親子の心 は第18週のサブタイトルです。
リーマンショックから4年。それぞれの歩みが描かれた前回。
舞は航空機部品の試作を完成させ、貴司は長山短歌賞を受賞しました。そして、久留美はプロポーズされたところです。
しかし、先週はなんだか不穏な終わり方をしたのが気になります。今週はどうなるのでしょう?
そんな第18週のまとめです。
第17週「大きな夢に向かって」のまとめ。
主な登場人物
岩倉舞 福原遥 IWAKURAの営業
梅津貴司 赤楚衛二 舞の幼馴染、旅人で歌人
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、故人
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母、株式会社IWAKURA社長
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、天才投資家
梅津勝 山口智充 貴司の父。浩太の幼馴染のお好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
八神蓮太郎 中川大輔 医師で久留美の婚約者
笠巻久之 古舘寛治 IWAKURAのベテラン従業員
結城章 葵揚 IWAKURAの元従業員
山田紗江 大浦千佳 IWAKURAの合コン好き事務員
荒金正人 鶴見慎吾 菱崎重工の重役
リュー北條 川島潤哉 短歌担当編集者
木戸豪 哀川翔 船大工
浦信吾 鈴木浩介 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる みじょカフェオーナー
第18週のストーリー
団体客と悠人
お好み焼き屋の梅津は、今日は貸切のようです。しかし悠人は、貸し切りの団体客が来るまで、一人でお好み焼きを食べていました。
そして、やってきた団体客は、貴司、舞、お母ちゃんでした。
お母ちゃんは悠人を見つけると「いつもゆうてるけど、梅津くるなら家にも寄りなさい」と小言を言います。悠人は意にも介さず「これ食べたら東京帰る」と言うのでした。
梅津は、パーティモードに突入です。クラッカー鳴らす、勝と雪乃。
「貴司、長山短歌賞おめでとう!」
貸し切りは、歌人・梅津貴司の門出を祝う会だったのです。
悠人は乾杯すると、東京へ帰ろうとします。しかし、舞に「お兄ちゃん座って」と言われ、素直に従っていました。
幸せのオンパレード
「なんてゆうても、短歌界の芥川賞やからね」
雪乃がそんなことを言い出したことに貴司は驚きます。
「お母ちゃんな、貴司が短歌を作り始めた頃から、短歌の雑誌やらなんやらぎょうさん買うてきて、よう勉強してたんやで」
そういう勝も、雪乃と一緒に勉強していたのです。そんな両親を見て、貴司は嬉しそうに笑うのでした。
「おとん、おかん、ありがとう。こんな賞もらえたのも、好き勝手してた僕をずっと見守ってくれてたからです。ほんま感謝してます」
そんな貴司の言葉に雪乃は大泣きです。一時は、失踪までした貴司ですが、本当に良かったです。
そこにやってきたのは、久留美です。久留美は、みんなに紹介したいと、八神を連れてきました。
「久留美さんとお付き合いさせていただいてる八神蓮太郎と申します」
その時、舞は気づきました。久留美の指に光る指輪がありました。
「婚約しました」
嬉しそうに答える久留美。お祝いすることが、また一つ増えて、梅津は大盛り上がりです。
幸せの洪水
お好み焼きを食べる八神の反応が気になる久留美。八神は美味しそうに食べています。
「お医者さんにもファンドマネージャーにもお墨付き、それが梅津のお好み焼き屋で」
その言葉に反応する八神。久留美が舞の兄・悠人は「時の人」だと紹介しました。
「ああ、もしかして岩倉悠人さん?こんなところで有名人と会えるなんて」
こんなところと言われて、面白くない雪乃が「こんなところはないんちゃう?」と怒っていました。
変な空気を変えようと舞は久留美に聞きます。
「けど婚約やなんて、いつの間にそんなんなったん?」
それに久留美が「この間な」と答えますが、その後は八神が引継ぎます。
「僕からプロポーズしたんです。ストレートに結婚して欲しいって」
そんなぶっちゃける八神に久留美は恥ずかしくなってしまいます。
「八神先生、久留美のどんなところが好きになったんです?」
