翼を休める島 は第12週のサブタイトルです。
航空学校を卒業する舞。しかし、前途多難なのでした。
世の中は、リーマンショックの影響が出ています。それは、東大阪の町工場でも、航空会社でも同じです。
そんな中、舞は五島へ行くことになりました。
そんな第12週のまとめです。
主な登場人物
岩倉舞 福原遥 パイロットを夢見る学生
梅津貴司 赤楚衛二 舞の幼馴染、旅人で歌人
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、株式会社IWAKURA社長
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、天才投資家
柏木弘明 目黒蓮 同期。航空一家
矢野倫子 山崎紘菜 同期。帰国子女
中澤真一 濱正悟 同期。妻子持ち
吉田大誠 醍醐虎汰朗 同期。母子家庭
水島祐樹 佐野弘樹 同期。スーパー勤務
梅津勝 山口智充 貴司の父。浩太の幼馴染のお好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
木戸豪 哀川翔 船大工
浦信吾 鈴木浩介 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる みじょカフェオーナー
第12週のストーリー
就職活動
2008年9月、舞たちは訓練と並行して就職活動が始まっています。同期の仲間が順調に内定をもらう中、舞は苦戦していました。
試験を受けに来たのは「ハカタエアライン」という航空会社です。面接でどのようなパイロットになりたいか聞かれた舞は、自分の気持ちを一生懸命伝えます。
「お客様の笑顔は、確かな安全から生まれると思っています。入念な準備と、冷静な判断を心掛け、お客様が安心してフライトを楽しめるパイロットになりたいと思っています」
航空学校の訓練の最後の地は仙台です。
舞は、倫子と同室です。勉強していると非通知の着信が入ります。ハカタエアラインからの着信だとは思ったのですが、何社も落ち続けていて電話に出るのが怖い舞なのでした。
しかし、倫子に早くでなさいと言われ、電話に出ました。
「私です。岩倉です。・・・ありがとうございま・・・失礼します」
緊張して上手く話せませんでしたが、なんとか内定をもらえました。
倫子と抱き合った喜びました。
リーマンショックの影響
舞はすぐさま、父ちゃんに連絡しました。
「ホンマか?ハカタエアライン?良かったなー舞」
お父ちゃんも、一緒にいたお母ちゃんも喜んでくれました。
しかし、その時大きな問題が発生します。お父ちゃんは電話をお母ちゃんに代わると、パソコンの画面を見ます。
「社長、見て下さい。今月の注文数なんですけど、ボルトが先月が22万本、今月は8万本なんですよ」
お父ちゃんはすぐに取引先に連絡しました。
「今、来月の受注数を確認させてもらいましたんやけど、これ何かの間違いと違いますのやろか?半分以下になってるみたいで。おおてる?再来月には元に戻りますやな?・・・わからへんて・・・」
アメリカの投資銀行、リーマンブラザーズの破綻をきっかけに、世界的な金融危機が起こりました。その影響は東大阪の町工場にも及んだのです。
打ち上げ
12月の仙台では、航空学校の卒業を控えて、同期のみんなで居酒屋で打ち上げをしていました。舞、柏木、倫子、吉田、中澤の5人です。
「長かった学生生活も明日で終わる。春には全員、エアラインのパイロットだ。次に会うの、空の上かも」
そんならしくない冗談を言えるようになった柏木。その柏木の音頭で乾杯しました。
その時、居酒屋にやって来た人がいました。水島です。
「来れなかったんじゃないの?」
柏木はみんなに内緒で声をかけていたのでした。しかし、凝れないはずだったのですが、みんなに会いに水島が無理してやってきたのです。水島が挨拶しました。
