私たちの翼 は第26週のサブタイトルです。
第25週「未来を信じて」のまとめ。
主な登場人物
梅津舞 福原遥 IWAKURA子会社こんねくと社長。旧姓岩倉
梅津貴司 赤楚衛二 舞の夫、歌人でデラシネ店主
望月久留美 山下美月 舞の幼馴染で義理の姉、看護師
才津祥子 高畑淳子 舞の祖母でめぐみの母
岩倉浩太 高橋克典 舞の父、故人
岩倉めぐみ 永作博美 舞の母、株式会社IWAKURA社長
岩倉悠人 横山裕 舞の兄、投資家
梅津勝 山口智充 貴司の父。お好み焼き屋
梅津雪乃 くわばたりえ 貴司の母。勝の妻
望月佳晴 松尾諭 久留美の父。元ラガーマン
津田道子 たくませいこ カフェ・ノーサイドのオーナー。佳晴の妻?
結城章 葵揚 IWAKURAの従業員で次期社長
リュー北條 川島潤哉 短歌担当編集者
御園純 山口紗弥加 こんねくと共同出資者。元新聞記者
刈谷博文 高杉真宙 舞の先輩。AKIBILU社長
玉本淳 細川岳 舞の先輩。刈谷と一緒に起業
森重朝陽 渡邉蒼 小学生で五島移住。刈谷を手伝う
八木巌 又吉直樹 元デラシネ店主。貴司の恩人
木戸豪 哀川翔 五島 船大工
浦信吾 鈴木浩介 五島 役場職員。めぐみの同級生
浦一太 若林元太 五島 舞の同級生、船大工見習い
山中さくら 長濱ねる 五島 みじょカフェオーナー
第26週のストーリー
アビキルとアサヒ
2020年1月、舞は貴司をパリに送り出しました。
空飛ぶ車を開発中のアビキルでは、より進化した試作2号機アビキュラ2号の完成が急がれています。そして、アビキルと業務提携したこんねくとは、刈谷達が抱える課題を解決するためサポートを続けていました。
アビキルでは、2020年秋に有人フライトを実現する予定です。
「今年中に有人フライトに辿り着くためには、アビキュラ2号の安全性と信頼性をしっかり検証する必要がある。少なく見積もっても飛行試験は500回はやらんといかん」
しかし、そのためには近場での試験場の確保が絶対条件です。今は、往復4時間かけています。
その試験場を御園が見つけてきてくれました。場所は丹山工業所有地で、東大阪です。ただ、まだすぐに使えるという訳ではないようです。
「あと、データの整理が追い付いとらん。特に飛行関係な。これから更に飛行試験を繰り返すなら、数字に強い人がいると助かる。渥美、優秀な学生おらんかな」
大学准教授・渥美に刈谷は訊ねますが、学生たちも忙しく、渥美は難色をしめします。そこで声を上げたのが舞でした。
そして、舞が連れてきたのはアサヒでした。アサヒは、なにわ大学で、惑星探査ドローンの研究をしている学生です。
そんなアサヒに刈谷は、飛行試験のパワー系のデータをグラフ化するよう頼むのでした。
デラシネとIWAKURAの現在
デラシネでは、貴司が不在の間、おばあちゃんが店番をしています。
小学生の子供たちに、五島の風習を説明したりしていました。そして、いつもおばあちゃんが見ているのは、五島の写真集です。
そこに保育園に迎えに行った舞が、歩と一緒にデラシネの寄りました。そして、おばあちゃんと一緒に帰ります。
家では、仕事するお母ちゃんの姿。名刺の整理をパソコンでしています。舞は、社長を引き継ぐことになったアキラの状況を聞きます。
「アキラくんな、ずっと設計手掛けてきたやろ、だから持ち込まれる案件に素早い正確な判断ができんねん。職人さんらにも信頼されててな、本音で話合えてる。さっそく、お客さんにも喜ばれてるわ。アキラくん、営業にも向いてそうやしな。これから機会見つけて、ちょっとずつ取引先一緒に回ろうと思ってる」
順調そうな話しを聞いて、舞は貴司のことを思うのでした。
フランスへ到着
フランスに到着した貴司は、八木を訪ねました。招き入れられた部屋には、貴司の歌集が置いてありました。