構わず舞は、芸能レポーターのように質問します。
「久留美ちゃんは、ほんま細かいところまで気いつく子で、僕はいつも助けてもらってて。なにより、しんどさも吹き飛ばしてくれる笑顔に惹かれて。気いついたら僕は、久留美ちゃんを愛していました」
八神が口にする「愛」にみんな反応します。舞は、幸せの洪水で、胸いっぱいになるのでした。
微妙なムード
そんな時、悠人のスマホに電話がかかってきました。しかし、悠人は出ません。
「ごちそうさん」
そう言うと、悠人は雪乃に1万円札を何枚も渡しました。困る雪乃。
「ええから取っておいて。貴司君の受賞祝いと久留美ちゃんの婚約祝い。おめでとう、お幸せに」
そう言うと、悠人は帰っていきました。しかし、お母ちゃんは何か気になるのか、心配そうな顔で悠人を見送るのでした。
悠人が帰った後、八神はとんでもないことを言い出します。
「舞さん、貴司さん、今度の日曜空いてます?僕らとダブルデートしましょうよ。お二人と早く仲良くなりたいし」
舞と貴司は顔を見合わせ、困ってしまいました。
「うふふ。いや、貴司君とはただの幼馴染なんです」
舞と貴司は真剣にそう言って否定します。しかし、久留美は二人の関係が進展したらいいと思っていそうな顔をしていました。
「ほな舞さん、もし良かったら若いドクター紹介しますよ」
雪乃も「紹介してもらいいや」と乗っかってきます。困ってる舞に助け舟を出したのは、久留美でした。
「もうええから、舞は今、仕事大変な時なんやろ?」
幸せムードの梅津ですが、実際には微妙な空気が流れているのでした。
品質試験
週明け、品質試験の日になりました。舞とアキラと笠巻で、品質試験の会場へやってきました。
会場のアサギリ工業は、航空機部品だけに特化した会社で、今回同じボルトの発注を受けているライバル会社です。
「IWAKURAさんですな、お待ちしておりました」
アサギリ工業の担当者が出てきて、舞たちを迎えます。そのアサギリ工業の敷地は、作業場がいくつも並ぶ、大きなものでした。工程ごとに建物が別れているのです。
舞は興味をそそられ、ついつい工場を覗いてしまいます。
「見られて困るもんなし。どうぞ、おはいり下さい」
そう言って、工場の見学までさせてもらいました。
「すごい。熱処理まで御社でされてるんですね」
舞はただただ驚くのでした。
「はい。弊社は材料調達から完成検査まで、全て一貫生産できるようになってますんで」
本気で航空機部品を製造するということは、高額な設備と品質管理が要求されるのです。
その時、菱崎重工の荒金が現れました。
甘い考え
そして、品質試験が始まります。
まずは、細かい傷の有無を調べます。航空機部品は、安全性から小さな傷も許されません。赤い塗料の中にボルトを入れて、暗室で傷を確認します。IWAKURAのネジは、無事合格しました。
次は、ボルトが切れるまで引っ張る試験です。その力を表す単位は、ニュートンを使います。今回のボルトは36,500ニュートン以上の力に耐えられれば合格です。
IWAKURAの試験結果は、36,500を越え、約38,300ニュートンでした。ボルトの完成度は、アサギリ工業と変わりませんでした。
「このボルトは、本当に御社でお作りになられたんですか?」
アサギリ工業の担当者言葉にイラっとするアキラ。しかし、舞は冷静に答えます。
「これはうちだけの技術ではありません。圧造も転造も父の代からお付き合いしている、東大阪の他の工場の機械をお借りしました。せやからこれは、東大阪の町工場の技術が結集したボルトなんです」
しかし、アサギリ工業の担当者は、それは「考えが少々甘い」と言うのです。本発注は、たくさんのボルトを作ることになります。必要な費用も時間もかなりかかり、他の工場からすればメリットを感じるとは思えないと言うのでした。
他の検査はアサギリ工業に任せ、結果は後日連絡してもらうことになりました。
貴司の作戦会議
舞は、デラシネに行きました。
デラシネでは、いつもは奥の座敷を使っている子供達が、店の方で読書していました。
「貴司君、今作戦会議中やねん」
そう言われて奥を覗くと、編集者がきて、貴司を撮影していました。
舞が挨拶すると、長山出版の担当者・リュー北條が名刺を渡します。
「飛行機部品の強度試験、どうだったかまた教えてな」