「君たちはさ、やってもやっても終わらない課題と、バカみたいに厳しい訓練から逃げないで、全部乗り越えて明日卒業するんだよ。それがどんなに凄いことかは、俺が一番知ってる。おめでとう」
今、水島は父親のスーパーで働いています。そして、水島が作ったお惣菜は、飛ぶように売れていると言うのです。水島のことですから、話し半分かもしれませんが。
そして、舞が音頭を取って、6人で乾杯しなおしました。
それぞれの今
中澤は、一度は離婚の危機だった奥さんと子供の写真をみんなに見せていました。
そして、倫子は吉田の隣に座ると、吉田に囁きます。
「ねえ、あんんた。気持ち伝えなくっていいの?」
当初から舞に好意を寄せていた吉田です。しかし、そんな気持ちは舞は知りません。吉田は「飲みすぎですよ」と倫子に言い、思いを伝えることはしませんでした。
「岩倉、ちょっといいか?」
柏木が舞をカウンターに連れて行きました。
「春までサンフランシスコに語学留学するんだ。入社前に勝負は始まっているからな。どれだけ優秀なパイロットになれるか」
そう言う柏木に、舞は寂しいと言うのでした。
「パイロットは、寂しいなんて言ってられない仕事だろ?世界中を飛び続けて、大事な人になかなか会えない。それに耐えられる強い人間が、パイロットになれるんだ」
そう言われ、舞は納得します。柏木と舞は、遠く離れても大丈夫だとお互い確認しあうのでした。
IWAKURAのボーナス
舞は航空学校を卒業して、入社までの期間、東大阪に帰ってきました。驚かせるつもりだったのか、舞は実家に連絡せず、一人で空港から帰ってきました。
その頃、実家ではお父ちゃんが、ボーナスを袋詰めしていました。しかし、今のIWAKURAでは、入れられる金額は3万円です。古くから働いている笠巻も、同じ金額でした。
「これしか入れられへんのか。今まで社長やってて一番うれしいのは、ボーナス渡すときやった」
そんな時、舞が帰ってきました。お父ちゃんとお母ちゃんは、舞に悟られないように明るく振る舞います。
「お父ちゃん、お母ちゃん、おかげさまで卒業できました。航空学校に行かせてくれて、ほんまにありがとう」
舞がお礼を言うと、お母ちゃんは「卒業おまでとう」と嬉しそうに言うのでした。そして、荷物を部屋に入れておいたと言って、舞を自分の部屋に行かせました。
その夜、隣のお好み焼き屋では、IWAKURAの社員たちが飲み会をしていました。ボーナスが一律3万円で、みんなの雰囲気は悪くなっています。
「お前らが入ってくる前、IWAKURAには何べんもピンチがあったんや。そのたんびに何とか乗り越えてきた。みんなでがんばろー」
笠巻が言うと、不満をこぼしていた社員たちも、納得するのでした。
お好み焼き屋の梅津も暇そうです。リーマンショックの影響は、かなり大きいのでした。
予言者
舞は仙台のお土産を梅津に持って行きました。笹かまぼこを渡すと、勝も雪乃も嬉しそうです。舞は知りませんでしたが、笹かまぼこが大好物だと言うのです。
「さすが預言者の妹やな」
何のことかわからない舞に、雪乃は悠人の記事が載った雑誌を見せました。
「リーマンショックを予測した若き天才投資家」
てっきり、リーマンショックでボロボロになるのかと思いきや、逆に天才投資家になってしまった悠人。
「グローバル金融危機を予測するには、常に世界中にアンテナを張って、膨大なノイズの中から真に重要な情報を選び出す分析力が必要です。大切なのは、他人ではなく自分を信じることです。自分の能力と判断を信じることができれば、迷わず行動できるはずです」
インタビューで、悠人はそう答えていまいた。その記事は、お父ちゃんも買って読んでいました。そして、その記事のことを日記に書くのでした。
由良先輩
ある朝、舞宛にハカタエアラインから郵便が届きました。中は、入社延期の知らせです。リーマンショックの影響で、1年間延期することになったと言う内容です。