「これ、読んでくれたん?感想は言わんといて。けなされても褒められてもツライ」
貴司は八木にそう言うと、八木は「褒められても辛いんかいな」と困ってしまいます。
「自分でええと思ってへんもん、褒められんのしんどいねん。こなんでええんかなって迷いながら本出して、それが今までよりずっと褒められて、歌いっこも作られへんようになって。僕、また逃げてしもたんかも知れへん。海の底に潜っても潜っても、花いっこも見つけられへんの、結婚して幸せになったからって思ってしもて」
八木の前では、貴司は素直に自分のことを話せました。
「おっちゃん昔、自分が息するだけのために詩書いてた。せやけど、学生の時なその詩をあげたいと思う人ができた。強い人でな、本気で世界を変えたいと思って、いつも戦ってた。世界中を飛び回ってな。けど、ずいぶん前に自分で生きんの辞めよった」
八木が話す、初めての話です。八木は気持ちが苦しくなると、その人に会いに行くのだと教えてくれました。そして、その人がいた場所に行くと、声が聞こえてくることがあるというのです。
翌朝、テーブルの上に置手紙がありました。
「呼ばれたから行くわ。パリでしばらく暮らしたらええ。誰の子が聞こえる?話したいこと見つかったら言葉にしてみ」
荒金の協力
アビキルは飛行試験を繰り返し、有人飛行の安全性の検証を重ねていました。アビキルが次に目指すのは、屋外での飛行試験です。
屋外飛行試験の申請は、こんねくとの舞が担当していました。刈谷に状況を説明します。
「航空局とは引き続きやり取りを進めてます。機体のスペックと安全性のデータは提出できたんですけど、また追加で検証データの提出を求められました。今月か来月の開始は難しそうです」
今までにない空飛ぶ車の申請です。簡単に通るわけがありません。そして、野外飛行の申請より、もっと大変な物が待っています。それが、型式証明の取得です。
型式証明は、空飛ぶ車を市場に出すために安全性や環境適合性の面において、機体の設計が国の基準をクリアしていることを証明するものです。
その時、舞は菱崎重工の荒金を思い出しました。舞はすぐに連絡を取り、荒金に試作機を見てもらいます。舞は東大阪の町工場の技術を集めて作ったことを説明しました。
「開発は順調のようですね」
しかし、開発が上手く行っても、空を飛ぶまでにいくつも高い壁があります。
「日本で空を飛ぶには型式証明が必要です。私たちも勉強してますけど、弊社には経験も知識も人脈も足りてません。型式証明取得の難しさを誰よりもご存じの荒金さんのお力が必要なんです」
舞がそう言うと、みんなで荒金に頭を下げました。
「私はね今、年甲斐もなくワクワクしていますよ。わかりました。私でよろしければ」
プロポーズ
久留美が休暇で長崎から帰ってきました。悠人と柏木公園でコーヒーを飲んでいます。
久留美は「野生のイルカ、いつ見にくるん?」と悠人に訊ねました。
「もうちょっと温かくなってからな。今やってる仕事、はよ終わらせたいし」
久留美は残念そうな、寂しそうにです。
「私も忙しいしな、一人でも楽しくやれる」
強がる久留美に悠人は言います。
「いいことやん。どうせ人間なんか、一人で生まれて一人で死んでいくんや」
ちょっと突き放した悠人ですが、飲み物を置いて立ち上がりました。
「そやけど、長い人生50年ぐらい二人で生きるのも悪くないかもな」
その言葉に久留美はびっくりして立ち上がります。その勢いで手袋が落ちてしまいました。
拾った悠人は、手袋を渡す際に一緒に指輪を見せます。
「一緒に生きて行きたい。結婚しよ」
いつもは捻くれた発言ばかりの悠人ですが、ここはドストレートのプロポーズでした。
「ずるいで。こんな時だけ直球って。はいって言うしかないやんか」
悠人は久留美の指に指輪をはめて、抱きしめるのでした。
結婚報告