貴司に言われ、舞も子供達も帰るしかありませんでした。
「いやー梅津さんの歌、東京の編集部でも評判がいいよ。俺も歌のひとつひとつが切実だなーって。泣けるなーって。だから、雑誌は全力で売り出していきたい訳」
そう言われ、貴司は嬉しいながら困惑してしまいます。
「まずは、服装と髪型かな。今度ちゃんとした場所で宣材写真を撮ろう。スタイリスト呼ぶからさ」
貴司は「僕の写真なんか載せんでも」と、やんわり拒否しますが、北條は必要なことだと言うのです。
「ダメダメ。歌集売りたいなら、作者の顔が大事。せっかくの男前なんだからさ。写真集いけるんじゃないかな」
両家の顔合わせ
ノーサイドでは、久留美の父・佳晴がオーナーに見てもらって、ネクタイを選んでいました。数日後、八神家との顔合わせのために、佳晴は張り切っていたのです。
そんなことがあって数日後、望月家と八神家の顔合わせの日がやってきました。
しかし、そこにやって来たのは、八神の母だけでした。顔合わせに一人でやってきた母に驚く久留美。
「単刀直入に申し上げますわね。蓮太郎とあなたの婚約は、なかったことにさせていただきます」
八神の鼻の言葉に、さらに驚いた久留美がどういう意味かと尋ねます。
「望月佳晴さん、お父さん。あなた、定職にはおつきになっていませんよね?離婚もなさってるそうですし。そりゃねえ、いろいろご事情もおありなんでしょうけど、そのようなご家庭の女性とうちの息子と結婚させることできひんのです」
それだけ言うと、八神の母は帰ろうとします。その時、黙っていた久留美の父が立ちはだかり、土下座します。
「お願いいします。もう一遍考え直したってください。俺のことは俺のことです。久留美とはなんの関係もないんです」
八神の母が構わず帰ろうとするところを佳晴が、タックルをするような体勢でしがみつきます。
「久留美はちゃんとした娘なんです。久留美には幸せになって欲しいです。お願いします」
その姿を見た久留美は「お父ちゃんもええ」と言うのでした。そして、八神の母に頭を下げて謝りました。
親心
ノーサイドで落ち込んでいる久留美のところに、八神がやってきました。
「久留美ちゃん。ほんまにごめん。母が勝手にやったことで」
八神は八神の父親に説得されていて、その間に母親だけがノーサイドにやってきたのでした。
「久留美ちゃん、両親のことは僕が必ず説得する。僕は久留美ちゃんを愛してる」
そんなことがあったとは知らないデラシネでは、貴司と舞が北條が持ってきたお菓子を食べようとしていました。お茶を淹れるという貴司の雰囲気がいつもと違うことに気づいた舞は、自分がお茶を淹れると台所へ立ちます。
舞に何かあったのかと聞かれ、貴司は「別に」と答えます。しかし、舞にはお見通しです。
「舞ちゃんに嘘はつかれへんな。でも、大したことやないねん。歌集売るのって大変なんやねんなって、ちょっと不安になっただけ」
そう言って貴司が居間の方へ戻ると、居間に黙って久留美が立っていました。
舞と貴司は、久留美に顔合わせの時の状況を聞きます。
「反対されるのはええねん。結婚は私らだけの問題やないし、そういうこともあるやろなって。けど、お父ちゃんのことであんな言われ方するとはな。お父ちゃんもお父ちゃんやねん。土下座なんかして欲しくなかった」
そんな久留美の父の行動が、貴司は理解できる気がするのでした。
「必死やったんやろな、おっちゃん。どんだけカッコ悪くっても、娘に幸せになって欲しいって言う親心とちゃうかな」
久留美にとっての呪い
久留美の父・佳晴は、ノーサイドのオーナーと梅津でビールを飲んでいました。
「金持ちかなんか知らんけど威張りくさってな。もう話し聞いてるだけでむかむかしてくるわ、ほんまに」
話しを聞いた雪乃が怒っています。先日、梅津に来た八神は、失言はあったもののいい子でした。しかし、子と親は違います。
「八神さんのお母さんに言われたことは、情けないけどほんまのこっちゃ。いつまでも就職もせんとふらふらしててな」
そんな佳晴は、居酒屋でアルバイトしながら、コツコツお金を貯めていたのです。
「1年でたった5万や。久留美にとっては俺は、呪いみたいなもんや。俺から解放されな、久留美は幸せになれへん」
そういう佳晴に勝は、子供の気持ちを決めつけてはいけないとたしなめるのでした。
そこに八神がやってきて頭を下げました。