舞が以前バイトしていたノーサイドに舞は呼び出されました。呼び出したのは由良です。
「ほんで、どうやった航空学校。訓練、しんどかったんちゃうん?」
由良に聞かれ、舞は楽しそうに答えます。
「はい、一歩間違えたら命にかかわるんで、気抜けませんでした。けど、しんどい以上に楽しかったです。高い空一人で飛んでたら、空飛ぶって当たり前やない。凄いことやって、背筋が伸びるんです。このためやったら、どんな訓練でも頑張れるって思いました」
しかし、4月から福岡に勤務する予定が延期になったことを由良に言います。明るく振る舞えたのは、舞にも実感がまだ湧いていないからでした。
「2年間、ずっと大変やったんやろ。ちょっと長い休みもらったと思ったらええんちゃう。OB会もおいでな。刈谷先輩、モロタ自動車で働いてはるの知ってる?せっかくいい会社入ったのに、あの性格やろ、もう上司と揉めてるんやて」
由良は、舞を思って。話しを逸らしました。そして、由良は夢をまだあきらめていません。
「設計事務所って結構忙しいねん。でも、お金貯めて、私の身長でもOKって言ってくれるアメリカで訓練受けて、パイロットになるって目標あるから頑張れるわ」
不安
舞は、帯広で教えてもらった豚丼を作りました。
「無理せんでええで、入社の準備あるんやろ」
お母ちゃんに言われ、舞は就職が1年延期になったことを伝えました。
「会社がな、リーマンショックの影響で経営不振なんやて。中澤さんも半年延期やねんて。時間できたし、手伝えることがあったらなんでもゆうてな」
舞は明るくそう言って、お父ちゃんとお母ちゃんを不安にさせないようにと懸命です。
しかし、部屋に戻ると、どうしても不安になります。携帯取り出し、柏木に電話しようと思うのですが、サンフランシスコとの時差を気にしてできませんでした。
そんな時、お父ちゃんとお母ちゃんは、舞の不安な気持ちをわかっていました。だからこそ、工場も大変なことを舞には伝えないよう決めたのでした。しかし、一緒に生活していれば、隠し通せるものでもありません。
そんな時、五島から電話がかかってきました。
五島へ
翌朝、早くに庭に出る舞。そこにお父ちゃんとお母ちゃんが起きてきて、舞が元気そうにしているのを見ました。
「私にできることない?」
そういう舞に、五島からの電話のことを伝えます。
「ここはええから、ばんばの手伝いしてきてくれへんかな。昨日の夜、電話があってな、足くじいてしまったんやて。大したことないっていうんやけど、泊りのお客さんくるみたいやし、舞が行ってくれたら助かると思うんやけどな」
舞が五島へ行ってる間に、工場をなんとか立て直そうという算段です。舞は、五島に行くことを了承すると、出かける前に久留美と会うことにしました。場所は梅津です。
久留美は、舞に柏木に電話するように言います。しかたなく電話する舞ですが、柏木は出ませんでした。
「柏木さんと話ししたかったのに。親友として挨拶しとかな」
そんなことを言う久留美に、舞は差し入れの先生のことを聞きます。
「何もないわ。それより、1年どうするの?」
舞は、五島でばんばの手伝いしながら考えようと思って、そう話しました。
「舞ちゃん五島いくん?今、貴司おんで。今住み込みで働いてるんやて。舞ちゃん、悪いけどな、元気いしてるか見てきてくれへん?あの子携帯持って行けへんやろ」
舞たちの話しを聞いた雪乃は、舞に貴司のことを頼むのでした。
再会
舞は五島へ行く前に貴司に手紙を書きました。
「拝啓、貴司君。元気にしてますか?これから五島に行く予定です。良かったら電話下さい」
そして、翌日には舞は五島へ旅立ちました。、4年ぶりの五島です。
足をくじいて迎えに行けなかったおばあちゃんは、外で魚をさばいていました。舞が到着すると、抱き着いて再会を喜びます。