その足で、ノーサイドに悠人と久留美が向かいます。久留美の父・佳晴は、ノーサイドのオーナ・道子にプロポーズして、一緒に働いていました。
「どないしたんや、お通夜みたいな顔して」
入って来た悠人を見て、佳晴が声をかけました。しかし、道子は気づき、悠人と久留美を座らせます。
「望月さん、道子さん、娘さんと結婚させて下さい」
頭を下げる悠人。驚いて声が出ない佳晴。あまりのことに立ち上がってしまいます。
「悠人くん、娘をよろしゅうお願いします」
久留美の顔を見て、泣きながら絞り出した佳晴。道子も泣いていました。
それから、岩倉家に悠人と久留美は行きます。
「久留美と結婚します」
驚くおかあちゃん。びっくりして、すぐには声がでませんでした。
「おめでとう。久留美ちゃん、ありがとう」
やっとそれだけ言うのが、精一杯でした。舞もおばあちゃんも二人を祝福します。
「今の仕事落ち着いたら、二人で長崎に住むつもりです。今はどこでも仕事できる時代や」
そうやって結婚報告は無事済みました。
貴司の苦悩と緊急事態宣言
悠人と久留美の結婚は、舞からメールで貴司に伝えられました。しかし、貴司はおめでとうと返すだけで、まだパリにいるつもりです。
そして、2020年3月。パリはコロナの影響でロックダウンしました。舞は近況報告のメールを貴司にしますが、「早く帰ってきて欲しい」は消して送りました。
貴司は、パンとコーヒーで胃袋を満たしながら、生活していました。しかし、何も書けません。
夜、窓を開けて夜空を見上げる貴司。夜空に飛行機が飛んでいるのが見えました。
「昔の飛行機はな、星の位置を目印にして飛んだんやで」
「もしもし貴司君、どこにおんの?」
「すごいやん、おめでとう。ほんまに良かったな」
「私、貴司君の短歌、好きやで」
「こういう歌にしたくなるような幸せ、これからいっぱいあったらええな」
貴司の耳に、舞の声が聞こえてきました。そして、その言葉を頼りに貴司は、ノートに向かった書き始めることができたのでした。
日本でも、新型コロナウィルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出されました。
舞はお母ちゃんに歩を預けると、仕事にでかけます。
その後、おばあちゃんが外出しようと着替えていました。
「デラシネば見てこようち思ってな。子供達が来ちょるかもしれんち思って」
しかし、お母ちゃんは止めます。
「母ちゃん、その年で感染したら命に係わるとぞ。お願いやけん、今は外に出らんで」
おばあちゃんは「島に帰りたか。。。」とつぶやくのでした。
アビキルの作業と刈谷の焦り
アビキルでは、秋に有人フライトするという当初の予定を、刈谷は変えたくないと主張しました。しかし、玉本が刈谷を止めます。刈谷は焦っていました。
「荒金さん、自動車の技術で世界有数の技術を誇る日本が、思うように航空機を作れんのには理由があるとですよね?」
刈谷が聞くと、荒金は答えました。
「戦後7年間、飛行機作りを禁止されたからです」
その7年間のブランクが、今でも尾を引いていると刈谷は言うのです。そして、開発はスピードが命なので、休んでいる暇はないと焦っていたのでした。
しかし、状況が状況です。玉本は必死に刈谷を説得します。
「元気でおるのが、今は一番大事やろ」
その玉本の意見を覆すことは、この状況下ではできません。それでも、刈谷はみんなが帰った後、家に帰らず一人で作業を続けていました。
「刈谷さんは、待ち合わせしてるんですよね?空飛ぶ車と未来で待ち合わせしてて、早う会いたいんですよね?私、就職延期になって落ち込んでた時、祖母に言われたんです。嵐が来て、船が出されへん日も無駄な時間やないって。いつか空が晴れる日まで自分のやれることやったらええって。今、何ができんのか、私も家で考えてきます。せやから刈谷さん、一人で焦らんといて下さいね」
