから」
そう言う悠人に舞は、どうしたらいいかと相談しました。
「大事なんは、トップに立つ人間のカリスマ性や。物がなくとも、この人やったらできると思わせる説得力があらなあかん。ほんまにやり遂げる素質と、覚悟があるかを見られるんや」
そのカリスマ性なら、刈谷は持っています。なにわの天才と呼ばれた刈谷です。それを悠人に伝えると、悠人はちょっと呆れた様子です。
「ほんま飛行機すっきやな。わかった。俺の伝手で面白そうな投資家何人か紹介してやるわ」
その時、悠人の電話が鳴りました。
「久留美?」
舞がそう聞くと、悠人は「うん」と素直に答えます。告白から2年、二人の関係は続いているようです。
こういう歌は詠めない
刈谷たちの空飛ぶ車だけでなく、こんねくとには仕事の依頼がやってきます。今回きたのは、カワチ鋲螺から「若手社員向けの研修」の依頼でした。
その技能講座も請け負うことにした舞。夜、家で資料を作ります。
そんな時、貴司は煮詰まっていました。ケトルに水を入れに1階に行きます。1階では、おばあちゃんが本を読んでいました。読んでいたのは貴司の歌集「デラシネの日々」です。
海底の 砂に手差して 冷たさに しびれた指を 水でぬくめる
貴司の顔を見ると、おばあちゃんは「この歌よかね」と伝えます。
「ぬくめるっちゅうひらながや、こげん温かいとね」
おばあちゃんが褒めてくれたことに、貴司は照れながらもお礼を言います。しかし、貴司の気持ちは落ちていました。
「もう、こういう歌は詠めません。自分で呼んだ歌やのに、今見たらすごい遠いことに思います」
貴司が何を言おうとしているのか、おばあちゃんにはわかりませんでした。
貴司は何も説明せず、2階に上がって行ってしまいます。
おばあちゃんは、心配そうに見ているのでした。
アキラの覚悟
舞が夕飯前に家で歩と遊んでいると、貴司からメールが届きました。
「今日は遅くなります。先に夕飯食べといてください」
その時、お母ちゃんが帰ってきました。連れてきたのは、アキラです。アキラはお父ちゃんに線香をあげ、お母ちゃんに話します。
「めぐみさん、覚悟決めました。未熟な所もあると思いますが、ご指導お願いします。それと、僕の後任を尾藤にしたいんです。僕が抜けた後、圧造科を任せられるのは彼しかいないと思います」
尾藤はアキラが一時期辞めていた時に、圧造をやっていました。しかし、その時はまだ設計を任せられるところまでできていませんでした。
「せやね、もう設計もできる立派な職人になってんねんからな。わかりました。尾藤くんにも話ししてみます」
お母ちゃんも尾藤の成長を認め、後任にすることを了承しました。
「営業には藤沢くんがいてくれてるし、経理はサエちゃんがプロやから、その辺どんどんみんなに頼ったらええと思うで。IWAKURAはそないして皆の力で大きくしてきた会社やから」
アキラは「そのバトン、しっかり受け取ります」と答えました。
助っ人・渥美
舞と御園は、刈谷にこれからの進め方を説明しまいた。
「まず、私たちの方で資金調達に動きます。なので刈谷さんには投資家に見せられるプレゼン資料と必要な予算案をいただきたいです。興味を持たれた投資家さんが見つかったら、実際に試作機を見学していただくことになると思います」
刈谷は「任せて下さい」と請け負いました。
それからしばらくして、悠人の紹介で3人の投資家のアポが取れました。
刈谷の方は、ベンチテストを行い、結果は良好でした。プレゼンまでに開発を進めないといけません。
「きちんと理想推力も出とる。このカーボンペラで、少しは機体の制御も軽やかになるはずたい」
しかし、やることが多すぎます。午後に予定している試験まで、作業が終わらせないといけません。
そこに舞が、大学准教授になった渥美を連れてきました。
渥美は週末、手伝いにきてくれることになりました。なにわバードマンで一緒に人力飛行機を作った仲間です。渥美も空への夢を忘れていませんでした。
空飛ぶ車の開発は急ピッチで進みました。機体がバランスを取りながら安定して浮上できるように試作機の動作検証や制御システムの改善など、さまざまな改良を行います。
そして、投資家へのプレゼンの日が近づいてきました。
投資家へのプレゼンテーション
いよいよアビキルに投資家たちが訪ねてきました。説明の後、試作機見せます。