私の大事なお父ちゃん
翌朝、ご飯作る久留美。佳晴が起きると、スーツに着替えます。何事かと驚く久留美。
「今日、面接やねん。昨日な、八神さんが俺に会いにきてくれたんや。俺にええ会社紹介してくれるねんて。デスクワークで定時かえりの仕事って、ありがたい話やないか。アルバイトで肉体労働するのも限界やったしな。」
その話を聞いて、久留美はスーツの上着を取り上げます。
「行かんでええ。私はそんなん望んでへん」
しかし、佳晴は違います。
「俺は望んでんねん。もうこれ以上お前の足、引っ張りたないんや。このチャンス、絶対逃さへんから。お前は自分の幸せだけ考えてたらええんや」
佳晴が出かけて行った後、久留美は八神とノーサイドで会いました。
「どないしたん?えらい改まって。お父さんのことなら心配せんでもええよ。話し聞いてるやろ?」
久留美は「聞いた」と答え、テーブルの上に婚約指輪を置きました。突然の出来事に驚く八神。
「お父さんの仕事のこと、勝手に話をすすめたのは謝る。けど、お父さんさえちゃんとしてくれたら、僕ら結婚できるねんで」
久留美はその言葉にイラっとしますが、黙っています。
「前から思ってた。久留美ちゃん、今のままやったら不幸のままやんか。僕が助けてあげたいねん」
八神の気持ちは嘘ではないのでしょう。しかし、言葉選びがへたくそすぎます。
「助けて欲しいなんか思ってへん。私の大事なお父ちゃんやねん。ごめんなさい。別れて下さい」
泣かんといて、めんどくさいわ
八神が帰ったあと、久留美から呼び出された舞が、久留美のテーブルに行きます。
「ホンマにええの?」
そう聞く舞に久留美は「うん」と答えました。
そこに佳晴がきました。面接が終わり、お礼の電話を八神にしたら、別れたと伝えられたというのです。
「あんなこと言われて、結婚なんてできへんわ」
久留美はそう佳晴に伝えます。しかし、佳晴は「あかん!」と大きな声を出します。そして、カバンからパンフレットを取り出しました。
「八神さんええとこ紹介してくれはったん。こない大きいとこやったら、八神さんのお母さんも絶対納得してくれはるやろ」
しかし、久留美は「そんなところ、いかんでええ」と答えます。
「なんでやねん。お父ちゃんのせいやろ。おとうちゃんのせいでこないなってんのやろ?舞ちゃんからもなんとかゆうてくれ」
舞は「おじさんのせいやないと思います」とだけ答えました。
「そんなはずあらへんねんて。諦めんでくれ、久留美。頼むから。頼むから幸せになってくれ」
お父ちゃんの思いを聞いた久留美は、素直な気持ちを話しました。
「お父ちゃんわたしな、今でも十分幸せやで。私、ぜんぜん後悔してへん」
しかし、久留美の目から涙が溢れてきます。
「これからもお父ちゃんはお父ちゃんなりに頑張ってくれたらそれでええ。それが私が一番望んでることやで」
佳晴は「すまん」と言って、泣き出してしまいます。
「泣かんといて、めんどくさいわ」
品質試験の結果
結果がわかる日、菱崎重工の荒金がIWAKURAにやってきました。
「IWAKURAさんに作っていただいた航空機エンジン用ボルト、その品質検査の結果をご報告します。このボルトは強度、耐久性をはじめ、あらゆる品質においてアサギリ工業さんと比べても、遜色のない素晴らしいできばえでした。ただし、今回のボルトの本発注はアサギリ工業さんにお願いしたいと思っています」
その結果を聞いて、お母ちゃんは満足そうに言うのです。
「このような機会を頂戴しただけでも、光栄です。主人はずっと航空機部品を作ることを夢見て、この会社続けてきましたんで」
それを聞いた荒金は「岩倉浩太さん、懐かしいです」と言うのでした。お母ちゃんと舞は、荒金とお父ちゃんの関係を聞きます。
「私がまだ新人で長崎に赴任したばかり頃、大変お世話になりました。オール日本製の航空機を作るんだと、二人で大きな夢を語り合っていたので。正直、会社を辞め小さな工場を継ぐと聞いた時には、信じられませんでした。でも、奥様やお嬢さんにお会いして、ここにあの時の浩太さんの思いがちゃんと残っていることを知って、嬉しかったです」
荒金の提案
そして、荒金は提案をします。
「将来的に航空機部品に特化するお考えはありませんか?航空業界の市場は、これからも拡大すると言われています。御社が航空機部品の製造をやりたいとお考えなら、私も何かしらお力になりたいと考えております」