舞にそう言われた刈谷は、ただうなづくことしかできませんでした。
随筆
夜、歩は絵を描いていました。
「これパパやねん」
上手に描けた絵を舞が褒めました。それから、歩を寝かしつけていると、舞の電話が鳴りました。相手は、貴司からでした。
「貴司君?電話、ありがとう」
舞が電話に出ると、久しぶりに貴司の声が聞こえてきました。
「時間かかってごめん。あんな、こっちで随筆書き始めてん」
そう言って、貴司は今の状況を説明します。
「今、パリで何が起こってるのか、見て聞いて、考えたこと言葉にしてんねん。舞ちゃんに手紙のつもりで書いてる。歩は?」
歩は保育園も行けず、パワーが有り余って夜遅くまで元気です。それを聞いて、貴司は近くにいないことを謝りました。
「貴司君のせいやないよ。世の中がこんな風になるなんて誰も思えへんかった。そっちはどう?」
舞は貴司が心配です。
「まだロックダウン続いてる。外出は1日1時間で、半径1キロ以内しか異動できへんねん。舞ちゃん、会いたい」
貴司の言葉に舞も「私も、会いたい」と伝えます。
貴司は、家に帰ると決めました。
新しいアイディア
貴司は家に帰ると決めたものの、閉鎖されている状況ではなかなかチケットが取れません。
「ごめんな。家までひとっ飛びで会いに行けたらええのにな」
その貴司の言葉に舞は新しいアイディアを思いつきました。貴司との電話を切った後、舞はノートに絵を描き始めました。
それから、アビキルでの作業は、徹底した感染対策が施されました。
そして、舞の新しいアイディアをみんなに発表しました。それは、空飛ぶ車の新しい形です。
「固定翼、ティルトロータータイプの機体か」
ティルトローターは、プロペラに似た回転翼を、機体に対して傾けることで離着陸ができるタイプの飛行機です。
「誰でも乗れて、島から島へひとっ飛びで飛べるような未来の空飛ぶ車です」
舞は自慢げにそう説明しました。
帰国
舞と歩が家の前で紙飛行機を飛ばして遊んでいました。
その飛んだ紙飛行機を拾ったのは、貴司でした。
「ただいま」
いつもの優しい貴司の声。舞は抱き着きます。
「お帰り」
歩もパパだと声を上げて、一緒に抱き着きました。
家の前は、梅津の前でもあります。人目をはばからず抱き合う親子の姿がありました。
プロモーション動画
「みなさん、準備はいいですか」
そう言って声をかけて始まった撮影は、アビキルの空飛ぶクルマがどういうものかを説明する動画でした。
「車が空を飛ぶ、SFのような世界を実現しようとしている会社があります。大学のサークル仲間2人が始めた小さな会社は、今や3億円もの資金を集める注目企業となりました」
アビキルの社員や協力者が全員参加しての撮影です。
「あちらが試作中の機体です。今年中に人を乗せて空を飛ぶ予定です」
そして、空飛ぶクルマの説明では、「垂直離着陸が可能で、カジュアルに空を飛べる乗り物」と説明していました。垂直に離陸して、垂直に着陸するため、滑走路が必要ありません。そのため、あらゆる場所と場所を繋ぐことができるのです。
さらに、電気で動くので経済的で静か。二酸化炭素を排出しないので、地球にも優しい乗り物になっています。
その動画は、梅津や岩倉家で、みんなで見ていました。IWAKURAは、本格的に飛行機や空飛ぶクルマの部品を作ることを考えているようです。
舞の立ち位置
舞はその動画で、アビキルの執行役員と注釈が出ていました。
「私たちの描く未来は、空飛ぶクルマが人を運びます。例えば、離島から離島へ。山から山へ。会いたい人に会いたい、行きたいところに行けない。今の私たちはその悔しさをよく知っています。だからこそ、この空飛ぶ車は誰でも乗れるものにしたいと考えています。いつか夢は叶う、この車が空を飛ぶ日がるくと私たちは信じています」