「こちらが先ほど説明したプロトタイプの機体です。まずは安定飛行のノウハウを得るために最低限の機体構成になっています」
投資家たちは「思ったより大きいな」「いいね、ワクワクする。夢があるね」などと好印象です。そして、推力について質問されます。
「ローター一つの推力は30キロです。二重反転の推力効率を考慮して、55パーセントのモーター出力で機体が浮き上がります。もし、一つのローターが機能停止に陥っても、他のローターの調節をして、バランスを取りながら安全に着地する想定になっています」
安全性を求めて冗長性を求めています。
そして、実際に動かしてみます。プロペラが動かし、出力をあげていきます。
その結果、機体は安定して浮くことができました。空中で浮いたまま制止しています。そして、ゆっくりと着地することができました。
「皆さん、この空飛ぶ車の開発は、世界を変えます。交通、物流、経済の活発化。この開発が世界にイノベーションを起こします。今日がその最初の一歩です。この一歩に辿り着けたのも、私の夢を信じてついてきてくれた仲間のおかげです。これからはもっと多くの仲間が必要です。世界中の人に空を飛ぶ喜びを知って欲しい。どうか、ご協力をお願いします」
刈谷の言葉にみんなが頭を下げました。
悠人と久留美
岩倉家に悠人と久留美がやってきました。久留美は、髪を切ってショートカットになっています。
「久留美、長崎はもう慣れた?」
舞からそう聞かれ、寮生活で先輩たちも面倒見てくれると答えます。
「研修も終わりなんで、もうすぐドクターヘリ乗れます。うちのヘリ、五島にも飛ぶんですよ」
久留美の言葉に、おばあちゃんも驚いていました。
そして久留美は、舞から聞いていた空飛ぶ車の進捗を聞きます。
「ええ感じに進んでる。お兄ちゃんもほんまにありがとう」
悠人が投資家を紹介してくれたことにお礼を言います。それを聞いたお母ちゃんも、悠人のお礼を言うのでした。
「悠人、私からもありがとうな。悠人と舞が力合わせたと思ったら、なんや嬉しいわ」
恥ずかしくなったのか、悠人は「俺は紹介しただけや」と素直ではありません。
そんな久留美と悠人は、岩倉家を離れると柏木公園で話しをしています。
「なかなか長崎まで会いに行かれへんで悪いな。でも、将来のことちゃんと考えてるから」
悠人にそう言われ、久留美も嬉しそうに「はい」と答えます。
「仕事のことと違うで。俺たちのことや」
悠人は心配になったのか、念を押すように続けました。
「わかってる。ありがとう」
悠人の気持ちは久留美に届いていました。
投資家の判断
舞は仕事をしながら、投資家からの返事をそわそわと待っていました。
「気にしてても仕方ないよ」
御園にそう言われますが、どうも落ち着きません。
「そうだ、こんねくとのバイト、いくつかきてる。河内大学の学生さんもいるね」
見せてくれた履歴書は伊東空、広瀬海、藤田陸花の3名で、みんな女性です。それも、陸・海・空です。
そんな時、舞の電話がなりました。
舞は急いで刈谷たちの元へ走ります。
「投資家の林さんと佐藤さんから連絡ありました。ぜひ、出資したいと。そんで、周りの投資家さんも巻き込んで行きたいゆうてはりました」
みんな大喜びです。
投資家からの出資が決まり、舞と御園に次の展開について説明します。
「これからアビキルで空力や構造に強いエンジニアを採用しようと計画しています。次の試作機の構造も並行して考えています。いよいよ、有人飛行を実現する機体に取り掛かろうかと」
開発は加速していきます。そして、まとめた事業戦略の資料を舞と御園に渡します。
「アビキルとこんねくととのネクストフライトたい」
刈谷の臭い言葉に玉本も「わーでたー」と苦笑いです。
抱え込んでいる貴司
そんな時、貴司は歌が詠めずにいました。
北條は貴司を心配します。しかし、貴司は謝ることしかできません。
「前の歌集から3年、そろそろ期待に応えてあげないと。まあ、心配はしていません。梅津先生は苦しんでこそ、いい歌を詠む人だ。期待しています。今日の所は失礼しますね」
そう言って北條は帰っていきました。
しかし、状況は変わらず、1年近くが過ぎた2019年12月。
舞がアサヒと電話していました。