捌こうとしていた魚を置いて、二人はお茶をしに台所へ行きました。そして、舞はおばあちゃんが、船から飛び降りたことを聞きました。
「その瞬間にグキっちいった。これまですっとそうやってきたけん、じゃばってん気を付けんばね」
簡単に説明しますが、おばあちゃんももう年だということなのでしょう。そして、おばあちゃんは舞に航空学校の話を聞きます。
「めっちゃ楽しかった。空飛ぶんはな、ワクワクすんねん。ホンマに楽しい」
しかし、就職が延期になってしまいました。おばあちゃんもそのことを気にします。
「大丈夫。1年だけやし。当分暇やし、ばんばの手伝いさせてな。泊まりに来る人ってどんな人?」
そんな話をしていると、町役場の信吾が連れてやってきました。
移住体験
信吾はおばあちゃんと舞に二人を紹介しました。
「モリシゲミチルさんと、アサヒくん」
紹介されたアサヒは挨拶もせず「お腹空いた。おかし食べる」と言い出すのでした。
おばあちゃんは、お菓子を用意します。それは、市販のお菓子ではなく、「かんころ餅」というサツマイモを薄く切って日干ししたお菓子でした。
「いらない。変な色。お菓子じゃないし」
信吾は話しを変えようとします。
「アサヒくん、さっきの道が通学路やけんね。一人でいけるかな?」
しかし、アサヒは「あーもううざい」と言って、部屋から出て行ってしまいました。母のミチルは平謝りです。
舞は、おばあちゃんにアサヒが家にくることになった経緯を聞きます。
「都会の学校で馴染めなかったとよ。そんで、ミチルさんアサヒくんの環境ば変えたかって、こっちの学校に通うことにしたとさ。信吾やいずれ、こん島で子供達の受け入ればしたかって考えとってな。お試しの移住体験からはじめてみようっちことになったとさ。ちょうど部屋もあいちょるし、ばんばが部屋を貸すことになったとさ」
ホームステイ型の移住体験のようです。
空を見上げる
お菓子を食べなかったアサヒは、縁側で空を見ていました。舞は、ちょっと離れたところに座ります。
飛行機が飛んでいるのを見た舞は、コックピットにいる感じでプロシージャを始めました。
アサヒはちょっと気にするそぶりを見せますが、何も言いません。
「なんばしちょっとか?」
おばあちゃんに声を掛けられた舞は、入社に備えての練習だと答えました。
「離陸までのイメージトレーニングやな」
意味の分からない言葉の羅列に、おばあちゃんは驚いています。そんな午後も終わり、アサヒは夜までずっと同じ場所で空を見ていました。
お風呂上り、舞はアサヒに「お休み」と言いますが、アサヒは何も返事しませんでした。
アサヒの事情
翌朝、アサヒは学校に行きたくないと、駄々をこねます。
「アサヒくん、ええ学校やで。窓から綺麗な海が見えてな」
舞がそう言って聞かせますが、アサヒは「行かないって言ってるじゃん」と部屋に戻ってしまうのでした。
「行きたくなかとか。ミチルさん、無理に行かせんでもよかとじゃなかとか」
おばあちゃんはそう言って、無理に学校に行かせるようなことはしません。そしてアサヒは、昨日と同じように縁側で空を見上げていました。
落ち着くと、おばあちゃんはミチルにアサヒの東京での状況を聞きました。
「2年生までは行ってたんですけど、お友達と上手くやれなかったんです。アサヒは我儘だ、すぐ怒るから一緒に遊びたくないって言われて。環境が変わったらアサヒ自身も変わるかもしれない、そう思っていろんな所に問い合わせたんですけど、断られることが多くて。こちらで受け入れてもらって、本当に感謝しているんです」
アサヒの特技
舞は縁側で本を読んで勉強しています。そして、アサヒは一人で、ブランケットに南天の実を置いて、一人遊びをしています。
南天の実がなくなったのを見た舞は、アサヒに渡してアサヒの近くに座わります。舞は、プロシージャで離陸の前の練習を始めます。そうすると、アサヒがプロシージャを始めました。