しかし、嬉しそうにする舞に対して、お母ちゃんは冷静でした。
「弊社は以前、自動車業界に参入するために工場を拡大させました。ただ、その直後リーマンショックが起きて、社員をリストラしないといけない事態に陥りました。主人が亡くなったのも、ちょうどその頃です」
夢のある話には、リスクも覚悟しなければなりません。しかし、お母ちゃんとしては、そんなリスク挑む勇気がありませんでした。
そして、航空機部品に特化することはないと言って、荒金の申し出を断りました。
その夜、舞とお母ちゃんは仏壇に飛行機のネジを供えました。
「お父ちゃん見て、この加工すごいやろ。お父ちゃんが夢見た、航空機部品やで」
しかし、航空機部品の製造はしないと決めました。舞は、お母ちゃんも同じ夢を見ているのだと思っていました。
お母ちゃんも、当初は同じ夢を見ていました。ただ、今回の試作品を作ったことで、どれほど大変かよくわかったのです。お母ちゃんは、相談せずに決めたことをまいに謝ります。
「お母ちゃん、かっこええ社長さんやわ」
舞に怒られると思っていたお母ちゃんは、安心するのでした。
新規受注
舞は、品質検査の結果とお母ちゃんの決断を貴司に報告しました。
航空機部品を作るという夢は実現しませんでした。それもあって、舞の心にぽっかり穴が開いたような気持です。
「焦ることないよ。ゆっくり気持ちの流れに任せて、新しいことが見つかるまで待ったらええやん」
貴司が見つけたように、舞にも見つかるはずです。
そんなある日、舞のスマホに電話がかかってきました。相手は、菱崎重工の荒金です。
電話を切った舞は、会議中のお母ちゃんの所へ急ぎます。
「ちょっと、舞。会議中やで」
そう怒られますが、舞は止めることができなくなった理由を答えます。
「すみません。みなさんにはようお伝えしたくて。菱崎重工さんから直々に自動車部品の製造をお願いしたいと。ほんで、なんとエンジン用の部品です」
驚くみんなに、舞は図面を見せます。今回も航空機部品までとはいかないまでも、かなり難しい仕様になっていました。
「東大阪の工場全部回って、頼んできます」
舞はそう言って、成功させるために張り切るのでした。
解約請求
悠人がノーサイドに、お母ちゃんを呼び出しました。
「IWAKURAの権利、お母ちゃんに返そうと思ってる」
急な申し出に驚くお母ちゃん。
「私はずっと、悠人にオーナーでいてもら・・・」
お母ちゃんの言葉を遮って、悠人は強く言いました。
「こうしておいた方がええ。サイン書いたら送って。」
お母ちゃんは心配して、仕事は大丈夫なのかと聞きます。
「当たり前やん。順調やなかったら、こんな金回りのええ工場、手放せへんやん。じゃあ」
そう言って悠人は帰って行きました。しかし、一人になった悠人に電話がかかってきます。
「岩倉、今月のレポート見た投資家から、解約請求がばんばんきてる。いくら俺でも、これ以上つなぎ止められん。半年で10%以上やられてるんだからな。こんな上げ相場の中で一人負けしてたら当然だ」
そう言われた悠人は「大丈夫や。勝てる見込みは十分ある」と言うのでした。
たまたま
ある土曜日、懐かしい二人がこの町にやってきました。
「貴司くん、お願い。ここ使わせて。今日な、たまたまが重なってしもて」
舞は外に二人の男性を待たせ、デラシネの場所を借りたいと貴司にお願いしていました。舞は重なったたまたまを貴司に説明します。
ノーサイド連れってたらたまたま、臨時休業。ほな、梅津でお好みや思ったら、たまたま慰安旅行で休み。ほら、たまたまやろ」
貴司は自分の家に行ったらいいと言いますが、舞の家はたまたま水道の調子が悪く、お茶も出せない状態だと言うのでした。
舞と貴司が話していると、待っていた二人組が「無理しなくていいよ」と舞に声を掛けました。来ていた二人は、航空学校同期の吉田と水島でした。
「いやわかった。ここ使って。せっかくここまで来てくれたんやし」
貴司はデラシネの居間を提供しました。舞は借りた台所でお湯を沸かし、お茶を出します。
「舞ちゃんて、貴司さんと付き合ってるの?」
水島がいきなり突っ込んできました。舞は「幼馴染です」と答えます。
吉田と水島は航空学校時代、同じ部屋ではありませんでした。同期とは言え、珍しい組み合わせです。