その動画を見た投資家から、刈谷に電話がかかってきました。電話を切った刈谷は、みんなにその電話の報告をします。
「動画を見たベンチャーキャピタルからたい。ぜひ会ってみたい、その結果次第では、1億クラスの出資も考えるって」
喜ぶみんな。さらに舞が嬉しい情報を伝えます。
「みなさん、マスコミ向けの有人フライトの日程が決まりました。11月6日です」
資金面が強化されれば、舞が考えたティルトロータータイプの新しい空飛ぶクルマ「かささぎ」を作ることができます。
「この機体にまた一歩近づきましたね。でもなんでこれ、かささぎなんですか?」
アビキルのの女性社員に聞かれた舞は、その理由を答えました。
「織姫と彦星を引き合わせるために、空に橋をかけた鳥の名前です」
かささぎの名前は、むっちゃんが以前言っていました。
2026年の舞と貴司
それから6年が経ちました。
貴司の随筆「トビウオの記」は、フランスの八木の所まで届いています。
「妻はテストパイロットとして飛行試験を繰り返し、仲間たちと空飛ぶクルマの改良を重ねた。やがて厳しい基準をクリアすると、その機体はとうとう日本の空を飛び始めたのだ」
深海の 星を知らない魚のため カササギがこぼした流れ星
貴司の本には、素敵な短歌が載っていました。
その頃、アビキルの倉庫では、刈谷がポスターを見つめていました。
「空飛ぶクルマ かささぎ 2027年1月31日 五島列島で運航開始」
刈谷が感慨深く眺めていると、そこに舞がやってきます。
「来年、五島でかささぎの運用が始まる。初フライトの操縦は岩倉に任すたい」
刈谷に言われ、舞はうれし涙を流しました。
2026年のIWAKURAとばんば
お母ちゃんは、アキラに社長を譲り、会長になっていました。
「今後、会社は結城社長にお任せします。長い間、ほんまにありがとうございました。私は五島で母と暮らすことになりますが、今後もIWAKURAには関わっていくつもりです。困ったことがあったらいつでも相談してくださいね。結城社長、みなさん、IWAKURAをよろしゅうお願いいたします」
お母ちゃんがアキラに任せて、IWAKURAから離れることが決まりました。そこに舞と悠人もやってきて、花束を贈ります。
その頃、おばあちゃんは五島のさくらに電話をしていました。おばあちゃんは、今は車いすの生活です。
「年あけたら、五島に行くけんね。長崎からフェリーでいくけん」
さくらは「楽しみに待っちょる」と答えます。
そして、さくらのいるみじょカフェには、常連の釣り客が船の準備が終わるのを待っています。その釣り客は、以前おばあちゃんが迎えの時間を忘れて、怒っていた釣り客でした。
久しぶりの五島
年明け、おばあちゃんがフェリーで五島に戻ってきました。一緒にいるのは、岩倉家と刈谷、玉本です。
「まーい」
舞を呼ぶ一太の声が聞こえます。みんながおばあちゃんの帰りを待っていてくれたのです。一太夫妻とその子供の進、豪、さくら、むっちゃんです。
おばあちゃんは、一太の子供に会うのは初めてです。
「こんまか頃の一太そっくりたい」
そう言うと、みんなで楽しく笑うのでした。
舞の子・歩と進は、同じぐらいの年齢です。それは、舞が五島に住んでいた時、一太と知り合った年齢と同じです。
そして、やってきたのは、港。
「祝 かささぎ就航 ぎばって飛ぼうで!」の垂れ幕が張られています。
湊からかささぎで飛び立ち、おばあちゃんと往診に行く医者を乗せて飛ぶのです。
「本格的な運用が待たれていた空飛ぶクルマ・かささぎ。本日から五島列島の空を飛びます。島と島を結び、住民のみなさんの新しい足となるのです」
テレビ局の中継も入り、一大イベントになっていました。
全員集合
舞は、チェックリストを使って、機体の状態を確認しています。それは、航空学校で見た姿に似ていました。