昨日、舞がプロシージャをしているのを聞いて、覚えてしまったようです。舞はびっくりしていました。
「あの子、興味持ったことはすぐ覚えるんですよ」
舞がミチルに伝えると、そう答えました。
「でも、興味の幅が狭くて、親としては図鑑を眺めている時間の10分の1でもお友達と遊んで欲しいんですけどね」
しかし、舞にはアサヒの気持ちがわかるような気がしていました。
「私も子供の頃、この島に住んでたんです。よく熱を出す子で、環境変えたらようなるんちゃうかって、母が連れてきてくれたんです。あの頃は、熱出たらどうしようって心配ばっかりしてて、自分がどうしたいか上手く言われへんくて。アサヒくん見てたら、ちょっとだけ小さい頃のこと思い出すんです」
紙飛行機と短歌
舞が洗濯物を干していると、そこに紙飛行機が飛んできました。中には短歌がかいてありました。
「屋上を 巡り続ける 伝書鳩 飛べるよ高く 浮き雲よりも」
短歌の先頭を繋げて読むと「おめでとう」になっていました。
「舞ちゃん、航空学校卒業おめでとう」
そう言ってやって来たのは、貴司でした。貴司は、仕事の休みを利用して、おばあちゃんの家に泊まりにきたのでした。キッチンでおばあちゃんと舞は、貴司にお茶を出します。
「漁港で働いて、牧場で働いて、この冬はミカンの収穫?」
舞は、いろいろな仕事をしている貴司に驚きます。
「遺跡発掘のバイトもやってんで。スコップで永遠と土、掘んねん」
貴司は「モグラの気持ちがわかった」と笑うのでした。
そして、貴司は舞の近況を聞きます。
「訓練して、就活して、内定もらて、延期になった。パイロットになるの1年遅れんねん。けど、それがあったからここに来られたし。それにな、アサヒくんと仲良くなりたいなって思って。アサヒくんな、自分の気持ち上手く言われへんから、しんどいんちゃうかなって」
アサヒの気持ちが貴司にはよくわかりました。
「そのしんどさ、僕にもわかるわ。祥子さんに周りに合わせんでもよかって言われて、ちょっと楽になったんです」
土星は食べない
アサヒは相変わらず、ブランケットの上に南天の実を置いて遊んでいます。舞はちょっと離れた所から、空を見上げます。
「雲一つない青空やな。こんな空飛ぶのめっちゃ気持ちええねんで」
アサヒにそう声を掛けると、アサヒも空を見上げます。そして、アサヒは「ある」と言うのです。しかし、空には何も見えません。
「昼間の空には、たくさんの星があるんだ。星の光は弱いから太陽の明るさに負けて見えなくなっているだけなんだ。太陽が沈むと星が見えてくる。人間の目には8600個の星が見える。でもそれは、全宇宙の星の中のごく僅か。この銀河系には2000億個の星がある。宇宙には銀河が3億個以上ある」
アサヒはそんなことを舞に教えてくれました。それを聞いて、舞は南天の実は星名のではないかとアサヒに聞きます。アサヒは「うん」とだけ答えました。
「ああ、そうなんや。アサヒくん星、好きやねんな」
貴司がミカンを持ってやってきました。しかし、アサヒは「土星は食べない」と言います。
「地球が南天の実のおっきさだったら、土星はみかんの大きさ」
アサヒが良く知っていることに、舞は感心します。
「もっと大きい星はいっぱいある。太陽はこのぐらい」
そう言って、アサヒは両手を広げるのでした。
舞の重い荷物
朝、舞と貴司が朝食の準備をしていると、新聞が目に入ります。見ると一面は、リーマンショックの記事でした。
「失職12.5万人急速に拡大。内定取り消し、過去最悪」
そんな記事を見ないように新聞をどける舞。
「なあ舞ちゃん、舞ちゃんは自分の気持ち、ちゃんと言えてる?心ってな、重い荷物載せ過ぎたら、飛ばれへんこともあるんやで。なんか悩んでんねんやったら、しんどなる前に吐き出した方がええで」
貴司は詳しく聞いたりしませんが、舞のことをよく見て、心配してくれるのでした。