「それがたまたま俺が大阪に用事があって来て、たまたま吉田に電話したら、たまたまフライトの仕事で大阪にいるって言うじゃない」
水島はたまたまを連呼しながら、そう説明しました。そして「大阪なら、舞ちゃんもでしょ」ということで、舞の元を訪ねてきたのでした。
励まし
「吉田くん、副操縦士、どない?」
舞は吉田の近況を聞きました。
「キャプテンにはまだまだだけどね。矢野さんとか中澤さんにたまに空港で会うよ」
そして、気になる元彼の話も水島がしてくれました。
「柏木なんか国際線でブイブイ言わせて、ぜんぜん日本に帰ってきてないからな」
舞は別れてから、連絡を取っていませんでした。
「水島さんはスーパーどないです?」
話しを変えようと、舞は水島の近況を聞きます。
「よくぞ聞いてくれました。俺も今や副操縦士ならぬ副店長になりました」
舞と吉田は拍手をして喜びました。そんな舞は、キャプテンを目指す吉田、店長を目指す水島を羨ましく感じていました。舞は航空機部品を作る夢を失って、今は何もありません。
「舞ちゃんやったらなんでもできるよ。目標って今の会社の仕事だけじゃなくてもええんちゃうかな」
離れていた貴司が、近くに寄って舞を励まします。
「そうだよ、舞ちゃんはその年で俺なんかよりよっぽどたくさんのことを経験してるし」
「パイロットの資格がなくなる訳じゃないから、また飛びたくなったらいつでも飛べるんだから」
「空も飛べるし部品も作れる、そんな人なかなかいないよな」
「舞ちゃんの未来はものすごく開けんねんで」
水島も吉田も、貴司と一緒に舞を励ましてくれました。
ヤング釣りフェスタ
五島では、島に若者を呼ぶためのイベント「ヤング釣りフェスタ」が開催されていました。
釣った魚の魚拓を取り、みじょカフェでは魚を料理して振る舞っていました。女性も多く、賑わっています。その中に一太もいました。
「ばえー美味かー」
その方言を聞いた若い女性が一太に近づきます。
「あの、すみません。ばえーってなんですか?」
一太は楽しそうに方言の意味を説明しています。その二人の会話を聞いた豪や信吾たちは、温かい気持ちで見守っています。
「五島には河童がいるんですか?」
五島での呼び名は「ガッパ」です。一太は河童を見たことがあると冗談を言い、瓢箪を持って踊りだします。その瓢箪踊りは、舞が子供の頃にも、一太が踊っていました。
そんな浮かれた一太は、転んでテーブルの上の飲み物をこぼして、女性にかけてしまいます。
「ぜんぜん大丈夫です。海風にあたったら乾きますから」
その女性の笑顔に見とれる一太。恋の始まりの予感です。その女性が名刺を出して自己紹介しました。
「福丸百貨店 百貨店事業本部 企画推進課 催事係 熊谷百花」
大阪の百貨店に勤める女性でした。
「今日は観光で来たんですが、知嘉島の美味しい料理や郷土愛に触れて、これやって思って。もしよかったら、私と一緒に大阪で物産展開きませんか?」
信吾は五島の魅力を伝えるチャンスだと喜ぶのでした。
疑惑
五島のイベントの成功を聞いた舞は、リビングのお母ちゃんに伝えました。しかし、お母ちゃんは考え事をしていて、なんだか上の空です。
「明日、みんなに話しようと思ってるんやけど。悠人がな、IWAKURAのオーナー、私に戻してくれるゆうてんねん。悠人なりに会社のこと考えてくれたんやと思うけど・・・お母ちゃんの勘違いかもわからへんけど、ちょっと悠人の様子が気になってな」
その時悠人は、ピンチから脱出していました。
「26億の損失を一気に取り戻すとは、大逆転だな岩倉」
悠人は「当たり前やろ」といつものクールな感じで答えます。
「わかってる。だけど、やばいやり方してないだろうな。いくらお前でも大逆転が過ぎやしないかって」
悠人は冷静に語ります。
「もともと有望な会社、目つけててん。ぜんぜん問題ないわ」
しかしその後、事件が起きました。梅津でニュースを見ていた雪乃が大声を上げて勝を呼びました。
「投資のカリスマにインサイダー疑惑」
岩倉家に波乱が起きようとしていました。
最後に
親子の心はそれぞれです。舞とお母ちゃん、お母ちゃんと悠人。貴司と勝、雪乃。久留美と佳晴。それぞれの形ですが、それぞれの愛です。
航空機部品を作るという夢を無くし、舞はどうするのでしょう?
そして、疑惑の悠人は、逮捕されるのでしょうか?
一太や貴司に春が来るのでしょうか?
まだまだ続きます。