機体の中では、刈谷が最終確認をしています。
おばあちゃんは車いすでかささぎに乗り、お母ちゃんは飛び立つのを見てめぐみ丸で追いかける予定です。
「うちのお母ちゃん、かっこええやろ」
歩が進に自慢していました。
「私もな、将来パイロットになんねん。宇宙船のパイロット」
進は「ばえーすごかー」と驚いて、もう仲良くなっていました。
そして、かささぎが飛ぶ姿は、東大阪にも中継されていました。
ノーサイドでも中継を見る準備をしていると、悠人と久留美がやってきます。二人の間には、女の子が生まれていました。
そして、なにわバードマンの懐かしい顔ぶれも揃っています。
さらに、航空学校同期の柏木、倫子、中澤、吉田、水島も集合です。
お父ちゃんの夢
機体のチェックが終わると、おばあちゃんを車いすのまま乗せ、医者も同乗します。
そして準備完了すると、離陸します。
機体は垂直に上がって行きます。
「岩倉、自分最高やで」
由良はスワン号を飛ばしたあの日のように、同じ言葉を舞にかけました。
かささぎは上空で旋回し、ゆっくりと進んでいきます。
お母ちゃんはかささぎの姿を見て、涙が溢れてきました。
「浩太さん、舞が空飛んでるで。IWAKURAのネジ、乗せて」
それは、悠人も同じでした。
「親父、夢かなったな」
あんなにケンカした悠人とお父ちゃんでしたが、コツコツやってきて夢が叶ったのです。
飛び立った舞は、航空学校での日々を思い出しました。
大河内教官との日々、柏木と水島のケンカ、同期のみんなでやった円陣。
舞が描いたパイロットになりたいという夢が、やっと叶ったのです。
飛び立ったかささぎは、大瀬崎灯台で方向転換します。
貴司が失踪した時、舞と久留美が貴司を探しにきた灯台です。
「舞ちゃんと久留美ちゃんが貴司見つけてくれた場所やな」
雪乃は感慨深くそうつぶやくと、久留美は補足しました。
「貴司くんが自分を見つけた場所です」
その貴司は、めぐみ丸でみんなと一緒に知嘉島へ向かっていました。
「見てみ、綺麗やな」
かささぎから送られてくる映像を見た悠人は、娘に語り掛けます。
「おばあちゃんとばんばのふるさとやで」
お母ちゃんは「おばあちゃん」、おばあちゃんは「ばんば」と呼び分けていました。
「ばんば、知嘉島やで」
舞はおばあちゃんに語り掛けます。
窓の下には、舞と久留美と貴司が過ごした海岸が見えました。
そして、ばらもん凧が上がる丘が見えてきます。そこは、舞が子供の頃に、一太たちと一緒に一太の弟のためにばらもん凧を上げた公園です。
おばあちゃんも子供の舞のことを思い出しました。
子供の舞と別れる時、そう伝えたおばあちゃん。舞はその言葉に負けなずにパイロットになりました。
「舞や、向かい風に負けんかったね」
公園では子供達がかささぎを見て、手を振っています。
「こちらかささぎ、もうすぐ一つ目の目的地に到着します」
舞は東大阪にそう伝えました。
最後に
2022年10月から始まった「舞いあがれ」ですが、ついに終わってしまいました。
就職を辞め、IWAKURAを手伝うことと決めた時は、もうパイロットにならないのかと思いました。しかし、舞は東大阪の町工場の技術を結集し、お父ちゃんの夢の飛行機(空飛ぶクルマ)を完成させました。そして、そのパイロットになって、舞の夢も実現したのです。
スワン号の代打パイロットや、航空学校の試練、リーマンショックなどの向かい風はありましたが、その全てを糧にしたのです。こんな大団円になるとは想像していませんでした。
物語はしっかりとした脚本で、伏線の回収もしっかりされた印象です。
前期の朝ドラに比べ、やっぱり後期の朝ドラは、名作が多いなと思います。
そして、しっかり舞い上がった後は、来週から新しい朝ドラになります。
江戸時代から始まる物語は、どう展開するのか楽しみです。