その夜、舞はなかなか寝むれませんでした。おばあちゃんも舞のことを気にして、起きだしました。
「まっちょけよ。いいものがあるけん」
そう言って持ってきたのは、ぐい吞みに入ったお酒でした。
「あんなばあば、ホンマは入社延期になったん、ショックやった。ええパイロットになるにはな、どんだけ時間あっても足りへんくらいやねん。勉強して、訓練して、ホンマに1年の延期で済むかな?」
舞は、心に載った重い荷物をおばあちゃんに打ち明けました。
「ばんばの船はな、出せん日も多か。嵐の日や、家でじっとしてるしかなか。じゃばってん、そりゃ無駄な時間だとは思わん。嵐の日だからできることもある。体ば休めたり、備品ば修理したりしてな。いつかは空も晴れる。そんまで、でくっことばやればよかと」
アサヒの癇癪
舞とおばあちゃんは、アサヒが食べなかったかんころ餅を作っています。
その時、舞はおばあちゃんが船で使っている双眼鏡をアサヒに貸してくれるように頼みました。しかし、今双眼鏡は手元にありません。
「双眼鏡、今豪さんのところにあっとさ。修理ば頼んじょってな」
そう言うと、おばあちゃんは船大工の豪に電話してくれました。
「一太が帰る時に持たせるけん」
修理は終わっていました。一太は高専を卒業した後、豪の元で船大工を目指して修行中です。そして、一太は帰りに双眼鏡をもってきてくれました。一太とも4年ぶりの再開です。
その双眼鏡をアサヒに渡すと、アサヒはずっと星空を眺めていました。
「アサヒもう終わり、寝ようか」
ミチルは、アサヒにそう声をかけますが、アサヒは「まだ眠くない。寝ない」と言うのです。
仕方なく、アサヒが出した本を片付けようとすると、アサヒは癇癪を起しながら、力任せに本を奪いました。
その勢いにミチルは、倒れてしまいます。それを見た舞は、ミチルに声をかけますが、ミチルは何も言わずにキッチンに行ってしまうのでsちあ。
ミチルの涙
一人キッチンに座るミチルにおばあちゃんが声を掛けました。
「ちっちゃい時から、ずっとなんです。ずっとずっと、他の子と違うんです。他の子が機嫌よく遊んでるのにアサヒだけ泣き続けて、私の育て方が悪いんだって言われて、ずっと謝ってばっかりで。夫とは、上手くいかなくなって。あの子には、私しかいないです。だから、私がしっかりしよう、大きくなったら落ち着くはずって、そう思って頑張ってきたのに。どうして、うちの子だけ。。。。」
そう言ってミチルは泣くのでした。
そんな時、アサヒは学校に行く準備していました。学校に行こうとするのですが、結局行かないと言う繰り返し。しかし、行きたい気持ちはあるようです。
そんな姿を見守る舞。そこに貴司がやってきました。
「アサヒくん、ホンマは学校行きたいとちゃうかな」
しかし、アサヒの言葉を無視して学校に連れていく訳にはいきません。
星空クラブ
舞はみじょカフェに行って情報収集をしていました。アサヒのために星の良く見える場所を聞いていました。
「海岸がよかとよ。星が落っちゃけて来そうなぐらい見えるけん。むっちゃんに告白されたのも、夜の海やった。ほら、むっちゃんって星が好きやろ。星空クラブを作ったぐらいやもん」
さくらがそう言って出してきたのは「星空クラブ」のチラシでした。星座早見表と星座図鑑で星探し、プラネタリウム鑑賞、手作りプラネタリウム工作などをする課外活動をするクラブのようです。
「1万度で燃えてるシリウスよりも、さくらちゃんの方が明るくてみじょかねって言ってとさ。舞ちゃんの聞き上手」
さくらは聞いてもいない馴れ初めを話してくれました。舞は家に帰って、星空クラブのことをミチルに話します。
「島の小学生と中学生が放課後集まって、星の勉強するんですって。プラネタリウム作ったり天文台に遊びに行ったり、アサヒくんここ入ってみたらええんちゃいます?」
しかし、ミチルは及び腰です。