「今な、空飛ぶ車の開発に携わってるんやけど、アサヒくん興味ある?ほんま?ありがとう。ほなまたな」
アサヒは五島で生活した後、なにわ大学へ進学し、航空工学を勉強しています。
その時、貴司が部屋から降りてきました。
「舞ちゃん、ちょっと話しあるんやけど、ええかな」
舞と貴司は二階に上がって、二人で話しします。
「あんな、舞ちゃん。短歌、辞めようって思う。書かれへんねん。どうしても。もうしんどい、離れたい。今は舞ちゃんと歩がおって幸せ。それで十分やと思う」
貴司は追い詰められていました。舞は貴司に負担をかけていたことを謝ります。
「舞ちゃんは悪くないよ。僕一人の問題やから。。。。ごめん、最低やな」
おっちゃんに会いたいな
貴司と話した後、舞は寝れずにキッチンで悩んでいました。そこにおばあちゃんがやってきます。
おばあちゃんはデラシネに行くこともあり、貴司の変化に気づいていました。しかし、舞は気づいていあげることができなかったことを反省しています。
「優しか子やけん、見せんようにしちょったばってん。どんだけ一緒におっても、わからんことがあっとよ。辛かね」
おばあちゃんはそう言って、舞をフォローするのでした。
その頃、貴司は一人、デラシネいます。
子供の頃、八木との会話を思い出す貴司。八木は昔、詩を書くしんどさについて、貴司に語ってくれていました。
翌朝、舞は朝早く起きてお弁当を作り、デラシネに持って行きます。
「貴司くん、おはよう。お腹減ってるかなって、おにぎり置いておくな。ほな。。。」
帰ろうとする舞を呼び止める貴司。
「舞ちゃん、昨日はごめんな。ずっと考えてて。なんでやろ、なんで歌が出てけえへんのやろって。けど、やっぱり歌は辞めたくないって思ってまう」
その時舞は、机の上の絵葉書に気づきます。
「八木のおっちゃんから。今、パリにおんねんて。おっちゃんに会いたいな」
そう言う貴司に舞は「おおてきたら」と言います。しかし、貴司は家や仕事を投げ出して行くことができません。
「行ったらええやん。おっちゃんにしか言われへんことあるんやろ。おうたら、なんか変わるかも知れへんやん」
舞はそう言って、貴司の背中を押すのでした。
旅立ち
貴司の父・勝と母・雪乃を呼んで、貴司がパリに行くことを話します。
「あんた何ゆうてんねんな。歩かてまだ小さいし、舞ちゃんかて忙しい時にやな」
「親の責任ちゅうもん考え」
二人の反応は当然です。
「貴司君はこれまで、家族を支えてくれました。私が忙しい時も自分の時間割いて、歩のめんどう見てくれて。私は、行かせてあげたいです」
舞は、貴司を思って二人を説得します。
「二人で話しおうて決めたんやったら、ええよ」
お母ちゃんは、許してくれました。それを聞いて、雪乃たちも賛成するしかありません。
「貴司、デラシネの店番は任せてくれんね」
おばあちゃんがそう提案しました。しかし、お母ちゃんは体が自由にならないおばあちゃんを心配して、「無理よ」と反対します。
「なんのそ、家に籠りきりやったら、足も動かんようになるけん」
おばあちゃんの言葉に、貴司は任せることにしました。
そして、2020年1月。貴司が旅立つ日がやってきました。
荷物はリュック一つだけ。見送りは舞と歩です。
貴司は「行ってきます」と言って、パリへと旅立ちました。
新たな助っ人
空飛ぶ車の開発は、新たなエンジニアを加え、次なる段階へと進んでいます。
男性と女性のスタッフがケンカをしながらも、機体の組み立てを行っていました。
そこに、なにわバードマンで一緒に人力飛行機を作ったの西浦と藤谷が、神戸からやってきてくれました。
渥美と同じように週末だけですが、手伝ってくれます。
開発中の機体には、人が乗れるように座席が取り付けられていました。
最後に
貴司が思い悩み、パリへ行くことを決めました。しかし、出発したのは2020年1月。新型コロナウィルスが流行する直前です。
パンデミックが発生し、パリもロックアウトしたのが思い出されます。それから2年間は、どこの国も国外からの移動を制限していました。貴司は、いつ帰ってくるのでしょうか?
そして、来週はついに最終週。予告には懐かしい顔が見えます。
空飛ぶ車の飛行実験は琵琶湖で行われるのでしょうか?いや、五島で一太の弟・慶太の協力を得てやるかも?
悠人と久留美は、結ばれるのでしょうか?
楽しみです。