「五島では星がたくさん見えるからいいなって思ってたんですが、前に中学生の子供にうるさいって責められて、飛び出してしまったことがあって。心配なんです」
いい提案でしたが、ハードルは高そうです。
やっぱり行かない
貴司とアサヒは、縁側に座って話していました。
「それはなに?」
「プレアデス星団」
「スバルやな」
「そうともいう」
「星はスバルって、清少納言も言ってるんやで」
「清少納言って?」
「作家さん、1000年前の」
「オオカミ座に超新星が現れたころか」
そんな会話を交わし、アサヒは楽しそうにしていました。
それを見たミチルは、舞から星空クラブのチラシをもらうと、アサヒに話してみます。
「アサヒ、こんなクラブがあるんだって、行ってみたい?」
そう聞くと、アサヒは頷きました。
着替えて、ミチルとアサヒが出かけようとします。しかし、アサヒは「行かない」と言い出すのでした。
紙に書いたらどうだろう
夕方、アサヒに寄り添う舞。そこに貴司がきて、アサヒの隣に座ります。アサヒが、貴司が書いているものを覗き込みました。
「短歌作ってんねん。自分の気持ちは言葉にしな、他の人に伝わらへんやろ。そやから、今の気持ちにピッタリの言葉、探してんねん」
そう貴司が言ったのを聞いた舞は、アサヒに今の気持ちを聞きます。しかし、アサヒは言葉にできず「わかんない」と答えました。
「しんどいとか?」
アサヒが「しんどい」の意味を正確にわかっているかどうかは別にして、アサヒは頷くのでした。そして、そのしんどさは星空クラブに行けないからだと言うのです。
「行きたい気持ちはどんぐらい?」
舞が聞くと、アサヒは両手を広げます。そして、行きたくない気持ちは、南天の実ぐらいだと言うのです。
「でも、行ったらまた言われる。すぐ怒るからアサヒとは遊びたくないって」
アサヒは前の学校で言われたことが、心に突き刺さっていたのです。舞はなんで怒ってしまうのかとアサヒに聞いてみます。
「知らない。嫌なことされたら、うわーーーってなる」
貴司はアサヒの言ったことをまとめますが、アサヒはちょっと違うと言うのです。そして、自分で書いてみることにしました。
「好き」と「嫌い」なことをアサヒは書きました。
「怒りたくなったら、紙に描く。少し減る。星空クラブに行ってみたい」
それをミチルは見て、アサヒの気持ちがちょっとわかったのです。
いい知らせと悪い知らせ
今日は、アサヒは星空クラブに出かけることができたようです。豪とおばあちゃんは、家で話しをしていました。
「最初の一歩やけん」
そうやって子供達を受け入れることを始めましたが、それ以上にやらなくてはいけないことがありました。それは、島のこれからのことです。今のままだと、子供や若者が島からいなくなってしまいます。この島で住みたいと思った若者が、出て行かないでも済むようにしないといけないと、豪たちは思っていました。
その次の日、アサヒは元気です。
「星空クラブに行こう」
一度行って、アサヒの気持ちが少し落ち着いたようです。
「夕方からだって。だってみんな学校だもん。座って」
ミチルに言われて座って、かんころ餅を食べてみます。
「美味い」
アサヒが少し慣れてきたのかも知れません。
そんな時、電話鳴りました。東大阪のお母ちゃんからでした。電話を切ったところに貴司が戻ってきまいた。舞の暗い表情を見て、貴司がどうしたのかと聞きます。
「お父ちゃんが救急車で運ばれたって」
最後に
舞や貴司がそうだったように、アサヒも島の生活で落ち着きを取り戻したようです。
しかし、お父ちゃんが倒れたとの連絡は、最後に衝撃を与えました。
来週は、天才投資家・悠人の登場です。今まで、ちょっとだけの関りだったので、来週以降が楽しみです。
リーマンショックの影響は、個人的にはほとんどなかったのですが、結構大変だったんですね。
この暗いトンネルは、いつまで続くのでしょう?
来週も楽しみです。